建設

「建設分野で特定技能外国人の受け入れをしたいけど、どうしたらいいのか分からない」そんな企業主さんは多いでしょう。用意するものは何なのか、そもそもどんな外国人なら受け入れ可能なのか疑問に思っている方もいるはずです。

そこでこの記事では、建設分野での特定技能受け入れについて、目的や受け入れの条件などについて徹底的に解説。気になる受け入れの費用についても解説するので、読むと建設分野の特定技能外国人受入れがスムーズに行えるようになりますよ。

建設分野で特定技能を受け入れる目的は?背景を紹介!

建設分野で特定技能を受け入れる目的は?背景を紹介!

特定技能制度ができる以前は、日本の建設分野は深刻な人手不足に悩まされていました。生産性や人材確保への取り組みを行ってはいましたが、それでも日本国内の人材だけでは人手不足が解消できませんでした。

日本の建設分野で深刻な人手不足が起こった主な理由は、以下の2点です。

  1. 少子高齢化
  2. 若者の建築分野離れ

体力を使い長時間労働しなければならない建設分野は、少子高齢化の進む日本では担える人材が少ないのが現状。また、建設分野は重労働で下働きのようなイメージがあり、若者が建設分野以外の職業に興味を持つことが多いことも人手不足の原因として考えられます。

建設分野などの深刻な人手不足に悩む産業分野を救うべく生まれたのが「特定技能制度」。特定技能制度により、専門知識や技能を持った外国人を受け入れられるようになりました。

建設分野で受入れできる職種は?とび職、塗装も受入れ可能!

建設分野で受入れできる職種は?とび職、塗装も受入れ可能!

建設分野で受け入れができる職種は拡大され、建設業許可工事業として認められている全ての職種で受け入れが可能になりました。建設分野で受け入れ可能な職種の区分は、以下の3種に分けられています。

  1. 土木
  2. 建築
  3. ライフライン・設備

以前は細かな区分があり受け入れのできない職種もあったのですが、人手不足の解消という大きな目的のために3種に統合され、受け入れ可能な職種が拡大されました。

これまでは特定技能の建設業に従事していたのに特定技能では受け入れができないというケースがありましたが、建設業での全ての作業で特定技能への移行が可能に。これまで移行ができなかったとび職や塗装なども、特定技能として受け入れができるようになったため、幅広い外国人の受け入れが可能になりました。

【特定技能外国人】就労の条件は?試験合格は必須!

【特定技能外国人】就労の条件は?試験合格は必須!

建設分野での受け入れがしやすくなってきていますが、特定技能外国人として建設分野で働くためにはいくつかの条件があります。就労の条件について、以下の3つのポイントを覚えておきましょう。

  1. 建設分野特定技能外国人1号評価試験に合格!
  2. 2種の日本語試験のいずれかに合格!
  3. 技能実習2号修了者は試験が免除!

特定技能外国人は、技能試験と日本語試験に合格しなければなりません。しかし、試験が免除される条件もあるので知っておくと便利。それぞれの条件について、詳しく解説します。

建設分野特定技能1号評価試験を受けて合格!

建設分野で特定技能外国人として就労するためには、建設分野特定技能1号評価試験に合格しなければなりません。建設分野での業務区分が3つに統合されたことに伴い、建設分野特定技能1号評価試験も「土木」「建築」「ライフライン・設備」の3種に分けられました。特定技能1号評価試験には、学科試験と実技試験の両方があります。

【学科試験】

  • 30問
  • 60分
  • 〇×形式および2~4択
  • 合計点の65%以上で合格

【実技試験】

  • 20問
  • 40分
  • 〇×形式および2~4択
  • 合計点の65%以上で合格

どちらもCBT方式で、コンピューターに表示された設問にマウスやキーボードで答えるもの。海外での受験も可能ですが、日本でも全国各地で頻繁に試験が実施されているので、準備が整い次第受験して合格を目指しましょう。

2種の日本語試験のいずれかを受けて合格!

建設分野で就労するためには、建設分野特定技能1号評価試験と日本語試験の両方に合格する必要があります。受けるべき日本語試験は、以下の2種のどちらかです。

  • 国際交流基金日本語基礎テスト
  • 日本語能力試験(N4以上)

国際交流基金日本語基礎テストはJFT-Basicと呼ばれるテストで、国内外で開催されています。CBT方式で、受験費用は7,000円。特定技能を取得するためには、基本的な日常生活に使う日本語が理解できる「A2」レベルをクリアすることが必須です。

日本語能力試験はJLPTと呼ばれるテストで、毎年7月と12月の年2回開催されています。マークシート方式で、受験費用は7,500円。特定技能を取得するためには、基本的な日本語を理解できる「N4」レベルをクリアすることが必須です。

どちらも難易度は同程度ですが、JFT-Basicは受験の機会が多く、試験結果がすぐに分かるため人気があります。自分に合った日本語試験を受けて、特定技能の取得を目指しましょう。

    技能実習2号修了者は試験が免除される!

    建設分野で特定技能を取得する1つめのルートは、技能評価試験と日本語試験の両方に合格することです。しかし特定技能の取得には、もう1つのルートがあります。それは技能実習2号を良好に修了すること。技能実習2号を良好に修了した者は、技能評価試験と日本語試験の両方が免除されます。

    技能実習2号を良好に修了」とは、技能評価試験には合格していないものの技能実習中の生活態度や技能取得状況、出勤状況などが良好だと評価調書により認められていることをいいます。つまり、技能実習を真面目に受けていることで、試験を受けずに特定技能1号への移行ができるということ。技能実習からの移行を考えている実習生は、そのまま特定技能を取得して引き続き5年間の就労ができる可能性があります。技能実習生は必ずしも技能評価試験と日本語試験を受ける必要はないので、まずは真面目に働くことを考えましょう。

    【受入れ機関】雇用の条件は?国土交通省認定が必要!

    【受入れ機関】雇用の条件は?国土交通省認定が必要!

    建設分野での雇用の条件は、他の分野とは異なります。建設業は失踪率が高く、建設業で働く技能実習生が他の建設現場で不法労働の状態で働いていることも多くありました。そのため、しっかりとしたルールが必要で、ルールを守れない企業は排除していくことになりました。

    こうした問題により、建設分野では特定技能を受け入れるときには出入国管理庁から在留資格を受け取る前に受入計画を作成し、国土交通省に認定されることが必須になりました。そして認定を受けたあとにもきちんと受入計画どおりに雇用が行われているか確認を受けることも義務付けられたのです。

    建設分野での雇用は面倒なように思えますが、受入れ企業がきちんと認定を受けるようになったことで信頼感が高まり、建築分野でも技能実習生から特定技能への移行が認められるようになったのです。

    受入計画の認定基準は?月給や人数枠についても解説!

    受入計画の認定基準は?月給や人数枠についても解説!

    建設分野で特定技能外国人を受け入れるためには、受入計画を事前に作成して国土交通省に認定される必要があります。受入計画が認定されるための6つのポイントと注意点は、以下のとおりです。

    • ①建設業法第三条の許可を得ている
    • ②建設キャリアアップシステムに登録済み
    • ③JACに直接的または加入している
    • ④外国人労働者の総数に気を付ける
    • ⑤時給ではなく月給制で受け入れる
    • ⑥日本人と同等の給料と昇給を受ける
    • その他にも細かな条件あり!

    受入計画の認定基準を知ることで、受入れをスムーズに行えるようになるはず。月給や人数枠など具体的な基準についても解説するので、参考にしてくださいね。

    ①建設業法第三条の許可を受けている

    受入れ企業は、まずは建設業法大三条の許可を得る必要があります。必要なものは、以下のとおりです。

    • 建設業許可番号(受入計画に記載するため)
    • 建設業許可通知書(許可通知書又は許可証明書)の写し

    建設業法の許可は、受入れ企業が安心して下請け契約ができるように行うもの。500万円以上の建設工事を請け負う際には建設業法の許可が必要になり、主任技術者の配置や請負契約の適正化といった義務が発生します。500万円以内の木造工事などの軽微な建築工事を除いたすべての工事に建設業法の許可が必要なので、まずは各都道府県で建築許可を申請し、都道府県知事に建築許可をもらっておきましょう。

    ②建設キャリアアップシステムに登録済み

    建築分野の特定技能外国人を受け入れるために、受入れ企業は建設キャリアアップシステム(CCUS)に登録しておかなければなりません。CCUSは、建設業を若い世代に安心して就労してもらうようにと作られたシステム。建設業の給料のピークは40代後半と若く、本人の経験やスキルが正当に評価されていませんでした。CCUSに技術者の資格や社会保険加入状況、就労履歴などを登録することで、経験やスキルに応じた賃金が払われるようになり、企業側としても成長できる環境が整います。

    CCUSへの登録は、インターネットか認定登録機関で申請することができます。事業者と技術者の両方を登録する必要があり、事業者を始めに登録するとスムーズに申請ができます。登録すると、CCUSカードが発行されます。資格や就労履歴の見える化により、特定技能外国人は建設分野で適正に働きやすくなります。インターネット環境がある場合はネット登録が楽なので、さっそく登録しておきましょう。

    ③JACに直接的または間接的に加入している

    受入れ機関は、一般社団法人建設技能人材機構(JAC)又は、JACの正会員である建設業者団体への加入が必要です。つまり、JACの賛助会員となるかJACの正会員である建設業者団体の会員となるかを選択できます。なお、登録支援機関の加入は任意です。JACに直接的または間接的に加入を済ませたら、会員証明書を入手しましょう。会員証明書は、建設特定技能受入計画の認定申請に必要です。

    JACの会員になるには、以下の費用が必要です。

    • 正会員:建設業者団体が定める会費(団体によって異なる)
    • 賛助会員:24万円/年

    JACの賛助会員として認められるまでには、加入申請から1ヶ月半程度がかかります。本会員の場合は各建設業者団体により異なりますが、1ヶ月半~2ヶ月ほど余裕を見て申請を行っておくと良いでしょう。

    ④外国人労働者の総数が常勤の職員人数を超えない

    建設業の受け入れに関わらず、特定技能ビザで外国人を受け入れる場合には、外国人労働者の総数が常勤の職員人数を超えてはいけません。例えば社員が20名の会社の場合は、外国人労働者の受け入れは20名が上限です。外国人労働者には、1号特定技能外国人の他に技能実習生と外国人建設就労者が含まれます。つまり、特定技能ではない外国人労働者も数に入るので、外国人労働者が日本人労働者の数を超えてはいけないのです。

    これは、外国人労働者1人につき1人の常勤雇用者が指導役としてつくために定められたもの。支援が必要な外国人労働者を適切に育成するために守らなくてはならなりません。受入れ企業で多くの外国人を雇用している場合や、受入れ企業の常勤人数が少ない場合は、外国人労働者の数が多すぎないかチェックしておくことが大切です。

    ⑤時給ではなく月給制で受け入れる

    建設業の特定技能外国人は、時給や日給ではなく月給制で受け入れる必要があります。月給制で安定的に賃金が入るようにすることで、技術者は安心して働くことができます。天候不良や現場の調整で働けない場合にも、1日の60%分の給料を支払うことが義務付けられています。

    建設業は天候に左右されやすいもの。雨が降ったら働けないだけでなく給料がもらえないのでは、安心して働くことができません。建設業で働く外国人が離職してしまわないように、月給制での受け入れと休業手当を徹底しましょう。もし同じ企業で働く日本人就労者が時給制だったとしても、特定技能外国人には月給制にしなければならないことを覚えておきましょう。

    ⑥日本人と同等の給料と昇給を受ける

    建設業の特定技能外国人には、同じ受け入れ機関で働く日本人と同等の給料と昇給を受ける必要があります。受入計画認定時には、下記の3つの賃金と比較して適正な賃金が払われていることを証明します。

    • 同等のスキルや経験を持つ日本人従業員との賃金比較
    • 同一圏内の建築事業者の求人求職賃金との比較
    • 全国の賃金水準との比較

    さらに、建設業で働く特定技能外国人の給料は地域別最低賃金より1.1%以上上回っていなければなりません。また、受入れ企業は今後の昇給の予定も記載する必要があります。人種や日本語能力に関わらず、建設分野の特定技能外国人にはある程度の賃金が保証されているのです。受入れ企業は、受け入れを行う特定技能外国人がきちんと給料をもらい、スキルや経験にあった昇給を受けることを確認しておきましょう。

    その他にも細かな条件あり!オンライン申請も可能!

    受入計画の認定には、その他にも以下のような条件があります。

    • 賃金などの重要事項の説明が外国人が十分理解できる言語で行われている
    • 受け入れ後に国土交通大臣が指定する講習か研修を受講させる
    • 国や適正就労管理機関による受入計画の適正な履行に関する巡回指導の受入

    受入計画は準備にも時間がかかりますが、審査にも1ヶ月半から2ヶ月ほどかかります。そのため、外国人を雇用するためにできるだけ早く準備を進めることが大切です。国土交通省のホームページからオンラインでの申請もできるので、まずは必要書類の準備に取りかかりましょう。受入計画の作成には手間がかかるので、登録支援機関に業務を委託する方法もあります。初めての特定技能外国人の受け入れでどのように受入計画を作っていいかよく分からない方は、登録支援機関にサポートしてもらうのもおすすめです。

    受入れに必要な費用はどのくらい?年間30~50万が相場!

    受入れに必要な費用はどのくらい?年間30~50万が相場!

    建設分野の受入れは、他の分野の受入よりも費用がかかります。受入れの費用についてのポイントは、以下の2点です。

    • 協議会への加入に30~40万!
    • 登録支援機関への委託料が月2~3万!

    人手不足を補うために作られた建設業での特定技能ですが、受け入れるためにはある程度の費用がかかります。思った以上の費用と負担に感じないために、どのくらいの費用がかかるのかチェックしておきましょう。受入れにかかる費用を知っておくことで、予算が立てやすくなりますよ。

    協議会への加入で30~40万ほどかかる!

    建設分野では、JACが協議会の役割を果たしています。特定技能の協議会は、基本的にはお金がかかりませんが、2023年9月時点で建設分野のみ会費がかかります。かかる費用の目安は、以下のとおりです。

    • 正会員:360,000円/年
    • 賛助会員:240,000円/年
    • 受入負担金:12,500円~25,000円(特定技能外国人1人あたり)

    費用は加入団体により異なりますが、目安は上記のとおり。会費と受入負担金で年間30~40万円がかかります。特定技能の中でも建設分野は特に費用がかさむ分野。費用はある程度かかりますが、日本人と同じくらい活躍してくれる労働者の確保ができるので、受入を検討する価値はありそうですね。

    登録支援機関使用なら支援委託料が月2~3万円ほど!

    特定技能外国人の受入れには、登録支援機関を利用する企業も多いでしょう。登録支援機関を使用する場合は、特定技能外国人1名につき15万~25万ほどの支援委託費用がかかります。また、在留期間更新申請のために1年ごとに2~3万円の費用が発生します。さらに受入れ後も支援を委託する場合は、月2~3万円の費用がかかります。

    もし登録支援機関を使用しないとしても、外国人の管理ができる労働者を雇用しなくてはならず、支援委託料よりも高額な月給が発生します。逆に登録支援機関を利用することで、受入計画の作成などの手間が省け、その分別の仕事をすることができます。ある程度費用はかかるとはいえ、登録支援機関を利用するメリットは大きいでしょう。

    給与は日本人と同等かそれ以上!ある程度の覚悟が必要!

    協議会への加入と登録支援機への支援委託料の他に、受入れ機関は特定技能外国人への給料を支払わなくてはなりません。給与は日本人と同等かそれ以上なので、建設分野の特定技能外国人を受け入れるためには、ある程度の覚悟が必要です。それでも技能実習生よりも柔軟に働ける特定技能外国人は、企業にいてほしい存在。日本にはない視野を持つ外国人と一緒に働いていくうちに、なくてはならない存在になる可能性も高いです。

    費用はかかりますが、受入れのメリットが大きい建設分野の特定技能外国人。積極的に受入れができるように、外国人でも働きやすい環境を整えておくと良いでしょう。

    まとめ|登録支援機関の利用を検討しよう!

    まとめ|登録支援機関の利用を検討しよう!

    受入計画の認定のためにはたくさんの条件があり面倒なように感じますが、それぞれ必要性があって作られた意味のあるものです。とはいえ、全て自社で準備して手続きを行うのは至難の業。知識と経験のある登録支援機関の利用を検討することがおすすめです。登録支援機関を利用することで、受け入れの手続きに関するストレスが解消されますよ。毎月30名以上の新規ご紹介と650名以上の支援実績があるKMTなら、建設分野の特定技能外国人受入れも全力でサポート。ぜひ一度相談し、スムーズな受入れを叶えましょう。

    大房行政書士法人代表 / 株式会社KMT取締役
    行政書士 大房明良 監修

    東京都大田区蒲田に生まれ、大学在学中に訪れたカンボジアで学校建設ボランティアに参加し、貧困問題に興味を持つ。2016年に行政書士事務所を開業し、カンボジア語が話せる行政書士として入管業務を専門に行う。現在は特定技能申請をメイン業務とし、2023年5月現在で申請数は4500件を超える。
    また、取締役を務める株式会社KMTでは、約600名の特定技能外国人の支援を行っている。