特定技能2号を取得できる分野が拡大し、受入れを考えている企業主さんは、「特定技能2号を取得するためにはどのくらいの実務経験が必要?」と疑問に思っているのではないでしょうか。特定技能2号は特定技能1号より熟練したスキルが求められる在留資格。「それならもっと実務経験が必要なはず…」と不安に感じている方も多いでしょう。
そこでこの記事では、特定技能2号で求められる実務経験レベルについて、徹底解説!分野ごとにご紹介するので、受入れの参考にしてみてください。
目次
特定技能2号とは?ポイントを再確認
特定技能2号は、指定された11分野で熟練した技能を必要とする業務に従事する外国人に与えられる在留資格。長年の実務経験などにより、特定技能1号よりも熟練した技能レベルを持つ外国人に与えられます。特定技能2号には、以下のような特徴があります。
- 在留期限の更新が無制限
- 永住権獲得の可能性あり
- より高い技能水準を求められる
- 登録支援機関のサポート不要
- 家族帯同が可能
このように、特定技能2号は多くのメリットがある魅力的な在留資格。長く日本で働きたい外国人や長く外国人を雇用したい企業の方にはぜひとも取得したい資格といえるでしょう。
特定技能2号の取得が可能な高い技能水準があるかどうかは、試験の合格や実務経験などにより判断されます。特定技能1号を修了すると自動的に特定技能2号が取得できるわけではなく、逆に特定技能1号を取得していなくても試験の合格や実務経験により特定技能2号が取得できることもあります。
【分野別】特定技能2号では実務経験が必要?分野別でご紹介
特定技能2号を取得するには、一定の実務経験が必要です。必要な実務経験は就労する分野ごとに決まっています。特定技能2号を取得できるのは、すでに長期ビザのある「介護業」を除いて以下の11分野です。
- 建設業
- 製造業
- 農業
- 漁業
- ビルクリーニング
- 造船・舶用工業
- 自動車整備業
- 航空業
- 宿泊業
- 飲食料品製造業
- 外食業
各分野で求められる実務経験は異なりますが、概ね2~3年以上の実務経験が必要!それぞれの分野で特定技能2号取得に必要な実務経験について、詳しく解説します。
⑴建設業
建設分野では、建設現場において複数の建設技能者を指導しながら作業に従事し、工程を管理する者(班長)としての実務経験が必要です。建設キャリアアップシステム(CCUS)に能力評価基準の設定があるかないかで、必要とされる実務経験が異なります。
CCUSによる能力評価基準の設定のある職種
- 「土木」、「建築」、「ライフライン・設備」業務区分に対応する建設キャリアアップシステムの能力評価基準のある職種に係る能力評価基準のレベル3相当の「就業日数(職長+班長)」
なお、部門により必要な就業日数が異なります。詳細は国土交通省のホームページからチェックしてください。
CCUSによる能力評価基準の設定のない職種
- 「就業日数(職長+班長)が3年(勤務日数645日)以上であること」
CCUSによる能力評価基準の設定のある職種の場合は、1年以上の実務経験でOKなものもあるので、職種によっては実務経験が短くても特定技能2号を取得することができます。
⑵製造業
製造分野に必要な実務経験は、3年以上です。具体的には、以下の内容での実務経験が必要になります。
- 日本国内に拠点を持つ企業(日本国内に登記している本店または主たる事務所などがある企業)の製造業の現場における3年以上の実務経験
期間は3年以上と長めですが、班長などのリーダーとしての実務経験は必要ありません。実務経験証明書は、製造分野特定技能2号評価試験を受けるなら試験の受験前に提出が必要、受けずに技能検定1級を取得するなら、出入国在留管理庁への届出の提出のときに提出する必要があります。
2号評価試験ルートにしても技能検定ルートにしても実務経験証明書は必要なので、製造分野で特定技能2号を受入れるなら用意しておくと良いでしょう。証明書のフォーマットは、製造分野のポータルサイトからダウンロードできます。
⑶農業
農業分野には「耕種農業」と「畜産農業」があります。農業分野で特定技能2号を取得するには、以下のいずれかの実務経験が必要です。
- 耕種農業または畜産農業の現場において複数の従業員を指導しながら作業に従事し、工程を管理する者としての2年以上の実務経験
- 耕種農業または畜産農業の現場における3年以上の実務経験
つまり、管理者としてなら2年以上の経験、管理者でない一般労働者の場合には3年以上の実務経験が必要ということです。管理者や指導者とは、自然条件や家畜の個体や畜舎環境の変化に応じて自らの判断により農作業を行うとともに、2名以上の作業員を指導・監督し、作業工程を管理する人物のことをさします。
特定技能2号を取得予定の外国人が管理者なのか管理者でないのか、確認しておくと良いでしょう。
⑷漁業
漁業には「漁業」と「養殖業」があります。漁業分野で特定技能2号を取得するには、以下の実務経験が必要です。
漁業
- 漁船法上の登録を受けた漁船において、操業を指揮監督する者を補佐する者又は作業員を指導しながら作業に従事し、作業工程を管理する者としての実務経験を2年以上有すること
養殖業
- 漁業法及び内水面漁業の振興に関する法律に基づき行われる養殖業の現場において、養殖を管理する者を補佐する者又は作業員を指導しながら作業に従事し、作業工程を管理する者としての実務経験を2年以上有すること
いずれの職種も、リーダーの補佐または作業員の指導をする主体的な管理者として2年以上の実務経験が求められます。実務経験の有無が分かる書類は、2号漁業技能測定試験の受験に必要です。
なお、特定技能2号の取得にはほとんどの分野で日本語試験への合格は必要ありませんが、漁業では「日本語能力試験」N3以上が必要です。
⑸ビルクリーニング
ビルクリーニング分野で特定技能2号を取得するには、以下の実務経験が必要です。
- 特定建築物(建築物衛生法第2条第1項)の建築物内部の清掃または建築物清掃業(建築物衛生法第12条の2第1項第1号)、建築物環境衛生総合管理業(建築物衛生法第12条の2第1項第8号)の登録を受けた営業所が行う建築物(住居を除く。)内部の清掃に、複数の作業員を指導しながら従事し、現場を管理する者としての2年以上の経験
なお、以下のすべての業務に従事している経験が2年以上ある必要があります。
- 別表の「1」を日常的に実施していること
- 別表の「2」の(2)、「3」の(2)及び(3)の業務を定期的に実施していること
- 別表の「2」の(1)、(3)、(4)、(5)、「3」の(1)、「4」の(1)の中から3つ以上の業務を定期的に実施していること
また、実務経験の対象期間は、労働時間が週30時間以上であることもビルクリーング分野の特定技能2号取得条件のひとつとなっています。
⑹造船・舶用工業
造船・舶用工業分野で特定技能2号を取得するには、以下の実務経験が必要です。
- 造船・舶用工業において複数の作業員を指揮・命令・管理する監督者としての実務経験を2年以上
ここでいう「監督者」とは、グループ長やグループリーダーなどのことを指します。例えば、自らのグループの各従業員への作業指示を出したり、制作物の確認をしたり、安全確保のための設備や作業場環境の点検をしたりといった作業を行いながら、造船・舶用工業の業務に従事した経験が2年以上必要です。
実務経験の証明は、造船・舶用工業分野特定技能2号試験受験のときに必要になります。「2号特定技能外国人に求められる実務経験に係る誓約書(受験者用)」を提出することで、 造船・舶用工業分野特定技能2号試験が受けられるようになります。誓約書の様式は、法務省のホームページからダウンロードできます。
「2号特定技能外国人に求められる実務経験に係る誓約書(受験者用)」はこちら
特定技能2号試験を受けずに技能検定ルートで特定技能2号を取得する方は、実務経験証明書を出入国在留管理庁への届出の提出のときに提出しましょう。
「造船・舶用工業分野2号特定技能外国人に求められる実務経験に係る証明書」はこちら
⑺自動車整備業
自動車整備業分野で特定技能2号を取得するには、合格した試験により必要な実務経験が定められています。
「自動車整備分野特定技能2号評価試験」合格の場合
- 道路運送車両法第78条第1項に基づく地方運輸局長の認証を受けた事業場での3年以上の経験
「自動車整備士技能検定試験2級」合格の場合
- 実務経験不要
自動車整備分野特定技能2号評価試験に合格した場合は、3年以上の実務経験が必要ですが、自動車整備士技能検定試験2級に合格した場合は特定技能2号取得に必要な熟練した技能があると認められるため、実務経験が不要。技能検定への合格は、特定技能2号取得のために実務経験が必要ない珍しいルートです。
ただ、自動車整備分野特定技能2号評価試験を受けて合格するのがたいていの自動車整備業2号取得ルート。一般的には3年以上の実務経験が必要と頭に入れておくと良いでしょう。
⑻航空業
航空業には、「空港グランドハンドリング業務」と「航空機整備業務」があります。航空業分野で特定技能2号を取得するには、以下の実務経験が必要です。
空港グランドハンドリング業務
- 空港グランドハンドリング現場において技能者を指導しながら作業に従事した実務経験
航空機整備業務
- 航空機整備業務においては、現場において専門的な知識・技量を要する作業を実施した実務経験
なお、ここでいう「実務経験」とは航空会社や降雨空気整備会社で国家資格整備士等の指導・監督の下、ドック整備や材料・部品等の領収検査等、機体、整備品などの専門的・技術的な整備業務に3年以上従事したことをいいます。
そのため、航空業には3年以上の実務経験が必要ということになります。
⑼宿泊業
宿泊業分野で特定技能2号を取得するには、以下の実務経験が必要です。
- 宿泊施設において複数の従業員を指導しながら、フロント、企画・広報、接客、レストランサービス等の業務に2年以上従事した実務経験
ここでいう「実務経験」とは、例えば同僚や部下などの従業品への作業指示を行いながら、宿泊業における業務に従事した経験のことをいいます。実務経験証明書は、宿泊分野特定技能2号評価試験を受験するときに提出する必要があります。そのため、試験前日までの実務経験が2年以上必要。実務経験の期間が足りているか、前もって確認しておきましょう。
実務経験証明書は、一般社団法人宿泊業技能試験センターのホームページからダウンロードできます。
⑽飲食料品製造業
飲食料品製造業分野で特定技能2号を取得するには、以下の実務経験が必要です。
- 複数の作業員を指導しながら作業に従事し、工程を管理する者としての実務経験を2年以上
「複数の従業員」とは、2名以上の技能実習生、アルバイト従業員および特定技能外国人のことをさします。また、「工程を管理する者」とは、管理業務を補助する者のことで、担当部門長やライン長、班長などのような役職を想定しています。
つまり飲食料品製造業では、2名以上の従業員を指導しながら作業に従事した実務経験が2年以上必要ということ。技能実習生やアルバイト、特定技能外国人に業務を教えながら働く経験を積んでいる期間は、実務経験期間とみなされます。
⑾外食業
外食業分野で特定技能2号を取得するには、以下の実務経験が必要です。
- 食品衛生法の営業許可を受けた飲食店で、複数のアルバイト従業員や特定技能外国人等を指導・監督しながら接客を含む作業に従事し、店舗管理を補助する者(副店長、サブマネージャー等)としての2年間の経験
2年間の指導・監督を行った実務経験の確認により、特定技能2号を取得予定の外国人が飲食店で複数のアルバイト従業員や特定技能外国人等を指導・監督しながら作業に従事し、店舗管理を補助する能力もあると認められます。
なお、外食業も日本語試験が必要な数少ない分野のひとつ。接客するのに支障のない日本語能力が求められるため、「日本語能力試験」N3以上を取得しておかなければなりません。
まとめ|特定技能2号取得のために早めの準備を!
特定技能2号を取得するためには、一定の実務経験が必要です。特定技能1号として就労していた期間も条件を満たしていれば実務経験に含まれるため、特定技能1号からの移行ならスムーズに特定技能2号を取得しやすいでしょう。特定技能2号として外国人を受入れるのなら、実務経験を積ませたり実務経験証明書を取得したりと早めに準備をしておくことが大切です!
とはいえ、特定技能2号を受入れるのは初めてで手続きの仕方がよくわからない方もいるでしょう。そんなときには登録支援機関に頼ってみるのがおすすめです。特定技能外国人の受入れ実績の高いKMTなら、特定技能2号の受入れも全面サポート。実務経験についてのご相談も受け付けますので、ぜひ一度ご相談ください。