特定技能に移行したいけれど、どのような書類が必要?と悩んでいる企業主さんはいませんか?技能実習や留学から特定技能へ移行するには多くの書類が必要になりますが、個人や法人、分野や国籍ごとにそれぞれ異なる書類が必要です。
そこでこの記事では、特定技能への移行の際に必要な書類について、徹底的に解説します。個人と企業で必要になる書類について、詳しく解説するので、必要書類に不安がある方はぜひチェックしてみてくださいね。
目次
在留資格「技能実習」・「留学」から「特定技能1号」への移行要件
在留資格「特定技能」には1号と2号があります。特定技能は技能実習のように1号⇒2号と連続しておらず、要件を満たせばいきなり特定技能2号になることも可能となっています。とはいえ、在留資格「技能実習」や「留学」から移行する場合は「特定技能1号」へ移行する方が多いです。「特定技能1号」への移行要件について、2つのポイントを確認しておきましょう。
- 移行対象分野は?
- 技能実習は2年10ヶ月以上の実習の良好修了が必要!
特定技能になりたくても要件を満たしていなければ移行が認められないこともあるので、まずは要件をよく確認しておくことが大切です。それぞれの移行要件について、詳しく解説します。
移行対象分野
技能実習と特定技能は異なる制度なので、すべての職種が特定技能に移行できるとは限りません。移行対象となっている技能実習での職種は、以下の8種類です。
- 農業・林業関係(2職種6作業) ※林業 育林・素材生産作業は対象外
- 漁業関係(2職種10作業)
- 建設関係(22職種33作業)
- 食品製造関係(11職種18作業) ※牛豚食肉処理加工業 牛豚精肉商品製造は対象外
- 繊維・衣服関係(13職種22作業)
- 機械・金属関係(16職種32作業) ※アルミニウム圧延・押出製品製造 2作業は対象外
- その他(18職種32作業) ※家具製作、リネンサプライ、ゴム製品製造は対象外
- 社内検定型の職種・作業(1職種3作業)※ボイラーメンテナンスは対象外
移行対象の職種・作業の場合は、特定技能の関連する分野・業務区分に試験免除で移行可能です。特定技能で受け入れ可能な分野は、以下の16分野です(2025年4月時点)。
- 介護
- ビルクリーニング
- 工業製品製造業(旧素形材・産業機械製造・電気・電子情報関連産業)
- 建設業
- 造船・舶用工業
- 自動車整備
- 航空
- 宿泊
- 自動車運送業 ※試験免除となる技能実習なし
- 鉄道
- 農業
- 漁業
- 飲食料品製造業
- 外食業
- 林業 ※試験免除となる技能実習なし
- 木材産業
2024年に4分野(自動車運送業、鉄道、林業、木材産業)が新たに追加されましたが、そのうち鉄道と木材産業は、技能実習から特定技能1号への移行が可能な分野です。林業は、令和6年9月30日に「林業業種」が技能実習2号・3号への移行対象職種に追加されたので、今後特定技能1号への移行ができるようになる可能性が高いです。また、自動車運送業は現時点で対象となる技能実習の職種がないため、別途特定技能評価試験の受験が必要になります。
なお、どの職種がどの分野に対応しているかが分かる対応表は、法務省のホームページで確認できます。
技能実習2号移行対象職種と特定技能1号における分野(業務区分)との関係はこちら
特定技能への移行を考えずに技能実習を始めた方のなかには、今まで実習してきた作業が特定技能に移行可能な分野でないこともあります。技能実習中の職種・作業が特定技能に移行可能かどうか、前もって確認しておきましょう。また、自身の実習の職種・作業が特定技能に移行可能な職種ではない場合で、引き続き日本での就労を希望する場合は、今後就労を希望する特定技能の分野の技能水準を満たすことができるように「特定技能1号評価試験」の受験を検討しましょう。(日本語試験については職種を問わず技能実習2号を良好に修了している場合は免除となります)
技能実習は2年10ヶ月以上の実務が必要となる
特定技能を取得しようしている外国人が技能実習生の場合は、「技能実習時の職種・作業と特定技能1号の業務に関連性が認められること」に加えて「技能実習2号を良好に修了していること」も必要です。「技能実習2号を良好に修了していること」とは、技能実習で2年10ヶ月以上の実務経験があるということです。
特定技能1号の申請時には、「技能実習2号を良好に修了していること」を証明する書類として下記のいずれかが必要となります。
- 技能検定3級/技能実習評価試験専門級の実技試験に合格した合格証
- 技能実習生に関する評価調書
これらの書類を提出して「技能実習2号を良好に修了していること」が認められると、日本語試験と技能試験の両方が免除されます。ただし、技能実習と特定技能を同じ会社で行う場合、所属機関が技能実習法の「改善命令」や旧制度の「改善指導」を過去1年以内に受けていないときは提出省略可能です。
申請に必要な書類①個人(人材)
特定技能への移行をしたい場合は、在留資格変更許可申請を行います。在留資格変更許可申請時の、個人に関する必要書類について以下の5点を確認しておきましょう。
- 顔写真は申請日から3ヶ月以内のものを用意!
- 国内在住の場合は直近年度の税金に関する証明書が必要!
- 技能試験と日本語試験の合格証明書も用意!
- 健康診断表の受診項目も漏れなく確認!
- カンボジア・タイ・ベトナムなら推薦表も必要!
注意点を知っておくことで、申請がスムーズになるはずです。個人に関する必要書類についてのそれぞれの注意点について、詳しく解説します。
顔写真は申請日から6ヶ月以内に発行したものが必要
在留資格変更許可申請書の顔写真は、申請日から6ヶ月以内に撮影されたものが有効です。帽子はかぶらず背景がなく、鮮明な申請人本人の写真を提出しましょう。サイズは縦4cm×横3cmのものを用意し、写真の裏には申請人の氏名を記載しておきます。
その他、影がないもの、正面を向いていないもの、めがねやマスクなどで顔が覆われているもの、中心がずれているものなどは撮り直しの対象となります。
また、最近では画像加工アプリなどで簡単に画像の加工ができますが、本人のイメージとはかけ離れてしまうこともあり、そうなると本人確認ができなくなってしまいます。画像が加工してあると有効な顔写真として認められないので、画像の加工はせずに提出をしましょう。また、スマートフォンのインカメラを使用して撮影をする場合、画像が反転してしまうことがあります。提出時には顔が左右反転していないことを確認しましょう。
直近年度の課税証明書・納税証明書・源泉徴収票(国外の場合不要)
申請人に関する必要書類として、以下の直近年度の税金に関する証明書も必要です。
- 申請人の個人住民税の課税証明書(直近1年分)
- 申請人の住民税の納税証明書(全ての納期が経過している直近1年度分)
- 申請人の給与所得の源泉徴収票の写し
住民税の納税証明書は、課税証明書と同一年度でない場合があるので、発行手続きのときに注意が必要です。課税証明書と納税証明書は、1年間の総所得額、課税額、納税額が記載されているものを用意しましょう。なお、納税緩和措置として「換価の猶予」「納税の猶予」「納付受託」のいずれかを受けているにも関わらず、適用されていることが記載されていない場合は、当該適用に係る通知書の写しを提出しなければなりません。
源泉徴収票の写しは、課税証明書で証明されている内容に対応する年度のものを用意します。源泉徴収票が複数ある場合は、確定申告したうえで税務署の発行する納税証明書(その3)(税目:「①源泉所得税及び復興特別所得税」「②申告所得税及び復興特別所得税」「③消費税及び地方消費税」「④相続税」「⑤贈与税」)も提出する必要があります。
なお、納税緩和措置として「換価の猶予」「納税の猶予」「納付受託」のいずれかを受けているにも関わらず、適用されていることが記載されていない場合は、当該適用がある旨の記載がある納税証明書及び未納がある税目についての納税証明書(その1)の提出も必要です。
税金に関する証明書は、国外からの受入れの場合は不要なので忘れがち。しかし、国内に在留していた方が特定技能に移行したい場合には、提出が必要になります。日本に在留していたときの納税状況を調べるために、税金に関する証明書が必要になることを、頭に入れておきましょう。
特定技能評価試験・日本語能力試験の合格証
特定技能1号を取得するためには、分野ごとの特定技能評価試験と日本語能力試験の両方に合格しなければなりません。
日本語能力試験については、以下のいずれかの書類が必要です。
- 日本語能力試験(N4以上)の合格証明書の写し
- 国際交流基金日本語基礎テストの合格証明書(判定結果通知書)の写し
特定技能1号評価試験と日本語能力試験の合格証明書を用意しましょう。
ただ、技能実習2号を良好に修了している場合は、これらの試験は免除されます。下記のいずれかの書類を用意しましょう。
- 技能検定3級の実技試験の合格証明書の写し
- 技能実習評価試験(専門級)の実技試験の合格証明書の写し
- 技能実習生に関する評価調書
なお、特定技能の受入機関で技能実習生が受入れされていて、受入機関が技能実習法の改善命令や改善指導を過去1年間受けいていない場合は、上記書類の提出も免除されます。特定技能を取得する外国人の状況により、必要な書類は異なります。どの書類が必要なのか、あらためて確認しておきましょう。
健康診断票は入管が定めた項目を受診する必要があります!心電図・X線の受診漏れに注意を!
特定技能への移行には、健康診断表も必要です。必ずしも様式を使用しなければいけないわけではありませんが、参考様式にある項目を全て満たしている必要があります。健康診断表に記載しなくてはならない受診すべき項目は、以下のとおりです。
- 業務歴と既住歴の調査
- 自覚症状と他覚症状の有無
- 身長、体重、BMI、腹囲の検査
- 視力、聴力、握力の検査
- 胸部エックス線検査
- 血圧
- 貧血検査(赤血球数、血色素量)
- 肝機能(GOT、GPT、γ-GTP)
- 血中脂質(LDL コレステロール、HDL コレステロール、血清トリグリセライド)
- 血糖検査
- 尿検査(糖、蛋白)
- 心電図検査
健康診断表の参考様式は、入管のホームページから確認できます。
様式を使う場合は、印刷して使用しましょう。なお、健康診断表には医師の署名が必要です。
心電図やX線は受診漏れしやすいので、注意しましょう。健康診断表は、申請者の十分に理解できる言語で書かれていなければなりません。もし外国語の場合は、日本語の訳文も添付する必要があります。
推薦票(カンボジア・タイ・ベトナム)
申請人がカンボジア、タイ、ベトナム出身の場合は、「二国間取決において定められた遵守すべき手続に係る書類」の提出が必要です。この書類により、申請人が送り出し機関が推薦した人物であることを証明します。
- カンボジア:登録証明書
- タイ:駐日タイ王国大使館労働担当官事務所の認証を受けた雇用契約書(技能実習2号・3号からの移行の場合のみ)
- ベトナム:推薦者表
特にベトナムの場合は、特定技能への在留資格変更許可を申請する前に、駐日ベトナム大使館から推薦者表の承認を受けなければなりません。推薦者表が承認されたら、他の必要書類を揃えて入管に提出し、在留資格変更許可の申請を行います。
ベトナムの方が特定技能に移行するときに必要になる推薦者表については、こちらの記事で詳しく解説しているので、気になる方はチェックしてみてください。
申請人個人に関する必要書類はその他にもあり、揃えるにはある程度時間がかかるので、できるだけ早めの準備が必要です。
申請人個人に関する「特定技能1号」への移行に必要な提出書類一覧表はこちら
申請に必要な書類②企業
続いて、在留資格変更許可申請時の受入れ企業に関する必要書類について以下の4点を確認しておきましょう。
- 第2表の1か2か3のどれに該当するか確認!
- 既に特定技能外国人を受け入れている所属機関については第2表は省略!
- 各分野での協議会への加入が必要!?
- 建設分野は国土交通省の認定が必要!?
在留資格の変更申請には、書類の簡略化が進んである程度省略できる書類も増えてきました。とはいえまだ、個人に関する書類以外に企業に関する書類もたくさんあります。注意点を知っておくことでスムーズな手続きへとつながるでしょう。それぞれの企業に関する必要書類のポイントについて、詳しく解説します。
第2表の1または2のどちらに該当するか確認しましょう
まずは、第2表の1か2のどちらに該当するか確認しておきましょう。第2表の1に該当するためには、以下の条件を全て満たしている必要があります。
- 過去3年間に指導勧告書の交付を受けていない機関
- 在留諸申請をオンライン申請で行っている
- 各種届出を電子届出で行っている
さらに、以下のいずれかに該当していなければなりません。
- 日本の証券取引所に上場している企業
- 保険業を営む相互会社
- 高度専門職令第1条第1項各号の表の特別加算の項の中欄イ又はロの対象企業(イノベーション創出企業)※対象のイノベーション創出企業はこちら
- 一定の条件を満たす企業等 ※対象の企業はこちら
- 前年分の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表中、給与所得の源泉徴収票合計表の源泉徴収税額が1,000万円以上ある団体・個人
特定技能への移行を考えている受入れ企業は、上記に該当するか確認しておきましょう。もしどれにも当てはまらない場合は、法人であれば第2表の2に該当します。また、どれにも当てはまらず個人事業主の場合は、第2表の3に該当します。令和7年4月1日に改正があり、これまでより第2表の1の使用の基準が厳しくなりました。申請前に再度第2表の1が使用できるかどうかを確認しましょう。
必須条件の3つ目の、電子届出システムとは、本来入管で行う届け出や報告の手続きをオンラインで行うことができるシステムです。利用料は無料で、24時間365日好きなタイミングで利用できます。専用のフォーマットがあり、記載漏れは自動的にチェックしてもらえるため、郵送や持ち込みと比べて手続きがぐんと楽になります。利用者登録に特別な証明書はいらないので、ぜひ登録して手続きをスムーズにすることをおすすめします。
「在留資格変更許可申請」特定技能1号の「(2)所属機関に関する必要書類」を確認し、必要書類の準備をしておきましょう。
既に特定技能外国人を受け入れている所属機関については第2表は省略!
令和7年4月1日以降のルール改正により、所属機関に関する必要書類については、既に特定技能外国人を受け入れている所属機関については第2表の1~3のいずれの書類の提出も不要となりました。ただし、定期届出で、所属機関の書類の提出が必要となります。審査がスムーズに進むように、定期届け出の出し忘れには注意しましょう。
申請時に各分野に定められた協議会への加入が必要!?
特定技能への在留資格変更許可申請時には、基本的には各分野ごとの協議会への加入は必要ありませんでした。従来は例外の分野を除いては、協議会への加入は特定技能外国人の受入れ開始日から4ヶ月以内に行えば問題ありませんでした。
しかし、制度の改正により令和6年6月15日以降の申請では一律に受入機関が協議会の構成員であることの証明書を提出することが必要になりました。申請時に加入しているということは、申請前に加入が必要ということです。
以前は受入れ後に協議会に加入してもOKだったのですが、今後は協議会にあらかじめ加入しておくことが必要です。協議会への加入手続きには2週間以上かかることもあるので、申請時に提出漏れを起こさないように、余裕を持って加入しておくことが大切です。
なお、登録支援機関の協議会への加入義務は、分野ごとに異なります。加入義務がある分野とない分野があるので、各管轄省庁のホームページなどから確認しておきましょう。
建設分野は国土交通省の認定が必要!?
建設分野に移行する場合は、受入機関は在留資格変更許可申請前に国土交通省の認定が必要です。建設業で特定技能への変更申請を行う場合は、国土交通省に受入計画認定申請を行います。技能実習からの移行の場合は、技能実習計画の終了日から数えて6ヶ月前から受入計画認定の申請を行うことができます。
建設分野での受入計画認定申請をしてから認定を受けるまでには、約1ヶ月半~2ヶ月ほどかかります。在留資格変更許可申請時に、「建設特定技能受入計画の認定証の写し」が必要なので、申請前に国土交通省での手続きを済ませておく必要があります。
地方の場合は2ヶ月以上かかることもあるので、在留期間が終わってしまわないようにできるだけ早めに申請をしておきましょう。
在留資格「特定技能」で申請する際は、人材・企業により提出する書類が変わります!
在留資格「特定技能」への変更申請には、必要書類が数多くあります。オンライン申請により手続きが簡略化できるものの、申請の書類が人材・企業により異なり、戸惑ってしまうことも多いでしょう。
そこでおすすめしたいのが、登録支援機関のサポートです。知識の豊富な登録支援機関に特定技能への移行手続きをサポートしてもらうことで、手続きの負担がぐんと軽減されます。特定技能外国人の受入れ実績が高い登録支援機関KMTなら、精一杯受入れ企業をサポートできます。特定技能への移行を考えているなら、ぜひ一度ご相談ください。