「電気・電子情報関連産業」での特定技能外国人の受け入れをしたいけれど、何から手をつけていいのか分からないと悩んでいる方はいませんか?そもそも「電気・電子情報関連産業」とはどんな業種なのかよく分からない方も多いでしょう。

今記事では、特定技能「電気・電子情報関連産業」での受け入れについて、特徴や業務などを徹底解説。特定産業分類や試験の日程、協議会への加入方法などについても紹介します。

電気・電子情報関連産業での受け入れをスムーズに進めたいと考えている方は、ぜひチェックしてみてください。

製造3分野とは?その中でも電気・電子関連産業の特徴は?

外国人労働者の多く働く製造業の中で、経済産業省は3分野を「製造3分野」と定めて人手不足の解消を狙っています。「電機・電子関連産業」も製造3分野のひとつ。製造3分野および電気・電子関連産業を知るうえで重要な4つのポイントを押さえておきましょう。

  1. 製造3分野とは?
  2. 電気・電子関連産業はどんな業種?
  3. 電気・電子関連産業の現状と課題
  4. 対象となる業務13種を紹介

電気・電子関連産業は近年需要が高まっている注目の業種。しっかりと実態を知り、適正な雇用につなげましょう。それぞれのポイントについて、詳しく解説します。

製造3分野とは?素形材産業、産業機械製造業、電子・電機関連産業

製造3分野とは、経済産業省が管轄する以下の3種の業務です。

  • 素形材産業
  • 産業機械製造業
  • 電気・電子関連産業

「素形材産業」は、車の部品やギアなどを作る職種。「産業機械製造業」は、工場の食品自動製造機などの人の補助をする機械を作り、「電子・電機関連産業」はパソコンやスマホなどに使われる電子部品の製造などを行います。

製造3分野は、製造業の深刻な人手不足を解消するために作られたものづくりの鍵を握る業種。飲食料品以外の製造業で構成されています。受け入れには、新設された技術試験の合格と、製造業特定技能外国人受入れ協議・連絡会への加入が必要です。

製造3分野は、生産性がアップしているものの今なお人手不足が続く業種。今後特定技能の受け入れ拡大により、労働生産性の高まりが望まれています。

電気・電子関連産業はどんな業種?

電機・電子関連産業は、2019年に特定技能として受け入れが可能になった分野のひとつです。近年のデジタル化に伴い、大きな進化を遂げているのが特徴。日本経済発展の主軸となる業種といっても過言ではないでしょう。

電機・電子関連産業は、スマホやパソコンなどに使う幅広い機器の電子部品を作る製造業のひとつ。近年では、電気自動車が普及してきたことから、自動車に使う電子部品への需要が高まっています。

現代の日本では、スマホやパソコン、電気自動車など、デジタル製品が不可欠になっています。私たちの暮らしは、電気・電子関連産業に支えられているのです。電気・電子関連産業は今後ますます需要が高まり、日本の人手不足解消への大きな鍵を握る産業となるでしょう。

電気・電子関連産業の現状と課題

電気・電子関連産業は需要が高まっているのにも関わらず、深刻な人手不足は解消されていません。政府は工場のデジタル化や企業へのIT導入など、様々な取り組みを行っていましたが、必要な人材は確保できていないのが現状です。

平成29年度の電気・電子情報関連産業の有効求人倍率は、2.75倍。テクノロジーの進化・導入が追いつかず、働きたい人に対する準備ができていない状況が続いています。

そこで2019年には特定技能の分野として、電機・電子関連産業での受け入れが可能に。基本的な知識と技術を持った即戦力となる外国人を受け入れることで、人手不足の解消へとつなげたい考えです。

特定技能制度を整備して受け入れをどれだけ拡大できるかが、今後の課題となるでしょう。

特定技能「電気・電子関連産業」の対象となる業務は?全13職種を一挙紹介!

特定技能「電気・電子関連産業」で対象となる業務は、以下の13職種です。

  1. 機械加工
  2. 金属プレス加工
  3. 工場板金
  4. めっき
  5. 部品の仕上げ
  6. 機械保全
  7. 電子機器組立て
  8. 電気機器組立て
  9. プリント配線板製造
  10. プラスチック成形
  11. 塗装
  12. 溶接
  13. 工業包装

いずれの業務も、指導者の指示を理解し、又は状況に応じて自ら判断して作業を行うことが求められます。また、各業務に付随する作業も、日本人が同じ業務をするのであれば外国人も行うことが可能です。

各業務に付随する作業の例には、以下のようなものが挙げられます。

  • 原材料や部品の調達・搬送
  • 各職種の前後における工程作業
  • クレーン・フォークリフトなどの運転
  • 清掃や保守管理

なお、雇用形態は直接雇用のみで、派遣で雇用することはできません。

製造3分野は協議会への加入が必須!

電気・電子関連産業を含む製造3分野では、製造業特定技能外国人受入れ協議・連絡会(協議・連絡会)への加入が義務付けられています。以下の5つの加入ステップを確認しておきましょう。

  1. 制度についてしっかり理解
  2. 日本標準産業分類番号をチェック
  3. テンプレートをダウンロード
  4. 企業情報を入力
  5. 会員名簿への掲載を確認

協議・連絡会への加入は、電気・電子関連産業での受け入れで避けては通れない手続き。しっかりと覚えておくことで、慌てることなく加入を済ませることができるはずです。それぞれのステップについて、詳しく解説します。

ステップ1|制度についてしっかり理解する!

電気・電子関連産業を含む製造3分野で特定技能の受け入れを行う場合には、協議・連絡会に加入する必要があります。特定技能外国人を受け入れた日から4ヶ月以内に加入しなければなりません。

加入後は、協議・連絡会が行う一般的な指導、報告の徴収、資料の要求、意見の報告、現地調査などの業務に対し、必要な協力を行うことが義務付けられています。これを怠っていると在留資格が認められなくなることもあるので、注意が必要です。

初めて特定外国人を受け入れる場合には、在留許可申請の時に地方出入国在留管理局に「製造業特定技能外国人材受入れ協議・連絡会の構成員となる旨の誓約書」を提出しなければなりません。2回目以降の受け入れの場合は、構成員であることの証明書が必要です。

ステップ2|対象の日本標準産業分類の番号の細分類に当てはまるか確認する!

電気・電子情報関連産業の特定技能での受け入れができる業務は、日本標準産業分類番号で定められています。受け入れが可能な業務は、以下の3種です。

  • 28 電子部品・デバイス・電子回路製造業
  • 29 電気機械器具製造業(ただし、2922 内燃機関電装品製造業及び素形材産業 – 4 – 分野に掲げられた対象業種を除く。)
  • 30 情報通信機械器具製造業

電気・電子情報関連産業の対象業務は、製造3分野の他の2業種と比べても非常に少なく、限られているのが分かります。受け入れ企業は、自分の業種が上記3種に当てはまることをあらかじめ確認しておきましょう。

上記3つの業務で、特定技能外国人を対象の13職種で働かせることができる企業は、電気・電子情報関連産業で特定技能外国人を受け入れることができます。

ステップ3|テンプレートをダウンロードし、必要情報を記入する!

企業の業務分類と働いてもらう業務内容が特定技能「電気・電子情報関連産業」の対象となることが確認できたら、協議・連絡会への加入準備に取り掛かりましょう。製造3分野のポータルサイトからテンプレートをダウンロードし、必要情報を記入します。

ポータルサイトの協議会加入ページはこちら

証明として提出しなければならない書類は、以下の通りです。

 

  1. 製造品及びその用途が確認できる画像と説明文(※1)
  2. 製造品を生産するために用いた設備(工作機械、プレス機等)の画像及び説明文(※1)
  3. 事業実態を確認できる、直近1年以内の証跡画像(上記①の製造品の納品書、出荷指示書、仕入れ書等)

(ポータルサイトから引用:https://www.sswm.go.jp/entry/reception.html

該当の方は、以下の書類の提出も必要です。

  1. 請負による製造の場合は、『請負契約書の写し』(※2)
  2. 権利等の関係で、製造品等の画像を提出できない場合は、『製造品の画像提出不可の理由書』(様式自由)
  3. その他、製造業特定技能外国人材受入れ協議・連絡会から確認の過程で追加提出の指示があったもの(初回届出時は不要です)

(ポータルサイトから引用:https://www.sswm.go.jp/entry/reception.html

 

ステップ4|フォームの入力画面から企業情報を入力し、申請を行う!

証明書類作成テンプレートをダウンロードし、表示されている全ての項目にチェックを入れると、入会手続きへと進むことができます。フォームの入力ステップは、以下のとおりです。

  1. 法人情報入力
  2. 受入れ事業所情報入力
  3. 特定産業分野情報入力
  4. 入力情報確認
  5. 送信完了

途中で保存ができないので、ポータルサイトで入力サンプルをチェックし、入力がスムーズにできるように準備しておきましょう。

届出は、事業所ごとに行います。同じ会社の異なる事業所で別の特定技能外国人の受け入れをする場合は、2回申請を行う必要があります。一方、同じ事業所で製造3分野の中でも違う分野で2名を受け入れる場合は、1回の申請で済ませることができます。

ステップ5|会員名簿に掲載を確認し、加入完了!

協議・連絡会へ加入すると、経済産業省のホームページ内の会員名簿に氏名が掲載されます。会員名簿への掲載が確認できたら、加入の手続きは完了です。

協議・連絡会への加入は、製造3分野での特定技能外国人の保護と受け入れの地域差をなくすこと。特定技能外国人が心地よく日本で働くため、企業が円滑な受け入れを行うため、そして国の製造分野での労働力を適正に確保するために必要なものです。

特に初めて製造3分野での受け入れを行う企業は要注意。特定技能外国人を受け入れた日から4ヶ月を過ぎて加入が住んでいない場合は、在留資格が不可になってしまうこともあります。特定技能外国人を受け入れたら、すぐに協議・連絡会への加入準備を進めましょう。

電気・電子関連産業で働く人材を探すには?

電気・電子関連産業は、電気自動車の使用拡大に伴いますます需要が拡大している業務。しかし、どのように人材を探せば良いのでしょうか?ここでは、電気・電子関連産業で働く人材探しのポイントを4つに分けてご紹介します。

  1. 日本語試験と評価試験合格が必要
  2. コロナの影響で海外試験が延期
  3. 技能実習2号終了者は試験免除
  4. 帰国困難の特定活動での就職も

製造3分野での特定技能を取得するためにはいくつかのルートがあり、それを知っておくことが人材探しのヒントになるはず。それぞれのポイントについて、詳しく解説します。

日本語の試験と製造分野特定技能1号評価試験への合格が必要!

電気・電子関連産業における特定技能の取得には、日本語の試験と製造分野特定技能1号評価試験(技能試験)の2つの試験に合格する必要があります。技能試験は現地語で行われ、学科試験および実技試験が実施されます。

学科試験は65%以上、実技試験は60%以上が合格基準。合否結果は試験後3ヶ月以内にEメールで送信され、合格して受け入れ機関と雇用契約が結ばれたら、受け入れ機関は合格証明書の交付を申請します。すると受け入れ機関に合格証明書が交付されます。

日本語試験は、コンピューターベースドまたはマークシート方式で、ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程度の能力がテストされます。日本語能力試験のN4以上程度の実力が必要となります。

コロナウイルス感染症拡大で、海外での試験が延期!

製造3分野での特定技能の取得に必要な技能試験ですが、コロナウイルスの感染拡大に伴い、海外での試験が延期になっています。2021年8月22日に行われる予定だったフィリピンでの試験が延期になり、今後の予定は未定。しかし2021年10月現在、他の国々では試験を実施する予定です。

技能試験は、溶接と溶接以外の18区分に分けて行われます。試験日程は以下のとおりです。

【溶接以外の18区分】

  • インドネシア会場:2021年10月26日(火)・27日(水)・28日(木)(受付終了)
  • タイ会場:2021年11月7日(日)
  • 国内会場:2021年11~12月、2022年1~2月を予定

【溶接】

  • 名古屋会場:2021年11月2日(火)(受付終了)
  • 川崎会場:2021年12月13日(月)・2022年1月26日(水)
  • 仙台会場:2021年12月16日(木)
  • 広島会場:2021年12月24日(金)

国内会場が続々と再会予定です。ただ、新型コロナウイルスの感染状況などにより予定が変更されることもあるので、製造3分野のポータルサイトを随時チェックしておきましょう。

技能実習2号修了者は試験が免除!

電気・電子関連産業での受け入れには試験の合格が必須かというと、そういうわけではありません。技能実習2号を良好に終了した方は、試験が免除になります。技能試験だけでなく日本語試験も免除になるので、技能実習生からの移行が楽。実際に、現在の製造業での労働者はほとんどが技能実習生からの移行です。

ただし、技能実習からの移行は技能試験は業務内容が技能実習生の時に従事していたものと根幹となる業務に関連性のあるものの場合に限り免除になります。

既に3年間技能実習生として働いた外国人は、経験と知識のある人材。テストを受ける必要のない即戦力となる人材なので、受け入れ企業としても安心して受け入れることができるでしょう。

帰国困難の特定活動で、働きながら試験合格を目指すことも可能

では、業務内容が技能実習生の時に従事していたものと違っていた場合には電気・電子情報関連産業で受け入れることは不可能なのでしょうか?実は、新型コロナウイルスの感染拡大により帰国困難になった技能実習生には、「特定活動」という在留資格が与えられます。

「特定活動」は、帰国困難者への特別措置として認められた在留資格。技能実習生の場合は6ヶ月就労可能な在留期間が与えられます。特定活動中は、従来と同じ業務で働かなければなりません。

この特定活動中に、前分野で働きながら電気・電子情報関連産業の技能試験の勉強をすることも可能。企業は、帰国困難者の中から電気・電子情報関連産業で働きたい人材を探すこともできます。

まとめ|特定技能を活用して優秀な戦力を確保しよう!

需要が高まりながらも人材が不足している電気・電子情報関連産業。積極的に外国人を雇用することで、優秀な戦力を確保することができます。3年間技能実習生として外国人を受け入れてきた企業なら、その後特定技能で5年間働いてもらえるのは嬉しいですね。

特定技能制度は、今後ますます定着してくるであろう在留資格。取り入れられないかと考えている方は、いち早く活用して即戦力となる外国人を受け入れてみましょう。登録支援機関に受け入れ業務を任せたいなら、実績豊富なKMTがサポート致します。お気軽にご相談ください。

大房行政書士法人代表 / 株式会社KMT取締役
行政書士 大房明良 監修

東京都大田区蒲田に生まれ、大学在学中に訪れたカンボジアで学校建設ボランティアに参加し、貧困問題に興味を持つ。2016年に行政書士事務所を開業し、カンボジア語が話せる行政書士として入管業務を専門に行う。現在は特定技能申請をメイン業務とし、2023年5月現在で申請数は4500件を超える。
また、取締役を務める株式会社KMTでは、約600名の特定技能外国人の支援を行っている。