「特定技能の漁業は派遣雇用で受け入れ可能だと聞いたけど、本当?」「うちでも雇えるかな?」と悩んでいる方はいませんか?特定技能の漁業は、派遣雇用が可能。しかし、具体的にどのように受け入れるのかもう少し知っておきたい方も多いでしょう。
今回は、漁業で特定技能外国人を受け入れる前に知っておきたいポイントを徹底解説。仕事内容や受入れ企業の要件、雇用できる人材や試験などについても詳しく説明します。特定技能「漁業」について詳しくなり、受け入れの準備を整えましょう。
目次
特定技能「漁業」分野ができた背景について
漁業の就業者が年々減少していることを受けて、国内では人材確保のために以下のような取り組みが行われてきました。
- 女性や高齢者などの人材活用
- 漁業就業相談会や漁業体験
- 長期研修
- 次世代人材投資
- 経営技術向上支援
しかし、漁業就業者はなおも減少し続け、有効求人倍率も漁船員は2.52 倍(船員職業安定年報)、水産養殖作業員は2.08 倍(職業安定業務統計)と働き手が足りない状況です。雇われ就業者の約2割を占めるのが65歳以上。高齢者の方々が引退していくことを考えると、人手不足の状況は変わらないと考えられています。
そこで特定技能に「漁業」が認められ、外国人材を積極的に受け入れることで人手不足を解消しようという試みが生まれたのです。
特定技能の漁業で出来る仕事とは?「漁業」と「養殖業」!
人手不足解消の鍵を握る特定技能。漁業分野で担当できる分野は、以下の2種です。
- 漁業(漁具の製作・補修、水産動植物の探索、漁具・漁労機械の操作、水産動
植物の採捕、漁獲物の処理・保蔵、安全衛生の確保等)
- 養殖業(養殖資材の製作・補修・管理、養殖水産動植物の育成管理、養殖水産
動植物の収獲(穫)・処理、安全衛生の確保等)
また、同業務の日本人が通常従事することとなる以下のような関連業務を付随する業務として行うことは差し支えありません。
- 漁業に係る漁具の積込み・積下し、漁獲物の水揚げ、漁労機械の点検、船体の補修及び自家原料を使用した製造・加工・出荷・販売等
- 養殖業に係る梱包・出荷及び自家原料を使用した製造・加工・出荷・販売等
受入れ企業の要件は?4か月以内に水産庁の協議会加入
漁業分野で日本人と同じように業務が担当できる特定技能。受入れ企業側に何か要件はあるのでしょうか?受入れ企業が、漁業分野で特定技能外国人の受け入れを行ったあとにすることは、協議会への加入です。
受入れ機関は、協議会への加入が必須。特定技能外国人を受け入れた日から4ヶ月以内に水産庁の協議会に加入しなければなりません。そして協議会への加入には、漁業団体への加入が必要です。協議会加入に必要な漁業団体について、詳しく解説します。
漁業団体への加入が必須なので注意しよう!
協議会に加入するためには、漁業団体への加入が必要です。以下のいずれかの漁業団体に所属しておく必要があります。
- (一社)大日本水産会
- 全国漁業協同組合連合会
- (一社)全国いか釣り漁業協会
- (一社)全国近海かつお・まぐろ漁業協会
- (一社)全国底曳網漁業連合会
- (一社)日本定置漁業協会
- (一社)全国まき網漁業協会
- 全国かじき等流し網漁業協議会
- 全国金目鯛底はえ縄漁業者協会
- 全国さんま棒受網漁業協同組合海土町
- (一社)全国海水養魚協会
- (一社)全日本持続的養鰻機構
- 全国真珠養殖漁業協同組合連合会
- 全国内水面漁業協同組合連合会
- 全国海苔貝類漁業協同組合連合会
なお、漁業分野では登録支援機関の協議会への加入義務はありません。協議会への加入申請用紙は、水産省のホームページからダウンロード可能。上記の所属漁業団体に申請用紙を提出することで、加入手続きができます。
どういう人材が受入れ可能なのか?元実習生が多数。
漁業分野でも、他分野と同様特定技能の在留資格を取得しているのは元技能実習生がほとんどです。しかし、元技能実習生でない外国人も特定技能を取得することは可能。以下のような方が受け入れ可能です。
- 漁業の元技能実習生
- 技能と日本語の試験合格者
元技能実習生でない場合は、漁業の技能試験と日本語試験に合格する必要があります。受入れ機関としてどんな人材が受け入れ可能なのか、受け入れの条件を把握しておくことは大切。それぞれの人材について、詳しく解説します。
①漁業の元技能実習生!経験者のため即戦力となる
元技能実習生は、漁業の「漁業」と「養殖業」どちらの業務でも技能試験と日本語試験が免除になります。それは、元実習生は一定の専門性と技能を持ち、即戦力となる知識と経験、日本語能力があると判断されるから。試験なしで新たな在留資格を手に入れることができるため、受け入れやすい人材といえるでしょう。
元技能実習生は特定技能を取得したら、あと5年日本で就労することができます。元技能実習生は、まさに即戦力となる有能な人材。受入れ企業としても、技能実習生として漁業に就労していた経験が3年間ある外国人なら、信頼感を持って受け入れることができるでしょう。
漁業で働いていた元技能実習生を探せば、雇用できる方が見つかりやすいはずです。
②技能と日本語の試験合格者
元技能実習生でない方が特定技能「漁業」を取得する場合は、技能試験と日本語試験の両方に合格しなければなりません。以下の2種の試験の合格を目指します。
- 技能試験:「漁業技能測定試験(漁業または養殖業)」
- 日本語能力試験:「国際交流基金日本語基礎テスト」又は「日本語能力試験(N4以上)」
技能試験は日本語で行われ、筆記試験と実技試験があります。実施方法は、CBT(コンピューター・ベースド・ライティング)方式又はペーパーテスト方式。国内試験は、なんらかの在留資格を持っている外国人のみが受験できます。
技能実習からの移行に比べて試験合格により特定技能を取得する方は少ないですが、しっかり準備してテストに合格し、新たに特定技能の在留資格を得るという方法もあります。
特定技能「漁業」の試験について
漁業技能測定試験(漁業または養殖業)の試験の詳細は、以下のとおりです。
- 水準:技能実習評価試験(専門級)と同等程度
- 方式:学科試験は真偽式、実技試験は多肢選択式
学科試験では漁業または養殖業に関する知識と業務上必要になる日本語能力が問われ、実技試験では図やイラストを見て適切なものを判断することで業務上必要となる技能が判定されます。
2021年11月時点で、インドネシアと日本での試験が実施予定。インドネシアではペーパーテスト方式、日本ではCBT方式で行われます。詳しい日程などは、大日本水産会のホームページに掲載されているので、随時チェックしてみてください。
日本国内では、「漁業」の試験は未定ですが「養殖業」の試験は2021年11月30日まで実施しています。
特定技能は直接雇用が原則!漁業・農業分野のみ派遣OK
特定技能では、直接雇用が原則です。しかし、漁業と農業分野に限り、派遣雇用が認められています。それは、繁忙期と閑散期がはっきりした業種だから。特に漁業の場合は小さな事業者が多く半島や離島に点々としていることから、閑散期には働けなくなってしまうことがあります。
そこで、直接雇用よりも融通の利く派遣雇用で特定技能外国人の受け入れを行うことが認められ、効率の良い雇用ができるようになりました。これにより繁忙期・漁期などの季節雇用も可能に。閑散期に帰国させた場合でも、帰国中の期間を除いて通算5年間日本に滞在できるので、より長期的な雇用が可能になりました。
繁忙期の半年のみ働いてもらえば、帰国期間も含めて10年間の雇用が可能。良い関係性を築きながら外国人雇用を続けることができるでしょう。
漁業での受入れにおいてよくある質問3選
漁業で特定技能外国人を受け入れてみようかなと考えている企業は、まだいろいろな疑問があるでしょう。ここでは、漁業での受け入れについてよくある質問に回答していきます。今回取り上げる質問は、以下の3つです。
- 個人事業主でも問題ない?
- 賃金はどのくらいに設定すべき?
- 受入れ費用はどのくらい?
漁業での受入れについてよく知っておくことで、後で慌てることもなくなるはず。それぞれの疑問について、詳しく回答します。
個人事業主でも問題ありませんか?
受入れ機関は、個人事業主でも問題ありません。ただし、受け入れを行う特定技能外国人には、国民健康保険及び国民年金に加入させてください。労災保険は必須。民間のもので構わないので、必ず加入させるようにしましょう。
また、個人事業主でも従業員が5人以上の場合は雇用保険にも加入させる必要があるので、ご注意ください。その他、下記の条件を満たしていることも確認しておきましょう。
- 1年以内に特定技能外国人材と同種の業務に従事する労働者を非自発的に離職させていない
- 1年以内に受入れ機関側の責めに帰す事由により、外国人の行方不明者を発生させていない
- 欠格事由(5年以内に出入国・労働法令違反がないこと等)に該当しない
- 雇用契約を継続して履行する体制が適切に整備されている
賃金はどのくらいで設定すればいいのですか?
特定技能外国人は、基本的に最低賃金では雇用できません。特定技能外国人は労働者扱いなので、日本人労働者と同じ賃金設定が必要です。同じ業務で働く4年目の日本人の方と同等の賃金に設定する必要があります。
単に外国人だからという理由のみで賃金設定を低くするのは、重大な差別にあたります。また、技能実習生には時間外労働や休日労働に対する割増賃金が発生しますが、特定技能外国人には発生しません。
もし技能実習生と特定技能外国人が同じ現場で働く場合には、割増賃金の支払いの有無に差をつけてはいけないので、ご注意ください。また、働かせすぎも禁物。労働時間や休憩、休日なども日本人と同じように与え、働きやすい環境づくりを心がけましょう。
受入れ費用はどのくらいかかりますか?
受け入れ企業が特定技能の外国人に関する業務を登録支援機関に委託する場合は、登録支援機関に支援費を支払う必要があります。その金額は企業によって様々ですが、初期費用としてトータル25~30万円が相場となっていると考えて良いでしょう。そのうち、行政書士への支払いに少なくとも10万円がかかります。
また、受け入れに必要な事前ガイダンスや生活オリエンテーションの実施、同行業務も登録支援機関に委託する場合は、それらに関する費用も発生します。費用の相場は以下のとおりです。
- 事前ガイダンス:33,000円
- 生活オリエンテーション:55,000円
- その他の同行業務:5,500円/時間
その他の業務には、入居手続きや銀行口座開設手続きの同行などがあります。弊社では、初回に係るすべての手続き含めて25万円となります。価格設定やサービス内容は企業によって異なるので、どの登録支援機関に委託するのか、費用と照らし合わせながら考えてみましょう。
まとめ|制度を理解して特定技能外国人の受入れを叶えよう!
漁業分野での特定技能は、全ての漁業・養殖業種類で利用可能。一定の基準を満たせば、外国人材を受け入れたことがない方でも利用できます。派遣雇用が可能なので、繁忙期以外の時期に安定した賃金を払えなくなる心配もありません。これまで技能実習生を受け入れたことのない機関でも、特定技能外国人の受入れは可能です!
しかし初めて特定技能外国人を受け入れる機関は、支援計画の作成など手間のかかる業務に手が回らないこともあるでしょう。しかし受入れに必要な各種支援は、登録支援機関に委託することができます。
KMTでは、支援に関わる業務の全部をサポートすることも可能。漁業での特定技能外国人受入れを考えているのなら、特定技能外国人の受入実績が豊富な弊社に、ぜひ一度ご相談ください。