特定技能で外国人を受け入れる時には、協議会に加入しなければなりません。しかし、「協議会って何?」という企業の方も多いはずです。特に、受け入れる分野の協議会について理解しておかないと、受け入れが心配になりますね。

そこで今記事では、「漁業」「飲食料品製造業」「外食業」の3分野の協議会について徹底的に解説します。各分野での協議会への加入手続きや加入方法まで紹介するので、協議会への加入手続きがスムーズになりますよ。これから漁業・飲食料品製造業・外食業で特定技能外国人を受け入れる企業の方は、ぜひ参考にしてみてください。

在留資格「特定技能」において協議会が果たす役割は?

特定技能を取得する企業には、協議会への加盟が義務付けられています。協議会は、特定技能外国人を適正に保護するために作られた機関。必要に応じて受け入れ機関への調査や指導も行い、特定技能として働く外国人が働きやすいように調整します。

また、各業種での人手不足を解消するのも大切な役割のひとつ。特定技能は、労働力不足を解消するのが目的なので、受け入れを行う機関が受け入れをスムーズにできるようにすることも大切です。そのため、協議会は首都圏以外の地域でも均一に人手が行き渡るように調整する役割も果たしています。

協議会は業種ごとに設置されており、管理しているのは各業種の管轄機関です。手続きも各業種の管轄機関で行います。

漁業・飲食料品製造業・外食業とは?各分野の協議内容は?

「漁業」「飲食料品製造業」「外食業」とはどんな分野なのでしょうか?まずは、各分野の概要と協議内容について、押さえておきましょう。

  • 漁業|受け入れ体制を整える!
  • 飲食料品製造業・外食業|人手不足の解消!

基本的には分野ごとに設置されている協議会ですが、飲食料品製造業と外食業は共同で設置されています。各分野で協議内容が異なるのことも押さえておきたいポイント。それぞれの分野の協議会について、詳しく解説します。

漁業|受け入れ事例の周知や特有の事情に応じた措置!

漁業分野の協議会は、「漁業特定技能協議会」と言われます。目的は、受け入れ事例の周知や漁業分野の実情を踏まえたうえで適正に受け入れを行うこと。構成員になることで密に情報が共有でき、他の構成員との連携をはかることもできます。

漁業特定技能協議会ではより細かな協議を行うために業務ごとに分科会が設置され、協議を重ねています。

  • 漁業特定技能協議会・漁業分科会
  • 漁業特定技能協議会・養殖業分科会

「漁業」は、魚介類を捕獲したり養殖したりして売る仕事です。捕った魚介類を加工して販売するのは「水産加工業」。特定技能では水産加工業は「漁業」ではなく「飲食料品製造業」になるので注意が必要です。

飲食料品製造業・外食業|人手不足への対応がメイン!

飲み物や食べ物を加工・製造する「飲食料品製造業」には、家の外で食事の提供を行う「外食業」と同じ協議会が設置されています。協議会は「食品産業特定技能協議会」と呼ばれ、制度の周知の他地域ごとの人手不足の状況を把握し、必要な措置を取ることが主な目的です。

特に飲食料品製造業は、飲食料品製造分野の範囲内なら企業や業種を変える転職が可能。大都市への人での集中が懸念されています。そのため、他の地域で働いている特定技能外国人を引き抜くことを自粛することが協議会で決められました。

このように、人手不足解消と制度の秩序を守るための話し合いが行われるのが協議会。受け入れには加盟が義務付けられているので、申し込みを忘れないようにすることが大切です。

協議会加入に必要な手続きとは?申請時期や費用を一挙紹介!

協議会に加入するためには、どんな手続きが必要なのでしょうか?申請はいつするのか、どのくらいの費用がかかるのかを業種ごとにチェックしておきましょう。

  • 漁業|農林水産省水産省
  • 飲食料品製造業・外食業|農林水産省

手続きは管轄する省庁で行います。手続きの概要を知っておけば、いざ受け入れとなった時に慌てずに済みますね。それぞれの分野での手続きについて、詳しく解説します。

漁業|農林水産省水産庁

初めて特定技能外国人を漁業分野で受け入れた受入れ機関は、「漁業特定技能協議会」に加入しなければなりません。加入のタイミングは、特定技能外国人を受け入れた日から4ヶ月以内。加入後は、協議会や協議会の構成員に対して必要な協力を行う義務があります。

漁業特定技能協議会への加入には、費用はかかりません。無料で加入できるとはいえ、4ヶ月以内に入っておかないと在留資格「特定技能」が取り消しになってしまう可能性もあります。受入れが完了したら、忘れずに協議会への加入申し込みを済ませましょう。

手続きに関しては、農林水産省の水産庁の漁政部企画課に問い合わせができます。何か分からないことがあったら、直接確認してみましょう。

  • 電話:03-6744-2340
  • FAX:03-3501-5097

飲食料品製造業・外食業|農林水産省

初めて特定技能外国人を飲食料品製造業か外食業で受け入れる受入れ機関は、「食品産業特定技能協議会」に加入しなければなりません。加入のタイミングは、特定技能外国人を受け入れた日から4ヶ月以内。当面の間入会金や年会費などの費用はかかりません。

受け入れ前には協議会への加入は義務付けられていませんが、受入れ後4ヶ月経って入会が確認できない場合は在留資格の取り消しになる可能性があります。せっかくの受入れがスムーズに進められるように、協議会への加入手続きは早めに済ませておきましょう。

問い合わせ先は、農林水産省の新事業・食品産業部食品製造課。気になることは電話で確認できますよ。

  • 代表:03-3502-8111(内線4162)
  • ダイヤルイン:03-6744-2397

漁業協議会加入の流れは?加入方法を詳しく解説!

それでは、「漁業特定技能協議会」に加入するための具体的な方法を押さえておきましょう。手続きに必要なステップは、以下の3つです。

  1. 申請書の記名と必要書類の準備
  2. 協議会2号構成員に資料を提出
  3. 証明書が届いて手続き完了

始めてしまえば案外簡単なものですが、知っているのと知らないのとでは大違い。加入方法を知っておくとスムーズに手続きが進められるはずです。漁業分野の協議会への加入に必要なそれぞれのステップについて、詳しく解説します。

ステップ1|加入申請書に記名して必要書類を準備!

まずは、【様式第1-1号】の「漁業特定技能協議会1号構成員加入申請書」に必要事項を記入します。加入申請書は、水産庁のホームページでダウンロードできます。

加入申請書はこちら

記入内容の例が【様式第1-2号】の「漁業分野特定技能1号構成員申請内容」に記されているので、参考にしてみてください。記入出来たら、必要書類を準備します。

雇用契約及び支援計画の概要(在留申請の関係書類の写し)として、以下の書類の提出が必要です。

  • 特定技能雇用契約書
  • 雇用条件書
  • 1号特定技能外国人支援計画書
  • 支援委託契約書(登録支援機関を使用する場合)

派遣形態の場合は、以下の書類も必要です。

  • 派遣計画書
  • 就業条件明示書
  • 派遣先の概要書(漁業分野)
  • 派遣許可書

さらに、協議会において協議が調った事項に関する措置を講じていることが確認できる書類も提出する必要があるので、用意しておきましょう。

ステップ2|協議会2号構成員に資料を提出!

書類の準備ができたら、協議会の2号構成員に資料を提出します。書類を受け取った2号構成員は提出書類を確認。そして毎月15日か末日の期限日までに、協議会の事務局である一般社団法人大日本水産会に必要書類を提出します。

2号構成員は、以下の漁業団体です。(2022年8月現在)

  • 一般社団法人大日本水産会
  • 全国漁業協同組合連合会
  • 一般社団法人全国いか釣り漁業協会
  • 一般社団法人全国近海かつお・まぐろ漁業協会
  • 一般社団法人全国底曳網漁業連合会
  • 一般社団法人日本定置漁業協会
  • 一般社団法人全国まき網漁業協会
  • 全国かじき等流し網漁業協議会
  • 全国金目鯛底はえ縄漁業者協会
  • 全国さんま棒受網漁業協同組合
  • 海士町
  • 一般社団法人全国海水養魚協会
  • 一般社団法人全日本持続的養鰻機構
  • 全国真珠養殖漁業協同組合連合会
  • 全国内水面漁業協同組合連合会
  • 全国海苔貝類漁業協同組合連合会

上記いずれかの漁業団体に書類を提出しましょう。

ステップ3|資格証明書が届いて加入完了!

書類が適正であることが確認されると、事務局が2号構成員を通して資格証明書の交付を行ってくれます。資格証明書が届いたら、協議会への加入は完了です。資格が証明されると、四半期に1度協議会により1号構成員の資格状況が報告されます。

漁業での協議会加入手続きで他分野と異なるポイントは、2号構成員を通して行われること。2号構成員は変わることもあるので、どんな漁業団体が2号構成員になっているのか確認しておくことも大切です。

協議会構成員の確認はこちら

2号構成員に書類を提出するだけとはいえ、漁業での協議会への加入は初めての受け入れでは大変な作業といえるでしょう。

飲食料品製造業・外食業協議会加入の流れは?

次に、「飲食料品製造業・外食業」での協議会加入の流れをチェックしておきましょう。必要なステップは、以下の3つです。

  1. 在留カードのデータを準備
  2. 申請フォームに記入してWEBで申請
  3. 誓約書の移しをメールで送信

飲食料品製造業・外食業の分野では、WEBで加入申請が完結するのがポイント。やり方が分かれば比較的手間がかからずにできるはずです。それぞれのステップについて、詳しく解説します。

ステップ1|在留カードのデータを準備する!

飲食料品製造業・外食業の「食品産業特定技能協議会」への加入には、いくつか記入事項があります。在留カードを手元に用意しておくと、データの入力がしやすいですよ。加入申請フォームには、以下の事項の記載が必要です。

  • 在留カード番号
  • 有効期間
  • 国籍
  • 氏名(アルファベット表記)
  • 事業所所在地(都道府県・市区町村)

どれも在留カードがあればすぐに分かるものばかり。協議会への入会を行う企業の方は、特定技能外国人に在留カードが必要と伝え、持ってきてもらうようにしましょう。

ステップ2|加入申請フォームに記入してWEB申請!

在留カードの用意ができたら、農林水産省のホームページから協議会への加入申請フォームにアクセスし、必要事項を記入します。

加入申請フォームはこちら

フォームへの記載事項は、以下のとおりです。

  • 特定産業分野
  • 日本標準産業分類
  • 特定技能所属機関名
  • 氏名(代表者)
  • 法人番号(13桁)(個人事業主は「無し」と入力)
  • 労働保険番号(14桁)
  • 企業規模
  • 郵便番号
  • 都道府県
  • 住所(市区町村以下)
  • 氏名(担当者)
  • 電話番号(担当者)
  • メールアドレス(担当者)
  • 受入れをしている特定技能外国人の人数
  • 在留カードのデータ
  • 上記の、受入れをしている外国人は、全て「特定技能」の在留資格を取得しています。
  • 今後1年間に受入れをする予定の特定技能外国人の人数
  • 食品産業特定技能協議会規約の内容について同意します。

記入は比較的簡単なもので、記入後は直接送信できるのが飲食料品製造業・外食業の加入手続きの特徴。書類を準備して郵送するよりも楽に手続きが済ませられます。

ステップ3|メールに誓約書の写しをPDFで添付して返信!

申請すると、事務局からメールが届きます。その後誓約書の移しをPDF形式で添付してメールに返信しましょう。

誓約書はこちら

審査には2週間~1ヶ月程度かかります。承認されると加入証がメールで届き、協議会への加入が完了。他の分野と比べると比較的簡単に協議会への加入ができるので、それほどストレスなく手続きを済ませられるでしょう。

ただ、加入証もメールも届くのでなくしやすいのがデメリットのひとつ。どこにいったか分からなくならないように、名前を付けて保存しておきましょう。

登録支援機関の協議会への加入義務は?必要な分野も!

受入れ機関に入会が義務付けられている協議会ですが、登録支援機関にも加入義務があるのでしょうか?登録支援機関は、加入が必要な分野と必要ない分野があります。登録支援機関も協議会に加入が必要かどうかは分野ごとに決められおり、半分の分野で必要です。

例えば今回ご紹介した「漁業」分野には登録支援機関には加入義務がありませんが、「飲食料品製造業」と「外食業」分野では、登録支援機関にも加入の義務があります。

加入の義務があるのは以下の6業種です。

  • 外食業分野
  • 飲食料品製造業分野
  • 宿泊分野
  • 自動車整備業分野
  • 航空分野
  • 造船・船用工業分野

登録支援機関に協議会加入の義務がないのは、以下の6業種です。

  • 介護分野
  • 建設分野
  • 素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業
  • ビルクリーニング分野
  • 農業分野
  • 漁業分野

まとめ|まずはKMTにご相談ください

協議会への加入は、案外大変。特に漁業の協議会加入手続きには準備する資料がたくさんあるので、初めて特定技能外国人の受け入れを行う企業の方は少し戸惑うかもしれません。そんな時には登録支援機関にサポートを委ねてみるのもひとつの方法です。

登録支援機関に受け入れのサポートをしてもらうと、特定技能外国人の受け入れがぐんと楽になります。特定技能の知識と受入れ経験のある登録支援機関なら、受入れに関する面倒な手続きを全て代わりに行ってくれます。

KMTでも特定技能外国人の受け入れを全面的にサポートできますので、「受け入れが大変かも」と感じたらまずはご相談ください。

大房行政書士法人代表 / 株式会社KMT取締役
行政書士 大房明良 監修

東京都大田区蒲田に生まれ、大学在学中に訪れたカンボジアで学校建設ボランティアに参加し、貧困問題に興味を持つ。2016年に行政書士事務所を開業し、カンボジア語が話せる行政書士として入管業務を専門に行う。現在は特定技能申請をメイン業務とし、2023年5月現在で申請数は4500件を超える。
また、取締役を務める株式会社KMTでは、約600名の特定技能外国人の支援を行っている。