外国人雇用にも適用される助成金をご存じでしょうか。特定技能は現状、対象となる助成金がないのですが、在留資格「技術・人文知識・国際業務」では対象となる助成金があります。
採用経費がかかるから一歩を踏み出せない企業様、ぜひご一読ください。
目次
外国人雇用のための助成金の種類って?
厚生労働省の助成金活用には雇用保険加入の事業所であることが必須です。他に賃金台帳や出勤簿、労働者名簿の整備が必要になります。
外国人雇用に使える助成金は以下の通りです。弊社の顧問社労士へご相談可能ですのでお気軽にご連絡ください。
雇用調整助成金
- 目的:事業縮小をするときに、従業員に対して休業手当を支払ったり出向させたりする(雇用調整を行う)ことで、雇用を維持すること。
- 対象者:事業活動の縮小や経済上の理由により、事業を縮小しなければいけない事業主
- 金額:労働者1人当たり8,265円が上限
トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)
- 目的:職業経験、技能、知識等から安定的な就職が困難な求職者(過去に就職経験がない方、フリーターの方など)を雇用する場合。
- 対象者: 一定期間の試用雇用(トライアル雇用)をする、雇用保険適用事業所
- 条件:ハローワークや職業紹介事業者等の紹介後、一定期間試行雇用をした場合に助成金を受けることができる。
- 金額:1人あたり月額最大5万円(最長3ヵ月)。
- 手続き方法:管轄の労働局、ハローワークで申請。
人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)
- 目的:外国人特有の事情に配慮した就労環境の整備を行うため。外国人労働者の職場定着のため経費の一部を助成。
- 対象:以下の条件を満たす事業主
- 条件:外国人労働者に対する就労環境整備措置を新たに導入し、外国人労働者全員に対して実施すること。就労環境整備計画期間終了後の一定期間経過後、外国人労働者の離職率が10%以下であること等。
- 支給対象経費の1/2(上限額57万円)。なお、生産性向上の取り組みを支援する「生産性要件」が設定されており、生産性の伸び率が要件を満たしている場合は、助成金が支給対象経費の2/3(上限額72万円)に増額。
- 手続き方法:管轄の労働局、ハローワークで申請。
人材開発支援助成金(特定訓練コース)
- 目的:職務に関連した専門知識・技能の取得のための訓練中における賃金と経費の補助。
- 条件:訓練実施計画を作成し、訓練開始日の1か月前までに管轄労働局へ提出すること。
- 金額:最大で50万円を補助(中小企業、200時間以上の訓練の場合)。
- 手続き方法:管轄の労働局、ハローワークで申請。
キャリアアップ助成金(正社員化支援・処遇改善支援)
- 目的:非正規雇用から正社員化をするなどの処遇改善に取り組むため。国籍に関する条件はないため外国人社員にも適用可能で、賃金改定や、社内全体の制度の変更目的で申請可能。2022年4月1日以降、有期雇用から無期雇用への転換に対する助成は廃止されました。
- 対象:以下の条件を満たす事業主
- 条件:雇用保険適用事業所の事業主であり、キャリアアップ管理者を置き、キャリアアップ計画を作成、管轄労働局長の受給資格の認定を受けていること。計画の期間内にキャリアアップに取り組んでいること。
- 金額:コースによって異なる。生産性向上の取り組みを支援する「生産性要件」を満たすと助成金額が増額。生産性要件を満たした中小企業が最も高い金額を受給できるように制度設計されています
キャリアアップ助成金の種類
- 正社員化支援
- 正社員化コース
- 障害者正社員化コース
- 処遇改善支援
- 賃金規定等改定コース
- 賃金規定等共通化コース
- 賞与・退職金制度導入コース
- 選択的適用拡大導入時処遇改善コース
- 短時間労働者労働時間延長コース
- 健康診断制度コース(2021年3月をもって廃止)
各コースの助成金額については、厚生労働省の発表している資料をご覧ください。
ものづくりマイスター・ITマスターによる実技指導
- 目的:産業活動の基盤となる技術を継承し、若手を育成するための、ものづくりマイスター・ITマスターによる実地指導。
- 対象:中小企業や学校など
- 金額:コーディネート費用は無料。ものづくりマイスターの派遣費用や指導に係る材料費は、規定の範囲内で、地域技能振興コーナーが負担。※詳しくは最寄りの地域技能振興コーナーへ問い合わせてください。
- 手続き方法:最寄りの地域技能振興コーナーへ相談
業務改善助成金
- 目的:生産性を高めるための人材育成や、設備・コンサルティングなどを導入し、事業場内最低賃金(その企業において最も低い賃金)を引き上げるため。
- 対象者:事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が30円以内で、事業場規模100人以下の企業
- 条件:賃金引上げ計画を策定し、事業場内最低賃金を一定額以上引上げ、実際に引き上げた後の賃金を支払うこと。また、導入する設備などにかかる費用を支払ったこと。
- 金額:生産性向上のための設備投資等にかかった費用の75%~90%
※助成率は、事業場内最低賃金によって変わります。また、生産性の伸び率が一定以上の場合は、より高い助成率が適用されます。
- 手続き方法:管轄の労働局に申請。
人材確保等支援助成金(働き方改革支援コース) ※2021年3月31日廃止
- 目的:新たに労働者を雇い入れ、雇用管理改善をするため。
- 対象者:時間外労働等改善助成金の支給を受けた中小企業事業主
- 条件:雇用管理改善計画を作成し、都道府県労働局の認定を受ける
- 金額:計画を達成した場合、新たに雇い入れた労働者1人あたり60万円、(短時間労働者の場合40万円)。目標を達成した場合で、生産性要件を満たした場合、労働者1人あたり15万円、(短時間労働者の場合10万円)。
- 手続き方法:管轄の労働局、ハローワークに申請。
外国人雇用のための支援制度
経済産業省の支援制度を利用するための条件は、経済産業大臣の認定が必要になる傾向があります。
例えば、「製造業外国従業員受入事業」では「経済産業省の所掌に係る製造事業者は、当該事業者(特定外国従業員受入企業)の外国にある事業所の職員(特定外国従業員)へ特定の専門技術の移転等を実施するための計画(製造特定活動計画)を作成し、経済産業大臣の認定を受ける必要があります。」と記載されています。
そのため、支援制度へ応募する前に、以下の事項について確認が必要です。
- 指定の業種であること
- 経済産業大臣の認定を受けるための書類を作成する必要があること(書類作成に人員を割けるかどうか、もしくは行政書士に代書・代理申請を依頼するかどうかも含めて検討が必要)
経済産業省の支援制度の例
経済産業省が実施している主な支援制度の例として、以下の2つを紹介します。
- 製造業外国従業員受入事業
- 国際化促進インターンシップ事業
製造業外国人従業員受入事業とは
支援の目的
- 国内生産拠点と海外生産拠点の役割分担
- 日本国内の製造業の空洞化を防止し、国際競争力を高めること
具体的には、外国にある事業所の従業員(特定外国従業員)が、「特定活動」の在留資格によって、日本国内の生産拠点で働き、特定の専門技術を取得したのち、海外の事業所に戻ります。当該従業員が帰国後に日本で身につけた専門技術を外国の事業所に普及させること(技術移転の促進)で、日本の事業所が研究開発機能を強化し、海外の事業所は日本の技術を使って生産をするという仕組みを実現しようというものです。
ただし、日本国内の生産拠点が海外に移転し、国内製造業の空洞化が助長されるような取り組みは対象外となります。また、特定外国従業員に対しては、帰国後1年間の解雇が原則として禁止されます。
国際化促進インターンシップ事業とは
支援の目的
- 日本企業の海外展開の促進、外国人と働くことによるイノベーション創出、社内の外国人受け入れ体制の整備、海外大学との関係構築
日本企業(中堅・中小企業)が外国人学生などをインターンとして受け入れる事業です。インターン生が自宅から企業に出向く「直接参加型」、海外から来日し、宿泊を伴いながら行う「来日型」、大学などの施設からオンラインで参加する「施設オンライン型」の3種類のインターン方法があります。
応募、マッチング、審査を経て受け入れが決定する仕組みなので、自社で直接人材を調整することはできません。
- 対象企業:中堅・中小企業(最大200社)
- 支援内容:人材育成支援費:1回の受入に対し一律63,000円(活動期間を修了した者)
まとめ
今回は、外国人雇用に関する国の支援について紹介しました。
外国人の採用や定着、育成には手間や時間がかかりますが、国による経済的な支援策や、情報提供などの支援制度をうまく使いこなせば負担を軽くすることが可能です。
外国人雇用には、国の助成金や補助金などの支援制度を活用しましょう。