「技能実習生や留学生が特定技能に移行するためには、どうしたらいい?」と困っている方はいませんか?技能実習や留学のビザを持った外国人に、特定技能ビザを取得させて特定技能外国人として雇用できるようにしたいと考えている方もいるでしょう。
そんな方のために、この記事では「技能実習」や「留学」から「特定技能」に移行するための方法について、分かりやすく解説します。移行に必要な条件や手続き方法、以降のメリットデメリットや注意点もご紹介するので、特定技能への移行を考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
技能実習・留学・特定技能制度について、それぞれおさらい!
特定技能への移行の方法について解説する前に、技能実習、留学、特定技能のそれぞれの制度について、おさらいしておきましょう。
- 「技能実習」とは?
- 「留学」とは?
- 「特定技能」とは?
外国人が日本に在留できる3つの制度ですが、それぞれ違う目的でつくられたものです。それぞれの制度について理解することで、移行の意味も理解できるようになり、手続きがスムーズになるはずです。それぞれの制度について、詳しく解説します。
技能実習とは?制度の基本理解をおさらい!
技能実習の目的は、開発途上国の経済発展を担う「人づくり」です。先進国である日本の技術を日本で学んでそれを持ち帰り、開発途上国の発展に貢献することが目的の制度です。技能実習には1号・2号・3号があり、それぞれ実習期間が定められています。
技能実習 | 滞在期間 |
---|---|
1号 | 1年 |
2号 | 2年 |
3号 | 2年 |
技能実習生は、日本で働きながら最大で合計5年間の滞在が可能です。技能実習は1993年に創設されましたが、以前は低賃金労働や長時間労働、賃金未払いなどの外国人の人権を無視したトラブルが多発していました。しかし2017年には「外国人の技能実習の適正な実務及び技能実習生の保護に関する法律(技能実習法)」が施工され、より適正な環境での実習ができるようになりました。
留学とは?
「留学」とは、日本の大学や高校などで教育を受ける外国人のための在留資格です。短期大学や専門学校・特別支援学校の生徒も、在留資格「留学」を取得できます。また、小学生や中学生でも取得が可能なので、申請を続けることで大学生になるまで留学ビザで在留することができます。滞在可能期間は法務大臣が個々に指定する期間で、最大4年3ヶ月を超えない範囲で取得が可能です。
在留資格「留学」で気になるのは、アルバイトができるのかどうかです。在留資格「留学」の場合でも、「資格外活動許可」があればアルバイトができます。あくまで学業が中心のアルバイトですが、「資格外活動許可」でアルバイトができるので、アルバイトをしながら日本の学校に通う方も多いです。
特定技能とは?1号・2号を詳しく解説!
在留資格「特定技能」の目的は、人手不足の解消です。人材不足に悩む日本企業で即戦力となる外国人を雇うことで、人手不足を解消しようとする制度です。そのため特定技能外国人は、日本の正社員と同じ扱いです。特定技能には、1号と2号があります。特定技能2号は、1号よりも熟練した技能が必要です。
特定技能1号 | 特定技能2号 | |
---|---|---|
在留期間 | 上限5年 | 上限なし |
永住権の可能性 | なし | 可(条件あり) |
家族の帯同 | 不可 | 可(条件あり) |
既に在留資格のある「介護」分野と2024年に追加された4分野以外のすべての分野で、特定技能2号の取得が可能です。そのため、在留期間の制限がなく家族を帯同して永住権を取得できる可能性のある特定技能2号へ、移行したいと考える特定技能1号の外国人も少なくありません。
留学や技能実習から特定技能に移行可能!
そもそも技能実習は、日本で学んだ技術を自国に持ち帰って自国で役立てる国際貢献が目的の制度です。そのため、技能実習が終わると母国に帰って国のために働くのが合理的な流れです。
しかし、技能実習の目的とは違いますが、日本の人手不足を補うための特定技能の目的には沿っているので、技能実習や留学から特定技能への移行は可能です。特定技能への移行についての5つのポイントを押さえておきましょう。
特定技能への移行ポイント
- 「留学」から「特定技能」になるための条件は?
- 「技能実習」から「特定技能」になるための条件は?
- 移行手続きの流れは?
- 移行対象の分野は?
- 移行のメリットデメリットは?
それぞれのポイントについて、詳しく解説します。
【留学】から【特定技能】になる必要な条件とは?
まず、留学生が特定技能の申請をする場合は、卒業シーズンの3月や4月は込み合うので、早めの申請が推奨されています。「留学」から「特定技能」に移行したい場合は、決められた試験に合格しなければなりません。
- 各分野での技能試験(特定技能1号評価試験)
- 日本語試験:「国際交流基金日本語基礎テスト(A2レベル以上)」か「日本語能力試験(N4以上)」のいずれか
技能試験と日本語試験の両方に合格すると、特定技能ビザの取得が申請できます。留学生が特定技能になる場合は、まずはテストに合格することが重要と頭に入れておきましょう。また、以下のような基本的な条件もクリアしておく必要があります。
- 18歳以上
- 健康状態が良好
- 有効なパスポートを所持
- 保険金を徴収されていない
- 素行が不良でない
- 納税・届出義務を果たしている
当たり前のことのようでも、すべてが達成されていないこともあります。そのため、該当外国人によく話を聞きながらひとつひとつ確認しておくことが重要です。
【技能実習】から【特定技能】になる必要な条件とは?
技能実習から特定技能に移行したい場合に必要な条件は、以下の2つです。
技能実習から特定技能移行に必要な条件
- 技能実習2号を良好に修了している
- 技能実習の職種・作業内容と特定技能1号の業務に関連性があること
上記2点をクリアしている場合は、技能試験と日本語試験の両方が免除されます。技能実習時と異なる業務に就く場合でも、技能実習2号を良好に修了している場合は日本語試験は免除になります。技能実習は2号までで3年間あるので、その間に特定技能1号として就労するのに必要な日本語は取得していると認められるからです。
なお、技能実習時と違う業務で働きたい場合は、希望の分野の技能試験に合格して特定技能取得の申請が認定されると就労が可能です。
移行手続きの流れ
技能実習や留学から特定技能に移行する場合の流れは、以下のとおりです。
- 該当外国人と雇用契約を締結
- 特定技能外国人の支援計画策定
- 事前ガイダンスの実施、健康診断受診
- 分野・国ごとの手続きを事前申請
- 「在留資格変更許可」の申請
技能実習や留学から特定技能への移行は、「在留資格変更」になります。出入国在留管理庁(入管)で「在留資格変更許可」を申請することが必要ですが、申請前にいくつかのステップを踏まなければなりません。
なお、ステップ2からは、受入機関が登録支援機関に頼んでしまうこともできます。登録支援機関と委託契約を締結してサポートを一任することで、その後の手続きが楽になります。実際ほとんどの特定技能外国人の受入機関が登録支援機関を利用し、スムーズな手続きを進めているので、利用を検討してみましょう。
技能実習から特定技能1号への移行対象の分野
特定技能に移行ができる対象分野は、以下の15分野です。
- 介護
- ビルクリーニング
- 工業製品製造業(旧素形材・産業機械製造・電気・電子情報関連産業)
- 建設
- 造船・舶用工業
- 自動車整備
- 航空
- 宿泊
- 鉄道
- 農業
- 漁業
- 飲食料品製造業
- 外食業
- 木材産業
2024年に新たに追加された4分野(自動車運送業、鉄道、林業、木材産業)のうち、鉄道、木材産業は技能実習から試験免除で特定技能1号への移行が可能となっております。林業については 令和6年9月30日に「林業職種」が技能実習2号・3号への移行対象職種に追加されたため、今後特定技能1号への移行職種となる可能性が高いです。自動車運送業については、対象となる技能実習の職種がないため別途特定技能評価試験の受験が必要となります。
ただ、移行できる作業名(業務区分)が対象外のこともあるので、注意が必要です。たとえば、工業製品製造業分野での「アルミニウム圧延・押出製品製造」などは技能実習ではありますが特定技能で就労可能な職種がないので、移行ができません。詳しくは厚生労働省のホームページからチェックできるので、よく確認しておきましょう。
もし希望職種が移行対象職種に該当していない場合は、特定技能への移行(変更手続き)ではなく特定技能を新たに申請することになります。その場合は希望分野への技術試験に合格し、新規で特定技能への申請を行います。
特定技能への移行のメリットとデメリットとは?
特定技能に移行するメリットは、なんといっても日本で長く働いてもらえることです。技能実習でよく働いてくれていた技能実習生は、在留期間が過ぎれば帰国してしまいます。しかし、日本での仕事はもちろん生活にも慣れた頃に帰ってしまうのは残念なもの。真面目に働く技能実習生が、企業のムードメーカー的存在になっているということも多いです。
そんなときでも、特定技能に移行することで、企業になれた外国人に引き続き働いてもらうことができます。人材を確保するのが難しい企業では、技能実習として働いてくれていた外国人がさらに特定技能外国人として就労してくれるなら、それほどうれしいことはないでしょう。留学生の受入れも、高齢化が進む日本ではなかなか見つからない若い人材を受け入れられることが、受入企業側の大きなメリットとなります。
また、特定技能になれば、介護と建設分野を除き受け入れ人数の制限がなくなるため、必要な人数分の外国人を受け入れることが可能になります。
一方デメリットは、人件費がかかることです。特定技能外国人は、日本人の正社員と同等の扱いなので、賃金も技能実習よりも高くなります。たとえフルタイムで働かせることができるとしても、人件費がある程度かかることは覚えておきましょう。
移行準備する際の注意点とは?
特定技能の移行準備期間には、いくつかの注意点があります。まず、移行の申請をしてから審査がおりるまでの期間は、1~2ヶ月かかるので、早めの準備が必要です。もし、「特定技能1号」の在留資格に変更を希望する方で、在留期間の満了日までに申請に必要な書類を揃えることができないなど、移行のための準備に時間を要する場合には、「特定技能1号」で就労を予定している受入れ機関で就労しながら移行のための準備を行うことができるよう「特定活動(6月・就労可)」への在留資格変更許可申請を行うことができます。。
特定活動は、6か月の在留期限が付与され、やむを得ない事情がある場合は1回まで更新申請を行えます。特定活動での在職中は就労も可能です。ただ、特定技能への申請期間中に特定活動として在留していた期間は、特定技能1号の通算5年間に含まれます。特定活動でも就労は可能ですが、申請も必要なので技能実習の在留期限内に特定技能1号への変更申請を完了できるに越したことはありません。特定技能への移行が決まったら、できるだけ早めに準備を整え手続きをしておきましょう。
また、分野によっては他の分野よりも多く移行の準備に手間がかかる場合もあります。たとえば建設分野の場合は、事前に建設キャリアアップシステムに登録したり建設業者団体に加入したり、報酬などを記載した「建設特定技能受入計画」を作って国交省の認定を受けたりと、多くの手続きが必要です。各分野の管轄省庁の公式ページなどを確認し、手続きをしっかりと確認しておくと良いでしょう。
さらに、外国人の出身国ごとに必要な手続きがある場合もあります。特定技能への移行の際に、送り出し国で手続きが必要なことがあります。たとえばベトナムの場合は、日本のベトナム大使館で書類を受け取ったり提出したりする必要があり、審査にも数日かかります。国によって必要な手続きは異なりますが、送り出し国で必要な手続きがあるのか事前にチェックしておくことが大切です。
特定技能への移行の準備には注意点がいくつかありますが、大切なのは早めの準備です。早めに準備をしておくことで、余裕を持って特定技能への移行ができ、特定技能外国人も心置きなく就労ができるようになります。技能実習生が特定技能に移行すると決まったら、すぐに準備を整えて申請の手続きを行いましょう。
まとめ|特定技能への移行で長期間の雇用を!
技能実習生には優秀な方も多く、技能実習が終わったら帰国してしまうのはもったいないと考えている企業主さんも多いでしょう。そんなときに技能実習から特定技能に移行することで、長期間の就労が可能になります。特に人手不足に悩む受入れ企業にとっては、特定技能として外国人材を雇い続けられることはうれしいことでしょう。
ただ、手続きは各分野や送出し国により異なるので、慣れていないとよくわからなくなってしまうこともあります。そんなときには、登録支援機関に手続きを委託するのがおすすめです。登録支援機関のKMTなら、技能実習や留学から特定技能への移行実績も多数あります。留学や技能実習から特定技能への移行を考えている方は、ぜひ一度ご相談ください。