特定技能外国人は、いつでも退職することができます。といっても、特定技能外国人が退職するときにはどのような手続きが必要なのか分からない方も多いでしょう。
「突然退職したいと言われたらどうしよう」と不安になっている方のために、この記事では特定技能外国人の退職について徹底解説!特定技能外国人が退職したくなる事例や、退職時に必要な手続きについて詳しく解説します。特定技能外国人の退職に不安を抱いている方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
退職するのはどんな時?特定技能外国人が退職した5つの事例
特定技能外国人は退職が可能ですが、どんなときに退職をしてしまうのでしょうか?実際に特定技能外国人が退職してしまった5つのケースをチェックしておきましょう。
- 賃金面での不満があった
- 人間関係が上手くいかなかった
- 住居に不満があった
- 業務内容が合わなかった
- 自身の健康や母国の家族の問題が発生
特定技能外国人の退職の原因は、特定技能外国人ならではのものもあれば日本人とそれほど変わらないものも。それぞれの事例について、詳しく解説します。
【事例①】賃金面での不満がある
賃金面での不満は、国籍に関わらず就労の不満となりやすい原因のひとつです。特に外国人にとっては、日本での労働が思ったより厳しく、労働に見合った給与がもらえているとは思えないことがあります。もちろん特定技能外国人と契約するときには、必ず特定技能外国人が理解できるまで賃金についての説明をし、しっかりと納得してから雇用します。それでも、始めは給料が良いように感じたのに、仕事が大変で給料がそれに見合っているように感じられなくなってしまったというケースがありました。
これには、母国での仕事に関する考え方の違いも関わっているかもしれません。母国では休みや休憩の取り方がゆるやかだったり、少しくらい大雑把な作業が許されたりするのに、日本ではそれが許されないことで「どうしてこんなにがんばっているのに!」と、より賃金が就労に見合わない感覚になってしまうことも考えられます。
また、他の企業では同じような労働をしていても給料が多い場合は、転職して別の企業に入りたいと感じてしまうこともあるでしょう。ただでさえ言語や文化の違いにより働きにくさを感じている外国人は、特に賃金での不満があればそれが退職の原因となってしまうことも大いにあり得ます。
【事例②】人間関係
人間関係も、退職を考える大きな原因となります。毎日一緒に働く職場に合わない人がいる場合は、働くのが嫌になってしまう可能性が高いです。特定技能外国人には日本人のように一度企業に入社したらなかなか退職はできないものという感覚のない方も多いので、人間関係が悪いとすぐに退職したいと考える原因になってしまいます。例えば、上司の暴言が嫌だ、上司や同僚と性格が合わないなどのケースがありました。
また、日本で重視される上下関係が理解できずに悩んでしまう特定技能外国人もいます。日本では当たり前だと思っていることが、外国人にはよく分からない可能性も。上司が高圧的だと感じたり意地悪をしているように感じたりして不満を持ってしまうこともあります。
【事例③】住居に不満がある
住居への不満でも、特定技能外国人が不満を持って退職を考えてしまうことがあります。例えば、始めは二人部屋で大丈夫だと思って働き始めたが、同じ部屋の人が夜にテレビ電話をしていて耐えられなくなってしまったケースや、二人部屋で一人の時間が欲しくなってしまったケースがありました。
外国人同士で二人部屋になった場合は、相手が夜に大きな声で話をしていると迷惑になってしまうことがありますが、相手も同じように家族を大事にしていることは分かるのでなかなか言い出せなくて不満がたまってしまうのでしょう。
住居の問題は、転居などで解決できることもあります。しかし、転居で相手の方に不快な思いをさせ、さらなるトラブルに発展してしまう可能性も。どちらにしても、特定技能外国人がもうこのまま仕事が続けられない気持ちになるまで追い詰められている場合は、説得もなかなか難しくなってしまうので注意が必要です。
【事例④】業務内容のミスマッチ
企業の業務内容自体が、特定技能外国人に合っていなかったというケースもありました。実際に仕事を始めてから思っていた仕事と違うと感じ、前の会社に戻りたくなってしまったことも。特定技能では単純作業をさせることも可能ですが、いろいろな作業をこなしてスキルアップしたい外国人が、実際に始めてみたら単純作業のような仕事ばかりだったりすると、不満を持つことになってしまいます。
また、業務内容は思っていたものと同じでも、それが自分に合わないことが分かる場合もあります。しかし、特定技能外国人として認められたからにはしっかり働きたいという責任感の強い方であればあるほど、弱音を吐きにくくなってしまうのです。
特定技能外国人は、もし合わない仕事だと思っても、契約が終了するまで申請時に提出した仕事内容でしか働くことができません。そのため、業務内容がミスマッチな場合は、特定技能外国人は退職するしかないと考えてしまいます。
【事例⑤】自身の健康面や母国の家族に問題が発生
自分の健康状態が悪くなると、退職を考えてしまう特定技能外国人も多いでしょう。例えば、腰痛がひどくなったり腕が痛くなったりすると、仕事をするのも辛くなってしまいます。仕事に差し支えのないような体調の場合はそのまま働くこともできますが、仕事にも支障が出るようになると、退職せざるを得なくなります。
また、自分だけでなく家族の不調により退職をしてしまう方も。母国の家族が介護状態になってしまった場合は、帰国して家族の面倒を見なければならなくなります。自分自身の健康面だけでなく、母国の家族の問題も退職へとつながってしまうことがあります。特定技能外国人の素行が悪いわけではなく、真面目に就労していても家族の問題により退職してしまうこともあるのです。
特定技能外国人が退職した場合に企業側がやるべき入管への届出とは?
特定技能外国人が退職したら、受入れ企業は地方出入国在留管理局(入管)にいくつか届け出をしなければなりません。提出する届出について、以下の3つに分けてご紹介します。
- 受入れ困難に係る届出書(参考様式第3-4号、5-11号)
- 特定技能雇用契約に係る届出書(参考様式第3-1-2号)
- 特定技能所属機関による支援委託契約に係る届出(参考様式3-3号)は原則不要
提出を忘れてしまうと、新たに特定技能外国人を受け入れることができなくなる可能性も。受入れ企業側が用意すべきそれぞれの届け出について、詳しく解説します。
【届出①】受入れ困難に係る届出書(参考様式第3-4号、5-11号)
特定技能外国人の受入れ継続が困難になり、当初の雇用契約期間よりも前に雇用契約を終了することになったら、まずは「受入れ困難に係る届出書」を入管に提出しなければなりません。また、「受入れ困難となるに至った経緯に係る説明書」も同時に提出します。こちらの書類は、引き続き特定技能外国人を受け入れることが困難となった日から14日間以内に提出しなければなりません。
参考様式は、入管のホームページからダウンロードできます。「受入れ困難に係る届出書」は参考様式第3-4号、「受入れ困難となるに至った経緯に係る説明書」は参考様式第5-11号を使用しましょう。
具体的にどうして退職することになったかの説明は、「受入れ困難となるに至った経緯に係る説明書」に記載します。そして、この様式には退職後に帰国するのか、転職するのかなど、退職後の予定も記載する必要があります。特定技能外国人と話し合い、退職後の予定までよく確認しておきましょう。
「受入れ困難に係る届出書」と「受入れ困難となるに至った経緯に係る説明書」は、始めに提出するものですが、退職から時間が経っていて提出期限が迫っている場合は他の書類と同時に提出しても構いません。
こちらは事前の利用者登録により電子届出が行えるので、提出期限が間近に迫っている方や手軽に手続きを済ませたい方は利用してみましょう。電子届出をする場合は、出入国在留管理庁のポータルサイトから手続きが行えます。
【届出②】特定技能雇用契約に係る届出書(参考様式第3-1-2号)
受入れ機関は、雇用契約が終了したときから14日間以内に「特定技能所属機関による特定技能雇用契約に係る届出書」を提出しなければなりません。特定技能外国人が退職する場合は実際に退職した日から14日間以内に提出する必要があるので、うっかり過ぎてしまわないように注意しましょう。書類は、入管のホームページからダウンロードできます。
特定技能外国人の退職は、特定技能の雇用契約が終了したということなので、参考様式第3-1-2号(契約の終了した又は新たに締結した場合)を使用します。
特定技能所属機関による特定技能雇用契約に係る届出書の様式はこちら
書面には契約終了の事由の項目があり、いくつか選択肢があるので合うものを選択してください。特定技能外国人から退職の申し出があった場合は、「外国人の都合による終了」の「10. 自己都合退職(本人からの申出による退職)」をチェックしておけば問題ないでしょう。
提出は、事前の利用者登録によりインターネットで提出することも可能です。電子届出をする場合は、出入国在留管理庁のポータルサイトから手続きが行えます。インターネットに慣れている方なら電子届出でスムーズに手続きが行えるので、利用を検討してみましょう。
特定技能所属機関による支援委託契約に係る届出(参考様式3-3号)は原則不要
受入れ企業が登録支援機関に支援を委託していた場合は、受入れ企業は入管に「支援委託契約に係る届出書(参考様式3-3号)」も提出しなければなりません。特定技能外国人の退職と同時に支援を委託する契約も終了するので、報告をする必要があります。こちらも「特定技能所属機関による特定技能雇用契約に係る届出書(参考様式第3-1-2号)」と同じく、退職日から14日間以内に提出が必要です。
特定技能外国人の退職で契約の終了になるので、参考様式第3-3-2号(契約の終了した又は新たに締結した場合)を選びましょう。終了の事由については、「特定技能所属機関の都合」と「その他」を選択したうえで、「外国人の自己都合による退職」と記入しておけば問題ありません。こちらも電子届出が行えるので、窓口に行かずに手続きをしたい方は利用してみましょう。
ただ、特定技能雇用契約に係る届出書(参考様式第3-1-2号)に登録支援機関との支援委託計画が終了した旨を記載する場合は、特定技能所属機関による支援委託契約に係る届出(参考様式3-3号)の提出は不要です。できるだけ提出書類を減らしたい方は、必要事項を特定技能雇用契約に係る届出書(参考様式第3-1-2号)に記載してしまうのが良いでしょう。
日本人の従業員が退職するときと同様の手続きも必要!
特定技能外国人の退職のときに忘れてはならないのが、日本での退職手続きです。特定技能外国人が退職するときには、特定技能特有の手続きに加えて日本人従業員が退職するときと同じ手続きも必要です。
まずは、退職した日から5日以内に日本年金機構に「被保険者資格喪失届」を出し、健康保険・厚生年金保険の資格喪失手続きを行いましょう。また、退職日の翌々日から10日以内に、事業所管轄のハローワークに「雇用保険被保険者資格喪失届」と「雇用保険被保険者離職証明書」を提出し、雇用保険の資格喪失手続きを行わなければなりません。
さらに、源泉徴収票は退職後1ヶ月以内に発行する必要があります。そして給与から住民税を天引きしている場合は、特定技能外国人の住んでいる市町村に「給与支払報告に係る給与所得異動届書」も提出しなければなりません。
その他、雇用保険被保険者証の返却や離職票の交付など、退職にはたくさんの手続きが必要になります。さらに仕事内容の引継ぎや貸し出し物の回収など、日本人従業員の退職時と同様に企業側でやるべきことがたくさんあるため、特定技能外国人の退職は決して楽なものではありません。
退職を防ぐには普段からコミュニケーションを密に取るのがポイント
特定技能外国人は、さまざまな理由で退職を考えます。退職せずに長く働いてもらうためには、日頃から密にコミュニケーションを取ることが非常に大切です。
普段から十分なコミュニケーションで率直な話ができていれば、問題が膨らみすぎる前に気付き、対処することができます。特に賃金の話はなかなかしにくく、住居や母国の家族の問題も気づきにくいので、特定技能外国人が不平不満も遠慮せずに口に出せる雰囲気にしておくことも大切です。
日本人でも不満を溜め込んでしまうことがありますが、特定技能外国人は言語の違いからなおさら不満を上手く口にできずにストレスを抱えてしまうことも多いです。定期的に話し合いの機会を設ける、母国語が話せる人材を企業に配置するなど、思ったことを安心して口に出せるような働きやすい環境に整えておくことで、退職したいと感じる外国人が減ることでしょう。
まとめ|サポート体制を整えて退職しにくい職場を作ろう!
特定技能外国人が退職することになると、一定の手続きが必要になります。とはいえせっかく雇った特定技能外国人には、長く働いてもらいたいもの。日頃からサポート体制を整えて、退職を考えにくい職場にしておくことが大切です。
それでも特定技能外国人に退職したいと言われてしまったときには、入管への提出書類を早めに準備する必要があり、退職後の特定技能外国人への対応も考えなければなりません。
そんなときには、登録支援機関に頼ってみるのもおすすめです。登録支援機関のKMTなら、特定技能外国人の退職についても徹底的にサポートできます。カンボジア・ベトナム・インドネシア・タイ・英語・中国の言語に対応できるので、母国語でのサポートが可能。特定技能の退職で悩んだら、ぜひ一度KMTにご相談ください。