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素形材産業は、深刻な人手不足に悩まされている分野。しかし、素形材産業分野で外国人を受け入れたい経営者の方は、具体的にどのように雇用したら良いのか悩んでいるのではないでしょうか?

今回は、特定産業での特定技能外国人の受け入れについて、徹底的に解説。特定産業分類や試験の日程についても詳しく解説します。

さらに受け入れに必須となる協議会への加入方法や人材の探し方も紹介。素形材産業での雇用をスムーズに行うことで、会社に必要な労働力となる人材を確保できるようになりますよ。

製造3分野とは?その中でも素形材産業の特徴は?

製造3分野とは、経済産業省が所轄する3つの分野です。しかし、その1つである素形材産業とはどんな業種なのかよく分からない方も多いのではないでしょうか。ここでは、製造3分野および素形材産業について、気になる4つのポイントを押さえておきましょう。

  1. 製造3分野とは?
  2. 素形材産業とは?
  3. 素形材産業の現状と課題
  4. 素形材産業の特定技能の対象は?

日本の人手不足解消の鍵を握る製造3分野。中でも素形材産業は、日本のものづくりの支えとなる業種です。それぞれのポイントについて、詳しく解説します。

製造3分野とは?素形材産業、産業機械製造業、電子・電機関連産業

特定技能で受け入れ可能な14職種の中で、以下の3つの職種が「製造3分野」といわれています。

  • 素形材産業
  • 産業機械製造業
  • 電気・電子関連産業

製造3分野は、日本の製造業界における深刻な人手不足を解消するために作られた、ものづくりに欠かせない分野です。「素形材産業」は、車の部品やギアなどを作る職種。「産業機械製造業」は、工場の食品自動製造機などの人の補助をする機械を作り、「電子・電機関連産業」はパソコンやスマホなどに使われる電子部品の製造などを行います。

2021年10月現在、「鋳造」の業務のみ素形材産業から産業機械製造業への転職が可能です。製造3分野の特定技能での他の分野との違いは、新設された技術試験の合格と、製造業特定技能外国人受入れ協議・連絡会への加入が必須なことです。

素形材産業はどんな業種?

素形材産業というと、聞きなれない言葉かもしれません。しかし、実は素形材産業は、私たちの暮らしを支える業種。製造業にはなくてはならないものです。

素形材産業は、金属やプラスチックなどに熱を加えて形を変えるなど、素材を加工して製品を製造する仕事。鉄やアルミニウムなどの素材を加工・加熱して形を変えた素形材を作ります。

素形材産業で作られた部品は、車やトレーラー、情報通信機器などの製品になり、社会で活用されます。

素形材産業は、平成29年時点で国内の労働者の総数が約18万人。平成29年の出荷額は4兆7千億円と規模が大きい業種です。名前は知られていませんが、素形材産業は私たちの暮らしを支える大切な業種なのです。

素形材産業の現状と課題

現在、素形材産業はほとんどの業務で自動車産業に依存しています。全体で約7割、ダイカストと金属プラスでは約8割を自動車用の部品が占めています。それでいて、現地調達・現地生産する企業が増えているのが現状。下請け産業としての力が弱まっています。

さらに、新興国での生産性アップによるグローバル競争が拡大しているにも関わらず、日本の生産性は横ばい。コスト面で海外より優位に立つのが難しい状況です。

この現状を打破して日本国内での生産性をアップするために特定技能の受け入れが始まりましたが、素形材産業を含む製造業の人手不足は解消されていないのが現状です。

今後ITシステムの導入などにより生産性をアップし、女性活躍の推進や教育システムの整備などにより多くの人材を確保することが、素形材産業の課題となっています。

特定技能「素形材産業」の対象となる業務は?全13職種を一挙紹介!

特定技能で受け入れ可能な素形材産業の対象となる業務は、以下の13種です。

  • 鋳造
  • 鍛造
  • ダイカスト
  • 機械加工
  • 金属プレス加工
  • 工場板金
  • めっき
  • アルミニウム陽極酸化処理
  • 仕上げ
  • 機械検査
  • 機械保全
  • 塗装
  • 溶接

いずれの業務も、指導者の指示を理解し、又は状況に応じて自ら判断して作業を行うことが求められます。また、各業務に付随する作業も、日本人が同じ業務をするのであれば外国人も行うことが可能です。

各業務に付随する作業の例には、以下のようなものが挙げられます。

  • 原材料や部品の調達・搬送
  • 各職種の前後における工程作業
  • クレーン・フォークリフトなどの運転
  • 清掃や保守管理

日本人が普段同様の作業をしているなら、同じ作業をさせても構いません。なお、雇用形態は直接雇用のみです。

製造3分野は協議会への加入が必須!

製造3分野での特定技能の受け入れには、協議会への加入が義務付けられています。ここでは、協議会への加入の手順を5つのステップに分けてご紹介します。

  1. 制度についてしっかり理解
  2. 日本標準産業分類番号をチェック
  3. テンプレートをダウンロード
  4. 企業情報を入力
  5. 会員名簿への掲載を確認

製造業特定技能外国人受入れ協議・連絡会への加入は、製造分野で受け入れる際に必須となる条件。しっかりとステップを確認し、スムーズに加入を完了させましょう。それぞれのステップについて、詳しく解説します。

ステップ1|制度についてしっかり理解する!

素形材産業を含めた製造3分野で特定技能の在留資格を得る外国人は、必ず製造業特定技能外国人受入れ協議・連絡会に加入しなければなりません。協議会の目的は、特定技能外国人の適正な受け入れと保護および受け入れの地域差をなくすことです。

協議会の構成員は、連絡を密に取りながら連携し、特定技能の在留資格などの周知、課題の把握、対応策の協議を行うことが求められます。協議会の会員には、以下のような義務があります。

  • 協議・連絡会が行う一般的な指導
  • 報告の徴収
  • 資料の要求
  • 意見の聴取又は現地調査等に対して協力を行う

なお、協議会に必要な協力を行わない場合は、特定技能の在留資格が認められずに受け入れができないことになるので、注意が必要です。

ステップ2|対象の日本標準産業分類の番号の細分類に当てはまるか確認する!

対象の日本標準産業分類の番号の再分類は、以下のとおりです。直近1年以内に製造品出荷額等が発生していることが条件です。

  • 2194 鋳型製造業(中子を含む)
  • 2251 銑鉄鋳物製造業(鋳鉄管,可鍛鋳鉄を除く)
  • 2252 可鍛鋳鉄製造業
  • 2253 鋳鋼製造業
  • 2254 鍛工品製造業
  • 2255 銅・同合金鋳物製造業(ダイカストを除く)
  • 2352 非鉄金属鋳物製造業(銅・同合金鋳物及びダイカストを除く)
  • 2353 アルミニウム・同合金ダイカスト製造業
  • 2354 非鉄金属ダイカスト製造業(アルミニウム・同合金ダイカストを除く)
  • 2355 非鉄金属鍛造品製造業
  • 2424 作業工具製造業
  • 2431 配管工事用附属品製造業(バルブ、コックを除く)
  • 2451 アルミニウム・同合金プレス製品製造業
  • 2452 金属プレス製品製造業(アルミニウム・同合金を除く)
  • 2453 粉末や金製品製造業
  • 2465 金属熱処理業
  • 2534 工業窯炉製造業
  • 2592 弁・同附属品製造業
  • 2651 鋳造装置製造業
  • 2691 金属用金型・同部分品・附属品製造業
  • 2692 非金属用金型・同部分品・附属品製造業
  • 2929 その他の産業用電気機械器具製造業(車両用、船舶用を含む)
  • 3295 工業用模型製造業

対象の日本標準産業分類の番号の再分類に企業の業務が当てはまることを、あらかじめ確認しておきましょう。

ステップ3|テンプレートをダウンロードし、必要情報を記入する!

対象の分類が確認できたら、経済産業省の特定技能外国人材制度(製造3分野)のポータルサイトから、証明書類作成テンプレートをダウンロードし、必要な情報を記入しましょう。

証明として提出しなければならない書類は、以下の通りです。

  1. 製造品及びその用途が確認できる画像と説明文(※1)
  2. 製造品を生産するために用いた設備(工作機械、プレス機等)の画像及び説明文(※1)
  3. 事業実態を確認できる、直近1年以内の証跡画像(上記①の製造品の納品書、出荷指示書、仕入れ書等)

(ポータルサイトから引用:https://www.sswm.go.jp/entry/reception.html)

該当の方は、以下の書類の提出も必要です。

  1. 請負による製造の場合は、『請負契約書の写し』(※2)
  2. 権利等の関係で、製造品等の画像を提出できない場合は、『製造品の画像提出不可の理由書』(様式自由)
  3. その他、製造業特定技能外国人材受入れ協議・連絡会から確認の過程で追加提出の指示があったもの(初回届出時は不要です)

(ポータルサイトから引用:https://www.sswm.go.jp/entry/reception.html)

ポータルサイトには証明書類サンプルも用意されているので、よくチェックして再提出にならないようにしましょう。

ステップ4|フォームの入力画面から企業情報を入力し、申請を行う!

証明書類作成テンプレートをダウンロードし、表示されている全ての項目にチェックを入れると、入会手続きへと進むことができます。フォームの入力ステップは、以下のとおりです。

  1. 法人情報入力
  2. 受入れ事業所情報入力
  3. 特定産業分野情報入力
  4. 入力情報確認
  5. 送信完了

入力中は途中保存ができないため、ある程度時間のあるときに申し込みを行いましょう。また、入力項目はポータルサイトで事前に確認できるので、チェックしておくのも良い方法です。

届出は、事業所ごとに行います。例えば同じ会社の2つの事業所で素形材産業の外国人を受け入れる場合は、2回届出を提出する必要があります。一方、同じ事業所で製造3分野での違う業務で2名を受け入れる場合には届出は1回で済ませることができます。

ステップ5|会員名簿に掲載を確認し、加入完了!

製造業特定技能外国人受入れ協議・連絡会に加入したメンバーは、経済産業省ホームページの会員名簿に掲載されます。名前が確認できたら、加入は完了です。

初めて素形材産業として特定技能外国人を受け入れる企業は、外国人の入国から4ヶ月以内に協議会に加入する必要があります。4ヶ月以内に手続きを行わないまたは協議会への協力が行われないと、受け入れが不可になってしまいます。外国人が入国したらすぐに協議会加入への準備を始めましょう。

なお、2回目以降の受け入れで、製造業特定技能外国人材受入れ協議・連絡会の構成員となる旨の誓約書を提出して受け入れられた特定技能外国人の在留資格更新の場合は、協議会の構成員であることの証明書が必要になります。

素形材産業で働く人材を探すには?

素形材産業は、人手不足が課題の業務。どのように働く人材を探したら良いのでしょうか?人材探しのポイントは、以下の4つです。

  1. 日本語試験と評価試験合格が必要
  2. コロナの影響で海外試験が延期
  3. 技能実習2号終了者は試験免除
  4. 帰国困難の特定活動での就職も

政府は製造分野での労働力を確保しようと様々な制度を考えていますが、コロナウイルスの感染拡大もあり、思うように人材確保が進んでいないのが現状です。素形材産業での人材探しについてのそれぞれのポイントについて、詳しく解説します。

日本語の試験と製造分野特定技能1号評価試験への合格が必要!

素形材産業を含む製造3分野の受け入れをするためには、特定技能外国人が日本語の試験と製造分野特定技能1号評価試験を合格することが必要です。

製造分野特定技能1号評価試験は19種の業務区分ごとに試験が課され、素形材産業ではその内以下の13種の試験が行われます。

  1. 鋳造
  2. 鍛造
  3. ダイカスト
  4. 機械加工
  5. 金属プレス加工
  6. 工場板金
  7. めっき
  8. アルミニウム陽極酸化処理
  9. 仕上げ
  10. 機械検査
  11. 機械保全
  12. 塗装
  13. 溶接

それぞれの業務区分についての実技試験と学科試験があり、実技試験は100点満点中60点、学科試験は100点満点中65点以上で合格となります。

日本語試験は、以下のいずれかに合格する必要があります。

  • 国際交流基金日本語基礎テスト
  • 日本語能力試験のN4以上

日本語試験では、日常会話が理解できる程度の日本語力がテストされます。

コロナウイルス感染症拡大で、海外での試験が延期!

素形材産業での特定技能を取得するための製造分野特定技能1号評価試験は、国内でも海外でも受けることができます。しかしコロナウイルスの感染拡大に伴い、2021年8月に予定されていたフィリピンでの試験は延期になりました。

試験は溶接以外18種と溶接の2種に分けられており、2021年10月後半から海外でも試験が再会される予定です。今後の予定は、製造3分野ポータルサイトでチェックできるので、随時確認してみましょう。2021年10月現在の試験日程は、以下のとおりです。

【溶接以外18区分】

  • インドネシア会場:2021年10月26日(火)・27日(水)・28日(木)
  • タイ会場:2021年11月7日(日)
  • 日本会場:2021年11~12月、2022年1~2月を予定

【溶接】

  • 名古屋会場:2021年11月2日(火)

技能実習2号修了者は試験が免除!

素形材産業における特定技能の取得に必要になる製造分野特有の評価試験ですが、技能実習2号を良好に修了した方なら、試験が免除になります。

さらに日本語試験も免除されるので、試験を受けずに特定技能1号の資格を取得可能。最長5年の在留期間を伸ばすことができます。ただし特定技能での業務内容は、技能実習生の時に従事していたものと根幹となる業務に関連性のあるものでなければなりません。

例えば、手溶接や半自動溶接などの溶接作業を行っていた技能実習生は、溶接分野の特定技能として在留資格を取得することができ、技能試験および日本語能力試験が免除されます。

現在の特定技能外国人は、技能実習2号修了者が多いのが現状。技能試験および日本語能力試験が免除になることも、移行しやすい理由なのでしょう。

帰国困難の特定活動で、働きながら試験合格を目指すことも可能

新型コロナウイルスの感染拡大により帰国が困難になった技能実習生には、特別措置として「特定活動」という在留資格が6ヶ月間与えられることになりました。その間は就労が可能なため、以前働いていた企業でそのまま働きながら試験の準備をすることもできます。

特定活動の許可をもらうためには、技能実習の就労時と同じ受入れ機関・経理団体を使うのかにより、手続きの方法が異なります。また、帰国困難で日本で生計を立てるのが困難な方に関しても、2020年12月から資格外活動として週28時間までのアルバイトなどが可能になりました。

もし帰国ができなくても、それを特定技能取得へのチャンスへと転換することは可能。この時期を逃さず、働きながら素形材分野への試験合格を目指したい方もいるはずです。

まとめ|素形材産業分野の雇用で人手を確保しよう!

素形材産業分野は、日本のものづくりには欠かせない業務。素経済産業での特定技能の雇用は、製造業の人手不足を解消するためのキーとなります。素経済産業分野の特定技能取得には、製造分野での評価試験に合格する必要があります。

しかし、試験は関連業種で技能実習を良好に修了していたら免除に!さらに、帰国困難の特定活動でも試験合格を目指せます。製造業を活性化させる素経済産業での特定技能外国人雇用で、必要な人手を確保しましょう。

大房行政書士法人代表 / 株式会社KMT取締役
行政書士 大房明良 監修

東京都大田区蒲田に生まれ、大学在学中に訪れたカンボジアで学校建設ボランティアに参加し、貧困問題に興味を持つ。2016年に行政書士事務所を開業し、カンボジア語が話せる行政書士として入管業務を専門に行う。現在は特定技能申請をメイン業務とし、2023年5月現在で申請数は4500件を超える。
また、取締役を務める株式会社KMTでは、約600名の特定技能外国人の支援を行っている。