「外食業で特定技能外国人を受け入れたいけど、何から始めればいい?」と悩んでいる外食業の経営者さんはいませんか?外食業は労働時間が長いイメージもあり、なかなか人手が集まらない職種。コロナの影響も続き、経営に苦労している方も多いでしょう。

そんな外食企業を救うべく誕生したのが特定技能。今回は、外食業の特定技能について、受入れ要件などを徹底解説します。受入れのステップも詳しく紹介するので、読めば外食分野での特定技能受入れのイメージが湧き、受入れやすくなりますよ。

特定技能とは?2019年に施行された外国人雇用制度!

特定技能という在留資格があると聞いたけれど、どのような制度なのか分からない方も多いでしょう。特定技能とは、2019年に施行された外国人雇用制度。国内で生産性アップや人材確保への取り組みを行っても人手不足が解消されない分野で、外国人を雇用する制度です。

特定技能の対象となる分野は、以下の14種です。

  1. 介護業
  2. ビルクリーニング業
  3. 素形材産業
  4. 産業機械製造業
  5. 電気・電子情報関連産業
  6. 建設業
  7. 造船・舶用業
  8. 自動車整備業
  9. 航空業
  10. 宿泊業
  11. 農業
  12. 漁業
  13. 飲食料品製造業
  14. 外食業

特定技能の目的は、日本の人手不足の解消。外国への知識や技能の移転が目的の技能実習とは違い、日本人と同じように労働力として働いてもらえるのが大きな特徴です。特定技能1号では合計最大5年間、特定技能2号では制限無く日本で就労ができます。

外食業において特定技能ができた背景

外食業においては、セルフレジ・キャッシュレスサービス・飲食店の営業時間短縮など、身近なところで変化を感じている方も多いでしょう。これは、コロナウイルス感染拡大防止のためでもありますが、同時に外食業の生産性アップと人材負担軽減への取り組みの一部でもあります。

国内ではこのような取り組みを行っているにもかかわらず、外食業で必要な人材を確保できていない状況です。しかし、外食業は手作りならではの価値があることなどから機械化にも限度があり、一定の人材を確保する必要があります。

そこで誕生したのが特定技能の「外食業」。優秀な外国人を雇用して外食業で働いてもらうことで、人手不足を解消しようとする試みが行われているのです。

特定技能「外食業」でできる業務内容とは?

1号特定技能外国人が外食業で従事できる業務は、以下のとおりです。

  • 外食業全般(飲食物調理、接客、店舗管理)

また、同業務で日本人が従事することになる以下のような業務も付随的に従事させても構いません。

  • 店舗において原材料として使用する農林水産物の生産
  • 客に提供する調理品等以外の物品の販売等

直接雇用で、フルタイム(労働日数が週5日以上かつ年間217日以上でかつ週労働

時間が30時間以上)の業務を行う必要があります。以下のような事業所で受入れが可能です。

  • 飲食店
  • 持ち帰り飲食サービス業
  • 配達飲食サービス業
  • 給食事業等の飲食サービス業

レストランもデリバリー専門店も対象ですが、風俗営業や性風俗関連特殊営業を行う事業所は認められず、接待を伴う業務もさせてはいけません。

「外食業」で特定技能の受入れパターンとは?

外食業で特定技能を受け入れるパターンは、以下の2種類です。

  • 【1】技能試験と日本語能力試験
  • 【2】技能実習2号の修了者

他分野と同じく、外食業で特定技能を取得するためには、技能試験と日本語能力試験の両方に合格しなければなりません。しかし、その他の取得ルートもあります。どのようなルートがあるのか知っておくことで、受入れパターンを検討しやすくなりますよ。

ここでは、それぞれの受入れパターンについて、詳しく解説します。

【パターン1】技能試験と日本語能力試験

外食業で特定技能を新たに取得しようとする外国人は、技能試験と日本語試験に合格する必要があります。国内又は国外で実施される以下の試験に合格しなければなりません。

  • 「外食業特定技能1号技能測定試験」
  • 「日本語能力試験(JLPT)(N4以上)」又は「国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)」

技能実習には外食分野がなかったので、他の分野とは違い試験に合格して資格を取得する方が多いのが特徴。平成30年11月16日に「医療・福祉施設給食製造」の技能実習が追加されましたが、まだ修了した方はいません。

そのため、現在全ての外食業における特定技能外国人は、試験に合格して受入れを成功させたパターンです。

【パターン2】技能実習2号の修了者

他分野同様、外食業でも試験に合格して特定技能を取得するパターンの他、技能実習2号を修了して特定技能を取得するパターンがあります。当該業務で技能実習2号を良好に修了した場合は、技能試験も日本語能力試験も免除になります。

他分野では技能実習2号を修了して特定技能を取得するパターンが多いですが、外食業ではないのが特徴。しかし新たに該当分野が追加されたことで、今後技能実習からの移行パターンも徐々に増えてくることでしょう。

外食業では、近年食品衛生法の改定により令和2年4月からは飲食店でもHACCP(食品衛生管理システム)による衛生管理が求められています。技能実習2号修了者はHACCPの知識も習得しており、特定技能として活躍する準備が整っている方々です。

試験日程や開催地について詳しく説明!

外食業特定技能1号技能測定試験は、一般社団法人外国人食品産業技能評価機構(OTAFF

が実施します。2021年11月現在公表されている国内試験の日程は、以下のとおりです。

試験日 2022年1月12~31日
開催地 北海道、宮城県、埼玉県、東京都、愛知県、兵庫県、広島県、愛媛県、福岡県、鹿児島県、沖縄県
1次募集受験申請期間 2021年11月29日(月)AM10:00 ~ 2021年12月1日(水)PM5:00

*11月18日までにマイページに登録済みの方のみ

2次募集受験申請期間 2021年12月8日(水)AM10:00 ~ 2021年12月9日(木)PM5:00
合格発表 2月中旬

申し込みには、マイページへの登録が必要です。審査に5日程度かかるので、早めの登録が必要。1次申し込みで空きがある場合のみ2次募集で申し込みができます。

マイページへの登録はこちら

海外試験は、ネパール、インドネシア、カンボジア、タイ、フィリピンで実施予定。問題の内容は国内試験と同じです。

OTAFFのホームページからも試験の詳しい日程や内容がチェックできるので、随時チェックしてみてください。

国内試験日程はこちら

国外試験日程はこちら

外食特定技能協議会の加入方法について解説!

外食分野の特定技能外国人を受け入れる受入れ機関は、外食特定技能協議会に加入しなければなりません。登録支援機関に支援を委託している場合は、登録支援機関の加入も義務付けられています。外国人を受け入れた日から4ヶ月以内に加入しておきましょう。

加入申請は、農林水産省のホームページから行えます。

入会フォームはこちら

上記のフォームに必要事項を入力し、そのまま送信して申請しましょう。その後事務局からメールが届きます。入管に提出して誓約書のコピーをPDFなどで添付し、メールに返信しましょう。

審査にかかる期間は、通常2週間~1ヶ月程度。承認されると、加入証がメールで送付されます。加入手続きを行っていないと、特定技能の資格が認められなくなってしまうので、注意が必要です。

【必見】受入れの流れ8ステップを徹底解説!

外食業で特定技能外国人を受け入れるための要件が分かったところで、具体的な受入れステップについても確認しておきたいところ。チェックしておきたい受入れの流れは、以下の8ステップです。

  1. 人材募集~採用決定
  2. 雇用条件を確定させる!
  3. 入管提出の申請書類の準備
  4. 外国人が現地でビザ申請
  5. 転入手続きや口座開設を済ませる
  6. 生活オリエンテーションの実施
  7. 就業開始
  8. 協議会加盟&定期面談・報告

ホールでもデリバリーでも働くことができる特定技能の外食業。受入れのステップを確認して受入れを実現させましょう!それぞれのステップについて、詳しく解説します。

①人材募集~採用決定|約1か月はかかる

まずは、特定技能の外国人材を探すことから始めましょう。求人サイトや外国人が登録している外国人材紹介会社などで求人をすると良いでしょう。以下のような方が、特定技能「外食業」で雇用できる可能性のある人材です。

  • 留学生
  • 医療・福祉施設給食製造業務の元技能実習生
  • 他の業務の元技能実習生

人材の募集をかけてから採用決定までは、約1ヶ月はかかります。特定技能で外国人雇用を考えたら、すぐに募集をかけましょう。特定技能の外食業で採用する場合は、技能試験と日本語能力試験に合格している必要があります。

技能試験の合格証書はOTAFFのマイページに掲載されるようになったので、事前に確認が可能。採用する際にチェックしておきましょう。

②雇用条件を確定させる!事前ガイダンスの実施

採用が決まったら、事前ガイダンスで労働条件などの説明を行いましょう。事前ガイダンスは特定技能外国人を雇用する際に必ず行わなければならない支援のひとつ。3時間程度のガイダンスを、外国人の十分に理解できる言語で行う必要があります。

現地語に精通した人材がいない場合などは、登録支援機関に業務を委託することもできます。技能実習からの移行の場合でも、最低1時間はガイダンスを実施し、労働条件や生活全般の説明を行いましょう。

また、特定技能外国人には健康診断をしてもらいましょう。外国語の診断書の場合は日本語に訳さなくてはならないので、採用後なるべく早く健康診断の受診を勧めておくのがおすすめ。診断書は3ヶ月以内のものが必要です。

③入管へ提出する申請書類の準備

次に、地方出入国在留管理局(入管)に提出する特定技能の申請書類の準備を進めます。特定技能の取得は在留資格認定証明書交付申請」という手続き。外国人が海外にいる場合と日本にいる場合で申請の仕方や審査にかかる期間が少し違います。

【外国人が海外在住の場合】

  • 申請人:受入れ機関
  • 審査期間の目安:1~3ヶ月

【外国人が日本在住の場合】

  • 申請人:外国人本人
  • 審査期間の目安:2週間~1ヶ月

申請手続きは、外国人が国内・国外どちらの場合でも登録支援機関に業務を代行してもらうこともできます。必要書類など、用意するものがたくさんあって揃えるのが大変だと感じる方や、申請に関する知識もなくて不安な方は、登録支援機関への委託を考えてみるのも良いでしょう。

④入管許可後、外国人が現地の日本大使館でビザ申請(国外の場合)

特定技能を取得しようとする外国人が国外にいる場合は、入管からの許可を得た後に外国人本人にビザの申請を依頼する必要があります。受入れ機関は、在留資格認定証明書が交付されたら国外の当該外国人に証明書を送付しましょう。

外国人には、届いた証明書を現地にある最寄りの日本大使館に持っていくよう伝え、本人にビザの申請をしてもらいます。ビザの申請は現地で本人が行う必要があるので注意が必要です。

ビザの申請から交付までは、数日の場合もあれば2週間程度かかる場合もあります。在留資格認定証明書の有効期間は3ヶ月なので、期限切れにならないようになるべく早く手続きを行いましょう。ビザが許可されるとパスポートにビザが貼り付けられます。

もし特定技能を取得しようとする外国人が日本にいる場合は、このステップは省略して構いません。

⑤入国後、転入手続きや口座開設を済ませる

ビザが発行されて外国人が無事入国できたら、次は転入手続きや口座の開設を行います。住所登録のためには、居住地の市区町村役場に転入届けを提出する必要があります。居住地が決まってから2週間以内に、居住地の書かれた特定技能外国人の在留カードまたはパスポートを持参して役場に同行しましょう。

また、日本での賃金受け取りなどのために口座の開設も済ませておく必要があります。携帯電話やライフラインなどの契約も順番に済ませておきましょう。

まだ日本に来て日が浅い外国人は特に、日本での生活が心配なもの。空港から事業所や居住地までの送迎や口座の開設支援は義務的に必要な支援なので、必ず付き添うようにしましょう。なお、すでに日本で生活している外国人の場合は、このステップも省略できます。

⑥生活オリエンテーションの実施(8h)

生活上の契約手続きがひと段落したら、次は生活オリエンテーションを行う必要があります。生活オリエンテーションは、支援計画の中でも大きな位置を占める行事。特定技能外国人が日本で安心して就労・生活できるように行います。

実施言語は特定技能外国人の十分に理解できる言語で行う必要があり、場合によってはテレビ電話や動画視聴によるものでも構いません。ただ、外国人の質問には答えられる環境を整えておく必要があります。

生活オリエンテーションで日本のルールやマナー、雇用条件などについて十分に情報を共有するために、実施時間は8時間以上が原則。技能実習2号を終了して特定技能に移行する場合でも、情報を再確認するためにも4時間以上のオリエンテーションで十分に現状を理解できるようにしておくことが必要です。

⑦就業開始

生活オリエンテーションで十分に情報が提供できたら、いよいよ就業開始です。就業開始後に受入れ機関が引き続き行うべき支援は、以下のようなものです。

  • 日本語学習機会の提供
  • 相談や苦情への対応
  • 日本人との交流促進

これらの支援も、登録支援機関に業務委託することができます。

飲食店での接客業務は、技能実習では適用されていません。日本で今まで働いていたレストランのホールスタッフは、留学生か日本人配偶者などの在留資格でした。留学生は週28時間以内の就労制限があり、卒業したら帰国してしまいます。

しかし、今回特定技能で外食業が認められたことにより、外国人が飲食店で自由に働けるようになりました。特定技能の外国人は外食業に専念できるので、シフトを気にせず雇用が続けられます。

⑧協議会加盟&3か月に1回の定期面談・報告の実施

特定技能外国人を受け入れたら、受入れ機関は受入日から4ヶ月以内に協議会に加盟しましょう。そして3ヶ月に1度以上、定期面談と報告を実施し続ける必要があります。

特定技能外国人だけでなく受入れ機関も、契約通りの雇用をしていることを定期的に確認することが大切。支援責任者などが特定技能外国人と定期的に面談を実施し、労働法違反などが発覚した場合は通報しなければなりません。

面談は直接会って行うことが原則ですが、新型コロナウイルス感染拡大の影響のため、収束するまでの間はSkypeやZoomなどを使った面談も認められています。登録支援機関に業務を委託している場合は、受入れ機関と登録支援機関の両方が定期報告書を提出しなければなりません。

まとめ|受入れのサポートはKMTにお任せください!

受入れ機関としては、外食業で特定技能外国人を雇用できるのは大きなメリットです。これまで留学生を受け入れていた場合は、時間制限によりシフトを組むのが大変だったはず。しかし、特定技能外国人なら飲食店で専門的に活躍できるので、シフトを組む必要もなく中長期での雇用が可能です。

とはいえ、支援計画の作成など、特定技能外国人を初めて受け入れる経営者の方は不安も多いはず。もし手続きにミスがあったら、在留資格が不認可になってしまうこともあります。受入れの手続きが大変そうだと感じるなら、登録支援機関として登録済みのKMTにお任せください。

KMTは特定技能外国人の受け入れ実績が多数。外国人雇用を精一杯サポートするので、外食業での受入れを考えているならまずは弊社にご相談ください。

大房行政書士法人代表 / 株式会社KMT取締役
行政書士 大房明良 監修

東京都大田区蒲田に生まれ、大学在学中に訪れたカンボジアで学校建設ボランティアに参加し、貧困問題に興味を持つ。2016年に行政書士事務所を開業し、カンボジア語が話せる行政書士として入管業務を専門に行う。現在は特定技能申請をメイン業務とし、2023年5月現在で申請数は4500件を超える。
また、取締役を務める株式会社KMTでは、約600名の特定技能外国人の支援を行っている。