「この職種で特定技能の受入れってできる?」と悩んではいませんか?特定技能の外国人を受け入れるためには、受入れ可能な職種である必要があります。しかし、業種ごとに受入れ可能な職種が異なるので混乱してしまうことも。

そこで今回は、特定技能で受入れができる職種について詳しく解説します。分野ごとの業務内容や受入れ人数などについても分かりやすく解説。事前にチェックしておくことで、スムーズな受入れができるようになりますよ。

特定技能とは?外国人労働者の新しい在留資格!

特定技能は、日本の人手不足を補うために新しく誕生した在留資格です。専門技能の習得が主な目的の技能実習と違い、特定技能はすでに習得した技能を日本で使える資格。受入れ機関は、外国人を日本人と同じような労働者として雇うことができるので人気があります。

特定技能には1号と2号があり、特定技能というと普通は1号のことを指します。特定技能1号には通算5年間の期限が与えられていますが、2号には期限の制限がありません。特定技能は、2号を取得できれば日本に永久に滞在できるため、永住権の取得につながる魅力的な在留資格といえるでしょう。

現在2号が取得できる分野は、建設と造船・舶用工業のみ。しかし、2022年度内にはすでに長期就労の在留資格がある介護業を除く全ての職種で、2号が取得できるようになる見込みです。

【一覧】全12分野で受入れ可能な職種を紹介!

特定技能には、全部で12の分野があります。特定技能で受入れ可能な分野は、以下の12分野です。

  1. 建設
  2. 造船・舶用工業
  3. 介護
  4. 飲食料品製造
  5. 農業
  6. 素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野
  7. 外食業
  8. ビルクリーニング
  9. 漁業
  10. 自動車整備
  11. 宿泊
  12. 航空

製造3分野(素形材産業・産業機械製造業・電気電子情報関連製造業)は、受入れ人数の調整のため「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野」に統合されました。

受入れを行う企業の方は、まずは職種が上記の12分野のいずれかに当てはまることを確認しておきましょう。また、上記の12分野ごとに、従事できる業務内容が異なります。技能実習生を特定技能に移行することは可能ですが、分野と業務内容が特定技能でも受入れ可能かどうかはチェックする必要があります。

【分野別】従事する業務内容と受入れ人数は?

それでは、分野ごとに異なる業務内容をご紹介します。紹介するのは、以下の全12分野です。

  1. 介護|厚生労働省
  2. ビルクリーニング|厚生労働省
  3. 素形材産業・産業機械製造業・電気電子情報関連産業|経済産業省
  4. 建設|国土交通省
  5. 造船・舶用工業|国土交通省
  6. 自動車整備|国土交通省
  7. 航空|国土交通省
  8. 宿泊|国土交通省
  9. 農業|農林水産省
  10. 漁業|農林水産省
  11. 飲食料品製造業|農林水産省
  12. 外食業|農林水産省

2022年9月現在、各分野で従事できる業務と受入れ人数を紹介します。各分野を管轄する省庁も記載してあるので、手続きの際の参考にしてみてください。

介護|厚生労働省

【対象業務】

  • 身体介護など(利用者の心身の状態に応じた入浴、排せつの解除など)
  • 付随する支援業務(レクリエーションの実施、機能訓練の補助など)

【対象とならない業務】

  • 訪問介護などの訪問系サービス

【受入れ人数】

1つの事業所にいる日本人などの常勤介護職員の数が上限。「日本人など」には、以下のような方のことを指します。

  • 日本人の介護職員
  • EPA介護福祉士(EPAで介護福祉士を取得した者)
  • 在留資格「介護」
  • 永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等の在留資格を所持している者

「日本人など」にカウントされないのは、以下のような方です。

  • 技能実習生
  • 留学生
  • EPA介護福祉士候補者

1つの事業所で、特定技能外国人が日本人などの常勤勤務者を超えてはいけないことを覚えておきましょう。

ビルクリーニング|厚生労働省

【対象業務】

  • ビルクリーニング作業(作業の段取り、資機材の取扱及び整備作業、什器及び備品等の取扱作業)
  • クリーニング作業(日常清掃作業、トイレ定期清掃作業を除く定期清掃作業)
  • ベッドメイク作業(必要に応じて)
  • 安全衛生作業(雇入れ時などの安全衛生教育、作業開始前の安全確認作業、 整理・整頓・清掃・清潔・習慣の遵守、作業者間の安全確認作業、保護具及び安全標識・装置の確認作業、身だしなみを含む服装の安全点検作業、ビルクリーニングにおける事故・疫病予防、労働衛生上の有害性を防止するための作業、異常時の応急措置を修得するための作業、報告・連絡・相談(ホウ・レン・ソウ)の遵守)

【対象とならない業務】

  • ビル設備管理作業
  • 施設警備作業
  • ハウスクリーニング作業
  • 受付業務全般
  • 関連作業及び周辺作業のみ

【受入れ人数】

向こう5年間の受入れの上限は、最大37,000人です。なお、事業所ごとの受入れの上限はありません。

素形材産業・産業機械製造業・電気電子情報関連産業|経済産業省

【対象業務】

  • 鋳造
  • 鍛造
  • ダイカスト
  • 機械加工
  • 金属プレス加工
  • 工場板金
  • めっき
  • アルミニウム陽極酸化処理
  • 仕上げ
  • 機械検査
  • 機械保全
  • 塗装
  • 溶接
  • 鉄工
  • 電子機器組立て
  • 電気機器組立て
  • プリント配線板製造
  • プラスチック成形
  • 工業包装

また、事業所の業務が対象の産業分類番号に該当している必要があります。

対象の産業分類番号をチェック

【受入れ人数】

5年間の最大受入れ見込み数は、49,750人です。なお、事業所ごとの受入れの上限はありません。

建設|国土交通省

【対象業務】

従来の19の業務区分が精査され、以下の3種に統合されました。

  1. 土木
  2. 建築
  3. ライフライン・設備

これにより、より多くの建設業での業務が受入れ対象になりました。

【受入れ人数】

建設業は、1つの事業所で受入れできる人数が制限されている分野のひとつ。受け入れる1号特定技能外国人と外国人建設就労者との合計数が、常勤職員の数を超えてはいけません。

造船・舶用工業|国土交通省

【対象業務】

  • 溶接(手溶接、半自動溶接)
  • 塗装(金属塗装作業、噴霧塗装作業)
  • 鉄工(構造物鉄工作業 )
  • 仕上げ(治工具仕上げ作業、金型仕上げ作業、機械組立仕上げ作業)
  • 機械加工(普通旋盤作業、数値制御旋盤作業、フライス盤作業、マシニングセンタ作業)
  • 電気機器組立て(回転電機組立て作業、変圧器組立て作業、配電盤・制御盤組立て作業、開閉制御器具組立て作業、回転電機巻線製作作業)

なお、上記全ての業務で技能実習2号からの移行が可能です。

【受入れ人数】

令和5年度末までで、最大1万1,000人が上限となっています。なお、事業所ごとの受入れの上限はありません。

自動車整備|国土交通省

【対象業務】

  1. 自動車の日常点検整備
  2. 定期点検整備
  3. 特定整備
  4. 特定整備に付随する業務

技能実習と同じく、雇用する側は「地方運輸局長から認証を受けた自動車特定整備事業場」である必要があります。しかし技能実習と違い、「対象とする装置の種類が限定されている事業場」や「対象とする自動車の種類が二輪自動車のみの事業場」も自動車整備分野の業務に該当するので、幅広い事業所で受入れが可能です。

【受入れ人数】

当初は令和元年度からの5年間で最大7,000人を受け入れる見込みでした。しかしコロナウイルス感染症の拡大による経済状況を踏まえ、令和5年度末までは最大 6,500人が受入れの上限となっています。

事業所ごとの受入れの上限はありません。

航空|国土交通省

【対象業務】

  1. 空港グランドハンドリング(地上走行支援業務、手荷物・貨物取扱業務等)
  2. 航空機整備(機体、装備品等の整備業務等)

1は、航空機地上走行支援業務や手荷物・貨物取扱業務の他、手荷物・貨物の航空機搭降載業務や航空
機内外の清掃整備業務が対象となります。

2は、運航整備,機体整備や装備品・原動機整備等において行う航空機の機体、装備品又は部品の整備業務全般が対象となります。

それぞれの業務に技能評価試験があり、就業予定の外国人が試験に合格していることが受入れの条件のひとつ。専門的な知識と経験が必要なので、特定技能で受入れ予定の外国人が合格に向けて勉強できる環境を整えておくと良いでしょう。

【受入れ人数】

5年間の受入れの上限は、最大2,200人。事業所ごとの受入れ人数の制限はありません。

宿泊|国土交通省

【対象業務】

  • 宿泊施設におけるフロント
  • 企画・広報、接客及びレストランサービス等の宿泊サービスの提供に係る業務

【対象とならない業務】

  • 接待

簡易宿所営業や下宿・ラブホテル営業などは対象とならないので、注意が必要です。受入れ機関は、風俗営業に関わる法律ではなく、旅館業法の許可を得て営業していなければなりません。受入れの際は、確認のため「旅館業許可証(旅館・ホテル営業許可書)」が必要になるので準備しておきましょう。

【受入れ人数】

令和5年度末までの当面の受入れ上限は、1万2,000人。事業所ごとの受入れの上限はありません。

農業|農林水産省

【対象業務】

  • 耕種農業全般
  • 畜産農業全般

技能実習では職種が限られていましたが、特定技能では耕種農業および畜産農業の全ての業務が対象になるので比較的受け入れやすいでしょう。

【受入れ人数】

農業分野では、令和5年度末までの当面の受入れ見込数を最大3万6,500人と設定しています。なお、事業所ごとの受入れ人数に上限はありません。

技能実習では受入れの上限が設けられており、例えば農業を2人で営んでいる場合は2人の受入れが上限。特定技能では何人でも必要な分だけ受入れが可能です。対象業務が幅広く、より多くの外国人を受け入れることができるので、農業分野での特定技能の受入れは受入れ機関にとってメリットが多いですね。

漁業|農林水産省

【対象業務】

  • 漁業(漁具の製作・補修、水産動植物の探索、漁具・漁労機械の操作、水産動植物の採捕、漁獲物の処理・保蔵、安全衛生の確保等)
  • 養殖業(養殖資材の製作・補修・管理、養殖水産動植物の育成管理、養殖水産動植物の収獲(穫)・処理、安全衛生の確保等)

漁業分野は、就労予定の業務により受ける試験も異なるのが特徴。「漁業」と「養殖業」でそれぞれ違った技能試験があります。

【受入れ人数】

コロナウイルス感染拡大による経済状況を踏まえ、令和5年度末までは当面の受入れ見込数を最大6,300人としています。なお、事業所ごとの受入れの上限はありません。

飲食料品製造業|農林水産省

【対象業務】

  • 飲食料品製造業全般(飲食料品(酒類を除く。)の製造・加工、安全衛生)

特定技能での対象業務は幅広く、飲食料品を製造する業務であれば加工や安全衛生まで行うことができます。

【受入れ人数】

令和5年度末までの当面の受入れ見込数は、最大87,200人です。なお、事業所ごとの受入れの上限はありません。

受入れが拡大している原因のひとつとして、技能実習生からの移行が増えていることが挙げられます。すでに日本語や日本の文化に慣れた外国人の方がより幅広い業務で継続して特定技能として働けるのが、受入れが増えている主な理由。今後さらに飲食料品製造業分野での受入れは拡大していくことでしょう。

外食業|農林水産省

【対象業務】

  • 外食業全般(飲食物調理、接客、店舗管理)

接客も認められているので、ウェイトレスやウェイターとしての雇用も可能です。ただ、製造した飲食物を提供する相手が消費せずに不特定の消費者に販売する場合は、特定技能の外食業として認められません。風俗営業や接待、風俗関連業を営む事業所での就労なども認められないので、注意が必要です。

【受入れ人数】

令和5年度末までの当面の受入れ見込数は、最大3万500人とされています。なお、事業所ごとの受入れの上限はありません。

【Q&A】職種についての疑問をスッキリ解決!

各業種ごとの受入れ可能な業種は分かったけれど、他にも疑問がある方は多いはずです。そこでここでは、特定技能の職種に関する気になる疑問に答えていきます。今回解答する質問は、以下の3つです。

  1. 技能実習から職種の変更はできる?
  2. 今後職種の追加はあり得る?
  3. 登録した職種以外の業務はできる?

職種についての疑問をすっきりさせて、受入れ体制を整えましょう。それぞれのよくある疑問に分かりやすく解答していきます。

技能実習時から職種の変更はできる?条件が揃えば可能!

技能実習生から特定技能に移行する場合は、職種の変更ができるのかが気になります。技能実習からの職種の変更は、条件が揃えば可能です。

職種を変える場合には、特定技能で就労予定の外国人が希望の職種の技能試験に合格することが条件です。同じ事業所で同じ分野で働く場合でも、職種が違う場合は試験を受けて合格する必要があります。例えば、同じ建築分野でも職種を土木から建築に変える場合には、再度試験に合格しなければなりません。

技能実習時から職種の変更はできますが、ハードルが高いので同じ職種で移行する方がほとんど。しかし、別職種でも働けるので、希望の職種があるなら諦めることはありません。職種を変更して特定技能を取得したいなら、試験日程などを前もって確認しておくと良いでしょう。

職種の追加はあり得る?追加の可能性あり!

特定技能制度は、出入国在留管理庁により定期的に見直し・改善がされています。今後の職種の追加が検討されている分野は、以下の3種です。

  1. コンビニ
  2. トラック運転や配達荷物の仕分け
  3. 産業廃棄物処理

いずれも、日本人だけでは人手が足りずに苦労している職種。いずれも追加が検討されながらも、新型コロナウイルス感染拡大の影響など様々な問題があり、未だ追加されていません。分野ごとの職種も検討のうえ追加される可能性があるので、新たな職種の追加に期待したいところです。

登録した職種以外の業務には従事できない?

特定技能外国人は、登録したのと違う分野での業務には従事させることができません。ただ、メインの業務の他、各分野で他の日本人が通常行うのと同等の関連業務には従事することができます。

例えば、介護分野では身体介護やレクリエーションなどがメインの業務ですが、当該事業所でお知らせ等の掲示物の管理や物品の補充などは関連業務として行っても構いません。ただ、関連業務がメインになってしまうことは認められていないので注意が必要。あくまで関連業務なので、主な業務として働かせることはできません。

受入れ機関は、違法にならないためにも特定技能外国人にどのような業務をさせて良いのか知っておくことが大切です。従事できる業務は、各分野の管轄省庁により決められているので、問い合わせてみると良いでしょう。

まとめ|即戦力となる外国人を積極的に受け入れよう!

特定技能外国人は、企業の即戦力となる大切な人材になります。積極的に受け入れることで、人手不足が解消できて企業が軌道に乗る第一歩となるはず。各分野ごとに対象の職種があるので、まずは対象職種にあてはまるのか確認しておくことが大切です。

また、受入れ可能人数も確認しておくのがおすすめ。「介護」と「建設」の2分野のみ、1つの事業所に対して受入れ人数の上限があるので、複数人の受入れを考えているならチェックしておくと良いでしょう。

職種と受入れ人数の確認が済んだら、受入れ体制を整えましょう。何から始めて良いのか分からない場合は、登録支援機関にサポートを委託することも可能。KMTでは受入れに関する全てのサポートを精一杯行いますので、まずはご相談ください。

大房行政書士法人代表 / 株式会社KMT取締役
行政書士 大房明良 監修

東京都大田区蒲田に生まれ、大学在学中に訪れたカンボジアで学校建設ボランティアに参加し、貧困問題に興味を持つ。2016年に行政書士事務所を開業し、カンボジア語が話せる行政書士として入管業務を専門に行う。現在は特定技能申請をメイン業務とし、2023年5月現在で申請数は4500件を超える。
また、取締役を務める株式会社KMTでは、約600名の特定技能外国人の支援を行っている。