建設
FITS(一般財団法人国際建設技能振興機構)とは?巡回指導あり?役割について解説!

建設分野の受け入れを考えている企業主さんは、FITSというワードが気になっているのではないでしょうか?受け入れ時に気になるFITSは、特定技能外国人をサポートする機関ですが、具体的には何をしているのかよくわからない方も多いでしょう。

そこでこの記事では、FITSについて徹底的に解説!巡回指導や講習があるのは本当か、役割は何なのかについても解説するので、ぜひ参考にしてみてください。

FITSとは?特定技能外国人の適正就労監理機関

FITSとは?特定技能外国人の適正就労監理機関

FITS(般財団法人国際建設技能振興機構)は、特定技能外国人の適正な就労をサポートする機関です。FITSは、適切な就労はもちろん、特定技能外国人が不安のない生活ができるような支援もしています。FITSとは何なのか知るために、まずは以下の2点を押さえておきましょう!

  • 特定技能「建設」の正しい雇用をサポート
  • 講習受講や巡回指導は建設業の受入に必須!

FITSがどんな機関なのか知っておくことで、受け入れがスムーズになるはず。FITSを知るための2つのポイントを、詳しく解説します。

特定技能「建設」の正しい雇用をサポート

FITSは、建設分野をはじめとする特定技能外国人の受け入れや雇用を正しくサポートするために、生まれた機関。国土交通大臣より適切な就労環境を保持させる能力があると認められた建設分野の「適正就労監理機関」で、平成27年3月からは国土交通省の委託により建設分野の特定技能外国人を正しく雇用して育成するためのサポートをしています。

受け入れ機関としては、ややこしく感じてしまうこともありますが、FITSは適正な雇用を続けるために必要な機関。FITSのおかげで安心して建設の仕事に集中ができ、必要な技能の習得ができるのです。FITSは、建設分野で働く特定技能外国人が適切な労働条件で働いているのか、さらには生活面で苦労をしていないかを定期的にチェックしています。

FITSの講習受講や巡回指導は建設業の受入に必須!

FITSは、特定技能外国人への受入後講習や巡回指導を行っています。受入後講習の受講や巡回指導を受けることは、建設分野での特定技能外国人の受け入れに必要です。建設分野の受け入れは面倒だと感じる方も多いでしょう。しかし、第三者からの講習や巡回指導により、適切な雇用が行われていることが確認できるメリットもあります。特定技能外国人への待遇がうっかり下がってしまってしまうことがないように管理してもらう良い機会だととらえることもできますね。

FITSの講習受講と巡回指導を受けることは、建設分野の受け入れ計画認定のために必要です。受入後講習は、従来は15,400円(税込)がかかっていましたが、令和5年3月1日以降実施の講習は特定技能外国人受入事業実施法人のJACが負担することになりました。建設分野での特定技能外国人受入は費用がかかることがネックですが、受け入れの際にかかる費用が減ることで受け入れがしやすくなるでしょう。

FITSの役割とは?実施する業務内容について解説!

FITSの役割とは?実施する業務内容について解説!

建設分野の特定技能外国人の正しい雇用のためになくてはならないFITSですが、具体的にはどのようなことをしているのでしょうか?FITSが実施している主な業務は、以下の5つです。

  1. 建設特定技能受入後講習(スタートアップセミナー)
  2. 受け入れ企業への巡回指導
  3. 有能な外国人材の表彰
  4. 母国語相談ホットライン
  5. 事前ガイダンスや生活オリエンテーション

FITSは、単なる監視機関ではなくさまざまな業務で活躍している機関。それぞれの業務内容について、詳しく解説します。

①建設特定技能受入後講習(スタートアップセミナー)

FITSの代表的な業務が、建設特定技能受入後講習(スタートアップセミナー)です。建設分野の特定技能外国人の就労開始日からおおむね6ヶ月以内に受けることが義務付けられています。スタートアップセミナーは、母国語の通訳をつけて行われます。内容は、特定技能外国人が受入計画の内容を理解できているかの確認や、困ったときの相談場所などの説明がメインです。

ただ、入国前に特定技能外国人受入事業実施法人の同様のセミナーを受けた場合にはスタートアップセミナーは免除になります。受け入れ予定の特定技能外国人が同じようなセミナーを現地で受けていないか確認しておきましょう。

②受け入れ企業への巡回指導

受入後講習ともうひとつ受け入れに必須なのが、受け入れ企業への巡回指導です。FITSは、受け入れ企業を巡回して適切な受け入れが行われていることを確認します。頻度は1年に1回以上。受入計画に沿った就労が行われているかどうか、ヒアリングや面談により確認します。

もし問題が見つかれば、FITSが受け入れ企業にアドバイスをし、違法な場合には改善されるように口頭や書面で指導します。重大な違反が発覚した場合は国による監査が入ります。監査の結果によってはせっかく受け入れた特定技能外国人の受け入れが取り消されることもあるので、普段からきちんと受入計画通りの雇用ができているか気を付けておくことが大切です。

③有能な外国人材の表彰

FITSでは、定期的に有能な特定技能外国人を表彰しています。今までは「優秀外国人建設就労者表彰(国土交通省不動産・建設経済局長賞)」として有能な外国人材の表彰をしていたのですが、2023年には「外国人材とつくる建設未来賞(国土交通大臣賞)」となり、企業にも表彰の対象が拡大されました。企業と外国人材両方で未来を作っていく未来がイメージできますね。FITSは、有能な外国人や企業を表彰することで、建設分野の技能や育成スタイルの向上を応援しています。

2023年の外国人材とつくる建設未来賞は、「外国人建設技能者部門」「受入企業/団体部門」の2部門。「受入企業/団体部門」は外国人材育成賞と事業展開賞に分かれていました。外国人建設技能者部門では計6名、受入企業は計6社が受賞。受賞企業や受賞した特定技能外国人のモチベーションは、ぐんとアップしていることでしょう。

④母国語相談ホットライン

母国以外の国で暮らす外国人は、相談先がないと不安なもの。そこでFITSでは母国語相談ホットラインを用意して、特定技能外国人が母国語で相談ができる環境を整えています。電話の他、メールやFAXでの相談もできるので、何かわからないことがあったり困ったりしたときには気軽に相談ができます。

電話相談ができる言語は、以下のとおりです。

  • 中国語
  • ベトナム語
  • インドネシア語
  • フィリピン語
  • 英語
  • カンボジア語(クメール語)
  • ミャンマー語

電話番号やつながる日時は、FITSの公式サイトに記載されています。

母国語ホットラインの電話番号はこちら

その他の言語でも、メールでの連絡が可能です。下記のアドレスに母国語でメールを送ると、数日以内に母国語で返信がきます。

連絡先:hotline@fits.or.jp

メール相談の対応言語は、以下のとおりです。

  • ネパール語
  • モンゴル語
  • タイ語
  • シンハラ語
  • ベンガル語
  • ロシア語
  • ミャンマー語
  • クメール語

何かと不安なことのある特定技能外国人に、母国語ホットラインがあることをこまめに伝えておくのも良いでしょう。

⑤事前ガイダンスや生活オリエンテーション

FITSでは、事前ガイダンスや生活オリエンテーションも行って、特定技能外国人の生活をサポートしています。事前ガイダンスや生活オリエンテーションは、FITSが定額かつ適正費用にて行うことが定められているので、受け入れ企業は費用を抑えて受け入れを行うことができます。

事前ガイダンスは、労働条件の確認がメイン。入国前に、仕事内容や入国手続きなどについて対面やテレビ電話などで説明を行います。生活オリエンテーションは、入国後や在留資格取得後に行うのが一般的です。8時間以上実施し、詳しく日本の生活についてしっかりと説明します。日本の文化などの説明も入るので少し時間はかかりますが、日本で就労しながらの生活を安定したものにするためにも必要な説明。特定技能外国人にとっては大きな助けになることでしょう。

JACとFITSの違いは?

JACとFITSの違いは?

ここまでFITSの解説をしてきましたが、JACとはどう違うのかと疑問に思い始めている方もいるでしょう。そこでここでは、JACとFITSの違いについて解説します。JACとFITSの異なる点は、以下の2つです。

  1. JACは10項目の支援や転職支援を実施
  2. JACへは直接的または間接的な加入が必須

同じように見えても、JACとFITSは違う機関。それぞれの違いについて、詳しく解説します。

JACは10項目の支援と相談や転職支援を実施!

JACでは、主に10項目の支援と相談や転職の支援を実施しています。中でも相談・苦情への対応や転職支援などは、JACが無償で支援を提供しています。例えば、受け入れ側の都合により雇用契約を解除しなければならなくなったときには、JACが無料で転職のサポートをしてくれます。JACの10項目の支援には、空港から職場や住居までの送迎をしたり銀行口座の開設や携帯電話の開通などの公的手続きに同行したりする支援が含まれています。

特定技能外国人が働きやすい環境をサポートしているのはFITSと同じですが、それはJACがFITSに適正就労管理業務を委託しているからです。なお、JACでは巡回指導は行っていません。その他JACでは、特定技能外国人になるための技能評価試験を実施していたり転職支援をしたりとFITSとは異なる支援も実施し、特定技能外国人をサポートしています。

JACへの直接的または間接的な加入は必須!

FITSへの加入は必要ありませんが、JACへの加入は必須です。建設分野で特定技能外国人を受け入れる場合は、JACへの直接的または間接的な加入が必要。一方FITSへの入会は必要ありません。JACに加入すると、入会金がおよそ4万円ほど、年会費がおよそ6万円ほどかかります。FITSには費用がかからず、入会の手間もかからないのは受け入れ企業としてはうれしいポイントですね。

さらにJACは加入までに1ヶ月以上かかるのが一般的。FITSへの加入は必要ないので、待つ必要もありません。ただ、FITSの巡回指導を受けるときには受け入れ企業がFITSに対して労働関係の書類を用意しておかなければなりません。直前になって慌てないように、前もって準備をしておきましょう。

FITS受入後講習とは?受入後概ね6ヶ月以内に受講

FITS受入後講習とは?受入後概ね6ヶ月以内に受講

最後に、FITSの行う受入後講習について確認しておきましょう。FITSの受入後講習について、押さえておくべきポイントは以下の3つです。

  1. 費用や進め方
  2. 持ち物
  3. 開催日や申し込み方法

FITSの受入後講習は、受け入れ後おおむね6ヶ月以内に受講しなくてはならない講習。概要を知っておくことで、開催日に落ち着いて講習を受けることができますよ。FITSの受入後講習に関する3つのポイントについて、詳しく解説します。

費用や進め方|11の言語で対応!

FITSの受入後講習では、巡回指導や母国語ホットラインなどを説明し、二重契約や嘘の申請がないかも直接本人に確認します。2023年3月1日以降、建設特定技能受入れ後講習の実施費用はJACが負担することになりました。そのため、受け入れ企業の費用負担はありません。受入後講習は、基本的に母国語で対応できるようになっています。対応しているのは、以下の11言語です。

  1. ベトナム語
  2. 中国語
  3. フィリピン語(タガログ語)
  4. インドネシア語
  5. タイ語
  6. カンボジア語(クメール語)
  7. ミャンマー語
  8. モンゴル語
  9. ネパール語
  10. バングラデシュ
  11. スリランカ

その他、韓国語、マレーシア語、ブータン語、ラオス語、ウズベキスタン語、インド語などの言語は個別に対応してくれます。ルビの入った日本語と母国語のテキストを使い、日本語の講義形式で講習が進められます。特定技能外国人は、通訳者を介して質問ができます。まだ日本語を勉強中の特定技能外国人には、母国語で対応してもらえるのはうれしいポイント。就労やサポート体制についての理解が深まる良い機会となるでしょう。

持ち物|持っていくべき物は4つ!必要書類を用意!

受入後講習への持ち物は、以下の4つです。

  1. 重要事項説明書
  2. 雇用契約書・雇用条件書
  3. 直近の給与明細書(1ヶ月分)
  4. 筆記用具

書類はそのまま提出してしまうこともあるので、コピーを取って持っていきましょう。受け入れ企業は、必要書類をまとめて用意しておきましょう。講習を聞きながらメモすることも多いので、筆記用具も忘れずに持って行ってくださいね。

開催日や申し込み方法|申し込みはオンラインで簡単!

開催日や申し込み方法は、FITSの公式ホームページに公開されています。

受入後講習の開催日や申し込み方法はこちら

1開催あたり70名の予定で、時間は午前:9:30 ~12:30、午後:13:30~16:30の開催です。もし予約をキャンセルしたり変更したりする場合は、必ず講習事務局まで連絡しましょう。受講の実績はFITSが国土交通省に登録してくれるため、証明は不要です。また、参加は業務の一環とみなすため、有給休暇扱いにはしないようにしましょう。

まとめ|FITSを知ってより良い外国人の育成を!

まとめ|FITSを知ってより良い外国人の育成を!

FITSは、建設分野で働く特定技能外国人の適正な就労をサポートしている心強い機関。母国語ホットラインや有能人材および企業の表彰など、特定技能外国人や建設分野の受け入れ企業に寄り添った支援で雇用をサポートしてくれます。巡回指導により健全な就労を支援してくれるのもうれしいですね。

FITSの受入後講習の費用はJACの負担になったとはいえ、受入後講習の準備など、手間に感じる部分も多いもの。登録支援機関なら、全ての受け入れ業務の支援ができます。建設分野の受け入れに不安がある方には、650名以上の支援実績がある登録支援機関KMTでも支援が可能。ぜひ一度相談してみてください。

大房行政書士法人代表 / 株式会社KMT取締役
行政書士 大房明良 監修

東京都大田区蒲田に生まれ、大学在学中に訪れたカンボジアで学校建設ボランティアに参加し、貧困問題に興味を持つ。2016年に行政書士事務所を開業し、カンボジア語が話せる行政書士として入管業務を専門に行う。現在は特定技能申請をメイン業務とし、2023年5月現在で申請数は4500件を超える。
また、取締役を務める株式会社KMTでは、約600名の特定技能外国人の支援を行っている。