建設分野の特定技能外国人の受け入れがしたいけれど、JACへの入会が必要?JACとは何?と気になっている方はいませんか?

JACは建設技能人材機構の略称で、建設分野での受け入れには欠かせない機関。しかし具体的にどんなことをする機関なのか分からない方も多いでしょう。

この記事では、JACについて分かりやすく解説!役割や加入方法まで徹底的に解説するので、建設分野での受け入れを考えている企業主さんは、ぜひチェックしてくださいね。

特定技能とは?制度や建設業の生まれた背景を解説!

特定技能とは?制度や建設業の生まれた背景を解説!

建設分野で必要なJACについて解説する前に、まずは特定技能とは何なのかおさらいしておきましょう。ここでは、特定技能について知っておきたい2点について解説します。

  1. 特定技能とは?
  2. 特定技能「建設」とは?

在留資格「特定技能」には、「建設」分野があります。建設分野は他と違って特別な条件がある分野。受け入れにも特別な手続きが必要です。特定技能の建設分野について知っておくと、どうして手続きが面倒なのか理解できるはず。特定技能の制度や建設業の生まれた背景について、詳しく解説していきます。

特定技能とは?人手不足を補うための在留資格!

特定技能は、深刻な人手不足を補うために生まれた在留資格。日本人だけでは働き手が足りないことから、専門的な知識と経験を持った外国人に即戦力として働いてもらうことで人手不足を解消しようとする制度です。特定技能で受け入れが可能な分野は、以下の12種です。

  1. 介護
  2. ビルクリーニング
  3. 素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業
  4. 建設
  5. 造船・舶用工業
  6. 自動車整備
  7. 航空
  8. 宿泊
  9. 農業
  10. 漁業
  11. 飲食料品製造業
  12. 外食業

特定技能は、人手不足を補うことが目的の制度。そのため、受け入れができるのはさまざまな取り組みを行っても国内からは人材を確保するのが困難な12分野に限られています。特定技能1号では最大5年間、特定技能2号では無制限で日本に滞在できるのが特徴。日本での永住権にもつながる在留資格なので、長期間外国人を雇用したい企業主の方はぜひ受け入れを考えておきたいですね。

特定技能「建設」とは?特別な条件がある分野!

特定技能の受け入れ可能分野のひとつに、「建設」があります。建設分野での受け入れは、他分野とは違う特別な条件があります。他分野では特定技能の雇用契約が結ばれる前には受け入れ計画は必要ありませんが、建設分野のみ入国管理局の在留審査の前に「建設特定技能受入計画」を提出し、国土交通省の認定を得る必要があります

「建設特定技能受入計画」は、雇用契約後に受け入れ機関や登録支援会社が作成して提出する特定技能支援計画とは別のもので、特定技能外国人の見込み賃金や昇給内容などが盛り込んであります。

このような特別な条件がある背景には、建設分野での失踪率の高さがあります。建設分野は失踪率が高く、建設業で働く技能実習生が別の現場で不法労働の状態で働いているケースもありました。そのため、きちんと計画通りに就労が進められるよう「建設特定技能受入計画」の提出が義務づけられたのです。

建設技能人材機構(JAC)とは?概要を説明!

建設技能人材機構(JAC)とは?概要を説明!

建設分野での受け入れには、建設技能人材機構(JAC)への加入が必須です。「でもJACって何?」という方は、JACについて知っておくべき3つのポイントを押さえておきましょう。

  1. JACへの加入は必須!
  2. JACの目的と設立の背景は?
  3. JACの役割は?

JACについて知っておくことで、建設分野で特定技能外国人を正しく受け入れることができるようになるはず。上記の3つのポイントについて、詳しく解説します。

JACへの加入は必須!受入計画認定の条件のひとつ!

建設分野で特定技能外国人を受け入れる受入れ機関は、一般社団法人建設技能人材機構(JAC)又は、JACの正会員である建設業者団体に加入しなければなりません。JACの賛助会員になるか、JACの正会員である建設業者団体の会員となるかを選択できるということです。

JACへの加入が済んだら、会員証明書を入手する必要があります。会員証明書は、在留審査の前に必要になる「建設特定技能受入計画」の認定申請に必要な書類なので、忘れずに入手しておきましょう。

JACへの加入申請から会員として認定されるまでには、およそ1ヶ月半~2ヶ月程度かかります。受け入れを決意したら、なるべく早くJACへの加入申請を済ませておくと良いでしょう。

JACの目的と設立の背景は?建設分野を守るため!

日本で働く外国人を受け入れる特定技能制度ですが、建設業はせっかく働きにきても失踪してしまう外国人が多い分野でした。失踪の主な理由は、劣悪な労働環境や低賃金など。その他手続き状の問題もあり、社会保険に未加入で労働している外国人も見受けられました。

そこで建設業界の団体や企業は、日本で特定技能として働く全ての外国人に適切な待遇を受けてほしいとJACを設立しました。JACへの加入は一見面倒なようですが、JACは建設業の特定技能外国人を守るために生まれた組織。建設分野の特定技能外国人が日本で働くことや生活すること、そして建設技能を身に付けることを応援しています。

JACの役割は?会員が守るべき行動規範を紹介!

JACは、建設分野での受け入れを適切に行えるような活動を行う組織。特定技能外国人の賃金アップや昇給の確保など、日本で働く外国人の処遇を改善したり、長時間の低賃金労働をさせるブラック企業を排除したりといった活動をしています。

JACの全会員は、JACが決めた「建設業における共通行動指針」を守る必要があります。

● オーバーステイ(外国人が日本にいられる期間を過ぎている状態)などの不法就労者を雇わない
● 技能レベルにあわせた賃金設定をする
● 外国人であることを理由に差別をしない
● 人権を尊重し、暴力、暴言、いじめおよびハラスメント(いやがらせ)をおこなわない
● 転職をさまたげない
● 日常生活のサポートをする など

引用:建設技能人材機構JACとは

「不法就労者を雇わない」「技能に合わせた賃金設定」などの雇用契約に関するガイドラインの他、「差別やいやがらせをしない」などの基本的な人権についてのガイドラインも含まれています。外国人の雇用条件はもちろん、人権も正しく扱うことで満足のいく就労生活ができ、失踪する外国人も減ることでしょう。

JACの事業内容は?3つの主な業務について解説!

JACの事業内容は?3つの主な業務について解説!

JACは建設分野の特定技能外国人を守る組織ですが、具体的にはどのようなことをしているのでしょうか。ここでは、JACの行う3つの主な業務内容を覚えておきましょう。

  1. FITSによる適正就労管理業務
  2. 試験や訓練、周知と外国人支援
  3. 無料の職業マッチング

JACは、特定技能外国人受入事業実施法人として、国土交通大臣から認可されている組織。その具体的な事業内容について、詳しく解説します。

①FITSによる適正就労管理業務

JACはFITSに適正就労管理業務を委託しています。一般財団法人国際建設技能振興機構(FITS)は、「適正就労管理機関」として国土交通大臣より認められた機関。特定技能外国人が正しく給料をもらえているのか、生活面の不安はないのかを確認するために、受け入れ企業を巡回して指導しています。また、特定技能外国人の母国語による電話サポートも行っています。

巡回指導は、全ての受け入れ企業に対して1年に1回以上行われます。受け入れ企業はFITSに、労働関連の書類を提出しなければなりません。FITSは特定技能外国人の就労状況などについてヒアリングし、特定技能外国人との面談も行います。その際、何か違反があった場合には国土交通省に報告します。

②試験や訓練、周知

建設分野で特定技能を取得するための「技能評価試験」を行っているのもJACです。JACは、技能評価試験の会場の確保などの細かい調整を実施。さらに教育訓練としてベトナムやフィリピンの関係機関と連携し、日本語や技能・安全衛生教育なども行っています。

さらに、特定技能制度の周知もJACが行うメイン事業のひとつ。受け入れ希望企業への説明会やオンライン個別相談会などを実施しています。また、グッドプラクティス(優れた取り組み)の普及を目的とし、優れた技能を持つ外国人と優れた取り組みを行う受け入れ企業を国土交通省が「優秀外国人建設就労者表彰」として表彰する機会も設けています。国土交通省により表彰されるのは、特定技能外国人にとってとても誇らしい機会となることでしょう。

③無料の職業マッチング

建設業で働きたい外国人や受け入れを希望する企業に、無料の職業マッチングを行っています。特定技能の他の業種では民間の有料職業紹介所が紹介することがありますが、建設業務は民間有料職業紹介事業者が紹介してはいけないことになっています。JACは、傘下の団体の会員である受入企業や賛助会員である受入企業に無料の職業紹介を行っています。

特定技能外国人を雇用したい建設業の企業主さんや、技能実習生の転職先を探している建設業の企業主さんには、外国人人材や転職先を紹介。特定技能外国人には働き先の建設会社を無料で紹介しています。また、今働いている会社が合わないと感じる特定技能外国人には、再就職支援を実施。外国人の失踪をこれ以上増やさないためのサポートをしています。

JACの加入費用は?15~24万程度が目安!

JACの加入費用は?15~24万程度が目安!

JACへの加入には、ある程度の費用がかかります。とはいえ、JACへの入会は建設分野で特定技能外国人を受け入れるためには避けては通れない道。JACの加入費用について、2つのポイントを押さえておきましょう。

  1. JACの年会費は?
  2. JACの受入れ負担金は?

JACへ加入するためには、年会費と受け入れ負担金の両方を払わなくてはなりません。費用の目安を知っておくと、受け入れにどのくらいの費用がかかるのか分かりますね。それぞれの費用について、詳しく解説します。

JACの年会費は?正会員と賛助会員で異なる!

建設業での受け入れには、JACへの加入が必須条件です。しかし、JACは以下のような入会金と年会費がかかります。

直接的に加入する場合 間接的に加入する場合
入会金 0円 団体によって異なる
※相場4万円ほど
年会費 240,000円 団体によって異なる
※相場6万円ほど

直接的な加入と間接的な加入では、費用に大きく差があります。そのため、特定技能外国人の受け入れ企業のほとんどが間接的にJACに加入しているのが実情です。

JACの受入れ負担金は?1人あたりの費用がかかる!

JACに加入すると、さらに受入れ負担金も納めなければなりません。受け入れ負担金は特定技能外国人1人につきかかる月額の負担金です。受入負担金の金額は、以下のとおりです。

直接的に加入する場合 間接的に加入する場合
受入負担金 月額12,500~20,000円 月額12,500~20,000円

入会金や年会費と違い、受入負担金は直接的な加入でも間接的な加入でも変わりありません。受入負担金は建設分野で特定技能外国人を受け入れるために、支払わなければならない金額。JACの事業費用として使われます。年間で15~24万円が発生しますが、決して外国人に負担させてはいけないことは覚えておきましょう。

JACの入会方法は?正会員と賛助会員の違いをチェック!

JACへの入会方法には、2つのルートがあります。JACには、間接的にまたは直接的に加入している必要があります。

  • 間接的=JACの正会員である団体の傘下に入会すること
  • 直接的=JACの賛助会員に入会すること

初めて受け入れを行う方には少し分かりにくいですが、JACには間接的に加入するか直接的に加入するかの2つの方法があるということ。JACに加入できる2つのパターンについて、詳しく解説します。

パターン1|正会員団体のいずれかに加入

直接的な加入は費用がかかるため、実質的にはほとんどの受け入れ企業がパターン1でJACに加入します。パターン1は、正会員である建設業者団体のいずれかに間接的に加入する方法です。令和5年8月8日で正会員の建設業者団体は49個あり、そのどれかに加入します。JACのホームページに加入できる正会員団体と電話番号が掲載されているので、希望の団体に電話で加入の申し込みをしましょう。

なお、登録支援機関に受け入れ業務を委託している場合は、登録支援機関が加入のサポートを行ってくれます。初めての受け入れでどの団体に入ると良いのか分からない企業主さんは、一度登録支援機関に相談してみるのもおすすめです。

JACのホームページはこちら

パターン2|賛助会員として直接的に加入

JACに加入するもう一つのパターンは、賛助会員として直接的に加入する方法です。賛助会員は、令和5年8月8日で1団体2418社あります。受け入れ企業は正会員団体のいずれかに加入するか賛助会員になるか選べますが、賛助会員は年会費24万円を払わなければならないのがネック。特定技能外国人のためにJACの賛助会員になるのは現実的ではありません。

賛助会員として加入したい場合は、JACのホームページから入会資料をダウンロードします。資料請求時に登録したメールにエントリーフォームが送られてくるので、記入してJACオフィスに送付します。その後審査が行われ、承認された場合はメールでお知らせが届きます。そしてメールに従い手続きを進めると、会員証が発行されます。

会員として認められるまでには1ヶ月以上かかる!

正会員のいずれかに加入する場合は建設業者団体によりますが、JACの会員として認められるまでには加入申請から概ね1ヶ月半~2ヶ月、賛助会員として認められるまでには1ヶ月半程度かかります。建設業で特定技能の在留資格を取得するためには、JACに登録した後には必要書類を揃えたうえで「建設特定技能受入計画(受入計画)」を作成し、国土交通大臣の認可を受けなければなりません。受入計画の認定にも2~3ヶ月かかるため、早めにJACへの加入を済ませておいた方が良いでしょう。

特に技能実習からの移行の場合はうかうかしていると受入計画認定までに在留期間が過ぎてしまうこともあるので、早めの手続きを心がけたいもの。技能実習からの移行の場合は技能実習終了日の6ヶ月前からJAC加入の申請が可能。それ以外の方も雇用開始日の6ヶ月前から申請ができます。

まとめ|JACへの加入で働きやすい環境づくりを!

まとめ|JACへの加入で働きやすい環境づくりを!

受入れ企業からすると、JACへの加入は面倒な手続きのように感じるかもしれません。しかし、JACは建設分野で働く特定技能外国人が働きやすいようにと作られた組織。JACのおかげで特定技能外国人がより良い環境で仕事ができるようになっているのです。JAC会員になると費用はかかりますが、必要経費として受け入れることができると良いですね。

JACへの加入手続きを含めた受け入れの手続きは、登録支援機関に委託してサポートしてもらうことが可能です。初めての建設分野の受け入れで不安のある方や、手続きの仕方がよく分からない方は、登録支援機関に相談してみることをおすすめします。650名以上の支援実績があるKMTでもサポートが可能なので、ぜひ一度ご相談ください。

大房行政書士法人代表 / 株式会社KMT取締役
行政書士 大房明良 監修

東京都大田区蒲田に生まれ、大学在学中に訪れたカンボジアで学校建設ボランティアに参加し、貧困問題に興味を持つ。2016年に行政書士事務所を開業し、カンボジア語が話せる行政書士として入管業務を専門に行う。現在は特定技能申請をメイン業務とし、2023年5月現在で申請数は4500件を超える。
また、取締役を務める株式会社KMTでは、約600名の特定技能外国人の支援を行っている。