「建設業で特定技能を受け入れたいけど、どんな手続きが必要?」と悩んでいる方はいませんか?建設業は他の分野より厳しい受入れ条件があると聞いたものの、どのような手続きをしたら良いのかわからない方も多いでしょう。
そこでこの記事では、特定技能「建設」の受入れにおける注意点についてわかりやすく解説します。建設分野特有の受入れ条件など、受入れを行ううえで注意すべきポイントについて徹底解説。建設業で特定技能外国人の受入れを考えている企業の方は、ぜひ参考にしてくださいね。
目次
特定技能の建設分野とは?区分や実習生との違いを再確認
特定技能の建設は、令和5年12月時点で24,433人の外国人が活躍する分野。建設分野独自の業務区分や受入対象職種などが決められています。特定技能の建設分野について、知っておくべきポイントは以下の3つです。
- 業務区分は3区分!
- 他の在留資格との違い
- 受入対象職種は全18種
特定技能の建設分野についておさらいしておくことで、すっきりとした頭で受入れの準備ができますね。それぞれのポイントについて、詳しく解説します。
建設分野の業務区分は3区分!
特定技能「建設」の業務区分は、以下の3つです。
- 土木
- 建築
- ライフライン・設備
以前は19業務区分にわかれていましたが、2022年8月30日に3区分に再編。特定の業務区分でしか働けなかったり、技能実習で働いていた業務区分がなかったりといった不都合が減り、建設分野で働く特定技能外国人が働きやすくなりました。さらに試験区分も18区分から3区分に減少し、シンプルに試験を受けやすくなりました。試験の合格により、合格した試験区分の仕事につくことができるようになります。
主な業務内容は、以下のとおりです。
- 土木:土木施設の新設改築、維持、修繕に係る作業など
- 建築:建築物の新築、増築、改築、若しくは移転又修繕若しくは模様替えに係る作業など
- ライフライン・設備:電気通信、ガス、水道、電気その他のライフライン・設備の整備・設置、変更又は修理に係る作業など
いずれの業務区分も、指導者の指示や監督を受けながら作業します。
建設分野の他の在留資格との違いは?
建設分野で外国人を受入れできる在留資格には、「特定技能」と「技能実習」があります。「技能実習」は、国際貢献を目的とした制度。日本の技術を発展途上国に伝えるため、経済発展を担う人物を育成することが目的です。一方「特定技能」は、日本の人手不足を解消するのが目的。国内では十分に人手が補えない一定の専門分野で、即戦力となる専門的な知識や技能を持つ外国人を雇用する制度です。
目的が国際貢献なので、技能実習では在留できる期間が限られています。技能実習には1号、2号、3号があり、在留期限は以下のとおりです。
- 1号:1年
- 2号:2年
- 3号;2年
一方特定技能での在留期限は以下のように定められています。
- 1号:5年
- 2号:無期限
特定技能の方が長く在留できるうえ、2号になれば家族の帯同も可能になり条件が揃えば無期限で日本で就労できるようになります。また、特定技能は試験に合格すれば技能実習を経ることなく取得できるのも大きな魅力。技能実習には試験がありませんが、特定技能1号の取得には技能試験と日本語試験の両方の試験への合格が必要です。そのため、特定技能では日本語もある程度習得している外国人が望ましいでしょう。
特定技能受入対象職種は全19種!
特定技能で受入れができる受入対象職種は、全部で19種類です。
- 型枠施工
- コンクリート圧送
- トンネル推進工
- 建設機械施工
- 土工
- 鉄筋施工
- とび
- 海洋土木工
- 左官
- 屋根ふき
- 鉄筋継手
- 内装仕上げ
- 表装
- 建築大工
- 建築板金
- 吹付ウレタン断熱
- 電気通信
- 配管
- 保温保冷
業務区分「土木」では、以下の8職種で受入れが可能です。
- 型枠施工
- コンクリート圧送
- トンネル推進工
- 建設機械施工
- 土工
- 鉄筋施工
- とび
- 海洋土木工
人々を自然災害から守るために強い構造物を作るのが業務区分「土木」の仕事です。ダムの工事や道路の工事、鉄道工事、橋の工事、トンネル工事、の他、防波堤を作る仕事や復旧のための工事も行います。
業務区分「建築」では、以下の13職種で受入れが可能です。
- 型枠施工
- 左官
- コンクリート圧送
- 屋根ふき
- 土工
- 鉄筋施工
- 鉄筋継手
- 内装仕上げ
- 表装
- とび
- 建築大工
- 建築板金
- 吹付ウレタン断熱
いろいろな建物を作るのが業務区分「建設」の仕事です。ショッピングモール、オフィスビル、工場、病院、学校、図書館、美術館、住宅、ビル、マンションなどをコンクリート、鉄、金属、化学樹脂を使って作るのが特徴。建築材料を運び、鉄筋を加工して組み立てたり鉄筋をつなげたり基礎の型枠を作ってコンクリートを入れたり、足場を作る仕事、屋根を作る仕事、壁や床を仕上げる仕事などがあります。
業務区分「ライフライン・設備」では、以下の8職種で受入れが可能です。
- 電気通信
- 配管
- 建築板金
- 保温保冷
水道、ガス、電気、電話などのライフラインを組み立てて作るのが業務区分「ライフライン・設備」の仕事です。電気通信工事、電気工事、配管工事、保温保冷工事、ダクト工事なども建築分野の受入れができる職種のひとつ。このような職種の場合は、特定技能「建築」の受入れが可能です。
特定技能「建設」受入れに必須の条件とは?5つのポイントを押さえよう!
特定技能「建設」の受入れには、いくつかの必須条件があります。建設分野で特定技能外国人を受入れる企業が避けては通れない受入れのポイントは、以下の5つです。
- 建設業許可を受けている
- キャリアアップシステムの事業者である
- JACに加入している
- 受け入れ人数の上限が日本人の社会保険加入者数である
- 国交省が定める基準を満たす雇用条件である
まずは受入れ条件を知って、準備を整えておきましょう。それぞれのポイントを詳しく解説します。
1:建設業許可を受けていること
建設分野の受入れ機関は、建設業法第3条にもとづいた建設許可を得なければなりません。建設業許可は、地方整備局等または各都道府県で取得します。
受入れ企業の営業所が2都道府県以上にある場合は国土交通大臣の許可が必要。地方整備局などで許可をもらいます。受入れ企業の営業所が1都道府県ないにしかない場合は、都道府県知事の許可が必要なので、各都道府県庁で許可をもらいましょう。
建設業の許可がもらえる業種は、以下の28業種です。
- 土木工事業
- 建築工事業
- 大工工事業
- 左官工事業
- とび・土工工事業
- 石工事業
- 屋根工事業
- 電気工事業
- 管工事業
- タイル・れんが・ブロツク工事業
- 鋼構造物工事業
- 鉄筋工事業
- 舗装工事業
- しゅんせつ工事業
- 板金工事業
- ガラス工事業
- 塗装工事業
- 防水工事業
- 内装仕上工事業
- 機械器具設置工事業
- 熱絶縁工事業
- 電気通信工事業
- 造園工事業
- さく井工事業
- 建具工事業
- 水道施設工事業
- 消防施設工事業
- 清掃施設工事業
特定技能「建設」の受入れを考えているなら、まずは建設業許可を取っておきましょう。
2:キャリアアップシステムの事業者であること
また、受入れ企業は建設キャリアアップシステム(CCUS)の事業者でなければなりません。CCUSは、建設業界で働く方を適正に雇用するために作られた機関。登録することで技能者の資格や就労経験などが記録として残るため、能力に応じて適切に評価されるようになります。特定技能の受入れ企業が登録することで、不法労働が防げるメリットもあります。
建設分野で特定技能外国人を受け入れたいなら、CCUSに登録しましょう。なお、CCUSは受入れ機関と特定技能外国人の両方が登録する必要があります。申請は、インターネットか窓口で可能。受入れ機関の登録が終わったら、特定技能外国人の登録もしておきましょう。詳しい登録の仕方はCCUSのホームページからチェックできます。
3:JACに加入していること
受入れ機関は、CCUSだけでなくJACにも加入していなければなりません。JACには、間接的にまたは直接的に加入することができます。
- 間接的=JACの正会員である団体の傘下に入会すること
- 直接的=JACの賛助会員に入会すること
JACに直接的に加入すると高い費用がかかるため、ほとんどの建設業者が間接的に加入しています。加入申請は、正会員の建設業者団体のいずれかに直接電話でしましょう。正会員の建設業者団体は、JACのホームページから確認できます。
JACの会員として認められるまでには、申請からおおむね1ヶ月半~2ヶ月くらいかかるので、早めに加入申請をしておきましょう。
4:受入れ人数の上限は日本人の社会保険加入者数であること
特定技能では、基本的には受け入れ人数に上限がありません。しかし介護業と建設業では、受け入れ数の上限が定められています。建設業では、特定技能1号外国人と特定活動の外国人の合計数が、受入れ機関の常勤職員の数を超えないことが受入れ条件になっています。常勤職員とはいわゆる正社員で、社会保険に加入している日本人のこと。技能実習生や特定技能外国人、特定技能の外国人建設就労者は常勤職員の数に入りません。
建設業では、受け入れたいだけ何人でも特定技能外国人を受け入れることはできません。建設業で特定技能の受入れを考えている場合は、受け入れる外国人の数が日本人の数を超えないことを確かめておきましょう。
5:国交省が定める基準を満たす雇用条件であること
建設分野で特定技能外国人を受け入れるときには、国土交通省が定める基準を満たす雇用条件を提示していることが必要です。同等の技能を持つ日本人が就労する場合と同じかそれ以上の報酬を支払い続ける必要があり、技能が成熟していくに従い適正な昇給を行うことも求められます。また、適切な報酬を与えることやきちんと昇給を定めていることなどを、特定技能雇用契約に明記しなければなりません。
特定技能を取得する外国人は、すでに一定以上の経験やスキルを持ち合わせている日本の企業で即戦力となる人物です。そのため、それ相応の雇用条件を提示して敬意を表すことが必要。国籍に関係なく、3年以上の経験のある技術者として扱うことが求められます。
国交省が定める雇用条件の基準とは?要注意ポイントは3つ!
雇用条件を満たすことは、特定技能「建設」の受入れに必要な条件のひとつ。国土交通省は、雇用条件の基準を細かく定めています。雇用条件で注意しなければならないポイントは、以下の3つです。
- 給与体系は月給制!
- 最低賃金はNG!
- 昇給は必須!
雇用条件を守っていないと、契約や重要事項説明のやり直しをすることになるので要注意。覚えておくことで、再契約などの手間を省くことができますよ。それぞれの注意すべきポイントについて、詳しく解説します。
1:給与体系は月給制!支払い方法は口座払い
特定技能外国人への給与は、安定して与える必要があります。そのため、給与体系は月給制でなければなりません。日給制や時給制の場合は、受入れ企業の都合により仕事がなくなった場合には支払いが行われない可能性があります。天候や季節など受入れ企業の都合による欠勤の場合は、受入れ企業は休業手当(平均賃金の60%以上)を支払わなければなりません。また、1ヶ月固定で支払う月給制は、労働日数の変化に関わらず一定の給料を与えることになるため、安定的に給料を支払うことができます。
ただ、報酬額や給与体系などは、あらかじめ特定技能外国人の合意を得ていることも大切。特定技能外国人が分かる言語できちんと給与について説明して理解してもらうことも重要です。また、支払い方法も口座払いと決められているので注意が必要です。
2:最低賃金はNG!最低でも最低賃金の1割増し
報酬予定額は、技能実習2号の報酬水準を上回ることはもちろん、実際に同等の経験があり同等の業務をこなす日本人に支払っている報酬と同等かそれ以上であることが必要です。報酬額については、以下の賃金と比較して審査が行われます。
- 同じ事業所内の同等技能を有する日本人技能者の賃金
- 事業所が位置する圏域内における同一又は類似職種の賃金水準
- 全国における同一又は類似職種の賃金水準
なお、比較する賃金には、休日手当や時間外労働手当、通勤手当や皆勤手当てなどは含まれていません。報酬予定額は、最低賃金はNGです。最低でも、最低賃金の1割増しの給与を支払うことが必須。もし下回っている場合は、差別的な賃金を設定しているものとし、賃金を引き上げるように指導されます。
3:昇給は必須!毎月1,000円以上の昇給が必要
特定技能「建設」の受入れには、昇給は必須です。一年当たりに見込まれる一月当たり所定内賃金の上昇額が千円未満であってはならないので、月額1,000円以上の昇給が必要ということ。給与額だけでなく昇給額や昇給の条件についても、雇用契約書に記載しておかなければなりません。昇給の条件は、資格や検定への合格、建設キャリアアップシステムの能力評価レベルがアップした場合など。他にも企業独自の昇給条件を設定しておいても良いでしょう。
昇給額も、給与と同様同等のスキルや経験を持ち同等の業務を行う日本人と同じかそれ以上であることが必要です。昇給について決められていない場合は、受入れが認められないため、適正な金額に決めておきましょう。また、特定技能外国人には給与だけでなく昇給についても母国語などで理解できるように説明し、納得してもらうことも大切です。
受入れ後にかかる費用も要チェック!
建設分野の特定技能は、受入れ後にもある程度の費用がかかります。受入れ後にかかる費用についての4つのポイントも押さえておきましょう。
- JACの会費は受入れが続く限り納入必須!
- 建設分野では「受入負担金」も発生!
- CCUSの「現場利用料」も発生する!
- 登録支援機関への「支援委託費」も必要!
建設分野での受入れには、何かと費用がかかります。後から知って慌てるよりも、受入れ後の費用についても知っておく方が良いはず!今後の予算も立てやすくなりますね。それぞれのポイントについて、詳しく解説します。
JACの会費は外国人を受け入れ続ける限り納入必須!
特定技能の受入れで加入が必須となっている協議会は、基本的には会費はかかりません。ただ、建設分野はJACが協議会の役割を果たしており、建設分野ではJACへの会費がかかります。かかる費用の目安は、以下のとおりです。
- 正会員:360,000円/年
- 賛助会員:240,000円/年
正会員の傘下としてJACに加入する場合は、加入する建設業者団体の定める会費を納入します。正会員や賛助会員として直接的に加入する費用は高額なため、実際には正会員の建設業者団体の傘下として間接的に入会する受け入れ企業がほとんど。間接的な入会の加入費用と会費はそれぞれの加入建設業者団体により大きく異なりますが、直接的な加入よりは費用が抑えられる場合がほとんどです。
それでも、会費は建設分野の特定技能外国人を受入れを続ける限り納め続けなければなりません。
建設分野の特定技能では「受入負担金」が発生する!
建設分野の特定技能では、JACへの会費の他「受入負担金」も発生します。特定技能外国人1名につき発生する金額のため、2名受け入れる場合は以下の2倍の費用がかかります。
- 海外試験合格者(JACが指定する海外教育訓練を受ける場合) :月額20,000円(年額24万円)
- 海外試験合格者(JACが指定する海外教育訓練を受けない場合) :月額15,000円(年額18万円)
- 国内試験合格者 :月額13,750円(年額16万5千円)
- 試験免除者(技能実習2号修了者など) :月額12,500円(年額15万円)
ここでいう試験とは、「建設分野特定技能1号評価試験」のこと。試験の受ける場所や海外教育訓練の有無などで費用はかわりますが、一人当たりに年間15~24万円の費用がかかるので、覚悟が必要です。
キャリアアップシステムの「現場利用料」も現場ごとに発生!
CCUSの利用にも、一定の費用がかかります。受入れ前の登録時に登録料などがかかりますが、受入れ後にも現場ごとに「現場利用料」がかかります。費用は1人1日1現場を利用するごとに10円で、人数×日数×現場利用料で計算されます。たとえば20人の技能者が50日就業した場合の費用は、20×50×10で10,000円になります。また、1人の技術者が同じ現場でも昼休みをはさんで2回入場した場合は1×1×10で10円、1人の技術者が午前と午後で別の現場に入場した場合は1×1×20で20円です。
現場利用料は、一定期間が経ってからまとめて支払います。金額は低いですが、人数や就労日数が多ければそれだけ蓄積され、ばかにならない金額になることも。受入れ後にも現場利用料がかかることも頭に入れておきましょう。
登録支援機関を利用する場合「支援委託費」も必要!
さらに、登録支援機関を利用する場合は「支援委託費」も必要です。支援委託費は、特定技能外国人1名につき15~25万ほど。受入れ後の支援を委託する場合は、月2~3万円がかかります。さらに在留期間更新申請のために、1年ごとに2~3万円の費用が発生します。
とはいえ登録支援機関を利用しない場合は、外国人の育成ができる労働者の雇用が必要。支援委託費よりも高額な月給が発生するでしょう。少し費用はかかりますが、登録支援機関を利用することで受入れ後の手続きもスムーズになり、安心して他の仕事をすることが可能になります。
何かと受入れや就労条件の厳しい建設分野では、登録支援機関を利用するのがおすすめ。特定技能制度に精通した登録支援機関に業務を委託することで、制度に気づかずに違法になってしまう心配なく適正な受入れを続けることができます。
まとめ|建設業での受入れのご相談はKMTに!
ひとくちに特定技能といっても、分野ごとに受入れの条件は異なります。特に建設業は、不法労働や失踪などの事件が多かったため厳しい受入れ条件ができた分野。日本の人手不足を補う大切な外国人なため、きちんとした雇用条件で働きやすい環境を整える必要があります。
とはいえすべての受入れ条件を頭に入れるのは案外大変。建設業での受入れに不安や疑問がある方は、登録支援機関のKMTにお任せください。特定技能の受入れ実績が高いKMTには、建設分野の知識が豊富なスタッフも在籍。精一杯サポートしますので、お気軽にご相談ください。