特定技能外国人を受け入れたいけれど、どのくらいの給与を与えたら良いのかわからないと悩んではいませんか?初めての受け入れで、賃金規定が全くわからない!と悩む方もいるでしょう。そこで今回は、特定技能の平均給与について徹底的に解説。給料を決める時のポイントや注意点、業種ごとの平均給与もご紹介します。
給与の目安を知っておくことで、受け入れ側も外国人側も満足できる金額を決めることができるはず。特定技能の給与について詳しく知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
目次
最低賃金以上は必須!特定技能外国人に支払う賃金・給料の相場
特定技能外国人には、最低賃金以上の給与を支払うことは必須です。特定技能は、日本人と同様に幅広い業務を行う外国人を雇用する制度。特定技能外国人は日本で即戦力となる人材なので、日本人と同様に最低賃金以上は必ず支払わなければなりません。出入国管理庁の発表しているデータによると、令和3年度の全分野平均賃金は1月あたり231,979円。地域や業種、そのた条件により異なりますが、目安の月額はだいたい23万前後です。
外国人だからといって日本人よりも安く雇用できると考えるのは大きな間違い。それでも特定技能外国人を受け入れることが企業にとって大きなメリットとなるのは、特定技能外国人がさまざまな業務を担えるからです。例えば単純労働は技能実習生に従事させることができませんが、特定技能外国人にならOK。フルタイムでの雇用も可能です。さらに特定技能外国人の平均年齢は若いので、人手不足の心配される企業で体力も勢いもある若い方に働いてもらうことができます。
ココだけは押さえよう!給料を決める時の3つのポイント
特定技能外国人の給料を決めるには、いくつかポイントがあります。給料を決める時に大切な3つのポイントは、以下のとおりです。
- 同じ業務を行う日本人と同等以上
- 賃金規定があるなら、それに沿って決定
- 比較対象の日本人がいないなら、同業他所を参考に
3つのポイントを順番に押さえならが決めていくことで、トラブルなく給与が決められます。給料を決める時のそれぞれのポイントについて、詳しく解説します。
⑴同じ業務を行う日本人従業員と同等以上
給料を決めるときは、まず始めに同じ業務を行う日本人従業員と同等以上であることを確認しておく必要があります。特定技能外国人を日本人従業員と同じように扱うことで、トラブルを回避できます。日本人従業員と同じように、特定技能外国人にも労働基準法が適用されます。国籍や社会的身分を理由として差別的な取り扱いをしてはならないことが労働基準法で定められているので、きちんと守らなければなりません。
同業務で働いている日本人が同じ会社にいる場合は、その方と同等かそれ以上の給料を支払いましょう。給与は、技能や経験、業務内容や日本語レベルなどを参考にして決定されることが多いです。特に外国人の場合は、日本語検定試験の結果をひとつの目安として給料を決めるのもおすすめ。日本語習得のモチベーションアップにもつながりますよ。
⑵賃金規定がある場合は、それに沿って決定
もし受け入れ企業側で賃金規定が設けられている場合は、それに沿って決定するのが良いでしょう。すでに同企業で働く日本人が賃金規定どおりに就労しているなら、賃金規定に沿って決定することで日本人と同等以上の給与を支払うという条件もクリアできます。役職や業務内容、責任の程度。経験年数などが同等な日本人労働者と同等の賃金を支払いましょう。皆勤手当てなど決められた報酬以外の賃金が支払われている場合には、その分も同等にする必要があります。
比較できる日本人従業員がいない場合にも、賃金規定がある場合は賃金規定に基づいて決定することができます。申請人と役職や職務内容、責任の程度が最も近い日本人労働者に支払われるべき報酬に決めましょう。
⑶比較対象の日本人がいない場合は近隣の同業他社を参考に
賃金規定が定められておらず、役職や業務内容が似ている日本人労働者もいない場合は、近隣の同業他社を参考にして給与を決定します。様式はどんなものでも構いませんが、申請人の給与を決定した経緯や方法などについて、合理的に説明した文書を提出しなければなりません。同業他社の許可を得たうえで以下のようなポイントをチェックして、近隣の同業他社で働く日本人と比較しておくと良いでしょう。
- 近隣地域の水準
- 学歴や職歴
- 役職
- 責任の程度
- 経験年数
これらがすべて同じである必要はありませんが、いくつか似ている点があれば比較対象として申請が可能。賃金規定もなく企業に対象の日本人もいない場合には、同分野の他社に問い合わせてみましょう。
気をつけよう!給料支払い時の3つのポイント
特定技能外国人の給与決定は、トラブルが起こりやすいもの。給料の支払い時に気をつけたい3つのポイントを押さえておきましょう。
- 雇用条件書と同一の賃金が支払われているか
- 割増賃金の計算は適切か
- 給与控除する額は適正か
きちんと支払っているつもりでも、理解不足で思わぬトラブルが起こってしまうこともあります。信頼不足を起こさないためにも、注意すべきポイントを守ることが大切。それぞれのポイントについて、詳しく解説します。
⑴雇用条件書と同一の基本給、手当や賞与は適切か
特定技能外国人の受入機関は、雇用契約するときに作成して提示した雇用条件書に沿った賃金を払う必要があります。雇用条件書には、日本人と同等かそれ以上の給料や手当、賞与を記しているはず。雇用条件書に書かれている基本給、手当や賞与と同じ額を支払っているか確認しておきましょう。もし給与に変更があった場合は、出入国在留管理庁に変更届けを提出しなくてはなりません。ただ、給与が上がったり手当を支給したなど、特定技能外国人にとってメリットとなる内容の場合は、変更の届出は必要ありません。
また、最低賃金は特定技能外国人にも適用されるため、最低賃金以上の支払い額になっていることも確認する必要があります。最低賃金には都道府県の最低賃金と産業別の最低賃金の2種類があり、高い方の最低賃金以上の給与を与えなければなりません。お互いの同意があったとしても、最低賃金を下回ってしまうと違法になってしまうので注意しましょう。
⑵割増賃金の計算が適正なものか
特定技能外国人が時間外労働、休日労働、深夜労働をした場合には、割増賃金を支払わなくてはなりません。割増賃金は、以下の値以上の額を支払う必要があります。
- 時間外労働:2割5分以上(1ヶ月60時間以上の場合は5割以上)
- 休日労働:3割5分以上
- 深夜労働:2割5分以上
例えば時給1,000円の特定技能外国人が1時間平日に時間外労働をした場合には、時給1,250円以上を支払わなくてはならないということ。労働が深夜になった場合は5割以上(2割5分+2割5分)、休日労働が深夜になった場合には、6割以上(3割5分+2割5分)を支払う計算になります。月給の場合は、月払い金額を月の所定(平均)労働時間数で割った値で1時間あたりの賃金額を計算し、そこに割増賃金をプラスします。
基本給や手当や賞与のほか、割増賃金も正しく計算されているか確認しておきましょう。
⑶給与控除する額が適正か
給料を支払うときには、給与控除をする額が適正かどうかも確認することが大切です。基本的には、給与から控除して支払いができるのは以下の料金です。
- 所得税
- 住民税
- 源泉所得税
- 健康保険・厚生年金保険・雇用保険などの社会保険料
その他の料金は控除が認められていませんが、上記以外の料金で控除したい場合は労使協定を結ぶことが控除ができるようになります。協定は以下のいずれかの方法で結ぶことができます。
- 社員の過半数で組織する労働組合があり、その組合との書面による協定を結ぶ
- 社員の過半数で組織する労働組合がなく、社員の過半数を代表する者との書面による協定を結ぶ
きちんと労使協定が結ばれていない料金は、自己判断で控除することのないようにしましょう。
【業種別】平均給与を徹底解説!
それでは次は、業種別の平均給与について徹底的に解説します。特定技能外国人の給与は日本人と同等かそれ以上。とはいえだいたいどのくらいなのか、想像がつかない方も多いでしょう。そこでここでは、特定技能外国人の人数が多い6つの業種をピックアップしてご紹介します。
- 建設
- 製造業
- 農業
- 食品製造
- 外食
- 介護
もちろん地域性にもよりますが、平均的にどのくらいの給与が求められているのかをご紹介します。おおよその給料相場がわかると、特定技能外国人の給与を決めやすいですね。それぞれの業種の平均給与について、詳しく解説します。
建設
特定技能「建設」の給与の平均額は、以下のとおりです。
- 時給:1,380円
- 月給:23~24万円
- 残業時間:2万円(土曜日出勤分※隔週1回想定)
- 手取り:18~20万円(アパート代2~3万円)
時給の目安をご紹介しましたが、建設分野は月給で支払わなければなりません。企業によっては、基本賃金の他、お昼休憩がきちんと取れることや、有給休暇が取れることも条件としていることがあります。また、手取りが20万円以上など、手取り額が高ければ残業はなくても良いと考えている外国人も多いので、実際に就労する特定技能外国人の意向も聞いておくと良いでしょう。
建設分野は、全分野の中でも最も高い賃金が支払われている分野。その分きちんとした手続きが必要です。建設分野の場合は厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」を提出し、比較する必要があります。最新の賃金構造基本統計調査は、政府統計ポータルサイトからチェックできます。
「産業大分類」の「建設業」から統計調査を確認し、実際に支払われている賃金と比較しながら給与を検討しましょう。
製造業
特定技能「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業」の給与の平均額は、以下のとおりです。
- 時給:1,100~1,150円
- 月給:20~21万円
- 残業代:4~5万円(残業時間30時間~)
- 手取り:17~20万円(アパート代2~3万円)
残業時間が30時間以上と長めなのが特徴で、その分残業代は多く支払われます。旧製造分野の「素形材」「産業機械」「電気電子情報関連製造業」の3分野をまとめて算出した平均給与は「建設」「自動車整備」の次に高く、特定技能外国人に人気の業種です。東京や名古屋などの都市部が人気で、有給休暇が取れたりボーナスがあったりする企業はより特定技能外国人が集まりやすくなります。
製造業は、全特定技能外国人の約20%を占める人気の分野。未経験からでも始めやすく、日本語スキルもそれほど高くなくても続けられる魅力的な職種です。給与条件によってはさらなる人気を集める可能性が高いので、慎重に検討しましょう。
農業
特定技能「農業」の給与の平均額は、以下のとおりです。
- 時給:1,000円
- 月給:17~18万円
- 残業代:6~8万円
- 手取り:15~17万円(アパート代1~2万円)
農業の時給は平均1,000円程度と低めですが、その分残業時間が長く、しっかりと支払いが行われます。社会保険料控除後の手取り額は、平均15~17万円が目安。農業は都市部ではなく地方で就労する場合が多くアパート代が1~2万円と安いので、給料に対する手取り額は多めです。他の分野と同じく、有給休暇が取れたりボーナスが与えられたりすると特定技能外国人が集まりやすくなります。
また、夫婦での受け入れをサポートしている企業も。夫婦で就労ができたり、受け入れ企業から生活サポートがあったりする場合には働きたい外国人も増えるはず。特定技能外国人のメリットとなる条件を同時に考えておくのもおすすめです。
食品製造
特定技能「飲食料品製造」の給与の平均額は、以下のとおりです。
- 時給:1,050円
- 月給:17~19万円
- 残業代:2~3万円(残業時間20時間~)
- 手取り:16~18万円(アパート代2万円)
食品製造業の給与額は、平均月給が17~19万円程度です。残業は約20時間程度。アパート代が約2万円かかるので、手取りは16~18万円くらいが目安です。地域差が大きく、給与額はそれほど高くはありませんが、条件によっては特定技能外国人の受け入れがしやすくなります。2年に1回程度一時帰国が可能、ポジションのローテーションがあるなどの好条件のある企業は人気があります。
食品製造業も、流れ作業が多く高い日本語スキルを必要としない分野。特定技能外国人からの人気も高いので、特定技能外国人が満足のできる受け入れ体制を整えておくと良いでしょう。
外食
特定技能「外食」の給与の平均額は、以下のとおりです。
- 時給:1,200円
- 月給:25万円
- 残業代:5万円~(残業時間40時間~)
- 手取り:20万円(アパート代4~5万円)
外食業は、特定技能の分野の中でも給与の高い分野です。平均時給が1,200円、平均月給が25万円と高く、残業も多く取れます。就労する地域にもよりますが、外食分野は都市部での就労が多いため、アパート代も4~5万円と平均額が高め。とはいえ、アパート代や社会保険料を差し引いても手取り額は約20万円くらいになります。
外食業は、東京・大阪・名古屋などの都市部が人気です。特にまかない付きの企業やボーナスがもらえる企業などには、特定技能外国人が集まりやすくなります。
介護
特定技能「介護」の給与の平均額は、以下のとおりです。
- 時給:1,150円
- 月給:21万円
- 夜勤手当や残業代:4~5万円
- 手取り:16~20万円(アパート代4~5万円)
介護業の平均時給は1,150円、平均月給は21万円です。アパート代が4~5万円かかり、手取りは16~20万円が平均額となっています。介護業には、特定技能以外にも「EPA」や「介護ビザ」「技能実習」という複数の在留資格があります。特によく比較されるのが「技能実習」ですが、技能実習の給与平均額は月給17万程度と、特定技能の月給21万円よりも安く設定されています。しかし、渡航費用や監理団体への費用などを合わせると、技能実習の方が費用が多くかかります。
なお、介護業は日本語や介護の技能スキルが必要とされる分野のため、それなりの給料を支払う必要があります。
【他業種】最低賃金+50~100円が相場
その他の業種は、最低賃金を目安に考えると良いでしょう。最低賃金に50~100円を足した金額が給与の相場。最低賃金よりも低い金額を給与として決めると違法になってしまうので、注意が必要です。最新の最低賃金は、厚生労働省のホームページで確認できます。
令和5年度10月1日時点での東京都の最低賃金は1,113円。東京の企業なら、この金額を下回らないように注意しましょう。地域水準よりも高い給与が認められた特定の産業には、特定(産業別)最低賃金が設けられています。特定産業に当てはまる場合は産業別の特定最低賃金もチェックし、高い方の最低賃金額よりも高い給与を支払う必要があります。
最低賃金より少し高い金額が、その他の業種の平均給与の相場。相場価格を参考にしながら、特定技能外国人も受け入れ企業も納得のできる給与額を決定しましょう。
トラブルを避けるために!控除についての説明も事前に伝えよう!
給与の設定では、特定技能外国人とのトラブルが起こりやすいもの。給与控除をすると手取り額が減ってしまうため、給与控除に関しては特定技能外国人にしっかりと納得できるように理解してもらうことが大切です。給与控除の仕組みがうまく分かっていないと、思わぬトラブルになってしまう可能性も。きちんと理解してもらうために、できれば母国語で説明ができると良いでしょう。
とはいえ、母国語で説明できる人材が企業にいないこともありますね。受け入れに悩んでいるなら、登録支援機関に相談してみるのもおすすめ。ベトナム・インドネシア・タイ・カンボジア国籍のスタッフが在籍するKMTなら、母国語での説明も可能です。特定技能外国人の給与について分からないことがあるなら、ぜひKMTにお問い合わせください。