12業種

「繊維業で働いていた外国人は、特定技能になれない…」と諦めかけていませんか?2024年3月の閣議決定で、繊維業でも特定技能として受け入れることが可能になりました。特定技能は、よりよい制度になるために議論が重ねられ、常に進化し続けています。

この記事では、特定技能の製造業分野の業種追加について詳しく解説!製造業分野で新たに追加された11業種を、分かりやすくご紹介します。製造業分野で特定技能外国人の受け入れを考えている企業主さんは、ぜひチェックしてみてくださいね。

製造3分野の名称が変更!工業製品製造業へ!

製造3分野の名称が変更!工業製品製造業へ!

2024年3月29日の閣議決定で、製造3分野の名称が「工業製品製造業」へと変更されました。製造業は、特定技能の中でも変化の多い分野。特定技能設立当初は製造3分野として「素形材産業分野」「産業機械製造業分野」「電気・電子情報関連産業分野」の3種に分かれていたのですが、令和4年4月26日の閣議決定で、「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野」という一つの分野へと統合されました。

さらに今回、「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野」から「工業製品製造業」と名称が変更!統合したことで長くなってしまっていた名称をすっきりとさせ、新たに業種も追加して生まれ変わりました。名称が短くなることでより分かりやすくなり、長い名称を記載したり伝えたりする必要がなくなるため、受け入れの手続きも楽になることでしょう。

受入れ人数が大幅に拡大!製造業にて約3倍の増員を目指す!

2024年3月29日の閣議決定では、今ある分野に加えて新たに特定技能の分野が追加されることが決まりました。追加される分野は、以下の4種です。

  1. 自動車運送業
  2. 鉄道
  3. 林業
  4. 木材産業

業種の追加に伴い、各分野での受入れ人数も拡大。工業製品製造業でも、向こう5年間の受入れ見込み数が大幅に拡大されました。

  • 49,750人→173,300人

つまり、今後5年間製造業での受け入れは約3倍の増員を目指すということ。少子化などにより日本人で働き手がなかなか見つからない製造分野で、外国人を雇うことで人手不足を補うのがその目的です。製造業での特定技能外国人の受入れ拡大は、日本で働きたい外国人にとっては絶好の機会となることでしょう。

受入れ企業の責務も厳格化!環境整備を進める必要性◎

製造分野での受入れ人数の拡大は、受入れを行う企業にとって受入れが楽になるように感じるでしょう。しかし、より多くの外国人を適正に雇用するため、受入れ企業に課される受入れ条件も厳しくなります。特に繊維業では、技能実習生の時間外労働への支払い不足が行われていることが多いため、より厳格な要件が設定されることに。繊維業には、下記の特別要件が追加されることになりそうです。

  • 国際的な人権基準を遵守し事業を行っている
  • 勤怠管理を電子化している
  • パートナーシップ構築宣言を実施する
  • 特定技能外国人の給与を月給制とする

特定技能外国人を人権的に軽視した扱いをしていないことはもちろん、勤怠管理を電子化して証拠を残せるようにしておく必要があります。また、パートナーシップ構築宣言をすることが求められており、宣言をすることで取引先とのパートナーシップを強化することができるメリットがあります。さらに、繊維業で働く特定技能外国人の給与は月給制にしなければなりません。月給制にすることで、特定技能外国人の安定的な収入を約束することができます。

繊維業以外でも外国人との共生社会の実現に寄与することが受入れ企業の責務であることが求められるので、特定技能外国人が働きやすい環境の整備を進めておくと良いでしょう。

新たに追加された業種とは?11分野をご紹介!

新たに追加された業種とは?11分野をご紹介!

工業製品製造業では、新たな業種が追加されることが決まりました。新たに追加されるのは、以下の11業種です。

  1. 鉄鋼業
  2. 金属製サッシ・ドア製造業
  3. プラスチック製品製造業
  4. 紙器・段ボール箱製造業
  5. コンクリート製品製造業
  6. 陶磁器製品製造業
  7. 繊維業
  8. 金属製品塗装業
  9. RPF製造業
  10. 印刷・同関連業
  11. こん包業

従来の「素形材産業」「産業機械製造業」「電気・電子情報関連産業」「金属表面処理業」に加えて、新たに11業種が追加。それぞれの業務内容や要件を知っておくことで、どの業種で受入れが可能なのか分かるはず。それぞれの業種について、詳しく解説します。

鉄鋼業

鉄鋼業は、鉄を原料として土木や建築などに使われる鋼材を生産する産業のこと。鋼材の切断や鉄骨の組立て、溶接作業なども業務に含まれます。以下のような業種が受入れ可能になります。

  • 銑鉄鋳物製造業(鋳鉄管,可鍛鋳鉄を除く)
  • 可鍛鋳鉄製造業
  • 鋳鋼製造業
  • 鍛工品製造業
  • 鍛鋼製造業

鋳造や鍛造、機械加工、プレス、塗装などを行う素形材産業と似ていますが、大きな違いは鉄を扱うこと。鉄鋼業に従事していた技能実習生も、条件が揃えば受入れが可能になります。

金属製サッシ・ドア製造業

金属製サッシ・ドア製造業

金属製のサッシやドアの製造業も、受入れ可能な業務として新たに追加されました。サッシの製造では、金属の表面を加工するだけの場合は「金属表面処理」として以前から受入れが可能でしたが、鋳造から表面処理、組み立てまでを行う場合は受入れ対象外でした。しかし今回の追加により、サッシを一から製造する場合も「金属製サッシ・ドア製造業」として受入れ対象になることが閣議決定されました。

サッシやドアなどの建築用金属製品製造業も追加されたことで、高齢化や職離れの進むサッシ・ドア業界はモチベーションを高めています。日本サッシ協会も「サッシ・ドア製造業における生産性向上等の業界計画について」という新たな取り組みにより、業界全体の働きやすい環境を整えている最中。今後金属製サッシ・ドア製造業では受入れのしやすい環境が整っていくことが予想されます。

プラスチック製品製造業

プラスチック製品製造業

プラスチック製品製造業は、プラスチックを用いて各種成型機により形成された成形製品を製造する業務。同製品を切断、接合、塗装、蒸着めっき、バフ加工などの加工を行う事業所やプラスチックを使って成形のために配合、混和を行う事業所や再生プラスチックを製造する事業所が受入れ対象になります。

これまではプラスチック製品の製造は、歯車製造業(プラスチック製含む)やプラスチック製軸受け、プラスチック製計量器などに限り特定技能として受入れが可能でした。その他、業務もプラスチック成形作業が含まれる一部のケースを除いて対象外でしたが、今後は組み立てなどを含む製造業務全般が対象に。技能実習には「プラスチック成形」という職種がありますが、プラスチック成形で技能実習2号を修了した外国人も、多くの事業所で特定技能として働くことができるようになるでしょう。

紙器・段ボール箱製造業

紙器・段ボール箱製造業

紙器(しき)とは、厚紙や板紙を使った箱のことです。紙器・段ボール箱製造業も新たに追加された業種のひとつ。以下のような業務により箱を作る作業をします

  • 印刷箱打抜き作業
  • 印刷箱製箱作業
  • 貼箱製造作業
  • 段ボール箱製造作業

段ボールを裁断し、糊の粘土を調節しながら段ボールに貼り付けて形を整えます。紙に印刷したものを段ボールに貼り付けたり、折り曲げて接着して箱の形を整えたりする作業を行うのが一般的です。「紙器・段ボール箱製造業」は技能実習で就労可能な業種。これまでは特定技能への移行ができなかった分野でしたが、今回移行が可能になり多くの人材確保ができるようになることが予想されます

コンクリート製品製造業

コンクリート製品製造業

コンクリート製品は、近年災害対策などで活躍が期待されているもの。コンクリートを作るコンクリート製品製造業は、人材が必要でありながらも若者がなかなか集まりにくい業種です。今回コンクリート製品製造業が特定技能の受入れ対象になることで、人材確保の可能性が広がります。コンクリート製品製造業で技能実習生として雇用されていた外国人も、特定技能に移行して長く働くことができますね。

コンクリート製品製造業は、技能実習3号まで取得すると複雑な鉄筋コンクリートの成形や手直しまでできるようになります。ただ、技能実習はあくまで技能の習得が目的。特定技能なら単純作業をさせても問題ないので、特定技能への移行ができるようになるのは受入れ機関にとって大きなメリットといえます。

陶磁器製品製造業

陶磁器製品製造業も、新たに特定技能に追加される業種のひとつ。陶磁器というと茶碗やカップ、お皿などの食器をイメージしますが、トイレや住宅用のタイルなどにも陶磁器が使われています。生活に深く関連する陶磁器を大量生産する作業も、特定技能の受入れ対象業務になります。主な作業内容は、以下の3種です。

  1. 機械ろくろ成形
  2. 圧力鋳込み成形
  3. パッド印刷作業

機械式のろくろや圧力をかける機械により陶磁器を成形したり、陶磁器に印刷したりして陶磁器を製造します。陶磁器製否認製造業は、女性が多く活躍しているのが特徴。陶磁器の製造は機械化されているため、特別なスキルが必要な業種でもありません。今回の追加により、外国人女性も特定技能として受入れやすい環境になるでしょう。

繊維業

繊維業

繊維業も、陶磁器製品製造業と同じく女性が活躍する業種です。ただ、繊維業の技能実習生には最低賃金が守られなかったり、割増賃金が支払われなかったり、違法な労働時間外労働をさせられたりといった法令違反が多かったのも事実。なかなか特定技能としての受入れが叶わなかったのですが、今回の閣議決定により繊維業の受入れも可能になります。繊維業の追加は、女性の人権を守る特定技能制度としての、大きな一歩といえるでしょう。

前述のとおり、しっかりと特定技能外国人の適正な雇用を行うため、繊維業の特定技能受入れには他の業種にはない特別な要件が求められます。繊維業の受入れ機関は、特定技能外国人を日本人と同じような待遇で受入れる環境を整えることが大切です。

金属製品塗装業

金属製品塗装業も、新たな特定技能受入れ対象業務として追加されます。金属の塗装、塗料の調合・調色作業、仕上げまでを行います。

塗装業は、製造業としての受入れ対象業務とはなっておらず、金属製品塗装業は受入れの対象外でした。素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野に関連する業務の中で、塗装も行っている場合は受入れの対象になりましたが、塗装のみの業務は受入れ対象外。しかし今回の追加で、金属製品の塗装のみでも金属製品塗装業として受入れが可能になります。

技能実習で「金属塗装」の作業をしていた方も、受入れが可能に。技能実習から特定技能に移行できる業種が続々と追加されるので、多くの実習生がより良い環境で働けるチャンスとなることでしょう。

RPF製造業

RPF製造業も、新たに追加された業務のひとつ。RPFとはRefuse derived Paper & Plastics densified Fuelの略称で、リサイクル原料を圧縮成形や押出成形などで固形化した燃料のことです。受入れ機関に求められる条件は、以下のとおりです。

  • JIS規格認証または300t/月以上の生産能力(許可上処理能力)を有する
  • 安全管理者または安全衛生推進者を選任している
  • 安全衛生委員会を設置している
  • 日本RPF工業会が定めるひな型に準じた安全衛生規定を制定している

上記4つの条件を満たすことで、RPF製造業での受入れが可能になります。RPF製造では、40社70名の技能実習生が特定技能に移行する予定。人手不足が心配されるRPF製造業で、多くの人材の確保が期待できます。

印刷・同関連業

印刷・同関連業

印刷・同関連業も特定技能の受入れ対象業種として追加されました。ただ、受入れ機関は全日本印刷工業組合連合会、全国グラビア協同組合連合会、全日本製本工業組合連合会いずれかに所属している必要があります。技能実習の「オフセット印刷」と「グラビア印刷」は、「印刷・同関連業」として移行が認められることになります。どちらも、印刷機を操作して印刷をする作業を行います。 印刷といっても単純作業ではなく、色を識別してきれいな色味になるように印刷するスキルが必要な業種です。

具体的な業務には、以下のようなものがあります。

  • 刷版の選定作業
  • 刷版の取付け及び取り外し作業
  • 印刷用紙の目の判定作業
  • 印刷用紙の計数作業
  • 単色及び多色刷り作業
  • オフセット印刷機の調整作業
  • 印刷時間の積算作業
  • オフセット印刷物の良否の判定作業
  • オフセット印刷物の品質評価作業
  • 印刷用紙・印刷用インキ使用量の積算作業

特定技能「印刷・関連業」として外国人を雇用することで、印刷に関する多くの作業を任せられるようになります。

こん包業

こん包業も、特定技能の製造業として受入れが可能になる業種です。受入れ機関は、日本梱包工業組合連合会に所属していることが要件になります。こん包業では、製造業で作られた製品を輸送したり保管したりするために、箱詰めなどの作業を行う工業梱包がメインの業務です。また、内装および外装作業も業務内容に含まれます。こん包する物品を保護するために、以下のような作業も行います。

  • 防水包装作業
  • 防湿包装作業
  • 緩衝作業
  • 固定作業

こん包がしっかりとされていないとせっかく作った物品が壊れたりサビついたりしてしまいます。製造業の中でも大切な役割を果たすこん包業も、今後受入れが可能に。より多くの外国人が活躍できる場が増えることになります。

まとめ|特定技能外国人はKMTにお任せください

製造業の業種も追加され、繊維業や陶磁器製品製造業など女性の活躍できる場も広がることになります。とはいえ、自社の業種が特定技能として受入れ可能なのかよく分からないという方もいるでしょう。
特定技能外国人の受入れに不安があるなら、登録支援機関のKMTにお気軽にご相談ください。特定技能外国人の受入れ実績が豊富なKMTなら、受入れの可否まで弊社にて問い合わせし、判断させていただきます。製造業で特定技能外国人の受入れを考えているなら、ぜひKMTにお問い合わせください。

大房行政書士法人代表 / 株式会社KMT取締役
行政書士 大房明良 監修

東京都大田区蒲田に生まれ、大学在学中に訪れたカンボジアで学校建設ボランティアに参加し、貧困問題に興味を持つ。2016年に行政書士事務所を開業し、カンボジア語が話せる行政書士として入管業務を専門に行う。現在は特定技能申請をメイン業務とし、2023年5月現在で申請数は4500件を超える。
また、取締役を務める株式会社KMTでは、約600名の特定技能外国人の支援を行っている。