12業種

「特定技能の対象分野が追加されるって聞いたけど、どの分野?」と気になってはいませんか?特定技能の対象分野は、徐々に拡大しています。この記事では、どの分野が追加されたのかご紹介し、再設定された分野別の受入れ見込み人数や受入れ体制の整え方もご紹介します。

また、「新たに追加された分野で働く技能実習生は、特定技能に移行ができる?」という疑問にもお答えしていきます。特定技能がどんな方向に向かっているのか知りたい方は、ぜひチェックしてくださいね。

特定技能で追加される4分野とは?12分野→16分野へ制度が改正

特定技能で追加される4分野とは?12分野→16分野へ制度が改正
令和6年3月29日の閣議決定で、以下の4分野が新たに追加されることが決まりました。
  1. 自動車運送業
  2. 鉄道
  3. 林業
  4. 木材産業

深刻な人手不足により日本国内からだけでは十分な人材が確保できない分野で、特定技能1号として認められる分野が追加されることが決定しました。以前からある分野は以下の12分野です。

  1. 介護
  2. 外食業
  3. 宿泊
  4. 飲食料品製造業
  5. 自動車整備
  6. 航空
  7. 農業
  8. ビルクリーニング
  9. 工業製品製造業
  10. 建設
  11. 造船・舶用工業
  12. 漁業

「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業」は名称が変更され、「工業製品製造業」となりました。以前の12分野から16分野への大幅な拡大が決定!受入れ可能な企業も増えるので、人手不足解消への大きな一歩となるでしょう。

さらに、すでにある分野の受入れ対象業務も拡大します。

  • 工業製品製造業:紙器・段ボール箱製造、コンクリート製品製造、陶磁器製品製造、紡織製品製造、縫製、RPF製造、印刷・製本の7業務区分を追加
  • 造船・舶用工業:造船・舶用工業に係る必要となる各種作業を業務区分に追加
  • 飲食料品製造業:食料品スーパーマーケット及び総合スーパーマーケットの食料品部門における惣菜などの製造も可能とする予定

工業製品製造業では、前々から追加の要望があった繊維業や印刷業も受入れ対象業務に追加されます。
造船・舶用工業は「溶接」を除いたすべての分野で受入れが特定技能2号の受入れ対象になっていますが、今回の閣議決定で6つの業務区分が3つに再編。さらに、新たに造船・舶用工業に係る必要となる各種作業も追加され、特定技能外国人が担当できる作業の幅が広がります。
また、飲食料品製造業ではスーパーでの惣菜などの製造も、特定技能として任せられるように。多くの外国人がさまざまな業種で就労できるようになります。

最大82万人の受入れを検討!適切な環境整備が不可欠

最大82万人の受入れを検討!適切な環境整備が不可欠

政府は、特定技能制度の見直しを行い、2024年度から5年間の特定技能の受入れを最大82万人とすることを閣議決定しました。受入れ見込み数が2023年度までの5年間から倍以上に膨れ上がり、今後多くの外国人を特定技能として受入れることになりそうです。

受入れ数が増えるため、特に新たに追加された分野では適切な受入れ環境の整備が不可欠になります。受入れ体制を整えるためには、明確な給与・給与の設定や日本語のサポートが必要。日頃からわかりやすい言葉を心がけておくことも大切です。令和6年4月の閣議決定で特定技能に追加されることになった分野は、以下のとおり。

  • 自動車運送業
  • 鉄道業
  • 林業
  • 木材産業

それぞれの分野の受入れ見込み数や生産性アップの取組、受入れ機関が行うべき環境整備などについて、詳しく解説します。

自動車運送業

労働時間が長く、女性の少ない自動車運送業は、日本で人手不足が懸念されている分野です。時間外労働の上限が規制されるため、労働時間が減る「2024年問題」も働き手不足の原因のひとつとなっています。自動車運送業の令和6年から令和10年までの受入れ見込み数の上限は、24,500人。生産性向上の取組として、以下のような方法を行います。

  • トラック運送業:年間総労働時間の上限超過分を5年間で9割削減
  • タクシー運送業:5年間で4%程度の生産性向上
  • バス運送業:5年間で2%程度の生産性向上

自動車運送業では、トラックだけでなくタクシーやバスの運転とそれに付随する業務全般を特定技能外国人が担うことができるようになります。

鉄道業

鉄道業では、駅員や電車の運転手さんの行う業務だけではなく、軌道整備や電気設備整備、車両の部品製造なども行います。鉄道業は、コロナ渦で需要が落ちたものの、コロナの落ち着いた今では需要が高まっている業務。若い担い手がなかなか見つからず、高齢化による退職者の増加などにより人手不足が起こっています。

鉄道業の令和6年から令和10年までの受入れ見込み数の上限は、3,800人。特定技能外国人には、チームリーダーなどの指導・監督の下、鉄道特有のルールを理解して特殊機材や工具などをもちいて作業のできる一定の専門性や技能が求められます。

安全な輸送の重要なキーとなる鉄道業において外国人を受入れるために、外国人が研修のしやすい職場環境を整えておくと良いでしょう。賃金水準の改善や手当の拡充のほか、以下のように女性の働きやすい環境を整えるのもおすすめです。

  • 多様な職種への女性の配置
  • 女性用宿泊施設の整備
  • 女性職員の比率に関する目標設定をする

林業

日本の人口林の約4割が資源として利用可能な段階に来ています。木材の安定した供給が求められるなか、山村部での深刻な高齢化により人手不足も深刻化。林業の令和6年から令和10年までの受入れ見込み数の上限は、1,000人となっています。若者や女性、高齢者などの国内人材を確保しようと毎年新規で約3,000人の人材を確保していますが、それでも人手不足は収まっていません。

林業の特定技能外国人には、林業の基本的な知識や技能を持ち、状況に応じて作業手順を自ら考えて育林や素材生産などの作業を行うことができる能力が求められます。受入れ企業は、受入れ環境の整備のために以下のような取組をしておくと良いでしょう。

  • 複数の作業や作業工程、デジタル技術等を学ぶ研修の実施
  • 就業ガイダンスの開催
  • 各種施策による賃上げの促進

木材産業

木材産業は、製材や合板製造に関わる木材の加工が主な業務です。日本人の国民病とも考えられる花粉症は、スギによるものが多いです。花粉症対策としてスギを伐採するためには、スギの需要を増やすことが重要。そこで、スギの需要を増やすために不可欠な「木材産業」が注目を浴びています。木材産業の令和6年から令和10年までの受入れ見込み数の上限は、5,000人。外国人の若者が安心して働ける環境を整える必要があります。

木材産業は、労働災害が発生しやすい分野。そのため、林野庁の作成した作業ポスターや研修資材などの安全啓発資材を積極的に活用し、特定技能外国人にも安全性を理解してもらう取組を実施しておくと良いでしょう。

4つの分野はそもそも技能実習は対象外もしくは最近スタートした分野が多い

4つの分野はそもそも技能実習は対象外もしくは最近スタートした分野が多い

追加される4つの分野は、特定技能2号の受入れはできません。また、技能実習からの移行はできるか疑問になりますが、技能実習では追加された4つの分野は対象外か最近スタートした分野です。今回の追加について、気になる2つの疑問を押さえておきましょう。

  1. 元技能実習生から特定技能への切替はまだ先?
  2. 試験合格ルートで一定数の受入れ人数が見込める?

技能実習から特定技能への切替はできるのか、試験合格ルートで受入れができるのかと気になる点は多いですね。知っておくと、受入れがスムーズになるはず。それぞれの疑問について、詳しく解説します。

元技能実習生から特定技能への切替はまだ先?

元技能実習生が新たに追加される4分野で就労している場合、特定技能への切替はできるのか疑問に思っている方は多いでしょう。4つの分野の技能実習の受入れ状況は以下のようになっています。

  • 自動車運送業⇒対象外
  • 鉄道業⇒2024年4月に初の受入れ
  • 林業⇒技能実習第2号・第3号へ移行できる職種に追加検討中
  • 木材産業⇒2023年に技能実習第2号・第3号へ移行できる職種に追加

技能実習から特定技能に移行するためには、技能実習第2号を良好に修了していなければなりません。技能実習は、1号で最大1年間、2号で最大2年間の在留が可能です。つまり、技能実習をスタートしてから2号を修了するまでには3年かかるということ。技能実習がスタートしたのが2022~2023年の職種もあり、そもそも技能実習対象外の職種や2号への受入れが始まったばかりの職種もあることから、特定技能への切替はまだ先になるでしょう。

試験合格ルートとして一定数の受入れ人数が見込める

「技能実習から特定技能への受入れがまだ先なら、追加される4分野での受入れはできないのでは?」と疑問に感じている方もいるでしょう。特定技能には、技能実習からの移行ルートのほかに試験合格ルートがあります。特定技能の各分野に設けられた技能試験と日本語能力試験を受けて合格することで、新たに特定技能外国人としての受入れが可能。そのため、試験合格ルートから一定数の受入れ人数が見込めます。

実際には、特定技能外国人は技能実習から移行した方がほとんど。しかし、試験に合格するルートで特定技能になる方もいます。今回の分野の追加は、試験合格ルートで特定技能の取得を目指す外国人にはうれしいニュース。今技能実習で同分野で就労している方にとっても、今後特定技能として最大5年間の就労ができるようになるのはうれしいポイントといえるでしょう。

2024年4月現在では追加される4分野の特定技能2号への切替はできません。しかし、追加以前の分野ではすでに長期ビザのある介護を除いてすべての分野が特定技能2号への切替が可能になっているため、今後追加される4分野でも特定技能2号の取得が可能になることもあるでしょう。長期就労を目指している外国人や外国人の長期雇用を目指している受入れ企業は、今後の特定技能の動向に期待ができますね。

まとめ|特定技能のご相談はKMTにお任せください

まとめ|特定技能のご相談はKMTにお任せください
特定技能は、即戦力となり企業の業務を果たす大切な存在です。そんな特定技能として、受入れ対象の分野が拡大することは受入れ企業にとってうれしいニュース。とはいえ、外国人は日本の文化がわからず日本語も流暢に離せない場合もあります。そのため、受入れには思った以上に手間がかかることも。また、企業の業務が特定技能外国人の受入れが可能かどうか判断がつかない場合もあるでしょう。

そんなときには登録支援機関を頼ってみるのも良いでしょう。特定技能のご相談は、KMTにお任せください。特定技能の受入れ実績の高いKMTなら、受入れが可能かどうかも判断できます。ベトナム・インドネシア・タイ・カンボジア国籍のスタッフが在籍するKMTなら、母国語での説明も可能。まずはご相談だけでもお受けしますので、ぜひお問い合わせください。

大房行政書士法人代表 / 株式会社KMT取締役
行政書士 大房明良 監修

東京都大田区蒲田に生まれ、大学在学中に訪れたカンボジアで学校建設ボランティアに参加し、貧困問題に興味を持つ。2016年に行政書士事務所を開業し、カンボジア語が話せる行政書士として入管業務を専門に行う。現在は特定技能申請をメイン業務とし、2023年5月現在で申請数は4500件を超える。
また、取締役を務める株式会社KMTでは、約600名の特定技能外国人の支援を行っている。