在留資格

「特定技能外国人が転職したいと言ったらできる?」と疑問に思ってはいませんか?特定技能外国人を受け入れる企業主さんにとっては、特定技能外国人の転職は大きな問題となり得るでしょう。もし特定技能外国人が転職したいと言ったら戸惑ってしまうかもしれません。

そこでこの記事では、特定技能外国人の転職について徹底的に解説します。特定技能外国人の転職は可能かどうかから、これまでの転職事例から対策まで詳しく解説!特定技能外国人の転職について気になっている方は、ぜひ参考にしてみてください。

特定技能外国人は転職ができる!しかし、簡単ではない!

特定技能外国人には、転職が認められています。ただ、簡単に転職できると思ったら大間違い。特定技能外国人の転職は可能ですが、実際に転職するのは難しいのが現状です。

特定技能外国人に転職が認められているのは、多様な職種で外国人を雇用して人手不足を補おうとするため。特定技能外国人は、特定技能の受入れ対象分野内であれば分野に関わらずに転職が可能です。同じ分野での転職なら分野別の技能試験を受ける必要はありませんが、違う分野への転職では転職先の分野の技能試験を受けて合格する必要があります。

しかし、手続きやタイミングなどにより、転職は困難になっています。転職が簡単ではないのは手続きや費用などの制度面での難しさのほか、なかなか許可がおりなかったり次の仕事ができなかったりといった難しさがあり、精神面でも大きな問題になります。また、転職先の職場でうまくやっていけるのかという不安が、特定技能外国人と受入れ企業の両者につきまとうこともあるでしょう。

そのうえ、特定技能外国人の転職には新旧受入れ企業や行政書士、送り出し機関などの協力が不可欠であり、簡単なことではありません。

【知っておきたい】転職が簡単ではない3つの理由!

特定技能外国人の転職は、できますが簡単ではありません。転職が難しい理由は、以下の3つです。

  1. 在留資格の変更申請が必要!
  2. 送り出し機関の手続きが必要な場合も!
  3. 就労できない期間ができる&許可がおりない場合も!

受入れ機関は、どうして転職が簡単ではないのか知っておきたいもの。知っておくことで、どのような心持ちで特定技能外国人の雇用をするのか決まってくるはずです。特定技能外国人の転職が簡単ではないそれぞれの理由について、詳しく解説します。

⑴在留資格の変更申請が必要!費用も発生

特定技能外国人の転職が決まったら、旧受入れ企業は在留資格の変更申請を行わなければなりません。特定技能の在留資格は特定の受入れ企業で就労することが決まっているため、転職する場合は変更の届け出を行う必要があります。

変更申請は、転職する分野に関わらずに提出が必要です。「特定技能所属機関による受入れ困難に係る届出」と「特定技能所属機関による特定技能雇用契約に係る届出」を、出入国在留管理庁電子届出システムか旧受入れ企業の本店を管轄する出入国在留管理局に提出します。それに伴い費用も発生します。

在留資格の変更申請も手続きが大変なため、登録支援機関にサポートを依頼する企業がほとんど。サポートしてもらう場合にも、登録支援機関への支援委託料がかかります。

⑵転職においても送り出し機関の手続きが必要な場合も

転職には、新旧受入れ機関の他、国によっては送り出し機関の手続きが必要な場合もあります。送り出し機関とは、外国人労働者を海外から送り出している機関のことをいいます。

すでに特定技能1号の許可を得て働いている外国人でも、転職の際には送り出し機関の手続きが入管と同様に必要になる国があります。また、在留資格の変更に伴い費用が発生する場合も。例えばカンボジアの場合は、送り出し機関に1,000ドル以上の支払いが必要になるので、費用面での負担も大きいです。

さらに、送り出し機関のなかには悪質な企業もあり、日本への人材を派遣する代わりに高額な費用を要求してくる場合もあります。受入れ機関は、転職先を紹介してもらうときに悪質な送り出し機関にひっかからないように注意することも大切です。

⑶就労できない期間ができる上に許可がおりないケースも

特定技能外国人が転職するときには、就労することができない期間ができてしまいます。特定技能は指定の企業・分野および業務でしか働くことができないので、在留資格変更許可申請中もアルバイトができません。在留資格の変更申請をしてから許可がおりるまでは、約1~3ヶ月かかるのが一般的です。そのため、転職準備中や変更許可申請中に貯金がなくなって生活できなくなってしまう可能性もあります。

また、なんとか生活ができたとしても在留資格変更の許可がおりないことも。もし許可がおりなかった場合は、在留許可がなくなるのですぐに帰国しなければなりません。一旦帰国してしまうと特定技能の取得をまた一から始めることになり、受入れ企業との関係も疎遠になって特定技能取得への道が遠のいてしまうでしょう。

【事例を紹介】外国人が転職を考える3つの理由

特定技能外国人を含めた外国人が転職を考える理由は、大きく分けて3つあります。外国人が転職を考える3つの理由は、以下のとおりです。

  1. 給料が低くボーナスも出ない
  2. 人間関係が良好ではない
  3. プライバシーが確保されていない

外国人が転職を考えるのはどうしてなのか知っておくことで、具体的な解決策が見つかるはず。いきなり「転職したい」と言われて焦ることもなくなるでしょう。外国人が転職したいと思うそれぞれの理由について、詳しく解説します。

⑴給料が低い(ボーナスもない)

まず、外国人が転職を考えやすい理由は給料が低いことです。外国人に限らず日本人でも同じですが、給料が低くてボーナスも出ない場合は他の企業の方が良いかと考えてしまいがちです。

特定技能外国人には、同等の経験や知識を持ち同企業で同じ業務に従事する日本人と同じかそれ以上の報酬を与えなければなりません。そのため、特定技能外国人の場合は給料が日本人と比べて少ないことは考えられませんが、他の企業と比べて低いことは考えられます。そういった場合は特定技能でも外国人が転職を考えてしまうこともあるでしょう。

また、ボーナスなどの賞与が十分でない場合にも、外国人が転職を考えてしまうケースがあります。日本人でも同じですが、せっかく働いていても賞与がでないと残念なもの。ボーナスがないことが転職の直接の原因にはならなくても、ひとつの要素になる可能性は十分あります

⑵人間関係が良好ではない

人間関係も仕事をする上で重要な要素です。毎日顔を合わせる会社の人と折り合いが良くない場合は、他の企業に移りたくなります。日本人でも人間関係がうまくいかないことで転職したいと考える方は多いですが、外国人の場合は日本語が思うように話せず円滑なコミュニケーションがしにくいうえ母国と離れて暮らしているため人間関係が悪化すると孤立してしまいがちに。そうなると転職を考えても無理はありません。

また、文化の違いによる理解不足もひとつの原因になります。日本では先輩後輩といった上下関係が重んじられますが、国によっては上下関係があまり存在せずフラットな人間関係が当たり前な文化も多いです。そのため外国人が先輩からの圧力を重く感じてしまうことも。日本では当たり前のことですが、外国人にとっては大きなストレスとなってしまうことがあります。

さらに、周囲の日本人も外国人とのコミュニケーションに不慣れで、人間関係がうまくいかずに外国人を転職させざるを得なくなることもあります。

⑶住居関係|プライバシーが確保されていない

特定技能外国人の不満は、仕事面だけではありません。特定技能外国人は就労しながら日本に暮らしているため、住居関係での不満も転職の理由になることがあります。特定技能外国人の住居は、受入れ企業のサポートにより確保することが必要です。受入れ企業の用意した寮や社宅に入る場合でも、借りたアパートに入る場合でもプライベートな空間を確保してあげる必要があります。

例えば受入れ企業の用意した寮に入る場合には、他の外国人と同じ部屋になることもあるでしょう。ただでさえプライバシーが確保されない相部屋生活で言葉も文化も違う外国人と同じ部屋になることは、ストレスとなることもあるでしょう。そんなときに、外国人が一人の時間が持てるプライベートな個室がなくて悩んでしまい、別の住居に移れる転職を考えてしまうことがあります。同僚と仲良く暮らせる環境なら問題ありませんが、相部屋が毎日のことでストレスに感じているなら、個室を用意した方が良いでしょう。

【必見】なるべく転職を防ぐための3つのポイント

せっかく受け入れる特定技能外国人は、できるなら転職を防いで長く一緒に働きたいもの。転職を防ぐための3つのポイントを覚えておきましょう。

  1. 事前ガイダンスなどを丁寧に行う
  2. 評価体制を明言化する
  3. 定期的に面談を行う

転職を防ぐための対策を行うことで、外国人の転職は防ぐことができます。さらに、これらのポイントを押さえておくことで誰もが働きやすい環境に整えることもできるでしょう。転職を防ぐためのそれぞれのポイントについて、詳しく解説します。

⑴事前ガイダンスなどを丁寧に行う

特定技能外国人を受け入れるときには、事前ガイダンスや生活オリエンテーションが行われます。事前ガイダンスや生活オリエンテーションでは、特定技能外国人の分からないことは全て教えるつもりで丁寧に説明を行うのがポイント。他の国とは違う日本の文化を伝えることも大切です。この時点で日本の就労には上下関係が重視されることなどを前もって伝えておくと、慣れない上下関係により外国人が不満を募らせることを避けられます。

事前ガイダンスや生活オリエンテーションは、特定技能外国人の十分に理解できる母国語で行うのがおすすめです。企業に母国語ができる人材がいない場合も多いため、多ヶ国語でサポートできる登録支援機関を選んでサポートしてもらうと良いでしょう。

⑵昇給や賞与などの評価体制を明言化する

ボーナスや皆勤手当てなどを与えることは、外国人のモチベーションアップにもつながります。昇給や給与は積極的に与えるだけでなく、どのように評価されるのかを言葉と書面で明確にすることも大切です。日本と外国ではどのようなシーンで評価されるかが異なる場合があります。普段意識しなくても日本ならではの評価の仕方があり、日本では当たり前のことでも外国人には理解されていないこともあります。そのため、評価体制を明言化しておくことが大切です。

ここでも、きちんと評価体制や報酬の与え方が外国人に伝わっていることを確認することも重要なポイント。分かっているようで分かっていなかったということがないように、母国語での説明が理想的です。

⑶定期的に面談などを行い環境を整える

受入れ企業は、特定技能外国人が不満を募らせないように環境を整えておくことが大切です。常に特定技能外国人に気を配り、定期的な面談や声掛けなどを行って不満がないことを確認しておきましょう。外国人は、知らず知らずのうちに不満を募らせていることがあり、ストレスを抱えてしまうことがあります。もし不満があったなら、相談に乗るだけでも助けになるはず。外国人の話を聞き、改善できることがあったら改善して働きやすい環境に整えておきましょう。

言葉が違うことは、外国で生活しながら働く方にとって大きなストレスとなります。母国語を話せる人材を一人教育係につけるなども、転職を防ぐための良い方法のひとつです。定期的な面談をするのも良いですが、日々の雑談などを通して外国人が本音が言える環境を整えておくことで何がうまくいっていないのかを聞き出すことができるはず。本音が言える職場なら、外国人が転職せずにずっとこの企業で働きたいと思えるでしょう。

まとめ|特定技能外国人の転職は簡単ではない!

特定技能外国人は、転職ができますが簡単にできるわけではありません。転職するとなると費用もかかるし、新旧受入れ企業や母国の送り出し機関、行政書士などのサポートが必要で、特定技能の転職はハードルが高いものといえます。特定技能外国人を受け入れるなら、転職を防いで長く働いてもらう方が良いでしょう。

転職を防ぐためには母国語でのサポートが不可欠ですが、企業内に母国語が話せる方がいることは少ないもの。そんなときには登録支援機関にサポートを委託するのがおすすめです。登録支援機関KMTは、自社内でカンボジア・ベトナム・インドネシア・タイ・英語・中国の言語に対応が可能。特定技能外国人の転職を防ぐための対策も母国語で行うことができます。特定技能外国人の転職で悩んでいるなら、ぜひKMTにご相談ください!

大房行政書士法人代表 / 株式会社KMT取締役
行政書士 大房明良 監修

東京都大田区蒲田に生まれ、大学在学中に訪れたカンボジアで学校建設ボランティアに参加し、貧困問題に興味を持つ。2016年に行政書士事務所を開業し、カンボジア語が話せる行政書士として入管業務を専門に行う。現在は特定技能申請をメイン業務とし、2023年5月現在で申請数は4500件を超える。
また、取締役を務める株式会社KMTでは、約600名の特定技能外国人の支援を行っている。