国土交通省は、特定技能の主要5分野を管轄する行政機構。それぞれの分野に協議会を設けて特定技能の適切な運用を行っています。しかし、具体的にどの分野が国土交通省の管轄なのか分からないという方も多いでしょう。
今回は、国土交通省における特定技能で受け入れ可能な5分野について徹底解説。協議会への加入方法も、分かりやすく解説します。知っておくと、国土交通省の管轄する特定技能5分野での受入れがぐんと楽になりますよ。
目次
在留資格「特定技能」において協議会が果たす役割は?
協議会とは、特定技能の外国人を保護しながら在留資格を正しく運営するために設けられた機関。特定技能が認められる14種の分野ごとに、管轄する省庁により設置されています。協議会には、各分野の受入れ状況を把握し人手不足を解消するために対応していく役割があります。
基本的に会費はかかりませんが、建設分野のみ費用がかかります。特定技能の在留資格を持つ外国人の受け入れ企業は、協議会への加入が必須。加入方法は各分野ごとに異なります。特定技能外国人の受け入れ後4ヶ月以内に加入する必要があるので、受け入れ後はすぐに協議会加入の準備を始めた方が良いでしょう。
また、委託を受けている登録支援機関の加入義務は、分野ごとにある場合とない場合があります。各分野の省庁ホームページで、確認しておきましょう。
国土交通省が所管する特定技能の5分野とは?それぞれの仕事内容は?
国土交通省は、特定技能14分野のうち5分野を管轄しています。国土交通省が所管する特定技能の5分野は、以下のとおりです。
- 建設分野
- 造船・舶用工業分野
- 自動車整備分野
- 航空分野
- 宿泊分野
特定技能は人手不足解消のために作られた制度。人手が不足している業務を担当してもらうために、各分野ごとに特定技能として働ける業務内容も決まっています。受け入れ企業は、外国人に働いてもらう業務内容が対象となっているのか確認したいものですね。
それぞれの分野の仕事内容について、詳しく解説します。
建設分野|2020年2月に追加されて現在は全18職種!
人手不足解消の鍵として特定技能制度の中でも注目を集めているのが、「建設分野」。2020年2月には、新たに担当できる業務が7種追加され、2021年10月現在全18職種に従事ができるようになっています。対象の職種は、以下の18種です。
- 型枠施工
- 鉄筋継手*
- 左官
- 内装仕上げ
- コンクリート圧送
- とび
- トンネル推進工*
- 建築大工
- 建設機械施工
- 配管
- 土工*
- 建築板金
- 屋根ふき
- 保温保冷
- 電気通信*
- 吹付ウレタン断熱*
- 鉄筋施工
- 海洋土木工*
技能実習からの移行で技能試験が免除になりますが、※は技能実習ではない職種なので、特定技能1号の技能試験を受験して合格する必要があります。その他の職種も準備が整い次第、順次追加予定。今後さらに多くの業種で働ける外国人が増えそうです。
造船・舶用工業分野|6つの業務に従事可能!
特定技能「造船・舶用工業分野」で従事できる業務内容は、以下の6つです。
- 溶接(手溶接、半自動溶接)
- 塗装(金属塗装作業、噴霧塗装作業)
- 鉄工(構造物鉄工作業)
- 仕上げ(治工具仕上げ作業、金型仕上げ作業、機械組立仕上げ作業)
- 機械加工(普通旋盤作業、数値制御旋盤作業、フライス盤作業、マシニングセンタ作業)
- 電気機器組立て(回転電機組立て作業、変圧器組立て作業、配電盤・制御盤組立て作業、開閉制御器具組立て作業、回転電機巻線製作作業)
現在特定技能2号を取得できるのは、造船・舶用工業分野(溶接のみ)と建設分野のみ。溶接のみですが、造船・舶用工業分野は特定技能2号を取得できる数少ない分野の1つです。特定技能1号での在留資格は最大計5年ですが、特定技能2号は制限なく在留が可能。日本に長く滞在したい方に人気の分野です。
自動車整備分野|3級自動車整備士相当の技術が必要
特定技能「自動車整備業」で担当できる業務は、以下の3つです。
- 自動車の日常点検整備
- 自動車の定期点検整備
- 自動車の分解整備
定期点検では、以下のような装置の点検を行います。
- ステアリング装置
- ブレーキ装置
- 走行装置
- 動力伝達装置
- 電気装置
- エンジン
- サスペンション
- 排出ガス減少装置
分解整備は、装置を取り外して行う整備や改造のことです。上記の業務に従事しているなら、ガソリンスタンドやカー用品店などでも受入れができます。
特定技能を取得する外国人は、これらの作業を1人で適切に行うことのできる、3級自動車整備士相当の技能が求められます。以下の試験いずれかに合格しなければなりません。
- 自動車整備分野特定技能評価試験
- 自動車整備士技能検定試験3級
航空分野|航空グランドハンドリング、航空機整備業の2職種!
特定技能「航空分野」で従事可能な職種は、以下の2つです。
- 航空グランドハンドリング業務
- 航空機整備業務
「航空グランドハンドリング業務」は、以下のような業務を行います。
- 航空機地上走行支援業務(航空機の駐機場への誘導や移動)
- 手荷物・貨物取扱業務(手荷物・貨物の仕分け、ULDへの積付、取り降し・解体)
- 手荷物・貨物の搭降載取扱業務(手荷物・貨物の航空機への移送、搭降載)
- 航空機内外の清掃整備業務(客室内清掃、遺失物等の検索、機用品補充や機体の洗浄)
「航空機整備業務」は、以下のような業務を行います。
- 運航整備(空港に到着した航空機に対して、次のフライトまでの間に行う整備)
- 機体整備(通常1~1年半毎に実施する、約1~2週間にわたり機体の隅々まで行う整備)
- 装備品・原動機整備(航空機から取り下ろされた脚部や動翼、 飛行・操縦に用いられる計器類等及びエンジンの整備)
どちらも、飛行機などの航空機が無事に飛行するために欠かせない仕事です。
宿泊分野|フロント業務など4つの業務に限定!
特定技能「宿泊分野」で担当できる業務は、宿泊施設での以下の4つに限定されています。
- フロント業務(チェックイン・チェックアウト、観光地案内、ツアーの手配など)
- 企画・広報業務(キャンペーンやプランの提案、SNSやHP作成など)
- 接客業務(館内案内、宿泊客からの問い合わせ対応など)
- レストランサービス業務(配膳、片付け、料理の下ごしらえなど)
限定されているとはいえ、今までは技術・人文知識・国際業務ビザを持っていなければ外国人が従事することができなかった業務も、特定技能制度のおかげで幅広く行えるようになりました。
なお接待を伴う宿泊施設やラブホテル、ゲストハウスなどの簡易宿舎は特定技能の宿泊業として登録ができないので、注意が必要です。
協議会加入に必要な手続きとは?申請時期や申請方法を一挙紹介!
特定技能では、それぞれの分野の協議会への加入が必要です。しかし、分野により加入に必要な手続きが違うのが特徴。ここからは、協議会加入の申請方法を一挙紹介します。今回紹介するのは、国土交通省が所轄する以下の5分野です。
- 建設分野
- 造船・舶用工業分野
- 自動車整備分野
- 航空分野
- 宿泊分野
分野により管理する事務局があり、書類の提出や問い合わせなどは事務局宛てに行います。それぞれの分野の更新時期や更新の手続きなどについて、詳しく解説します。
建設分野|土地・建設産業局
建設分野は、特定技能の中でも特殊なシステムのある分野。受入れ機関は建設技能人材機構(JAC)に加入しなければなりません。受入れ企業は、正会員または賛助会員のどちらかでJACに入会する必要があります。
登録支援機関はJACへの加入の必要はありません。正会員の会費は無料ですが、各建設業者団体へ会費を払います。賛助会員での年会費は24万円です。JACのホームページに掲載されたお問い合わせ番号にて入会したい旨を伝えることで、入会手続きができます。
建設分野での受け入れに費用がかかる背景には、建設分野での失踪者が多いなどのトラブルがあります。協議会会費を含めた受け入れのコストは他分野より高くなっているので、注意が必要です。
造船・舶用工業分野|海事局
造船・舶用工業分野の協議会の事務局は、国土交通省海事局船舶産業課。加入などの手続きは事務局が行います。受入れ企業は、国土交通省海自のホームページから以下の加入申請書をダウンロードして記入しましょう。
- 【様式第5号】造船・舶用工業分野に係る特定技能外国人に関する協議会の加入申請書(造船・舶用工業事業者用)
記入した加入申請書は、国土交通省海事局船舶産業課に直接郵送します。加入申請書は様式第1号の確認申請書と同時に提出できるので、同時に送ってしまうと良いでしょう。加入が認められると、様式第5号の「加入通知書」が交付されます。
登録支援機関も加入の義務があります。登録支援機関は様式第7号の「加入申請書」に必要事項を記載し、「登録支援機関であることを証明する書類」と「登記事項証明書」を添付の上、船舶産業課長に提出します。
自動車整備分野|自動車局
自動車整備分野特定技能協議会(協議会)の事務局は国土交通省自動車局整備課ですが、円滑に運営を行うために地方運輸局及び沖縄総合事務局を事務局の地方窓口としています。加入する受入れ機関または登録支援機関は、国土交通省自動車局のホームページから様式をダウンロードして記入できます。
特定技能所属機関と登録支援機関で別々の様式への記入が必要なので、注意が必要です。加入する機関は、「協議会入会届出書 兼 構成員資格証明書」と「協議会構成員資格証明書発行申請書」、そして「別表第1 遵守事項」を提出しなければなりません。
記入した届出は、特定技能外国人を受け入れる事業場を管轄する地方運輸局等に持参または郵送します。加入が認められると、提出先にて証明書が交付または郵送されます。
航空分野|航空局
国土交通省航空局が事務を行う航空分野は、Eメールで届出の提出ができるのが特徴です。以下の電子メール宛てに書類を提出しましょう。
- 空港グランドハンドリング : hqt-ground-handling01@gxb.mlit.go.jp
- 航空機整備 : hqt-jcab-youseiline@mlit.go.jp
電子メールで届出を提出する場合は、押印は不要です。航空分野特定技能協議会加入届出書等は、国土交通省航空局のホームページからダウンロードできます。特定技能所属機関と登録支援機関に届出が分かれているので、とても分かりやすいです。
電子メールでの送信が困難な場合は、郵送でも受け付けています。郵送先は、以下のとおりです。
- 空港グランドハンドリング:「航空ネットワーク企画課」
- 航空機整備:「運航安全課乗員政策室」
届出が受理されるとその旨の回答が事務局から届き、加入が完了します。
宿泊分野|観光庁
宿泊分野の協議会の事務は、国土交通省観光庁観光人材政策担当参事官室が行います。登録支援機関に全ての支援計画を委託している場合は、受入れ機関と登録支援機関の両方の届出が必要です。
加入の届出は、国土交通省観光庁のホームページからダウンロードできます。
特定技能所属機関・登録支援機関ごとに、「入会届出」と「証明書」に記入しましょう。記入した書類は、観光庁観光人材政策室に直接郵送します。観光庁の住所は、以下のとおりです。
- 〒100-8918 東京都千代田区霞が関2-1-2
届出が受理されその旨の回答が事務局から届くと、協議会への加入は完了です。宿泊分野での協議会加入は比較的手続きが楽ですが、受け入れ後4ヶ月以内に加入義務があるのは他分野と同じ。できるだけ早く加入を済ませておきましょう。
まとめ|各分野の特徴を押さえて適切な受け入れを!
国土交通省が管轄する特定技能分野は5つありますが、それぞれの仕事内容は大きく異なり、協議会への申請方法にも多少違いがあります。
適正な受け入れをするためには、各分野の特徴や手続き方法を押さえて加入することが大切。それぞれ必要な書類も多いので、早めに準備をしておく必要があります。受け入れ後4ヶ月を過ぎると、在留資格が不許可になってしまうことも!そうならないためにも、早めの準備を心がけましょう!