「造船・舶用工業分野で特定技能外国人を採用したい」そうお考えの経営者の方はいませんか?造船業で特定技能外国人を雇用したいけれど、どのような手続きをすることで受け入れができるのかわからないと悩んでいる方もいるでしょう。
そこで今回は、特定技能の造船業について徹底的に解説。受け入れ可能な条件や必須試験、国土交通省の協議会加入手続きなどもご紹介します。造船業について詳しくなり、受け入れの不安を軽減させましょう。
目次
造船・舶用工業って?特定技能外国人が担当できる業務は?
造船・舶用工業とは、船に使う部品や船のボディなどを作る仕事。海に囲まれた日本の海外輸送を供給するために不可欠な業務です。しかし現在は、地方での少子高齢化が進み、若者の都市部流出も伴い人手不足が深刻化しています。
そんな造船・舶用工業では、特定技能で外国人に業務を担当してもらうことができます。特定技能制度で外国人に担当してもらえる業務は6つ。ここでは、特定技能外国人が担当できる6つの業務について、詳しく解説します。
6つの業務区分で就業可能!
特定技能「造船・舶用工業分野」で就業可能な業務は、以下の6区分です。
- 溶接(手溶接、半自動溶接)
- 塗装(金属塗装作業、噴霧塗装作業)
- 鉄工(構造物鉄工作業)
- 仕上げ(治工具仕上げ作業、金型仕上げ作業、機械組立仕上げ作業)
- 機械加工(普通旋盤作業、数値制御旋盤作業、フライス盤作業、マシニングセンタ作業)
- 電気機器組立て(回転電機組立て作業、変圧器組立て作業、配電盤・制御盤組立て作業、開閉制御器具組立て作業、回転電機巻線製作作業)
その他、同じ業務につく日本人が通常行う作業も、付随する業務として担当することができます。付随する業務は、以下のようなものが考えられます。
- 読図作業
- 作業工程管理
- 検査(外観、寸法、材質、強度、非破壊、耐圧気密等)
- 機器・装置・工具の保守管理
- 機器・装置・運搬機の運転
- 資材の材料管理・配置
- 部品・製品の養生
- 足場の組立て・解体
- 廃材処理
- 梱包・出荷
- 資材・部品・製品の運搬
- 入出渠
- 清掃
なお、これらの業務は専従とすることはできません。
造船業の分野では特定技能2号への移行が可能!
特定技能には1号と2号があり、建築業と造船業だけは特定技能2号への移行が認められています。しかし、特定技能1号2号とは一体どんな在留資格なのでしょうか?特定技能1号と2号について気になる疑問を、以下の3つにまとめてみました。
- 特定技能2号って?
- 特定技能1号と2号の違いは?
- 造船業で2号になれる業種は?
特定技能には1号と2号があるとは知っているけれど内容まではよくわからない方は、ここでしっかりと理解しておきましょう。それぞれの疑問について、分かりやすく回答していきます。
特定技能2号って?|より熟練した技能を要する業務に従事!
特定技能2号は、14種の特定産業分野において熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格です。即戦力となる人材である特定技能1号の外国人よりも、一歩進んだ業務を任せることができます。
例えば造船・舶用工業分野で特定技能1号に求められるのは、管理者の指示を理解して自分の判断により業務ができること。しかし特定技能2号になると、自らの判断で業務を行う技能に加えて監督者として作業品を指導できる能力が求められます。
特定技能2号試験は、2021年に実施予定でしたがいつになるかは未定です。特定技能制度は2019年に生まれた制度。2021年10月現在まだ特定技能2号の取得者は出ていませんが、これから徐々に特定技能2号を取得する外国人が増えてくることが予想されます。
特定技能1号と2号の違いは?
特定技能には1号と2号がありますが、違いは何なのでしょうか?特定技能1号と2号の特徴を比較してみましょう。
特定技能1号 | 特定技能2号 | |
在留期間 | 上限5年 | 無期限 |
更新期間 | 1年、6ヶ月又は4ヶ月ごと | 3年、1年又は6ヶ月ごと |
技能試験 | 必要(技能実習2号を修了した方は免除) | 必要 |
日本語試験 | 必要(技能実習2号を修了した方は免除) | 不要 |
家族の帯同 | 不可 | 可(配偶者、子) |
特定技能1号と2号の大きな違いは、1号では上限5年と在留期限があるのに2号では無期限で日本に滞在できるということ。3年以上に1回更新する必要はありますが、永住権ともいえる魅力的な在留資格です。
更新期間が長く、日本語試験は不要。配偶者と子の帯同も可能なため、長く日本に滞在したい外国人はぜひ取得したい資格といえるでしょう。
注意!2号に移行できるのは「溶接」作業だけ!
無期限の在留ができる特定技能2号ですが、2021年11月現在認められている分野は「建築」と「造船・舶用工業」のみです。さらに、「造船・舶用工業」の中でも「溶接」作業だけが特定技能2号を取得できます。
「造船・舶用工業」ならどんな業務でも特定技能2号を目指せるわけではないので、注意が必要です。さらに、溶接作業で働く方でも監督者として複数人の作業員を指導した実務経験が2年以上なくては、特定技能2号を取得できません。
特定技能2号を取得はなかなか難しいもの。しかし、特定分野である程度の経験を積んだ外国人なら十分取得できる資格でもあります。今後特定技能外国人が2号を取得することも視野に入れ、長い目で関係性を築いていくのも良いでしょう。
全て解説!造船:舶用工業技能測定試験とは?
造船・舶用工業分野で特定技能を取得するには、技能試験をパスしなければなりません。造船・舶用工業分野特定技能試験について、押さえておきたいポイントは以下の5つです。
- 試験の概要
- 試験の出題範囲
- 試験の日程
- 日本語の試験への合格も必要!
- 技能実習2号修了者は試験免除!
試験への合格は、特定技能取得への第1歩。どのような試験なのか具体的な内容を知ることで、合格への予定を立てやすくなりますよ。それぞれのポイントについて、詳しく解説します。
試験の概要|試験は学科と実技の両方!
造船業の技能試験は、実務経験2年程度の方が勉強せずに受けたときに7割程度合格できるレベルで、即戦力となるかならないかを判断します。受験資格は、海外在住の場合は受験時に満17歳以上であること。日本在住の場合は在留資格があり有効な旅券を保持していることで、試験は学科と実技の両方です。
試験は原則日本語で行われますが、必要な箇所にはふりがながふってあります。また、専門用語などは多言語で書かれていることもあります。
学科試験の試験時間は60分、問題数は30問で、ペーパーテストの〇×方式。正解率が60%以上で合格です。実技試験は各分野ごとに実際に行う作業を行い、一定の水準に達していることを確認できたら合格です。
合否の判定は、結果報告書として受験した特定技能外国人に送付されます。
試験の出題範囲|業務区分ごとに試験を実施
試験は、以下の6つの業務区分ごとに行われます。
- 溶接
- 塗装
- 鉄工
- 仕上げ
- 機械加工
- 電気機器組立て
技能試験の問題と評価基準は国土交通省のホームページにあらかじめ提示されているので、準備がしやすいのが特徴。チェックして必要な技能水準を目指しましょう。
実技試験は、協会が定める材料を使って協会の指示に従い各業務に関する作業を実際に行うもの。できあがったものの仕上がりを見て、合否が判定されます。実務経験があるなど、実際に作業を行ったことがある方や人材育成センターなどで準備をしてきた方は有利ですね。
なお、溶接業務のみ、協会が交付した溶接士技量資格に係る有効な「技量証明書」を持っていて一定の条件を満たしている方は技能試験が免除になります。
試験の日程|出張方式でも開催!
試験の実施状況は、日本海事協会のホームページから随時確認できます。
造船・舶用工業の技能試験は特殊で、協会が指定した場所での集合試験の他、申請者が指定した場所での出張方式でも行われます。特定技能1号試験(溶接)が2021年11月16日(火)~17日(水)に愛知県で行われますが、受付は締め切られました。
2021年11月現在は、特定技能2号試験の実施予定はありません。
出張方式の場合は、試験の実施場所の確保、機械設備・試験用機材の準備、その他協会が要求する措置を実施する必要があります。申請する場合は、受験希望日の2~3ヶ月前に協会に相談しましょう。
現在は国内、フィリピン、インドネシアで試験が実施できますが、順次追加される予定です。
技能試験の他に、日本語の試験への合格も必要!
造船・舶用工業分野で特定技能を取得するためには、以下のいずれかの試験に合格することで日本語能力を証明しなければなりません。
- 独立行政法人国際交流基金の実施する「国際交流基金日本語基礎テスト」
- 独立行政法人国際交流基金及び日本国際教育支援協会の実施する「日本語能力試験(N4以上)」
「国際交流基金日本語基礎テスト」はCBT(コンピューター・ベースド・テスティング)方式で行われ、合格者は業務上必要な日本語能力を有する者として評価されます。「日本語能力試験(N4以上)」はマークシート方式で、合格者は基本的な日本語を理解するものであると認められます。
「日本語能力試験(N4以上)」は問題集もあるので、しっかりと準備して合格を目指しましょう。
技能実習2号修了者は試験が免除!
技能試験や日本語試験など、造船・舶用工業分野で特定技能を取得するのは大変なように思えます。しかし、同分野で技能実習2号を良好に修了した方は、試験が免除になります!技能試験だけではなく日本語試験も免除されるので、比較的楽に特定技能を取得することができますね。
実際に、技能実習2号を修了した方が特定技能取得者の大半を占めているのが現状。技能実習2号を修了して特定技能に移行するルートの方が、特定技能1号技術試験を受けて合格するルートよりも簡単でメジャーな方法となっています。
受入れ機関としても、既に日本の労働環境にも慣れて関係性を築いてきた技能実習生だった外国人を受け入れる方が安心なはず。まずは技能実習生の受け入れから始めてみることも検討してみましょう。
造船・舶用工業での受け入れでは協議会への加入が必須!必要な手続きは?
造船・舶用工業で特定技能外国人の受け入れをしたい場合は、受入れ機関は協議会に加入しなければなりません。ここでは、造船・舶用工業における協議会についての基本と、手続きに必要なステップを押さえておきましょう。
- 協議会の概要
- 確認申請と加入申請
- 加入通知書が届く
- 登録支援機関の加入申請
- 毎月受け入れ状況を報告
造船・舶用工業分野特定技能協議会(協議会)は、毎月月末に受入れ状況報告を行うなど他の分野の協議会とは違う点もあります。それぞれの手続きについて、詳しく説明します。
協議会の概要
造船・舶用工業分野での受け入れには、国土交通省の設置した協議会への加入が必要です。特定技能外国人を受け入れた日から4ヶ月以内に、協議会に加入する必要があります。4ヶ月を過ぎて加入が認められていない場合は在留資格が不許可となってしまうので、注意が必要です。
協議会は、特定技能外国人の適正な受け入れと保護のために設立された機関。各地域の受け入れ機関が、必要な特定技能外国人を受け入れることができる体制を整えるために作られました。
構成員が相互に連携をとることで受け入れの地域差をなくすための取り組みや、受け入れの問題点への対応などについて協議が行われ、会費は無料です。特定技能外国人の受け入れ状況を把握するためにも加入が必要なので、早めに準備しておきましょう。
ステップ1|確認申請と加入申請を行う
協議会への加入には、まずは造船・舶用工業事業者であることの確認を行う必要があります。以下の方は、造船・舶用工業事業者と認められます。
(1)造船業
① 造船法(昭和25年法律第129号)第6条第1項第1号又は第2号の届出を行
っている者
② 小型船造船業法(昭和41年法律第119号)第4条の登録を受けている者
③ 上記①又は②の者からの委託を現に受けて船体の一部の製造又は修繕を行う者
(2)舶用工業((1)に該当する者を除く。)
① 造船法第6条第1項第3号又は第4号の届出を行っている者
② 船舶安全法(昭和8年法律第11号)第6条の2の事業場の認定を受けている者
③ 船舶安全法第6条の3の整備規程の認可を受けている者
④ 船舶安全法第6条の3の事業場の認定を受けている者
⑤ 船舶安全法第6条の4の型式承認を受けている者
⑥ 海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律(昭和45年法律第136号)の規
定に基づき、上記②から⑤までに相当する制度の適用を受けている者
⑦ 産業標準化法(昭和24年法律第185号)第30条第1項の規定に基づき、部
門記号Fに分類される鉱工業品に係る日本産業規格について登録を受けた者の認
証を受けている者
2
⑧ 船舶安全法第2条第1項に掲げる事項に係る物件(構成部品等を含む。)の製造又
は修繕を行う者
⑨ 造船造機統計調査規則(昭和25年運輸省令第14号)第5条第2号に規定する
船舶用機関又は船舶用品(構成部品等を含む。)の製造又は修繕を行う者であって
同規則に基づき調査票の提出を行っているもの
⑩ 上記以外で、①から⑨までに規定する者に準ずるものとして国土交通省海事局船
舶産業課長が認める者
(https://www.mlit.go.jp/maritime/content/001382218.pdfから引用)
対象の業種であることが確認できたら、様式第1号の確認申請書と様式第4号の加入申請書に必要事項を記載の上、国土交通省海事局船舶産業課長(船舶産業課長)に提出しましょう。
各種様式は、国土交通省のホームページからダウンロードできます。
確認申請書には登記事項証明書を添付します。また、上記第2(1)③又は(2)⑧若しくは⑩のいずれかに該当する方は追加の添付書類も必要になります。
ステップ2|加入通知書が届く
船舶産業課長が確認申請書と加入申請書を受理し、造船・舶用工業分野に従事する事業者であることが認められたら、確認申請者に様式第2号の確認通知書が交付されます。また、様式第5号の加入通知書も申請した事業所に交付されます。
確認通知書の有効期限は、確認年月日から5年間。記載された有効期限満了日まで使用可能ですが、その間に変更が生じた場合は船舶産業課長に報告しなければなりません。様式第3号の確認(変更)申請書に記入し、船舶産業課長に提出しましょう。
加入通知書は、受入れ機関が造船・舶用工業分野の協議会の構成員であると証明された証拠です。確認通知書及び加入通知書が届いたら、次は登録支援機関の加入申請手続きに移ります。
ステップ3|登録支援機関の加入申請を行う
造船・舶用工業分野では、登録支援機関の協議会への加入も義務付けられています。様式第7号の加入申請書に必要事項を記載し、登録支援機関であることを証明する書類と登記事項証明書を添付の上、船舶産業課長に提出しましょう。
提出を受けた船舶産業課長が業務委託を受けている登録支援機関の協議会への加入を認めたら、申請した登録支援機関に様式第8号の加入通知書を交付します。加入通知書が交付されたら、登録支援機関の登録は完了。登録支援機関が協議会の構成員として認められた証拠です。
登録支援機関にも、加入通知書に記載された事項の変更がある場合は変更の届出を行う義務があります。変更を届け出る場合は、第9号様式の加入(変更)申請書に必要事項を記入し、船舶産業課長に提出しましょう。
ステップ4|毎月月末に受け入れ状況を報告する
造船・舶用工業分野の協議会では、毎月の状況報告があるのが他分野の協議会とは異なるポイントです。加入通知書を受け取り、特定技能外国人として造船・舶用工業分野で受け入れる受入れ機関は、毎月月末に受入れ状況を報告する必要があります。
受入れ機関は、翌月15日までに様式第6号の特定技能外国人受入れ報告書に必要事項を記載し、船舶産業課長に提出しなければなりません。ただ、受入れ報告書はメールでの提出が可能。件名とメールアドレスは、以下のとおりです。
- 件名:【(造船・舶用工業事業者番号)】○年○月末時点の受入状況報告
- 送付先 :hqt-mrbsps-gaikokujinzai@gxb.mlit.go.jp
毎月提出が必要なので、忘れずに提出しましょう。
まとめ|特定技能2号への移行で半永久的な労働も!
造船・舶用工業分野は、特定技能2号の取得が可能な数少ない分野のひとつ。業務分野は溶接のみですが、特定技能2号で働けるのが魅力的です。特定技能1号では5年後には帰国させなければならない外国人も、2号で半永久的に雇用することができますね。
協議会への加入や状況報告など、手続きで難しいことがあると感じるならば、登録支援機関に業務を委託してみるのもひとつの方法です。多くの受け入れ実績のあるKMTでも外国人支援のサポートができるので、造船業での雇用を考えている方はぜひ一度ご相談ください。