特定技能ビザの申請で必要になることのある評価調書。技能実習からの移行で特定技能1号の在留資格を取得したいときに出てくる評価調書ですが、どのようなものか分からない方も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、特定技能における評価調書について、分かりやすく解説します。評価調書が必要になるケースや評価調書の取得方法などもあわせて解説するので、雇用する外国人を特定技能に切り替えたいと考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
特定技能1号になるには?改めて2つのパターンをおさらい!
特定技能1号になるための方法は、大きく分けて2つあります。まずは、特定技能1号になるためのルートをおさらいしておきましょう。特定技能1号になる2つのパターンは、以下のとおりです。
- 日本語試験&技能試験に合格
- 技能実習2号を良好に修了
日本語試験と技能試験の両方に合格して特定技能1号になる外国人もいますが、ほとんどの方が技能実習2号を良好に修了するパターンで特定技能1号を取得しています。それぞれのパターンについて、詳しく解説します。
①日本語の試験、技能の試験の両方に合格
特定技能1号になるための1つ目のパターンは、日本語の試験と技能試験の両方に合格することです。日本語の試験は、以下の2種のいずれかに合格する必要があります。
- 国際交流基金日本語基礎テスト(A2レベル以上)
- 日本語能力試験(N4以上)
日本語試験についてもっと詳しく知りたい方は、こちらの記事でも紹介しているのでチェックしてみてくださいね。
【日本語】特定技能の日本語の試験とは?スケジュールややっておくべき問題集についても大公開!
日本語の試験はどの分野でも共通ですが、技能試験は分野ごとに異なる試験を受けなければなりません。試験は、ペーパーテストやコンピューター・ベースド・テスティング(CBT方式)・実技試験により行われます。学習用テキストがWEBで公開されている分野もあるので、しっかり勉強して合格を目指しましょう。
技能試験についてもっと詳しく知りたい方は、こちらの記事もチェックしてみてください。
【技能試験】特定技能の技能試験とは?スケジュールややっておくべき問題集についても大公開!
②技能実習2号を良好に修了
試験に合格する他に、技能実習2号を良好に修了することでも特定技能1号になることが可能です。このパターンで特定技能1号を取得する場合は、同分野・当職種の場合は日本語試験と技能試験の両方が免除になります。このため、特定技能を取得するための試験を受けずに特定技能外国人になることもできます。
また、技能実習3号を修了した外国人も、技能実習2号を良好に修了していると認められるため、試験を免除して特定技能の取得が可能です。
「同じ分野の同じ職種でなければならない」「評価調書が必要」などいくつか条件はあるものの、技能実習2号を良好に修了することで試験免除で特定技能の取得が可能になることは、技能実習生や、技能実習生を雇用している企業にとってはうれしいことでしょう。
技能実習2号良好修了者であることを示すための書類とは?3つの書類をおさらい!
技能実習2号を良好に修了した外国人も特定技能1号の申請ができますが、技能実習2号を良好に修了したことを証明するために、いくつか書類を提出しなければなりません。技能実習2号良好修了者であることの証明書類は、以下の3つです。
- 技能検定3級実務試験の合格証明書の写し
- 技能実習評価試験(専門級)の実技試験の合格証明書の写し
- 技能実習生に関する評価調書
技能実習2号良好修了者であることは、技能実習を2年10ヶ月以上修了していることに加え、上記3種のうちのいずれかで証明できるので、覚えておくとスムーズに特定技能1号の申請ができるでしょう。それぞれの書類について、詳しく解説します。
①技能検定3級の実技試験の合格証明書の写し
技能検定は、検定を受ける職種ごとに学科試験と実技試験の両方が行われますが、技能実習2号良好終了者の証明としては実技試験に合格したことの証明書の写しが必要です。技能検定というと建設業のイメージがありますが、製造業や林業、ビルクリーニングなどの技能検定も行われています。
技能検定3級は受験資格が大幅に緩和されている試験で、以下のいずれかの方が受験可能です。
- 6ヶ月以上の実務経験者
- 工業高校・農業高校・技術専門校・専修学校・各種学校の卒業生・在学生、職業訓練修了生・訓練生等
従来は1年間以上の実務経験が必要でしたが、6ヶ月以上になりました。また、学生は最終学年の在学生のみでしたが全ての在校生になり、以前より多くの方が試験を受けられるようになっています。
②技能実習評価試験(専門級)の実技試験の合格証明書の写し
技能検定3級の実技試験に合格していなければ、「技能実習評価試験(専門級)の実技試験の合格証明書の写し」も技能実習2号良好終了者の証明として使えます。技能試験にはない職種でも、技能実習評価試験(専門級)を受けることができます。技能実習評価試験には「初級」「専門級」「上級」があり、専門級は初級と上級の間の難易度です。
技能実習評価試験の試験内容は分野ごとに違っているので、それぞれ確認しておく必要があります。ただ、技能実習評価試験は再受験は1回だけという決まりがあります。一度不合格になってしまうと、もう一度限りしか再テストが受けられません。そのため、技能実習評価試験を受けるなら、しっかりと準備してから受験するようにしましょう。
③技能実習生に関する評価調書
「技能実習2号を修了したけれど、技能検定3級や技能実習評価試験の専門級に合格していない」と慌ててはいませんか?技能検定3級または技能実習評価試験専門級の実技試験に合格していなくても、技能実習生に関する評価調書があれば技能実習2号良好修了者であることの証明ができる可能性があります。
技能実習生に関する評価調書は、技能実習時の受入れ機関が作成します。評価調書で技能実習時の受入れ機関から技能実習生の出勤状況や技能レベル取得の成績が評価されていると、技能実習2号を良好に修了している者として認められます。特定技能を取得しようとしている外国人が2号を良好に修了したけれど、技能検定や技能実習評価試験を受けていない場合は、評価調書を用意しましょう。
評価調書ってどんな書類?どんな内容が書かれているの?
評価調書は、何らかの理由で技能実習2号を良好に修了したにも関わらず、技能検定や技能実習評価試験に合格していない外国人が特定技能を取得するのに必要になる書類です。例えば、試験を受ける前に帰国してしまった方が、もう一度来日して特定技能を取得したいときなどに使います。
評価調書には、対象技能実習生の基本情報と、技能実習を実施した日数、技能検定や技能実習評価試験の合否と受けていない理由や技能や日本語の習得状況、生活態度などが書かれてます。具体的な所見は、以下の方による記載が必要です。
- 技能実習指導員:どのような技能を修得し、現在、何がどの程度できるか等について、日本語能力にも触れながら具体的に記載
- 生活指導員:生活態度等について、日本語能力にも触れながら具体的に記載
- 技能実習責任者:技能等及び日本語能力の向上、生活態度等の諸状況を踏まえた総合的な評価を記載
- 監理責任者:各所見及び定期監査等における本人との面談等を踏まえた総合的な評価を記載
そして最後に、以下4名の署名が必要です。
- 実習実施者
- 監理団体
- 技能実習責任者
- 監理責任者
評価調書は、技能実習生についての所見を文章で記さなければならないので、技能実習生をよく知っている責任者たちに記載してもらわなければなりません。これらの内容を踏まえ、技能実習生が技能実習2号を良好に修了したことが認められます。
評価調書を手に入れたい場合はどこに連絡する?2つの連絡先をチェック!
技能実習生が特定技能を取得したいときい必要になることのある評価調書ですが、手に入れたい場合はどこに連絡したら良いのでしょうか?評価調書についての連絡先は、以下の2つです。
- 技能実習の監理団体
- 技能実習を行った会社
いざ評価調書を手に入れようと思っても、連絡先が分からなければ取得できないもの。どこに連絡すべきか知っておくことでスムーズに評価調書を手に入れることができます。それでは、それぞれの連絡先について詳しく解説します。
①技能実習の監理団体
評価調書を手に入れるときの1つ目の連絡先が、技能実習の監理団体です。監理団体というと、技能実習を管理する団体かと思う方もいるかもしれませんが、そうではありません。
技能実習の受入れには「企業単独型」と「団体監理型」があり、団体監理型の場合は監理団体のサポートを受けて技能実習の受入れを行います。監理団体は、海外から技能実習生を受け入れて企業に送り出すサポートをしている機関で、受入れ機関が技能実習生に適正な対応を行っていることを随時確認しています。
技能実習は団体監理型で受入れている企業がほとんど。もし受入れ機関が団体監理型で受入れを行い監理団体に加盟しているなら、まずはその監理団体に評価調書を作りたいと問い合わせてみるのが最もスムーズな方法です。
②技能実習を行った会社
一方、受入れ機関が企業単独型で技能実習生を受け入れた場合には、技能実習を行った会社に問い合わせてみるのが良いでしょう。企業単独型で受入れを行う企業は珍しいですが、海外の現地法人や取引先企業などの職員を日本に呼び寄せて技能実習を行う場合などがあります。企業単独型の場合は監理団体がないため、技能実習を行った受入れ機関に直接問い合わせをします。
また、受入機関が団体監理型で受入れを行った場合にも、監理団体だけでなく技能実習を行った会社にも連絡するのが良いでしょう。評価調書は、主に技能実習生を受け入れた受入れ機関が作成するものなので、監理団体と受入れ機関で連携を取りながら進めていけるとスムーズです。
評価調書についてよくあるお困りごとを2つ紹介!どのように対応する?
評価調書の内容は連絡先が分かったところで、評価調書についてどんな注意点があるのか気になりだしている方もいるでしょう。評価調書について、よくある困りごとは以下の2つです。
- 評価調書を実習先に発行してもらえない
- 実習時の担当者が退職していて書類が発行できない
評価調書は特定技能を取得するうえで重要な書類。発行してもらえないと受入れが困難になる大事な書類です。困ったときにどうしたら良いのか知っておくと、いざというときに慌てずに済みますよ。それぞれのケースについて、詳しく解説します。
【ケース1】評価調書を実習先に発行してもらえない
評価調書についてよくある困りごとは、評価調書を実習先に発行してもらえないことです。実習先に頼んでも発行してもらえない場合は、評価調書を提出できないことの経緯を説明する理由書か評価調書に代わる文書を提出しましょう。
技能実習中にきちんと実習を行っていたことを証明するために、当時の実習状況を知る技能実習指導員などが技能実習の実施状況を説明した文書を提出します。その後出入国在留管理局が総合的に判断し、技能実習2号を良好に修了したかどうか評価する方法もあります。
評価調書を発行してもらえないからといって諦めず、その他の方法を検討しましょう。
【ケース2】実習実施時の担当者が退職していて、書類を発行できない
評価調書についてのもう一つのよくある困りごとには、実習実施時の担当者が退職してしまっていて、書類が発行できないケースです。実習時の担当者と連絡が取れる場合は技能実習実施状況を説明する文書を依頼することができますが、すでに担当者が退職していた場合や実習先が廃業してしまった場合には実習先からの協力が得られる可能性が低いです。
そのため、もし特定技能を取得したいけれど実習当時の様子を知る方がいなくて誰にも頼めない場合は、技能検定か技能実習評価試験への合格を目指すことになります。評価調書は入管で評価が必ずしも認められて審査が通るわけではないですが、試験への合格はそのまま技能実習2号を良好に修了した証拠となるため、確実に特定技能取得への道が開ける手段です。もし評価調書が手に入らず理由書や実習状況の説明文も書けないと分かったら、試験への合格を目指すのが良いでしょう。
評価調書の提出が不要の場合についてもチェック!
評価調書は、既に技能実習を修了した外国人について書くものなので、依頼しても断られることがあります。手に入れるのが困難な場合もある評価調書ですが、評価調書の提出が不要な場合もあります。
特定技能で技能実習で働いていた会社と違う会社で働くことになる場合は、技能実習生に関する評価調書が必要です。しかし、申請人が特定技能でも技能実習時に働いていた企業と同じ企業で働き続けるために特定技能の申請をする場合は、評価調書の提出は省略が可能です。
ただし、評価調書提出の省略が可能になるのは、過去1年以内に技能実習法の「改善命令」(旧改善指導)を受けていない場合に限ります。同じ企業で技能実習から特定技能に移行を考えている場合は評価調書が不要なので、評価調書の取得に頭を悩ませる心配はないことを覚えておきましょう。
まとめ|評価調書に関する質問ならKMTに!
技能実習生が特定技能の申請をするときには、評価調書が必要になることがあります。評価調書には技能実習時の実習状況を詳しく記載する必要があり、簡単には手に入れられないケースも。そんなときには、登録支援機関に相談してみるのもひとつの手です。
登録支援機関のKMTなら、特定技能の申請に関わる業務を一括してサポートできます。評価調書に関する疑問にもお答えするので、まずはお気軽にKMTにお問い合わせください。