高齢化が進む日本では、介護業での人手不足が深刻化しています。そんな介護分野は、特定技能外国人の受け入れが積極的に進む分野のひとつ。しかし、受け入れの条件など、わからないこともたくさんあります。
そこで今回は、特定技能外国人を介護分野で受け入れる要件について徹底解説。必要な試験や協議会の加盟方法なども紹介します。介護業で特定技能外国人を受け入れたいけれど迷っている介護施設の方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
特定技能「介護」とは?受入れ目標人数は6万人
特定技能とは、日本の深刻な人手不足を解消するために2019年に制定された設けられた制度。14の分野で即戦力となる人材を確保して生産性をアップするために、外国人を受け入れることができるようになりました。
介護分野も特定技能対象分野のひとつで、介護分野では特定技能1号のみが取得できます。人手不足が懸念される介護業での受入れ目標人数は2019年には5,000人、2024年までの5年間で6万人と掲げられました。
介護業は、5年後の人材不足見込み数が30万人と特定技能14種の中でも最も多い分野。令和3年6月末時点での介護分野での特定技能受け入れ人数は、2,703人でした。特定技能「介護」は、今後さらに受け入れを拡大していくことが求められます。
高齢化社会が深刻!介護分野の現状と課題について
介護分野は、高齢化社会により人手不足が深刻化している職種です。介護分野の現状と課題について、押さえておきたいポイントは以下の3つです。
- 日本の少子高齢化問題
- 介護分野における人手不足
- 介護分野の外国人の受入れ
介護分野で働く外国人は増えてきていますが、まだ足りていないのが現状。これからの課題も把握し、介護分野での特定技能外国人受入れについて検討してみましょう。それぞれのポイントについて、詳しく解説します。
日本の少子高齢化問題について
日本では少子高齢化問題が深刻化し、「2025年問題」が懸念されています。2025年は、戦後の第1次ベビーブームで生まれた団塊の世代と呼ばれる高齢者が75歳になる年。65歳以上の高齢者が約半数にまで達する年です。
さらに、今後出生率が増えなければ2055年には日本人の4人に1人が75歳以上の後期高齢者になると予想されています。それに加えて日本では出生率も1970年代半ばから低下し続けており、働ける人の数も減り続けています。
高齢者が爆発的に増えて若い世代が減ることで、社会保障や介護など様々な問題が出てきているのが現状。少ない生産人口でどのように多くの高齢者を支えていくのかが、今後の課題になっています。
介護分野における人手不足について
日本の少子高齢化により介護される側の高齢者が増えるのに、介護する側の若者が減っているのが大きな問題。介護分野での有効求人倍率は、2017年度で3.64倍となっています。どの地域でも人手不足が起きており、全都道府県で介護分野で働ける人材が不足しています。
介護分野で必要な人材は2020年度末までに約26万人、2025年度末までに約55万人が目標となっていて、1年間で6万人の人材を確保する必要性があります。しかし現実的には生産年齢の減少などにより必要な人材を確保することが難しくなっています。
今後一層生産人口が減り続けることもあり、日本国内の人材だけでは介護分野での人材の確保が難しいのが現状です。
介護分野の外国人の受入れについて
日本の深刻な人手不足を補うために作られたのが、「特定技能制度」。介護分野も特定技能で認められる14分野のひとつです。
その他にも日本では多くの外国人の受け入れを行ってきました。介護分野で外国人を受け入れることができる在留資格には、以下のようなものがあります。
- 特定技能
- EPA
- 介護
- 技能実習
「EPA」や「介護」は国家資格「介護福祉士」を目指す方のための制度。技能実習は日本の技術を外国に知ってもらうための制度で、受入後約1ヶ月の講習を受けてから受け入れ機関で就労することができます。人手不足を補うために即戦力として働ける人材を探すなら、特定技能しかありません。
人手が足りなくてすぐに働ける外国人を探している方は、特定技能での受け入れを考えてみましょう。
介護分野の特定技能外国人の受入れ要件とは?訪問介護はNG
介護分野で特定技能外国人を受け入れるためには、いくつか要件があります。以下の3つのポイントを確認しておきましょう。
- 訪問毛の介護サービスは受入不可
- 派遣やアルバイト雇用はNG
- 受入数に制限有り
せっかく受け入れの準備を進めても、条件にあっていなければ不許可になってしまうことも。介護分野ではどのような場合に受け入れられるのか、重要事項をしっかりと確認しておくことが大切です。それぞれのポイントについて、詳しく解説します。
訪問系の介護サービスでは受入れは不可
介護分野の特定技能では、訪問系の介護サービスは認められていません。住宅型の老人ホームやサービス付きの高齢者住宅などは原則として介護サービスを行わないため、受け入れが不可になります。
ではどんな仕事をするのでしょうか?特定技能「介護分野」では、身体介護が主な業務です。利用者の心身の状況に応じた入浴、食事、排せつの介助等を行います。また、これに付随するレクリエーションの実施、機能訓練の補助等も業務として認められます。
同業務の日本人が通常行うお知らせ等の掲示物の管理、物品の補充等の関連業務につくことは可能。しかし、介護分野以外の業務を担当させることはNGなので、十分注意が必要です。手が空いているからといってなんでもかんでも特定技能外国人に頼むことはできません。
原則、直接雇用!派遣やアルバイト雇用はNG
介護分野に関わらず、特定技能では直接雇用のみが認められています。派遣やアルバイトではなく正社員として給与を支払い、きちんと教育しなければなりません。派遣やアルバイトとしての就労は認められないので、注意しましょう。
派遣会社は登録支援機関になることはできますが、特定技能外国人を派遣社員として登録することはできません。
しかし特定技能では技能実習やEPAとは違い、日本にいる外国人も海外にいる外国人もどちらも受け入れることができるのが魅力。日本の生活に慣れている外国人も、技能実習を修了して母国に帰っている外国人も雇用できます。
直接雇用でさえあれば、国内外問わず介護業の特定技能で受け入れることが可能。介護施設の受け入れを考えている方にとってはうれしい制度といえるでしょう。
受入れ人数に制限あり。日本人の常勤職員数の数だけ雇用可能
介護分野で特定技能1号の外国人を受け入れる場合、受け入れのできる人数の上限が決められています。1つの事業所に対し、日本人等の常勤介護職員の数が上限です。この場合の「日本人等」という表現には、以下のような方が含まれています。
- 日本人の介護職員
- EPA介護福祉士(EPAで介護福祉士を取得した者)
- 在留資格「介護」
- 永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等の在留資格を所持している者
「日本人等」にカウントされないのは、以下のような方です。
- 技能実習生
- 留学生
- EPA介護福祉士候補者
EPAの在留資格で滞在している場合は、介護福祉士の試験に合格して介護福祉士と認定されたら例え日本人でなくても日本人等としてカウントして良いということになります。特定技能外国人の数が日本人等の常勤職員数を超えてはいけないことを、覚えておきましょう。
外国人側に必要な資格とは?元EPAや元実習生は試験免除
特定技能1号を取得するのには、3つの試験に合格する必要があります。しかし元EPAや元実習生は試験が免除になるので楽。特定技能「介護分野」取得に必要な試験について、覚えておきたいポイントは以下の2つです。
- 3種の試験について
- 試験が免除になる人は?
介護分野で即戦力となるためには、試験が必要。でもその試験が免除になるルートがあるなら、それも知っておきたいですね。それぞれのポイントについて、詳しく解説します。
試験について(介護技能試験・介護日本語試験・日本語能力試験)
介護分野における特定技能1号の取得には、以下の試験を受けて合格する必要があります。
- 介護技能評価試験
- 国際交流基金日本語基礎テスト又は日本語能力試験N4以上
- 介護日本語評価試験
試験は国内外で行われます。介護分野では、他分野でも合格が求められる技能試験と日本語試験の他に、「介護日本語評価試験」を受けなければなりません。介護日本語評価試験では、介護の現場で実際によく使われる言葉についての問題が出題されます。
日本で介護に関わる方なら比較的簡単な問題ですが、日本で初めて介護を行う外国人にとっては難しい問題もあるでしょう。介護技能試験と介護日本語試験用の学習テキストは、厚生労働省のホームページから閲覧可能。各国の言語に対応しているので、学習に役立ててみて下さい。
上記の試験が免除になる人はどういう人?(元EPAと実習生)
介護分野での特定技能取得には必ず試験を受ける必要があるかというと、そういうわけではありません。以下の方は上記の試験が免除になります。
- 介護分野の第2号技能実習を修了した方
- 介護福祉士養成課程を修了した方
- EPA介護福祉士候補者としての在留期間満了(4年間)の方
EPAや技能実習生からの移行の場合は、試験が免除に!上記の方は、特定技能1号に必要な技能水準と日本語能力を満たしているものとみなされるからです。ただし、EPAからの移行の場合は、直近の介護福祉士国家試験の結果通知書で、以下の条件も満たしている必要があります。
- 合格基準点の5割以上の得点である
- すべての試験科目で得点がある
地方出入国在留管理官署で上記2点の確認がとれたら、試験は免除になります。
協議会とは?加入時期や加入方法について解説!
介護分野で特定技能外国人を雇用する受入れ機関は、必ず協議会に加入しなければなりません。協議会は、特定技能外国人の適正な受け入れと保護のために設置された組織。構成員になったら、協議会が必要な協力を行う義務があります。
協議会へは、特定技能外国人を受け入れた日から4ヶ月以内に加入しなければなりません。初めて特定技能外国人を受け入れる機関の加入の流れは、以下のとおりです。
- 地方出入国在留管理局で在留資格認定証明書交付申請等の際に、「介護分野における特定技能外国人の受入れに関する誓約書」 (参考様式第1-1号)を提出
- 協議会の申請システムに、必要情報を入力、添付書類をアップロード
- 申請システムから、「協議会入会証明書」をダウンロード
【必見】よくあるQ&Aをご紹介
介護分野での受け入れについて、イメージが湧いてきたでしょうか?しかし、まだ気になる疑問もあるはず。ここでは、よくある疑問にQ&A形式でお答えします。今回回答する疑問は、以下の3つです。
- 人材募集から雇用開始までの期間は?
- 初期費用は?
- 支援委託費は?
雇用開始前の期間や費用など、なかなか聞けないけれど知りたい疑問はたくさん。ここですっきり解決しておきましょう。それぞれの疑問について、分かりやすく回答します。
人材募集から雇用開始まで期間はどのくらいかかる?
介護分野における特定技能外国人をいざ受入れよう!と思っても、いつから外国人に働いてもらえるのか分からない方も多いでしょう。これから人材を募集したらどのくらいで雇用が開始できるのでしょうか?人材募集から雇用開始までには、およそ6ヶ月ほどかかります。
受け入れまでにかかるおおよその期間は、以下のとおりです。
- 人材募集~決定まで:1ヶ月~
- 書類準備:1ヶ月~
- 審査:約2ヶ月
- 許可~配属:約1ヶ月
雇用開始までは、少なくとも5ヶ月はかかります。場合によっては事がスムーズに運ばないこともあるので、6ヶ月間以上かかると考えておいた方が良いでしょう。即戦力としてすぐに働ける人材とはいえ、募集から雇用開始までには半年ほどかかるので、早めの準備が必要です。
初期費用はどのくらい?1人当たり25万円
受入れ機関が登録支援機関に支援を委託する場合は、登録支援機関に支援費を支払わなくてはなりません。各機関により支援費は大きく異なりますが、初期費用は1人あたり概ね25万円~30万円程度と考えておいて良いでしょう。
そのうち、行政書士への支払いが少なくとも10万円かかります。その他受け入れに必要な業務も登録支援機関に委託する場合は、個別に費用がかかります。費用の相場は以下のとおりです。
- 事前ガイダンス:33,000円
- 生活オリエンテーション:55,000円
- その他の同行業務:5,500円/時間
KMTでは、初回に係るすべての手続き含めて25万円となります。価格設定やサービス内容は企業によって異なるので、どの登録支援機関に委託するのか、費用と照らし合わせながら考えてみましょう。
支援委託費は?月3万円/人!
登録支援機関への支払いは、1人あたり月に3万円程度です。初期費用が約25万円かかり、その後は月に3万円程度の支援委託費で特定技能外国人に関わる支援を委託することができます。
特定技能では1人あたり月3万円程度なのに対し、技能実習の場合は1人あたり月に4万円が平均的な支援委託費。機関によっては8万円払っているところもあるので、特定技能外国人は比較的安く支援ができます。
はじめに25万円ほど費用がかかりますが、その後は月3万円で大切な業務を業務を担ってくれる外国人を雇うことができます。費用を抑えながらも自社で行うと大変な業務も登録支援機関が行ってくれるのが受け入れ側の大きなメリット。登録支援機関への委託も考えてみましょう。
まとめ|介護分野での積極的な受け入れで明るい未来を!
人手不足が年々深刻になっている介護分野ですが、特定技能外国人の受け入れを積極的に行うことで明るい未来が開けるかもしれません。受け入れる介護施設も、特定技能外国人の採用が良い刺激となることでしょう。
とはいえ全てのサポートを自社で行うのは大変。登録支援機関として登録済みのKMTなら、特定外国人の受け入れ業務を比較的低価格でサポートできます。介護分野での受け入れを考えているなら、まず一度KMTにご相談ください。