「技能実習から特定技能に移行するときに、一時帰国は必要?」と疑問に思っていませんか?技能実習2号や3号から特定技能に切り替えるときには、一時帰国の必要はなく、そのまま継続して就労することができます。
この記事では、実習期間が修了してから特定技能になるときの一時帰国について、詳しく解説します。一時帰国をしない場合の注意点についても解説するので、技能実習生を一時帰国なしで特定技能へ移行させたいと考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
技能実習と特定技能についてもう一度おさらい!それぞれの制度を確認!
一時帰国について考える前に、まずは技能実習と特定技能の制度についておさらいしておきましょう。
- 技能実習とは?1号、2号、3号がある!
- 特定技能とは?1号と2号がある!
技能実習と特定技能は、それぞれ異なる制度です。そのため、特定技能で継続して働きたい場合は、移行の手続きが必要です。それぞれの制度を確認しておくことで、移行するメリットやデメリットも理解できることでしょう。それぞれの制度について、詳しく解説します。
技能実習とは?1号、2号、3号がある!
技能実習は、日本の技能を自国に持ち帰って役立てる「国際貢献」を目的としてつくられた制度です。技能実習生は、技能実習期間中は日本で働きながら知識や技能を身に付けることができます。技能実習には、「1号」「2号」「3号」の3種類があります。
技能実習 | 滞在期間 |
---|---|
1号 | 1年 |
2号 | 2年 |
3号 | 2年 |
「1号」「2号」「3号」を合わせて、合計最大5年間日本在留が可能です。技能実習2号を良好に修了すると、特定技能への移行ができるようになります。
技能実習生への待遇は以前はあまり良いものではなく、賃金未払いや時間外労働により失踪してしまうケースもありました。しかし2017年に施行された「外国人の技能実習の適正な実務及び技能実習生の保護に関する法律(技能実習法)」により、技能実習生の適正な雇用が守られ、技能実習生が働きやすくなりました。
技能実習生は、習得した技能や技術を自国に移転するのが目的ですが、そのまま特定技能として日本で働き続けることを希望する方も増えています。というのも、技能実習は就労が目的ではないので、賃金は比較的安く、いずれ終わりが来ることが見えている制度だからです。特定技能に移行することで、継続して安定的に就労することができます。
特定技能とは?1号と2号がある!
一方特定技能は、日本の人手不足を補うための制度です。就労が目的の制度で、一定の日本語能力と専門技術や知識を持った即戦力となる外国人に与えられます。特定技能には、「1号」と「2号」の2種類があります。
特定技能1号 | 特定技能2号 | |
---|---|---|
在留期間 | 上限5年 | 上限なし |
永住権の可能性 | なし | 可(条件あり) |
家族の帯同 | 不可 | 可(条件あり) |
特定技能1号の在留期間は上限が通算5年と定められていますが、特定技能2号を取得すると定期的に更新することで在留期間の上限なく働き続けられます。そのため、永住権を取得できる可能性も出てきます。また、特定技能2号になると条件が合えば家族の帯同も認められるので、日本での長期滞在ができるチャンスになります。
なお、既に在留資格のある「介護」分野と2024年に追加された4分野以外のすべての分野で、特定技能2号の取得が可能です。特定技能では、日本人の正社員と同等かそれ以上の扱いを受けるように定められています。そのため、技能実習生も特定技能へと移行することで、安定した給料をもらいながら日本で長く働くことができるようになります。
特定技能になるための2つのルートとは?試験ルートと実習生ルート
特定技能1号を取得するためには、2つのルートがあります。試験に合格するルートと技能実習から移行するルートです。
- 試験合格ルート:日本語と技能の両方の試験に合格が必要!
- 技能実習生ルート:日本語と技能の試験は免除!
どちらのルートでも特定技能になることは可能ですが、技能実習生ルートの方が多いのが現状です。2つのルートを確認しておくことで、どちらが適しているのか判断できて外国人をどのように雇うべきか見通しが立てられるようになるでしょう。
特定技能になるためのそれぞれのルートについて、それぞれ詳しく解説します。
試験合格ルートは日本語の試験と技能の試験の合格が必要
試験合格ルートは、試験に合格して特定技能を取得するルートです。合格が必須な試験は、以下の2つです。
特定技能取得に必須な試験
- 日本語の試験:「国際交流基金日本語基礎テスト」又は「日本語能力試験のN4以上」
- 分野ごとの技能試験
試験合格ルートの場合は、技能実習を経験することなく新規で特定技能を申請し、特定技能外国人として就労することが可能です。しかし、日本語試験と技能試験のいずれかではなく両方に合格する必要があるので、ハードルは高めです。また、日本での就労経験がない場合は実際のシーンが想像しにくいため、試験への合格は難易度が高いものといえます。
特定技能になるための試験について、もっと詳しく知りたい方は、こちらの記事で紹介しているのでチェックしてみてください。
技能実習生ルートは試験が免除!
技能実習生ルートは、「技能実習」から「特定技能」にビザを切り替えて、そのまま就労する方法です。基本的には、特定技能の取得には試験への合格が必須条件となっていますが、技能実習からの移行の場合は試験が免除になります。
技能実習から特定技能に移行するためには、技能実習2号を良好に修了している必要があります。技能実習2号を良好に修了している外国人の場合は、特定技能になるための日本語試験と技能試験の両方が免除されます。また、技能実習3号になるための条件に「技能実習2号を良好に修了していること」があるので、技能実習3号の実習生も試験を免除して特定技能を取得することができます。
ただ、技能実習の期間中は特定技能ビザへの変更ができないため、技能実習3号の方の場合は技能実習期間が終わっていないと特定技能への移行手続きができません。もし技能実習期間中に特定技能に切り替えたい場合は、技能実習の中止を申し出て帰国し、それから新たに特定技能申請の手続きを行うことになります。
留学、技能実習を修了してそのまま特定技能へ移行可能!
ここで、留学生や技能実習生が特定技能に切り替える場合は、一時帰国が必要なのか気になってきます。「留学」や「技能実習」から「特定技能」への移行時には一時帰国が必要ないので、留学や技能実習期間を修了したらそのまま特定技能に切り替えることができます。
留学生と技能実習生それぞれの特定技能1号への移行条件は、以下のとおりです。
留学生
- 日本語試験と技能試験の両方に合格すること
技能実習生
- 技能実習2号(または3号)を良好に修了していること
- 技能実習の職種・作業内容と特定技能1号の業務に関連性が認められること
技能実習生の場合は、試験に合格することで技能実習時と別の業種に就くこともできます。特定技能への移行の際には、留学や実習中にきちんと納税義務を果たしていたことを確認する書類の提出も必要です。
特定技能1号では家族滞在が認められていませんが、留学生の扶養を受ける家族として日本に在留していた家族の方は、「特定活動」というビザで引き続き日本で暮らすことができます。
留学からの移行の場合も一時帰国は不要ですが、したい場合は一時帰国をすることもできます。しかしそのまま家族と一緒に暮らすことができるのなら、一時帰国せずに働いた方が良いと考える外国人もいるでしょう。
また、特定技能に切り替えてからも、外国人からの申し出により一時帰国は可能です。その場合は日本人と同じように有給休暇を使用して帰国することになります。特定技能になってからは帰国できないというわけではないので、安心してください。
そのまま一時帰国をせずに切り替えるときの注意点3つ!
留学生や技能実習生は、そのまま一時帰国をせずに特定技能に切り替えることが可能です。しかし、切り替え時にはいくつか注意点があるので、確認しておきましょう。
一時帰国をせずに特定技能切り替えの注意点
- 脱退一時金希望の場合は企業に確認!
- 技能実習3号になるときに一時帰国していない場合は注意!
- 技能実習を途中で中断する場合は帰国が必要!
注意点を守って手続きを進めないと、特定技能への切り替えが認められなくなってしまうこともあります。それぞれの注意点について、詳しく解説していきます。
①脱退一時金を取得希望の場合は企業さんに要確認!
脱退一時金は出国をする際に取得するものなので、一時帰国は必要になります。
留学生や技能実習生が特定技能に切り替える際に受け取れる可能性があるのが、脱退一時金です。脱退一時金とは、日本国籍を持っていない外国人のための制度で、国民年金や厚生年金保険の資格がなくなって日本を出た場合に請求できるものです。日本在留中におさめた社会保険料の一部が、戻ってくるものと考えると分かりやすいでしょう。
ただ、請求するためには社会保険から抜けるなど、退職の手続きが必要になります。受入れ企業では、以下のような手続きが必要になります。
給与の支給 | 退職前に全ての給料を支払う必要があります。 |
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年末調整の実施 | 最後の賃金で年末調整をし、所得税を清算します。 |
社会保険喪失手続き | 社会保険喪失手続き、年金手帳の返却、健康保険証の回収などを行います。 |
住民税の清算 | 分割払いの場合、帰国時に清算が必要です。 |
このように多くの手続きが必要なため、脱退一時金の取得を希望する場合は、一度受入れ企業さんに相談してみてください。建設分野など、分野によってはさらに手続きが難しくなる場合もあります。また、再入国ができなくなるケースもあるので、再入国がしやすいように手続きを確認しておく必要があります。
②技能実習3号になるときに一時帰国をしていない場合は要注意!
特定技能になろうとしている外国人が技能実習3号の場合は、他にも注意すべき点があります。技能実習3号になるときには、1ヶ月以上の一時帰国が義務付けられています。これは、技能実習の目的が、取得した技能や知識を自国に持ち帰って活用することだからです。
しかしコロナ禍で、この一時帰国の延期が認められていた時期がありました。延期したあとに1度も帰国していない場合は、実習が修了したタイミングで帰国する必要があります。
基本的には特定技能への移行時に一時帰国の必要はありませんが、技能実習3号になるときに一時帰国をしていない場合は、一時帰国が必要です。そのため、一時帰国を延長していた場合は、一旦帰国をして再入国する必要があることを覚えておきましょう。
③技能実習を途中で中断する場合は本帰国が必要
技能実習3号の方は、技能実習2号を良好に修了しているにもかかわらず、実習期間が終わるまで特定技能に移行することは認められません。技能実習を途中で中断する場合には、みなし帰国でなくて本帰国が必要です。
みなし帰国は、出国から1年以内に再入国する場合に、通常の再入国許可の取得を不要とするものです。技能実習では、技能実習生の申し出により何らかの理由で技能実習を中断してまた再入国したい場合に、みなし帰国が使われます。
技能実習を途中で中断して特定技能を取得したい場合は、技能実習のビザで再入国する意思がないので、本帰国になります。その場合は退職の手続きが必要になり、新規で特定技能の申請を行うことになります。
そのため、技能実習3号が終わっていなくて特定技能への移行ができないからと帰国しようとする方は、技能実習3号の期間が修了するのを待って特定技能に移行した方が良手続きがスムーズな場合があります。技能実習3号の残っている期間がそれほど長くない場合は、実習期間を修了してから特定技能の移行をするのがおすすめです。
まとめ|特定技能への移行ならそのまま就労が可能!
一時帰国といっても1ヶ月以上帰国する場合もあり、その間の欠員はどうするかなどをきちんと計画を立てる必要があり、一時帰国をさせることは案外大変なものです。そんな一時帰国の必要がなくそのまま日本での就労が続けられる特定技能への移行は、職場に慣れた外国人をそのまま働かせたい企業の方にとってはうれしい手段です。また、すぐにでも特定技能として働いて稼ぎたいと考えている外国人にとってもうれしい方法です。
とはいえ一時帰国に関する規定は理解しにくく、どんなときに一時帰国が必要でどんなときに必要ないのかも分かりにくいので戸惑ってしまうこともあります。そんなときには、特定技能への移行実績の高い登録支援機関に相談してみるのもおすすめです。登録支援機関KMTなら、特定技能への移行手続きを一括でサポートできます。特定技能への切り替え手続きに悩んでいるなら、まずは一度ご相談ください。