2026年5月8日、経済産業省より工業製品製造業分野の改正告示が公布されました。

2026年6月1日の施行により、特定技能「工業製品製造業」の業務区分が10区分から17区分に拡大し、受入れ対象の産業分類も1号で49分類から76分類へと大幅に広がります。

外食業分野が受入れ停止となる中、製造業分野では逆に受入れの間口が広がるという対照的な動きです。特に注目すべきは、建設分野の技能実習修了者(建築大工やタイル張りなど)が、新たに追加されたプレハブ住宅製品製造等の業務区分で特定技能1号に移行できるようになる点です。

本記事では、経済産業省の公表資料をもとに、今回の制度改正の全容と受入機関・登録支援機関が押さえるべきポイントを解説します。

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工業製品製造業分野とは?|特定技能制度における位置づけ

工業製品製造業分野は、特定技能制度の19分野のうちの一つで、製造業における幅広い業種・業務をカバーする分野です。

もともと「素形材産業」「産業機械製造業」「電気・電子情報関連産業」の3分野に分かれていましたが、2022年に統合され、現在の「工業製品製造業」として一本化されました。

工業製品製造業分野の基本情報

  • 受入れ見込数(上限):19万9,500人(2024年4月〜2029年3月の5年間)
  • 特定技能1号:業務区分17区分(2026年6月1日〜)
  • 特定技能2号:業務区分3区分(機械金属加工・電気電子機器組立て・金属表面処理)
  • 協議会(JAIM):一般社団法人工業製品製造技能人材機構
  • 試験実施機関:JAIM(製造分野特定技能評価試験)

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2026年6月1日の改正で何が変わるのか?|3つの変更ポイント

今回の改正は、2026年1月23日の閣議決定に基づくもので、5月8日に経済産業省の改正告示が公布されました。変更ポイントは大きく3つあります。

①業務区分が10→17に拡大(7区分が新規追加)

1号特定技能外国人が従事できる業務区分に、新たに7つの区分が追加されます。

新規追加される7業務区分

  • 電線・ケーブル製造(電線・ケーブル製造)
  • プレハブ住宅製品製造(大工工事、タイル張り、普通旋盤、金属プレス、構造物鉄工、機械板金、建築塗装、金属塗装、噴霧塗装、手溶接、半自動溶接、コンクリート製品製造)
  • 家具製造(金属プレス、機械板金、家具手加工、圧縮成形、射出成形、インフレーション成形、ブロー成形、金属塗装、噴霧塗装、工業包装、手溶接、半自動溶接、家具組立て、マットレス製造、家具シート縫製)
  • 定形・不定形耐火物製造(定形耐火物製造、不定形耐火物製造)
  • 生コンクリート製造(生コンクリート製造)
  • ゴム製品製造(成形加工、押出し加工、混練り圧延加工、複合積層加工)
  • かばん製造(かばん製造)

②既存6業務区分で「従事する業務」が拡大

既存の10業務区分のうち、6区分で従事できる業務内容が追加されています。

業務区分 主な追加業務
機械金属加工 電子機器組立て、ビーズ法発泡スチロール成形、プラスチック成形材料製造、アルミニウム圧延・押出製品製造、フィルム加工
電気電子機器組立て ビーズ法発泡スチロール成形、プラスチック成形材料製造、フィルム加工
金属表面処理 バフ研磨
陶磁器製品製造 排泥鋳込み成形、タイル成形、衛生陶器成形
紡織製品製造 製網、染色(捺染)
縫製 タオル製造、カーテン縫製

③受入れ対象の産業分類が大幅拡大

受入れ可能な事業所の日本標準産業分類も大幅に拡大されます。

区分 現行(2026年5月時点) 改正後(2026年6月1日〜)
1号 49分類 76分類
2号 19分類 46分類

新たに追加される主な産業分類には、繊維工業、家具製造業、ゴム製品製造業、かばん製造業、生コンクリート製造業、衛生陶器製造業、電線・ケーブル製造業、自動車・同附属品製造業、航空機・同附属品製造業などが含まれます。

建設分野の技能実習修了者も移行可能に!|注目の新ルート

今回の改正で特に注目すべきポイントが、建設分野の技能実習2号修了者が、工業製品製造業の特定技能1号に移行できるケースが新たに生まれた点です。

プレハブ住宅製品製造が鍵

新規追加された「プレハブ住宅製品製造」の業務区分には、大工工事やタイル張りなどの業務が含まれています。出入国在留管理庁が公表する「技能実習2号移行対象職種と特定技能1号における分野(業務区分)との関係」によると、以下のような移行ルートが生まれます。

建設分野の技能実習から工業製品製造業への移行例

  • 建築大工(大工工事)→ 工業製品製造業(プレハブ住宅製品製造)
  • タイル張り(タイル張り)→ 工業製品製造業(プレハブ住宅製品製造)
  • 鉄筋施工(鉄筋組立て)→ これまでどおり建設分野への移行

技能実習2号を良好に修了していれば、特定技能1号評価試験と日本語試験が免除されるため、スムーズに移行が可能です。経産省告示が施行される2026年6月1日以降、拡大した技能に対応する技能実習2号を良好に修了した方は在留諸申請が可能になります。

その他の分野間移行ルート

プレハブ住宅製品製造以外にも、技能実習の職種・作業によっては、建設分野だけでなく工業製品製造業の複数の業務区分へ移行が可能です。

技能実習から工業製品製造業への移行例(その他)

  • 溶接(手溶接・半自動溶接)→ 機械金属加工、プレハブ住宅製品製造、家具製造
  • 塗装(建築塗装・金属塗装)→ 機械金属加工、プレハブ住宅製品製造
  • 家具製作(家具手加工)→ 家具製造(新規追加)
  • コンクリート製品製造→ コンクリート製品製造、プレハブ住宅製品製造
  • ゴム製品製造→ ゴム製品製造(新規追加)

移行時の注意点

  • 移行先の業務区分に対応する技能実習2号の作業を修了していることが条件
  • 受入れ事業所の産業分類が対象に含まれていることが必要
  • 追加部分は2026年6月1日以降に在留諸申請が可能(告示施行後)
  • 受入れ事業所はJAIMへの加入が必要(事前申請は5月から開始)

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受入れ事業所が行うべき準備|JAIMへの加入が必須

工業製品製造業分野で特定技能外国人を受け入れるためには、受入れ事業所が以下の準備を行う必要があります。

受入れの2つの要件

工業製品製造業分野では、特定技能外国人の受入れにあたって以下の2つの要件を満たす必要があります。

  1. 外国人の業務が受入れ対象の業務区分に該当しているか(分野別運用方針等で規定)
  2. 外国人が活動する事業所が受入れ可能な産業分類に該当しているか(告示で規定)

この2つの要件の両方を満たして初めて、受入れが認められます。

JAIMへの加入手続き

受入れを希望する事業所は、事業所ごとにJAIM(一般社団法人工業製品製造技能人材機構)への加入申請を行う必要があります。JAIM加入後、在留諸申請に際して自身の事業所名が記載された名簿を地方出入国在留管理官署に提出することになります。

JAIMの主な役割

  • 受入れ事業所の加入審査・管理
  • 制度周知・受入れ事業所への支援
  • 製造分野特定技能評価試験の運営(試験問題の作問、試験の実施等)
  • JAIMが代表して協議会に加入(受入れ事業所は個別に協議会に加入する必要なし)

なお、新規追加された産業分類の事業所については、5月からJAIMでの事前申請が開始されています。6月1日の告示施行に向けて、早めに加入手続きを進めることをお勧めします。

事業所の該当判断基準

特定技能外国人を受け入れようとする事業所が対象産業に該当するかどうかは、直近1年間で、対象産業について製造品出荷額等が発生しているかで判断されます。「製造品出荷額等」とは、製造品出荷額と加工賃収入額の合計であり、消費税や酒税等を含んだ額を指します。

特定技能の取得に必要な試験|1号と2号の違い

特定技能1号の取得方法

特定技能1号を取得するルートは2つあります。

取得ルート 必要な要件
試験ルート ①製造分野特定技能1号評価試験に合格
②日本語試験(JFT-Basic A2.2以上 または JLPT N4以上)に合格
技能実習ルート 業務区分に対応する技能実習2号を良好に修了
(技能試験・日本語試験ともに免除)

1号評価試験の概要

  • 試験区分:全17区分(業務区分ごとに実施)
  • 実施方式:CBT(コンピューター・ベースド・テスティング)方式
  • 試験時間:学科40分+実技40分(合計80分)
  • 合格基準:学科 正答率65%以上 / 実技 正答率60%以上
  • 受験料:8,000円
  • 試験場所:国内全国各地 / 海外(インド・インドネシア・フィリピン・ミャンマー・ベトナム)
  • 試験日程:7月・11月・2月頃に1週間程度(過去実績)

特定技能2号の取得方法

特定技能2号は、現時点では機械金属加工・電気電子機器組立て・金属表面処理の3区分のみが対象です。取得には以下のいずれかのルートが必要です。

取得ルート 必要な要件
2号評価試験ルート ①ビジネス・キャリア検定3級に合格
②製造分野特定技能2号評価試験に合格
③日本国内の製造業で3年以上の実務経験
技能検定ルート ①技能検定1級に合格
②日本国内の製造業で3年以上の実務経験

2号は在留期間に上限がなく、家族帯同も可能なため、長期的な人材確保の観点から非常に重要な資格です。

2026年度から変わる合格証明書類

2026年度以降の注意点

  • 2026年度以降は原則として「合格証明書」の発行が行われなくなる
  • 代わりに、プロメトリックのマイページから取得する「結果通知書」が在留諸申請の提出書類として認められる
  • 2024年度・2025年度の受験者は「合格証明書」または「結果通知書」のどちらでも可
  • 2023年度以前の受験者はJAIMから発行された「合格証明書」を使用

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特定技能1号の6年目延長(特例措置)も適用可能

工業製品製造業分野では、特定技能2号評価試験等に不合格となった1号特定技能外国人のうち、一定の要件を満たす場合に通算在留期間が原則5年から最大6年に延長される特例措置が設けられています。

6年目延長の要件

  • 特定技能2号評価試験等に不合格であること
  • 2号への移行に必要な全ての試験で、合格基準点の8割以上の得点を取得していること
  • 再受験に向けた誓約(精励・受験・合格後の2号変更申請・不合格時の帰国)
  • 受入機関が引き続き雇用する意思を有し、合格に向けた支援体制を有すること

「惜しくも不合格だった優秀な人材」を失わずに済む制度であり、受入機関にとっても大きなメリットがあります。

受入機関・登録支援機関にとってのビジネスチャンス

今回の工業製品製造業分野の拡大は、外食業の受入れ停止と時期が重なっていることもあり、登録支援機関にとって重要なビジネスチャンスとなります。

外食業停止の影響を受ける企業への提案

外食業の特定技能受入れが停止された今、食品関連企業にとって飲食料品製造業だけでなく、工業製品製造業の一部業務区分も選択肢になり得ます。たとえば、セントラルキッチンで食品製造を行う事業所は、産業分類によっては工業製品製造業での受入れも検討の余地があります。

建設業との連携

建設分野の技能実習生が修了後にプレハブ住宅製品製造等へ移行できるようになったことで、これまで建設業のみだった出口が広がりました。建設業の受入機関や監理団体との連携により、技能実習修了者の新たな就労先としてプレハブ住宅メーカーや家具製造業者を紹介するといったスキームが考えられます。

登録支援機関が今すぐ取るべきアクション

  • 新規追加された7業務区分に該当する受入れ候補企業の開拓
  • 既存の製造業クライアントに対する拡大された業務・産業分類の周知
  • 建設分野の技能実習修了者に対する工業製品製造業への移行ルートの案内
  • JAIM加入手続きのサポート体制の整備
  • 改正告示施行日(6月1日)に向けた在留諸申請の準備

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今後のスケジュール

時期 内容
2026年1月23日 閣議決定(特定技能制度及び育成就労制度の分野別運用方針)
2026年5月8日 経済産業省 改正告示 公布
2026年5月〜 JAIMにて新規追加産業分類の事業所の事前申請開始
2026年6月1日 経済産業省 改正告示 施行
→ 受入れ対象事業所の拡大・新業務区分での在留諸申請が可能に
告示施行後 新規追加業務区分の特定技能評価試験が実施された段階で、試験ルートでの在留諸申請も可能に

施行日に関する重要な注意点

  • 新規追加の業務区分について、試験ルートで申請する場合は、特定技能評価試験が実施された段階で在留諸申請が可能
  • 技能実習2号修了者の場合は、告示施行日(6月1日)以降すぐに在留諸申請が可能
  • 既存業務区分の「従事する業務の拡大」部分も同様のスケジュール

全17業務区分の一覧

改正後(2026年6月1日〜)の全17業務区分の一覧です。★が新規追加、☆が業務拡大のあった区分です。

No. 業務区分 1号 2号 備考
1 機械金属加工 ☆業務拡大
2 電気電子機器組立て ☆業務拡大
3 金属表面処理 ☆業務拡大
4 紙器・段ボール箱製造
5 コンクリート製品製造
6 RPF製造
7 陶磁器製品製造 ☆業務拡大
8 印刷・製本
9 紡織製品製造 ☆業務拡大
10 縫製 ☆業務拡大
11 電線・ケーブル製造 ★新規追加
12 プレハブ住宅製品製造 ★新規追加
13 家具製造 ★新規追加
14 定形・不定形耐火物製造 ★新規追加
15 生コンクリート製造 ★新規追加
16 ゴム製品製造 ★新規追加
17 かばん製造 ★新規追加

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登録支援機関としてのKMTの対応

株式会社KMTでは、今回の工業製品製造業分野の拡大に対応し、受入機関様の支援を行ってまいります。

KMTがサポートできること

  • 新規追加された業務区分・産業分類への該当判断のご相談
  • JAIM加入手続きのサポート
  • 技能実習修了者の特定技能1号への移行申請支援
  • 建設分野からの移行ルート(プレハブ住宅製品製造等)に関するご相談
  • 外食業から工業製品製造業への受入れ分野の切り替えコンサルティング

工業製品製造業分野での特定技能人材の受入れに関するご質問は、お気軽にお問い合わせください。

まとめ|製造業の人材確保に新たな選択肢が広がる

今回の制度改正のポイントを改めて整理します。

  1. 業務区分が10→17に拡大(7区分が新規追加、6区分で業務拡大)
  2. 産業分類が1号49→76分類、2号19→46分類に拡大
  3. 建設分野の技能実習修了者(建築大工・タイル張り等)もプレハブ住宅製品製造等へ移行可能
  4. 2026年6月1日施行(技能実習2号修了者は施行日から申請可能)
  5. 受入れにはJAIMへの加入が必要(5月から事前申請開始
  6. 2号評価試験不合格でも、一定要件で6年目延長の特例措置あり

外食業の受入れ停止が大きな話題となっていますが、製造業分野では逆に受入れの間口が広がっています。この機会を活かして、自社の人材確保に特定技能制度を活用してみてはいかがでしょうか。

※本記事は2026年5月時点の経済産業省、出入国在留管理庁の公表資料に基づいて作成しています。最新情報は以下の公式ページをご確認ください。

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この記事の監修者

大房行政書士法人代表 / 株式会社KMT取締役
行政書士 大房明良

東京都大田区蒲田に生まれ、大学在学中に訪れたカンボジアで学校建設ボランティアに参加し、貧困問題に興味を持つ。2016年に行政書士事務所を開業し、カンボジア語が話せる行政書士として入管業務を専門に行う。現在は特定技能申請をメイン業務とし、2023年5月現在で申請数は4500件を超える。
また、取締役を務める株式会社KMTでは、約600名の特定技能外国人の支援を行っている。

KMT CO.,Ltd.

この記事の編集・運営者:株式会社KMT
登録支援機関として特定技能の支援事業を行っており、実務で培った経験と取締役を務める行政書士の確かな知識をもとに特定技能に関するコラムを提供している。
有料職業紹介番号:13-ユ-311827
登録支援機関番号:19登-002272