出入国在留管理庁より、特定技能制度の根幹に関わる重要な改正が公表されました。
2027年(令和9年)4月1日より、1号特定技能外国人への支援体制に係る要件が大幅に厳格化されます。
具体的には、支援責任者・支援担当者の「常勤」義務化、支援業務に従事できる者の限定、養成講習の受講義務化、そして登録支援機関に対するいわゆる「10社50人ルール」の導入です。
「支援は登録支援機関に委託しているからウチには関係ない」と思われた受入機関様、ちょっと待ってください。今回の改正は自社支援を行っている受入機関にも直接適用されるほか、委託している場合でも委託先の登録支援機関が改正後の要件を満たせるかどうかを確認しておく必要があります。
本記事では、出入国在留管理庁の公表内容をもとに、改正の全容と経過措置、受入機関・登録支援機関それぞれが取るべき対応を解説します。
目次
改正の概要|4つの変更ポイント
今回の改正は、「出入国管理及び難民認定法施行規則」および「特定技能雇用契約及び1号特定技能外国人支援計画の基準等を定める省令」の改正によるもので、2027年(令和9年)4月1日に施行されます。
1号特定技能外国人に対する支援を一層適正に行うことを目的とした改正で、支援体制に関する主な変更点は以下の4つです。
支援体制に係る4つの改正点
- ①支援責任者・支援担当者の常勤化:支援を行う事業所(登録支援機関の場合は支援業務を行う事務所)ごとに、それぞれ常勤の役員又は職員の中から1名以上選任する(支援責任者が支援担当者を兼務することは可)
- ②支援業務従事者の限定:支援業務に従事することができる者を支援責任者・支援担当者に限定する
- ③養成講習の受講義務化:支援責任者に対して、支援能力向上のための養成講習(入管法や労働関係法令等)の受講を義務付ける
- ④「10社50人ルール」の導入:登録支援機関の支援担当者の数が、委託元の特定技能所属機関の数÷10を超え、かつ支援対象の1号特定技能外国人の数÷50を超えていること
それぞれ詳しく見ていきましょう。
①支援責任者・支援担当者は「常勤」でなければならない
これまで、支援責任者・支援担当者について常勤性は明確に求められておらず、非常勤の役員や外部人材に近い形で名前を連ねているケースも見られました。
改正後は、支援を行う事業所ごとに、支援責任者・支援担当者をそれぞれ常勤の役員又は職員の中から1名以上選任しなければなりません。なお、支援責任者が支援担当者を兼務することは引き続き可能です。
「常勤」の具体的な判断基準はまだ示されていない
重要な注意点として、今回の改正に関する「常勤」の具体的な判断基準は、現時点では示されていません。入管庁の告知ページおよび改正省令では「常勤の役員又は職員の中から1名以上選任」とあるのみで、詳細は今後の運用要領・Q&A等の改訂で示される見込みです。
参考として、関連する既存の考え方を2つ紹介します。
【参考①】特定技能運用要領における「常勤職員」の既存の考え方
- 常勤職員数のカウント(受入れ人数枠の算定等)で用いられている考え方
- 通常の勤務時間・日数で継続的に雇用され、社会保険に加入している者が目安
- 非常勤・パートタイム従業員は除外される
【参考②】経営・管理ビザの改正Q&Aで入管庁が示した常勤性の判断
- 一定の勤務計画の下に毎日所定の時間中、常時勤務に従事すること
- 労働日数が週5日以上かつ年間217日以上で、週労働時間30時間以上であること
- 6か月継続勤務し全労働日の8割以上出勤した場合に年10日以上の年次有給休暇が付与される者であること
※上記はあくまで他の場面における既存の基準であり、今回の支援体制要件における常勤性の判断基準として確定したものではありません。正式な基準は今後の運用要領・Q&Aの改訂をお待ちください。
いずれにせよ、週数時間だけ稼働する非常勤者や名義貸しに近い形での選任は認められなくなる方向性は明確です。
②支援業務に従事できるのは支援責任者・支援担当者のみに
改正後は、支援業務に従事することができる者が支援責任者・支援担当者に限定されます。
これまで、事前ガイダンスや生活オリエンテーション、定期面談などの支援業務の一部を、支援担当者として届け出ていない従業員が事実上担っているケースもありました。改正後はこうした運用が認められなくなり、支援業務を行う者は全員、支援担当者(または支援責任者)として選任されている必要があります。
組織として支援業務の分担体制を見直し、実際に支援を行っている人員を漏れなく支援担当者として位置づけることが求められます。
③支援責任者に養成講習の受講が義務化
支援責任者に対して、支援能力向上のための養成講習の受講が義務付けられます。講習内容は入管法や労働関係法令等が想定されています。
養成講習に関する注意点
- 具体的なカリキュラム・費用・実施頻度・実施機関等は現時点で未公表(今後の告示等で示される見込み)
- ただし経過措置として、2027年4月1日以降であっても当分の間は講習を修了していなくても差し支えないとされている
- 技能実習制度の「監理責任者等講習」に類似した制度になる可能性が考えられる
猶予期間があるとはいえ、いずれ受講が必要になることは確実です。詳細が公表され次第、早めに受講計画を立てることをお勧めします。
④「10社50人ルール」とは?|登録支援機関の受託上限
今回の改正で最もインパクトが大きいのが、登録支援機関に対するいわゆる「10社50人ルール」です。
ルールの内容
登録支援機関の支援担当者の数が、以下の両方を超えている必要があります。
10社50人ルールの計算方法
- 支援業務の委託を受けている特定技能所属機関(受入企業)の数 ÷ 10 を超える支援担当者数
- 支援を行っている1号特定技能外国人の数 ÷ 50 を超える支援担当者数
つまり実質的に、支援担当者1人あたり「委託元10社まで・支援対象50人まで」が上限となります。なお、支援責任者が支援担当者を兼務している場合は、その兼務者も担当者数にカウントできます。
具体例で確認
| 登録支援機関の受託状況 | 必要な支援担当者数 |
|---|---|
| 委託元15社・支援対象40人 | 15÷10=1.5 → 2名以上(社数基準で決まる) |
| 委託元8社・支援対象120人 | 120÷50=2.4 → 3名以上(人数基準で決まる) |
| 委託元30社・支援対象200人 | 30÷10=3、200÷50=4 → 4名以上(大きい方が適用) |
社数と人数の両方の基準を満たす必要があるため、どちらか大きい方の基準で必要人数が決まる点に注意が必要です。しかも、この支援担当者は前述のとおり常勤者でなければなりません。
業界への影響|小規模・兼業型の支援機関は撤退の可能性も
現在、登録支援機関は全国で1万を超える数が登録されていますが、その中には、少人数で多数の企業を掛け持ちしている機関や、他業と兼業しながら非常勤的な体制で運営している機関も少なくありません。
想定される業界への影響
- 常勤の支援担当者を確保できない小規模支援機関の登録更新断念・撤退
- 1人あたりの受託上限により、支援委託費の値上げの動き
- 撤退機関の委託元企業による委託先の切り替え需要の発生
- 体制の整った支援機関への案件の集約
自社支援を行っている受入機関も対象です
見落とされがちですが、今回の改正点①〜③は「支援を行う事業所(登録支援機関の場合は支援業務を行う事務所)ごとに」という規定ぶりからも分かるとおり、登録支援機関に委託せず自社で支援を行っている特定技能所属機関(受入機関)にも適用されます。
自社支援の受入機関が確認すべきこと
- 支援責任者・支援担当者が常勤の役員又は職員から選任されているか
- 実際に支援業務を行っている従業員が、全員支援担当者として選任されているか
- 支援責任者の養成講習の受講計画(詳細公表後)
- これらの体制を維持するコストと、登録支援機関への委託コストの比較
改正により自社支援のハードルは確実に上がります。「担当者が本業と兼務で手一杯」「常勤者を支援専任に近い形で確保するのは難しい」という場合は、これを機に登録支援機関への委託を検討するのも一つの選択肢です。
経過措置|施行前後の登録・更新の取扱い
登録支援機関の登録・更新については、以下の経過措置が設けられています。
| ケース | 取扱い |
|---|---|
| 施行日前に新規登録の申請をした場合 | 施行日前の要件に基づいて登録の可否を判断 → ただし、その後の登録更新時には改正後の要件を満たす必要あり |
| 施行日前に登録済みで、2027年7月31日までに登録期間が満了する場合 | 施行日前に更新申請をしたときに限り、施行日前の要件で更新可能 |
| 上記以外の登録更新 | 改正後の要件を満たさなければ更新不可 |
| 養成講習 | 2027年4月1日以降も当分の間は未修了でも差し支えない |
経過措置はあるものの、いずれ全ての登録支援機関が改正後の要件を満たす必要があります。「更新のタイミングで要件を満たせず登録が切れる」という事態が2027年以降順次発生し得る点に注意してください。
受入機関が今すぐやるべきこと|委託先のチェックリスト
支援を登録支援機関に委託している受入機関様は、以下の観点で委託先の体制を確認しておくことをお勧めします。
委託先の登録支援機関を確認するポイント
- 支援責任者・支援担当者は常勤の役員・職員か(外部委託や名義的な選任になっていないか)
- 支援担当者1人あたりの受託社数・支援人数が10社50人の範囲内に収まる体制か
- 2027年4月以降の登録更新の見通しについて説明を受けられるか
- 改正への対応方針(増員計画・講習受講予定等)を明確に示せるか
万が一、委託先が登録更新できず撤退となった場合、受入機関は速やかに新たな委託先を確保するか自社支援体制を整えなければならず、対応が遅れると特定技能外国人の在留諸申請に支障をきたすおそれがあります。委託先の選定・見直しは、余裕のあるうちに進めておくことが重要です。
よくある質問(FAQ)
Q1. 支援を登録支援機関に全部委託していれば、受入機関側には影響ありませんか?
支援業務を全部委託している場合、受入機関自身が支援責任者等を常勤選任する必要はありません。ただし、委託先の登録支援機関が改正後の要件を満たせず登録更新できなくなるリスクがあるため、委託先の体制確認は必要です。
Q2. 支援責任者が支援担当者を兼務することはできますか?
可能です。改正後も、支援責任者が支援担当者を兼務することは認められています。ただし両方とも常勤の役員又は職員である必要があります。
Q3. 「常勤」の基準は決まっているのですか?
今回の改正に関する常勤性の具体的な判断基準は、現時点では示されていません。今後の運用要領・Q&A等の改訂で示される見込みです。参考として、特定技能運用要領における常勤職員の考え方(社会保険加入・通常の勤務時間での継続雇用)や、経営・管理ビザのQ&Aで示された基準(週5日以上・年217日以上・週30時間以上等)がありますが、これらが支援体制要件にそのまま適用されるかは未確定です。
Q4. 養成講習はいつまでに受講すればよいですか?
養成講習のカリキュラム・費用・実施時期等の詳細は現時点で未公表です。また、2027年4月1日以降も当分の間は講習未修了でも差し支えないとする経過措置が示されています。詳細の公表を待って受講計画を立てましょう。
Q5. 登録支援機関の登録更新が近いのですが、どうすればよいですか?
登録期間が2027年7月31日までに満了する場合は、施行日(2027年4月1日)前に更新申請をすれば、改正前の要件で更新を受けられます。それ以降の更新では改正後の要件が適用されるため、常勤体制の整備と10社50人ルールへの対応を計画的に進める必要があります。
登録支援機関としてのKMTの対応
株式会社KMTは、今回の改正の趣旨である「支援の質の確保」を重く受け止め、改正後の要件に対応した支援体制の整備を進めてまいります。
KMTがサポートできること
- 改正後の要件を見据えた支援体制での支援業務の受託
- 自社支援からの委託切り替えのご相談
- 委託先の撤退等に伴う支援委託の引き継ぎ対応
- 支援体制要件に関する最新情報のご提供(運用要領・Q&A改訂のフォロー)
当社は181社の取引実績と750人の支援実績をもとに、専任スタッフによる支援体制で受入機関様をサポートしています。「委託先の体制が改正に対応できるか不安」「自社支援の継続が難しくなりそう」といったお悩みは、お気軽にご相談ください。
まとめ|支援体制の「質」が問われる時代へ
今回の改正のポイントを改めて整理します。
- 2027年4月1日施行で、支援責任者・支援担当者は事業所ごとに常勤の役員又は職員から1名以上選任が必要に
- 支援業務に従事できる者は支援責任者・支援担当者に限定される
- 支援責任者には養成講習の受講が義務化(当分の間は未修了でも可)
- 登録支援機関には「10社50人ルール」が導入され、支援担当者1人あたりの受託上限が明確化
- 常勤性の具体的な判断基準や講習の詳細は今後の運用要領・Q&A等で示される見込み
- 自社支援を行う受入機関にも適用されるため、体制の点検が必要
この改正は、育成就労制度への移行と歩調を合わせた「支援の質」重視への転換点です。数だけを追う支援機関が淘汰され、体制の整った支援機関に案件が集約されていく流れは避けられないでしょう。
受入機関様におかれては、自社の支援体制または委託先の体制が改正後の要件に対応できるか、早めの確認をお勧めします。
※本記事は出入国在留管理庁の公表情報に基づいて作成しています。今後、運用要領・Q&A等の改訂により詳細が示される見込みです。最新情報は出入国在留管理庁|1号特定技能外国人への支援体制に係る要件の改正についておよび支援体制に係る要件の主な改正点(PDF)をご確認ください。


