出入国在留管理庁より、実務に大きく影響する取扱い変更が公表されました。
2027年(令和9年)4月1日以降、技能実習法施行以前の旧制度「技能実習」等を良好に修了した方が特定技能1号へ移行する場合、技能試験と日本語試験の両方に合格していることが必要になります。
これまで「技能実習2号を良好に修了していれば試験免除で特定技能1号に移行できる」というのは、特定技能制度の基本中の基本でした。しかし、昔の制度下で技能実習を修了した方については、この試験免除の取扱いが2027年3月31日で終了します。
過去に技能実習を修了して帰国した元実習生を特定技能人材として呼び戻すケースは、受入機関・登録支援機関にとって定番のスキームです。本記事では、今回の変更の内容と背景、そして「いつまでに何をすべきか」を詳しく解説します。
目次
今回の変更の概要|何がどう変わるのか
2027年(令和9年)4月1日に、出入国管理及び難民認定法及び技能実習法の一部を改正する法律(令和6年法律第60号)、いわゆる育成就労制度の創設を含む改正法が施行されます。
この改正法の施行に伴う上陸基準省令の改正(令和7年法務省令第45号)により、以下に該当する方が特定技能1号へ移行する場合の、技能・日本語能力の証明に係る取扱いが変更されます。
取扱い変更の対象となる方
- 技能実習法施行以前(2017年(平成29年)11月1日より前)の在留資格「技能実習」を良好に修了した方が特定技能1号へ移行する場合
- 2010年(平成22年)7月1日の在留資格「技能実習」創設以前の在留資格「特定活動(技能実習)」を良好に修了した方が特定技能1号へ移行する場合
つまり、現行の技能実習法(2017年11月1日施行)に基づく技能実習の修了者ではなく、それ以前の旧制度下で技能実習を修了した方が対象です。
変更前と変更後の比較|試験免除がなくなる
具体的な取扱いの変更内容を、変更前後で比較してみましょう。
変更前(2027年3月31日まで)
旧制度の技能実習を良好に修了している場合、以下の取扱いです。
| 従事しようとする業務と技能実習2号の職種・作業の関連性 | 技能試験 | 日本語試験 |
|---|---|---|
| 関連性が認められるとき | 免除 | 免除 |
| 関連性が認められないとき | 合格が必要 | 免除 |
現行制度の技能実習修了者と同様に、関連する分野であれば無試験で特定技能1号へ移行でき、関連しない分野でも日本語試験は免除されていました。
変更後(2027年4月1日以降に上陸許可等を受ける場合)
2027年4月1日以降の取扱い
- 旧制度の技能実習を良好に修了している場合であっても、技能試験および日本語試験の両方に合格していることが必要
- 従事する業務と技能実習の職種・作業に関連性があっても免除されない
関連性の有無にかかわらず、試験免除の取扱いが一切なくなるという大きな変更です。
そもそも「技能実習法施行以前の技能実習」とは?|制度の変遷を整理
今回の変更を正しく理解するために、技能実習制度の変遷を簡単に整理しておきましょう。
| 期間 | 制度・在留資格 | 今回の変更 |
|---|---|---|
| 〜2010年6月30日 | 在留資格「特定活動(技能実習)」 (研修+特定活動の旧枠組み) |
対象(試験免除終了) |
| 2010年7月1日〜2017年10月31日 | 入管法上の在留資格「技能実習」 (技能実習法施行前) |
対象(試験免除終了) |
| 2017年11月1日〜 | 技能実習法に基づく「技能実習」 | 対象外(従来どおり免除あり) |
| 2027年4月1日〜 | 育成就労制度へ移行(新制度) | — |
ポイントは、2017年10月31日以前に技能実習を開始・修了した方々が影響を受けるという点です。この時期に技能実習を修了した方は、すでに修了から10年前後が経過しており、多くは母国に帰国しています。
実務への影響|「元実習生の呼び戻し」に期限が生まれた
今回の変更が最も大きく影響するのは、過去に技能実習を修了して帰国した元実習生を、特定技能人材として再び日本に呼び寄せるケースです。
なぜ元実習生の呼び戻しが人気なのか
元実習生を呼び戻すメリット
- 日本での就労経験があり、日本語・職場文化への適応が早い
- 技能実習2号を良好に修了していれば試験免除で特定技能1号へ移行可能(現行)
- 過去に勤務していた企業であれば人物・スキルを把握済みで採用リスクが低い
- 本人にとっても勝手を知る日本で高待遇で働ける
特に2010年代前半〜中盤に技能実習を修了した方々は、現在30代〜40代の働き盛りです。「あの時の優秀な実習生をもう一度呼びたい」という受入機関のニーズは根強く、試験免除で呼び戻せることがこのスキームの最大の利点でした。
2027年4月以降はハードルが大幅に上がる
変更後の実務上の課題
- 帰国して10年前後経過した元実習生が、海外で技能試験・日本語試験の両方に合格する必要がある
- 日本語能力は帰国後に低下しているケースが多く、日本語試験(JFT-Basic A2.2相当以上またはJLPT N4以上)が大きな壁になる
- 技能試験は分野によって海外実施国・実施頻度が限られる
- 試験の受験・合格までのリードタイムを考えると、採用計画が長期化する
基準日は「上陸許可等を受ける日」である点に注意
今回の変更で特に注意すべきは、適用の基準が「2027年4月1日以降に上陸許可等を受ける場合」とされている点です。
つまり、2027年3月31日までに申請しただけでは足りず、認定証明書の交付を受け、査証を取得し、実際に上陸許可(または在留資格変更許可)を受けるところまで完了している必要があると考えられます。海外からの呼び寄せは、申請から入国まで数か月を要することが一般的です。逆算すると、実質的なタイムリミットは2026年内〜2027年初頭と考えておくべきでしょう。
受入機関・登録支援機関が今すぐやるべきこと
今すぐ取るべき5つのアクション
- 過去の技能実習生の名簿を確認し、旧制度(2017年10月末以前)の修了者をリストアップする
- 呼び戻しを検討している元実習生がいる場合、2027年3月末までの上陸完了を目標に前倒しで手続きを進める
- 本人と連絡を取り、就労意思・現在の状況を早めに確認する
- スケジュールが間に合わない場合に備え、技能試験・日本語試験の受験準備(海外試験日程の確認・学習支援)を並行して案内する
- 送り出し機関・現地パートナーと連携し、対象者への制度変更の周知を行う
なお、現行の技能実習法(2017年11月1日以降)に基づく技能実習2号・3号の良好修了者については、今回の変更の対象外です。従来どおり、関連する業務区分への移行であれば技能試験・日本語試験は免除されます。
背景にある育成就労制度への移行
今回の取扱い変更は、2027年4月1日に施行される育成就労制度への制度移行の一環です。
育成就労制度は、現行の技能実習制度に代わる新たな外国人材受入れ制度で、「人材確保」と「人材育成」を目的に掲げ、特定技能1号への移行を見据えたキャリアパスとして設計されています。
制度の切り替わりに伴い、法務省令レベルでさまざまな経過措置・取扱いの整理が行われており、今回の「旧制度修了者の試験免除終了」もその一つです。10年以上前の旧制度下での実習修了をもって現在の技能・日本語能力を証明することは適当でない、という制度趣旨の整理と考えられます。
今後も育成就労制度の施行に向けて、関連する取扱い変更が順次公表されることが見込まれます。登録支援機関・受入機関としては、最新情報のキャッチアップがこれまで以上に重要になります。
よくある質問(FAQ)
Q1. 2017年より前に技能実習を修了し、すでに日本国内で特定技能1号として働いている方に影響はありますか?
すでに特定技能1号の在留資格を取得して在留中の方は、今回の変更による直接の影響はありません。今回の変更は、2027年4月1日以降に新たに上陸許可等を受けて特定技能1号へ移行しようとする場合の取扱いです。
Q2. 2017年11月以降に技能実習を修了した方はどうなりますか?
技能実習法に基づく技能実習(2017年11月1日以降)の良好修了者は今回の変更の対象外です。従来どおり、従事する業務と関連性のある職種・作業で技能実習2号を良好に修了していれば、技能試験・日本語試験ともに免除されます。
Q3. 旧制度の修了者でも、2027年3月31日までに入国すれば試験免除が使えますか?
変更後の取扱いは「2027年(令和9年)4月1日以降に上陸許可等を受ける場合」に適用されるとされています。したがって、2027年3月31日までに上陸許可等を受けていれば、従来の取扱い(関連性があれば試験免除)が適用されると考えられます。ただし、申請から上陸までの期間を考慮し、余裕を持ったスケジュールで進めることを強くお勧めします。
Q4. 「良好に修了した」とはどのように証明するのですか?
技能検定3級(または技能実習評価試験専門級)の実技試験合格、あるいは実習実施者が作成する評価調書などにより証明します。旧制度の修了者の場合、当時の実習実施機関が廃業しているなど評価調書の取得が困難なケースもあるため、この点でも早めの準備が重要です。
Q5. 帰国した元実習生が試験を受ける場合、どこで受験できますか?
技能試験(分野別の特定技能評価試験)と日本語試験(JFT-BasicまたはJLPT)は、分野・試験ごとに海外実施国が異なります。フィリピン・インドネシア・ベトナム・ミャンマーなど主要送出国では実施されていますが、実施頻度や会場が限られるため、対象者の居住国での試験日程を早めに確認してください。
登録支援機関としてのKMTの対応
株式会社KMTでは、今回の取扱い変更を踏まえ、受入機関様への支援を行ってまいります。
KMTがサポートできること
- 過去の技能実習修了者の該当性(旧制度か現行制度か)の確認
- 元実習生の呼び戻しに関するスケジュール設計と申請サポート
- 2027年3月末までの上陸完了を見据えた認定申請の代行支援
- 試験ルートとなる場合の受験手続き・学習支援のご案内
- 育成就労制度への移行に関する最新情報のご提供
「昔うちで働いていた実習生をもう一度呼びたい」とお考えの受入機関様は、期限が迫る前にぜひ一度ご相談ください。
まとめ|旧制度の技能実習修了者の呼び戻しは2027年3月末がリミット
今回の公表内容のポイントを改めて整理します。
- 2027年4月1日以降に上陸許可等を受ける場合、旧制度の技能実習修了者は試験免除が使えなくなる
- 対象は技能実習法施行以前(2017年10月末まで)の「技能実習」修了者と2010年6月末までの「特定活動(技能実習)」修了者
- 変更後は、業務の関連性の有無にかかわらず技能試験・日本語試験の両方の合格が必要
- 現行の技能実習法に基づく修了者(2017年11月以降)は対象外で、従来どおり免除あり
- 元実習生の呼び戻しを検討中の場合、申請から上陸までの期間を考慮すると実質的な準備期限は2026年内〜2027年初頭
育成就労制度への移行に伴い、特定技能・技能実習をめぐる制度環境は今後も大きく動きます。「まだ先の話」と思っていると、気づいたときには選択肢が失われているかもしれません。
該当する元実習生の呼び戻しをお考えの受入機関様は、お早めの対応をお勧めします。
※本記事は出入国在留管理庁の公表情報に基づいて作成しています。最新情報は出入国在留管理庁|技能実習法施行以前の「技能実習」等を修了した者が「特定技能1号」に移行しようとする場合の取扱いについてをご確認ください。


