「特定技能の農業は派遣雇用が可能と聞いたけれど、何か要件はある?」と気になっている方はいませんか?特定技能は基本的に直接雇用しか認められませんが、農業は派遣雇用が可能。しかし、受け入れの手続きなどわからないこともあるでしょう。
そこで今回は、特定技能の農業分野について徹底解説。農業の受け入れで担当させられる仕事内容や受入れ機関の要件、受け入れ可能な人材や必要な試験など幅広く解説します。受け入れの全体像を把握すると、円滑な受け入れを進められるようになりますよ。
目次
農業の現状と課題とは?後継者不足による高齢化が深刻。
日本の農業は、高齢化による人手不足に悩まされています。平成30年9月時点の基幹的農業従事者の割合は68%が65歳以上、49歳以下は 11%でした。65歳以上の高齢者が増える中、職の多様化などにより後を継ぐ若者の数は大きく減少しています。
農村部分の高齢化も深刻。平成30年9月時点で、全国の雇用就農者数は約7万人も不足しているとされています。農業分野では技能実習で多くの外国人を受け入れてきましたが、今後も国内の人手不足が解消される見込みはありません。
そこで活躍するのが即戦力となる外国人。農業の基本的な知識と技術を持った外国人を特定技能として受け入れることで、人手不足の解消へとつなげようとしています。
特定技能の農業で出来る仕事とは?「耕種農業」と「畜産農業」!
特定技能の農業で従事できる仕事は、以下の2種です。
- 耕種農業全般の作業(栽培管理、農産物の集出荷、選別等)
- 畜産農業全般の作業(飼養管理、畜産物の集出荷、選別等)
簡単にいうと植物か動物の世話と出荷までの作業をする仕事です。ただし、栽培管理か飼養管理のどちらかの業務が含まれていることが条件で、出荷や選別のみを専従で行うことはできません。
また、以下のような同じ農業者などのもとで作業する日本人が普段から従事している関連業務にも、付随的に従事することは可能です。
- 加工
- 運搬
- 販売の作業
- 冬場の除雪作業
日本人労働者と同じように、一般的な農作業の他、出荷品の製造や加工・販売などを担当させることもできます。ただ、これらの業務を専従とすることはできません。
受入れ企業の要件は?4か月以内に農水省の協議会加入
農業分野での特定技能外国人の受け入れ後にやるべきことは、協議会への加入です。受入れ機関は、特定技能外国人を受け入れた日から4ヶ月以内に、農業特定技能協議会に加入しなければなりません。
協議会は、制度や情報の周知、法令遵守の啓発、地域ごとの人手不足の状況把握を行い、適切な対応を実施する機関。必要な協力を行うことで、特定技能外国人の受け入れを円滑かつ適正にすることができます。
加入の手続きは、農林水産省のホームページから行いましょう。
手続きにかかる時間は1~2週間。申請から1~2週間後に「加入通知書」がメールで届きます。もし派遣形態で派遣先として特定技能外国人を受け入れる場合は、協議会に入会するのは派遣事業者です。
どういう人材が受入れ可能なのか?元実習生が多数。
特定技能は、元技能実習生からの移行がほとんどです。しかし元実習生以外にも、農業分野の特定技能として受け入れ可能な方がいます。農業分野で特定技能を取得できる人材は、以下の3種です。
- 農業の元技能実習生
- 技能と日本語試験合格者
- 留学生や別職種からの元実習生
どういう人材が受け入れ可能なのか知っておくことで、求人もしやすくなるはず。それぞれの人材について、詳しく解説します。受入れ機関としてのメリットも紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
①農業の元技能実習生!経験者のため即戦力となる
特定技能へは、同業務の技能実習生からの移行が可能です。つまり、農業分野で働く元技能実習生は、特定技能「農業」として受け入れ可能。その場合は、特定技能取得のために必要な技能試験と日本語試験が免除されます。
特定技能を取得したい外国人はもちろん、受入れ機関としてのメリットもあるのが技能実習生からの移行です。特定技能は即戦力になる人材を受け入れる制度。とはいえ、実際の現場経験が少ない場合は仕事に慣れるまでに時間がかかってしまうこともあります。
しかし技能実習生からの移行の場合は、既に技能実習生として農業の現場で3年間就労している外国人の方を受け入れることができるので、本当の意味での即戦力に。既に同農業事業所で働いていた方なら信頼関係も築かれているため、なおさらスムーズな受け入れができるでしょう。
②技能と日本語の試験合格者
技能実習からの移行ではなく新規で特定技能を取得する場合には、以下の技能試験と日本語試験の両方に合格しなければなりません。
- 「農業技能測定試験」(耕種農業全般又は畜産農業全般)
- 「国際交流基金日本語基礎テスト」又は「日本語能力試験N4以上」
2021年11月時点で農業技能測定試験が予定されているのは、以下の8ヵ国です。
- 日本
- フィリピン
- カンボジア
- ミャンマー
- ベトナム
- インドネシア
- 中国
- タイ
現地の送り出し機関などで試験に向けた勉強をしてから、テストに望むのが一般的。農業技能評価試験には公式ウェブサイトがあり、そこから学習テキストのダウンロードもできます。
技能実習からの移行に比べて数は少ないですが、しっかり準備してテストに合格し、新たに特定技能の在留資格を得るという方法もあります。
③留学生や別職種の元実習生からも人気の分野
特定技能「農業」は、健康な18歳以上の方なら留学生や別職種の元技能実習生でも取得することができます。国内で過ごした経験のある留学生や元技能実習生は、例え農業で就労していなくても日本語能力には問題ないので、スムーズな受け入れができるでしょう。
留学生や別職種の元実習生の場合は、技能試験と日本語試験をパスする必要がありますが、日本語試験はそれほど苦労することなく合格できるはず。技能試験に向けての勉強をすれば、特定技能「農業」での受け入れもそれほど難しいものではないでしょう。
現在日本にいる場合でも海外にいる場合でも、試験に合格さえすれば受け入れは可能です。留学生や元実習生は日本に興味のある方や、日本が気に入っている方が多いので、やる気のある外国人材が見つかりやすいでしょう。
特定技能「農業」の試験について
農業分野で特定技能を取得するための試験は、「農業技能測定試験」と呼ばれます。詳細は、以下のとおりです。
- 出題分野:「畜産」、「耕種」
- 試験時間:60分
- 問題数:約70問
- 実施方式:CBT(コンピューター・ベースド・テスティング)
- 受験料:8,000円(国内試験の場合)
受験可能言語は、以下のとおりです。
- 英語
- ビルマ語
- 日本語
- クメール語
- インドネシア語
- タイ語
- ベトナム語
- ネパール語
- 中国語
- モンゴル語
難易度は、日本国内での実務経験が3年以上の方の7割程度が合格する水準。国内外で行われており、日本語音声でのリスニングテスト・学科試験・実技試験を含みます。
国内受験の場合の受験料は、クレジットカードに加えてPayPayでも払えるようになりました。専用サイトから受験の申し込みができます。
特定技能は直接雇用が原則!農業・漁業分野のみ派遣OK
「特定技能」の在留資格は、原則として直接雇用しか認められません。しかし、例外として農業と漁業分野のみ派遣雇用での受け入れが可能です。
これは農閑期などがあることから直接雇用では特定技能外国人が年間を通して安定した賃金を受けられない可能性があるから。時期に左右される農業や漁業では、派遣での人材雇用が有効だと判断されました。
派遣人材の活用で柔軟な雇用ができることは、受入れ機関としての大きなメリット。例えば、繁忙期の半年にのみ特定技能外国人に働いてもらい、その後半年は帰国させ、また半年後に働きに来てもらうというやり方も可能。帰国している間は特定技能の上限合計5年間には入らないので、長期的な雇用が可能です。
また、閑散期には他の地域で働いてもらうことも可能。受け入れ側に合った自由な形態で効率良く雇用することができます。
農業での受入れにおいてよくある質問3選
派遣雇用が可能で閑散期の心配もいらない特定技能。農業での受け入れにおいてよくある質問を確認しておきましょう。ここで紹介する質問は、以下の3つです。
- 個人事業主でも問題ない?
- 賃金はどのくらいに設定すべき?
- 受入れ費用はどのくらい?
初めて農業分野で特定技能外国人を受け入れる方は、多くの疑問を持っているはず。解消しておくことで、スムーズな受け入れができるようになります。それぞれの疑問について、詳しく回答します。
個人事業主でも問題ありませんか?
個人事業主でも問題はありません。ただし、受け入れを行う特定技能外国人には、国民健康保険及び国民年金に加入させてください。労災保険は必須。民間のもので構わないので、必ず加入させるようにしましょう。
また、個人事業主でも従業員が5人以上の場合は雇用保険にも加入させる必要があるので、ご注意ください。また、下記の条件を満たしていることも確認しておきましょう。
- 過去5年以内に労働者を6ヶ月以上雇用した経験がある
- 「農業特定技能協議会」に入会し、協議会に必要な協力を行うこと
また、派遣形態で派遣事業者と雇用契約を結ぶ場合は、受入れ機関は以下のような条件を満たす必要があります。
- 過去5年以内に労働者を6ヶ月以上雇用した経験がある
又は
- 派遣先責任者講習その他これに準ずる講習を受けた者を派遣先責任者に選任していること
賃金はどのくらいで設定すればいいのですか?
特定技能外国人は、基本的に最低賃金では雇用できません。特定技能外国人は労働者扱いなので、日本人労働者と同じ賃金設定が必要です。同じ業務で働く4年目の日本人の方と同等の賃金に設定する必要があります。
単に外国人だからという理由のみで賃金設定を低くするのは、重大な差別にあたります。また、技能実習生には時間外労働や休日労働に対する割増賃金が発生しますが、特定技能外国人には発生しません。
もし技能実習生と特定技能外国人が同じ現場で働く場合には、割増賃金の支払いの有無に差をつけてはいけないので、ご注意ください。また、働かせすぎも禁物。労働時間や休憩、休日なども日本人と同じように与え、働きやすい環境づくりを心がけましょう。
受入れ費用はどのくらいかかりますか?
受け入れ企業が特定技能の外国人に関する業務を登録支援機関に委託する場合は、登録支援機関に支援費を支払う必要があります。その金額は企業によって様々ですが、初期費用としてトータル25~30万円が相場となっていると考えて良いでしょう。そのうち、行政書士への支払いに少なくとも10万円がかかります。
また、受け入れに必要な事前ガイダンスや生活オリエンテーションの実施、同行業務も登録支援機関に委託する場合は、それらに関する費用も発生します。費用の相場は以下のとおりです。
- 事前ガイダンス:33,000円
- 生活オリエンテーション:55,000円
- その他の同行業務:5,500円/時間
その他の業務には、入居手続きや銀行口座開設手続きの同行などがあります。弊社では、初回に係るすべての手続き含めて25万円となります。価格設定やサービス内容は企業によって異なるので、どの登録支援機関に委託するのか、費用と照らし合わせながら考えてみましょう。
まとめ|繁忙期のみの派遣雇用で地域間の人材リレーも!
農業は、繁忙期と閑散期がくっきりと分かれている業種。それを補うために派遣雇用が可能となっているのが特徴です。これにより、繁忙期の地域事業所に人材を派遣しながら年間を通して働いてもらうことも可能。様々な働き方により経営の発展が期待できます。
しかし、特定技能の受け入れにはただ仕事をしてもらうだけでなく、外国人が安心して生活できるサポートも必要。支援計画の作成など手間のかかる仕事もあります。
もし初めての受け入れで特定技能外国人の採用を迷っているなら、登録支援会社に支援を委託してみるのもひとつの方法。知識と実績が豊富なKMTなら、支援計画の作成を含めた農業分野での受け入れサポートが可能です。ぜひお気軽にご相談ください。