「特定技能外国人を受け入れたけど、その後何をすればいいの?」とお悩みの方はいませんか?特定技能外国人を受け入れたらその後も責任を持たなければならないことは分かっていても、具体的にどうしたらいいのか分からない方も多いでしょう。

そこでここでは、特定技能外国人の受け入れ後におこなう5つのステップについて徹底解説。受け入れに関するよくある質問・疑問にもお答えするので、読むと受け入れ後のイメージが湧き、外国人を心地よく迎え入れられるようになりますよ。

特定技能外国人受入れ後におこなう5つのステップとは?

特定技能外国人受入れ後におこなう5つのステップとは?

特定技能外国人の受け入れを済ませた後には、以下の5つのステップを踏む必要があります。

  1. 市役所での転入手続き
  2. 銀行口座の開設や携帯電話の契約
  3. 社会保険&労働保険加入
  4. 協議会への加入
  5. 定期面談・報告の実施

受け入れの手続きが終わったからと、一息ついてはいませんか?しかし受入れ機関は、特定技能の在留資格修了までは責任を持って外国人の受け入れを行わなくてはなりません。受け入れ後に必要なそれぞれの手続きについて、詳しく解説します。

【1】市役所での転入手続き

特定技能外国人は、「中長期滞在者」として手続きを行う必要があります。手続き方法は、新規で海外から来日した場合と、技能実習生などで既に日本に滞在していた場合とで変わりません。

どちらも地方出入国在留管理局ではなく、市役所などの住居地の市区町村で行うのが特徴。新規上陸者は「新規上陸後の住居地の届出手続」、技能実習からの移行の場合は「在留資格の変更等に伴う住居地の変更」を行います。

住居地を定めた日または在留許可が与えられた日から14日以内に在留カードを住居地の市区町村窓口に持参し、出入国在留管理庁長官に住居地の届け出を行いましょう。届出は本人か代理人が行います。代理人が行う場合には以下の書類を持参しましょう。

  • 委任状
  • 在留カード若しくは後日在留カードを交付する旨の記載を受けた旅券の写し

【2】銀行口座の開設や携帯電話の契約

預貯金口座の開設や携帯電話の契約、ライフラインなど生活上必要となる契約のサポートは、受入れ機関が特定技能外国人に対して必ず行うべき義務的支援に含まれています。

まずは引っ越し前後に、ガス・電気・水道といったライフラインの契約補助をしてあげましょう。続いて銀行口座を開設します。口座の開設には、以下のような書類が必要です。

  • パスポート
  • 在留カード
  • 社員証等勤務状況が分かる書類

必要な書類を揃えて契約をしましょう。

銀行口座が開設されたら、携帯電話の契約に移ります。携帯電話の契約には、「在留カード」と「銀行口座」が必要です。携帯電話の契約は多言語対応への取り組みが行われてはいるものの、まだ分かりにくい場面では補助してあげましょう。

これらの支援は、登録支援機関に委託することもできます。

【3】社会保険&労働保険加入

外国人の受け入れを行っているかどうかに関わらず、以下の条件を満たす事業所は、社会保険(健康保険・厚生年金)への加入が義務付けられています。

  • 株式会社などの法人の事業所(事業主のみの場合を含む)。
  • 農林漁業、サービス業以外の、従業員が常時5人以上いる個人の事業所

また、労働保険(労災保険・雇用保険)は、労働者を1人でも雇っている事業所は例外を除いて加入の義務があります。在留資格の申請・変更・更新時に社会保険や労働保険を支払っている証明書を提出する必要があるので、早めに加入を済ませておきましょう。

厚生年金は、いずれ母国に帰ってしまう外国人でも納める必要があります。しかし、保険料が無駄にならないように納入した保険料が返還される「脱退一時金制度」や、年金の重複加入を防ぐ「社会保険協定」により、払い過ぎを防ぐことができます。

【4】協議会への加入

特定技能の外国人を受け入れる特定技能所属機関(受入れ機関)や登録支援機関は、各分野への協議会に加入しなければなりません。特定技能外国人を受け入れた日から4ヶ月以内に加入する義務があります。

4ヶ月を過ぎて加入していないと、在留資格の不許可となってしまうので、早めに準備を整えて加入することが大切です。分野ごとに加入の方法は違うので、当該分野を管轄する各省庁のホームページなどを確認し、必要書類を揃えましょう。

協議会は、特定技能の外国人を保護すると共に、特定技能制度の受け入れを円滑に進めるために設けられた組織。建築分野以外は会費はかからないので、特定技能外国人受け入れ後すぐに加入を済ませておくと良いでしょう。

【5】定期面談・報告の実施(四半期に1回)

特定技能外国人の受け入れ後の手続きの中で、最も手間がかかるのが定期面談と定期報告です。受入れ機関は四半期に1度特定技能外国人と定期面談を行い、相談内容や労働状況などを地方出入曲在留管理局に届出なければなりません。

届出は、出入国在留管理庁のホームページからダウンロードできます。

特定技能所属機関による支援実施状況に係る届出はこちら

記入後は、事前登録をしておけばオンラインで提出可能。郵送でも受け付けています。

面談は外国人の十分に理解できる言語で行う必要があり、労働条件の他に生活上の問題がないか確認します。問題が見つかった場合は即座に対応し、労働法違反などの場合はその旨を報告しなければなりません。

四半期に1回の面談や報告のための書類の準備は、慣れるまではかなりの手間がかかるもの。負担を減らすために登録支援機関に業務を委託する企業も少なくありません。

【Q&A】よくある質問・疑問点を解説!

【Q&A】よくある質問・疑問点を解説!

受け入れ後の5つのステップは分かったけれど、まだ受け入れに関する疑問がある方も多いでしょう。そこでここからは、受け入れ後のよくある質問・疑問点を解説していきます。回答する質問は、以下の3つです。

  • 別の会社に転職は可能?
  • 一度に5年在留期間がもらえる?
  • 病気や事故時の保証は?

特定技能外国人も受け入れる機関も、在留期間中の不安はたくさんあるはず。ここで一気に解決して、すっきりとした気分で外国人を受け入れましょう。それぞれの疑問について、詳しく解説します。

別の会社に転職は可能なのですか?

特定技能は、同業務又は試験等によりその技能水準の共通性が確認されている業務区分間に限り転職が可能です。例えば、建築分野の「左官」業務に従事していた特定技能外国人が別の会社に転職して左官業務を担当することはできます。

また、「鋳造」の業務を行うのであれば、素形材産業から産業機械製造業への転職は可能です。ただ、「所属(契約)機関に関する届出」は外国人本人が入管へ行う必要があります。さらに、「在留資格変更許可申請」も行わなければなりません。

別の会社への転職は可能ですが、実際のところ難しいのが現状です。とはいえ受入れ機関は、できるだけ特定技能外国人が転職を考えないようにすることが大切。労働及び生活状況を整えて、心地良い環境にしておくべきです。

在留期限について、一度に5年の在留期限がもらえるのでしょうか?

特定技能1号の在留期限は、通算で最大5年間です。在留カードには5年後の満期終了日が記されますが、実際には1年・6ヶ月・4ヶ月の更新をする必要があります。更新が受理されると、新たに次の更新期間まで在留期限が伸び、最大で合計5年間在留できるということです。

一度在留資格「特定技能」を取得したからといって、その後何もせずに5年間在留できるというわけではないので、注意が必要。更新のたびに適正な受け入れを行っているか確認する書類が必要になるので、5年の在留期限が終了して特定技能外国人が離職するまでは気が抜けません。

なお、特定技能2号の場合は、3年・1年・6ヶ月ごとの更新をすることで、制限なく在留することができます。

病気や事故に合った際の責任や保証はどうなりますか?

特定技能の在留期間中に思わぬ病気や事故に合った場合は、基本的に受入れ機関と登録支援機関が責任を持ちます。万が一病気や怪我で医療費が発生した場合は、日本人が病気や事故に合ったときと同様、受入れ機関の加入している労災保険などで保証されます。

病気や事故に関する保険への加入は必ず済ませておきましょう。受入れ機関には、病気や怪我による高額の医療費の負担を抑えるために、特定技能外国人に民間の医療保険への加入案内をする義務があります。

企業が加入する労災保険の他、個人でも医療保険に加入していれば、高額の医療費を抑えられます。さらに、いつでも医療サービスを受けられるという安心感も与えることができます。勧める医療保険には、通訳雇入費用等をカバーしてくれる保険が望ましいでしょう。

まとめ|受け入れ後も気を抜かずに手続きを進めよう!

まとめ|受け入れ後も気を抜かずに手続きを進めよう!

特定技能外国人を受け入れるのは、案外大変なもの。一旦受け入れを済ませてしまうと、難しい手続きから解放されてほっと一息ついてしまいたくなります。しかし、特定技能外国人の雇用は、受け入れ後にもすることがたくさん!気を抜かずに手続きを進める必要があります。

もし受け入れ後の手続きに負担を感じるなら、登録支援機関に支援を委託してしまうのも1つの方法です。登録支援機関として多くの実績を持つKMTでもサポートができるので、ぜひ一度ご相談ください!

大房行政書士法人代表 / 株式会社KMT取締役
行政書士 大房明良 監修

東京都大田区蒲田に生まれ、大学在学中に訪れたカンボジアで学校建設ボランティアに参加し、貧困問題に興味を持つ。2016年に行政書士事務所を開業し、カンボジア語が話せる行政書士として入管業務を専門に行う。現在は特定技能申請をメイン業務とし、2023年5月現在で申請数は4500件を超える。
また、取締役を務める株式会社KMTでは、約600名の特定技能外国人の支援を行っている。