建設業で特定技能外国人を受入れるときに必要なCCUS/キャリアアップシステム。特定技能外国人を建設分野で受入れるなら登録が必須になっていますが、「導入すると何か良いことがある?」と疑問に思っている方も多いでしょう。
そこで今回は、キャリアアップシステムの概要や目的を解説したうえで、導入のメリットを解説。技能者と事業者に分けて、メリットを説明します。また、キャリアアップシステムへの申請方法も解説するので、建設業での受入れで戸惑っている事業主さんは、ぜひ参考にしてみてください。
目次
キャリアアップシステムとは?概要や目的を解説
建設キャリアアップシステムとはConstruction Career Up Systemのことで、その頭文字を取ってCCUSと呼ばれます。CCUSの概要や目的は、以下のとおりです。
- 技術者のスキルやキャリアを「見える化」
- 将来に向けた人材確保を図るため
- 事業者の事務手続きの効率化を図るため
CCUSとは何なのか、目的は何なのか知っておくことでメリットや登録の理由も理解しやすくなってくるはず。それぞれの概要や目的について、詳しく解説します。
技能者のスキルやキャリアを「見える化」
CCUSは、建設業での人手不足を補うために技能者に適正な処遇を与える目的で作られたシステム。建設業で働く技能者のスキルやキャリアを「見える化」しています。CCUSに登録すると個人カード(キャリアアップカード)が配られ、そこに以下のような情報が登録されます。
- 本人情報
- 保有資格
- 社会保険加入状況
登録した技能者自身は、現場でICカードリーダーにキャリアアップカードを読ませることで、日々の就業履歴を記録。個人カードには、いつどこでどの職種でどの立場で働いたのかの就業履歴が蓄積されていきます。技能者一人一人のスキルや経験が業界統一のルールで「見える化」されて分かりやすくなることで、建設業の技能者は適正な処遇が受けやすくなります。
将来に向けた人材確保を図るため
建設業は、人材不足が懸念されている分野です。そのため、CCUSは将来に向けて人材を確保することを目標として活動しています。建設分野で人材を確保するためには、建設業が魅力的なことを若い人達に分かってもらうことが大切。個々の能力や資格、成長などを評価され適正な処遇が受けられることが建設業で働く魅力になるでしょう。そしてCCUSは、魅力的な建設業を定着させるために、きちんと一人一人の技能者のスキルアップが評価される仕組みをつくっています。
CCUSは、登録された資格や就業実績などにより、技能者が能力別にレベル分けされるシステムを構築。キャリアアップカードは、レベル別に色分けされます。建設技能者を客観的に評価できるようにすることで、適切な処遇が受けられる魅力的な建設業を目指しているのがCCUSです。
事業者の事務手続きの効率化を図るため
CCUSは、事業者の事務手続きを効率化するための大きな役割も果たしています。元請事業者がCCUSに登録しており受入れ企業が情報を開示すると、元請事業者は現場で働いている技能者のキャリアアップカードを閲覧することが可能。元請事業者が現場で技能者一人一人の資格や社会保険加入状況をチェックするのは手間がかかります。しかし、キャリアアップカードには保有資格や社会保険加入状況などが全て登録されており、簡単に確認が可能。事業者の事務作業が楽になります。
また、どのような技能者が現場で働いているのか、技能者のリストを作ることも簡単に行えるように。キャリアアップカードにより情報が電子化されることで、より確実な情報残りやすくなるでしょう。さらにペーパーレス化により、事務作業の大幅な削減にもつながることが見込まれます。
【技能者と事業者別】CCUS導入のメリットとは?
建設業での適正な受入れが可能になるCCUSを導入すると、多くのメリットがあります。導入のメリットを、技能者・事業者に分けてチェックしておきましょう。
- 技能者メリット①|適正な評価・処遇を受けられる
- 技能者メリット②|建退共の退職金が受け取りやすくなる
- 技能者メリット③|目指すべきキャリアの明確化
- 事業者メリット①|就業環境の整備をアピールできる
- 事業者メリット②|技能者の保有資格をアピールできる
- 事業者メリット③|勤怠管理など事務手続きの簡略化
特定技能の受入れに必須とはいえ、「CCUSってわざわざ登録する意味あるの?」「登録が面倒…」と思っている方は必見!メリットを知ることで導入する意味がわかりますよ。それぞれのメリットについて、詳しく解説します。
技能者メリット①|適正な評価・処遇を受けられる
技能者側の一番のメリットは、適正な評価や処遇を受けられることです。技能者は就業日数により経験を、保有資格により知識や技能を、登録基幹技能者講習の受講歴や職長経験によりマネジメント能力を証明することができます。能力がきちんと評価されるうえ、レベルごとの年収目安が明確化。賃金水準の相場が分かるようになるため、技術レベルや経験にそぐわない不当な賃金で雇用されることを予防できます。
また、現場や勤務先が変わったときにもCCUSのキャリアアップカードが活躍。キャリアアップカードがあれば、これまでの就業履歴や資格などが瞬時に確認でき、新たな現場や就業先でも適正な処遇が受けられます。CCUS導入により適正な処遇が受けられることで、建設業の魅力がアップすることでしょう。
CCUSでは、導入のメリットを広げるためのさまざまな取組を行っています。カードリーダーを使わずに、携帯電話の発信や顔認証で勤怠管理ができるシステムも提供。より簡単に勤怠管理が行えるようになるでしょう。
技能者メリット②|建退共の退職金が受け取りやすくなる
CCUSでは今後、建設業退職金共済事業本部(建退共/けんたいきょう)が管理する退職金も管理できるようになる見込みもあり、事務手続きの大幅な効率化が見込まれます。具体的には、カードリーダーにキャリアアップカードをタッチすることで、日々320円の建退共掛金を積み立てることができるようになります。なお、掛金の支払いは元請事業者が一括して支払います。
日々掛金を積み立てられるシステムにより、退職金が確実に受け取れるようになるのがポイント。事業者が意図的に行ったわけではなくても、正しい手続きを行わずに建退共の退職金が就労日数分支払われていないというトラブルも起こっています。CCUSに登録することでこのようなトラブルから解放され、就労日数に合った適正な退職金が受け取れるようになります。
技能者メリット③|目指すべきキャリアの明確化
技能者のモチベーションがアップするのもCCUSに登録するメリットのひとつ。キャリアアップカードは、レベルごとに以下のように色分けされます。
- 白(レベル1):初級技能者(見習い)
- 青(レベル2):中堅技能者(一人前)
- 銀(レベル3):班長として現場で従事できる者
- 金(レベル4):高度なマネジメント能力を有する者(登録基幹技能者など)
白から始まり青で一人前、シルバーになったらもう一歩!最も高いレベルのゴールドカードになると、クレジットカードと同じく周りから一目置かれる存在になります。目指すべき目標が明確になることは、技能者にとっての大きなメリット。技能者のモチベーションが上がり、日々の就労にも活力がわいてくるでしょう。
CCUS普及化の新たな取り組みとして、CCUS応援自販機の設置も展開。CCUS応援自販機のある現場では、技能者がキャリアアップカードを現場にある自販機にタッチすると無料で飲料がもらえます。飲料費は元請負担ですが、技能者としてはうれしいCCUS導入のメリットのひとつですね。
事業者メリット①|就業環境の整備をアピールできる
就業環境が整っていることをアピールできることは、事業者側の大きなメリットとなります。CCUSへの登録がある事業者は、不正な賃金で特定技能外国人を受入れることはできません。CCUSのキャリアアップカードには就労実績や資格の有無などが確実に記録されており賃金水準も明確になっているため、それに見合った適切な賃金が支払われることになります。
労働環境を整えることが難しい建設現場で、CCUSを導入していることは適切な就業環境が整っている証拠になります。CCUSに登録してある事業者ということで、就業する技能者や元請事業者に良い印象を与えることができます。働きやすい事業者としての魅力が若い世代に伝わり、結果的に建設業の魅力を若者に伝えることにもなるでしょう。
また、技能者の4段階の能力レベルと連動した企業の施工能力も見える化されています。CCUSの導入により4段階で専門工事企業が評価され、企業の能力がアピールできるように。多くの技術者や元請事業者の集まる企業になるよう、採用のためのPR活動ができるようになることもメリットのひとつといえるでしょう。
事業者メリット②|技能者の保有資格を元請けにアピールできる
事業者側のもうひとつのメリットとして、技能者の保有資格を元請にアピールできることが挙げられます。CCUSへ登録しておくと、技能者の保有資格やスキルを元請事業者に開示することができます。元請事業者は技能者の就労実績や保有資格はもちろん、社会保険の加入状況も確認することができます。そして技能者が不法労働をしていないことや、事業者が不法な受入れをしていないことが確認可能。より安心して技能者に就労させることができるようになります。
最近ではCCUSの登録がないと入れない現場も増えてきているため、元請事業者にとってもCCUSに登録している事業者はありがたい存在となっています。
事業者メリット③|勤怠管理や採用の事務手続きが簡略化される
事業者側としては、事務手続きが簡略化されることも大きなメリット。CCUS導入後は、キャリアアップカードをタイムカードのようにして勤怠管理をすることができるようになります。CCUSを導入していない場合は勤怠管理のために労働者を雇うことにもなり、効率的ではありません。しかしCCUS登録により、電子的に勤怠管理ができるようになるので、事務に費やす時間が軽減できます。
また、明確な勤怠管理は賃金や代金支払いの根拠にもなります。さらに建退共との連携も進めば、退職金に関する手続きも簡略化が可能。さらに採用の際の事務手続きも簡略化できます。ペーパーレス化により、事務手続きの負担をぐんと軽減できますよ。
CCUSの申請方法とは?インターネットから申請が可能
事業者側にも技術者側にもメリットの多いCCUSですが、申請の手続きが難しそうと思ってはいませんか?CCUSは窓口で申請もできますが、インターネットからの申請が便利です。申請方法を押さえておきましょう。
- 事業者による申請
- 技能者による申請
CCUSは、事業者と技能者の両方が登録する必要があります。申請の仕方を覚えておけば、スムーズに手続きができますね。それぞれの申請方法について、詳しく解説します。
事業者による申請
CCUSへは、下請・元請ともに申請が必要です。技能者登録には事業者の登録情報が必要になるので、技能者登録の前に事業者登録を行うのがおすすめです。事業者登録をするときには、支払いやIDに関するメールが届く登録責任者を決めておきましょう。申請に必要な書類は、以下のとおりです。
- 建設業許可通知書 or 建設業許可証明書の写し
- 社会保険の加入証明書の写し
社会保険は、以下のような保険の中で該当する保険の加入証明書の写しが必要です。
- 健康保険
- 年金保険
- 雇用保険
- 建退共
- 中退共
- 労災保険特別加入
これらの書類は、スマホのカメラ機能で撮影するなどしてJPEG(JPGファイル)に変換しておきましょう。PDF形式のものもJPEG(JPGファイル)への変換が必要です。準備ができたら、CCUSのホームページから申請しましょう!
トップページの「登録する」をクリックし、指示にしたがって利用申込みを済ませると、事業者新規登録用のログインIDとパスワードが登録したメールに届きます。その後確認および審査ののちに登録料の支払いを済ませると、事業者登録が完了し、事業者IDが発行されます。
登録料は、事業者の資本金により異なります。登録料の他、管理者ID利用料と元請事業者が負担する現場使用料が発生することも頭に入れておきましょう。申請内容に不備がなく、登録料の支払いも済ませていれば約2週間程度で事業者IDが発行されます。
技能者による申請
事業者登録が終わったら、技能者による申請を行います。特定技能の場合は外国人技能者なので、申請が難しい場合は受入れ機関の事業者や代行申請者が申請を代行します。登録方法は2種類あり、好きな方が選べます。
- 簡略型(登録料2,500円)
- 詳細型(登録料4,900円)
簡略型では技術者の基本情報のみが登録され、詳細型では技術者の能力レベル判定に必要な保有資格情報などが登録されます。なお、認定登録支援機関の代行申請の場合は、書面申請による詳細型のみです。費用は少しかかりますが、CCUSのメリットを最大限に活用するなら詳細型がおすすめです。
申請の際は、まずは本人確認書類を準備し、申請用IDを取得します。CCUSのホームページから「技能者登録をする」の「インターネットで申請する」のボタンを押し、申請を始めましょう。
登録内容を入力し、支払い方法を選んで支払いを済ませましょう。その後CCUSでの確認・審査があり、メールで登録完了通知が届きます。その後技能者IDが発行され、登録済みの住所にカードが届きます。これで技能者による申請が完了です。
まとめ|CCUS導入の相談ならKMTに!
特定技能外国人を建設分野で受入れるなら、建設キャリアアップシステム(CCUS)への登録は必須です。導入すると技能者にとっても事業者にとっても良いことがあるため、少し面倒でも登録しておく意味はあるのではないでしょうか。ただ、簡略型や詳細型があったり、手続きはインターネットで誰に聞いたら良いか分からなかったりと、登録に苦労してしまうこともあるでしょう。
そんなときには、ぜひKMTに相談してみてください。登録支援機関のKMTなら、特定技能外国人「建設」の受入れに必要なCCUSへの登録も一括してサポート!CCUSの申請だけでなく受入れに関するその他のサポートもできますので、ぜひ一度お問い合わせください。