2026年8月25日、政府は閣議で、外国人の在留手続きに係る手数料を大幅に引き上げる政令の改正を決定しました。
2026年10月1日以降に受け付けられる申請分から、在留資格の変更・更新の手数料は現行の一律6,000円から、許可される在留期間に応じた1万円〜7万5,000円の段階制となります。永住許可の手数料は現行の1万円から20万円へと、実に20倍の引き上げです。
7月の政令案公表後、パブリックコメント(意見公募)が実施されましたが、値上げ幅は変更されないまま当初予定どおりの施行が確定しました。
特定技能1号は在留期間が「4か月・6か月・1年」と短く区切られ、更新のたびに手数料が発生するため、外国人本人にとっても受入機関にとっても負担インパクトの大きい改正です。本記事では、改定内容の詳細と、特定技能の受入企業が今から準備すべきことを解説します。
目次
改定の概要|一律6,000円から「在留期間に応じた段階制」へ

新しい手数料額(在留資格変更・在留期間更新)
在留資格変更許可申請・在留期間更新許可申請の手数料は、許可される在留期間が長いほど高くなる段階制に変わります。
| 許可される在留期間 | 窓口申請 | オンライン申請 |
|---|---|---|
| 3か月以下 | 1万円 | 1万円(割引なし) |
| 3か月超6か月以下 | 1万8,000円 | 割引あり |
| 1年 | 3万3,000円 | 割引あり |
| 3年以上5年未満 | 6万4,000円 | 割引あり |
| 5年以上 | 7万5,000円 | 6万5,000円 |
※現行は在留期間にかかわらず窓口一律6,000円(オンライン5,500円)。オンライン申請の割引額は区分ごとに3,000円〜1万円の段階制で、「3か月以下」はオンライン割引の対象外です。
永住許可は1万円→20万円に
永住許可申請の手数料は、現行の1万円から20万円に引き上げられます。永住許可は窓口申請のみの対応で、オンライン割引はありません。
改定のポイントまとめ
- 変更・更新:一律6,000円 → 在留期間に応じて1万〜7万5,000円
- 永住許可:1万円 → 20万円(窓口のみ)
- 適用開始:2026年10月1日以降に受け付けられた申請から
- オンライン申請は区分に応じて3,000円〜1万円の割引(3か月以下・永住は対象外)
- 法律上の上限は在留10万円・永住30万円で、今回の政令はその枠内で金額を設定
手数料額は「申請時」には確定しない点に注意
手数料は「許可される在留期間」に応じて決まるため、申請の時点ではいくらになるか確定しません。たとえば更新申請をして1年の許可が出れば3万3,000円、3年の許可が出れば6万4,000円です。付与される在留期間は審査の結果次第であるため、資金準備は高い方の区分を想定しておくのが安全です。
なぜ値上げされるのか?|背景と算定根拠
今回の引き上げは、2026年5月に成立した改正入管法に盛り込まれたもので、在留外国人の急増に伴う経費を賄うことが目的とされています。
入管庁の説明によると、改定額は、在留審査にかかる実費(人件費・物件費など)である1人あたり約1万円に、外国人政策にかかる費用(約572億円)を中長期在留者数(約291万人)で割った1人あたり年間約2万円を、在留期間に応じて足し合わせる考え方で算定されています。値上げ分は、出入国管理のための費用や日本語学習プログラムなどの外国人との共生施策に充てられるとされています。
なお、在留手数料は2025年4月にも4,000円から6,000円に引き上げられたばかりであり、約1年半で二段階の値上げとなります。
特定技能への影響|更新頻度が高いため負担増が直撃
今回の改定で特に影響が大きいのが、特定技能1号です。
特定技能1号は「更新のたびに」手数料がかかる
特定技能1号の在留期間は「1年・6か月・4か月」のいずれかで付与され、通算5年の在留期間中、何度も更新申請を繰り返すことになります。
特定技能1号の手数料負担イメージ(窓口申請の場合)
- 1年更新の場合:更新のたびに3万3,000円(現行6,000円の5.5倍)
- 6か月更新の場合:更新のたびに1万8,000円(現行6,000円の3倍)
- 通算5年を1年ごとの更新で満了する場合、更新4回で合計13万2,000円(現行なら2万4,000円)
- 技能実習からの移行や転職時の在留資格変更許可申請も同じ段階制手数料の対象
特定技能2号への移行(在留資格変更)や、特定技能で3年などの長期の在留期間が許可されるケースでは、1回あたりの手数料はさらに高額になります。
海外からの呼び寄せ(認定申請)は影響なし
一方、海外から人材を呼び寄せる際の在留資格認定証明書交付申請(COE申請)には、従来どおり手数料はかかりません。今回の改定は、日本国内で行う変更・更新・永住許可等の手続きが対象です。
手数料は誰が負担する?|企業負担か本人負担か
在留手数料を外国人本人と受入企業のどちらが負担するかについて、法令上の決まりはなく、雇用契約や就業規則、社内規程によって取り決めるのが実務です。
しかし、1回6,000円の時代と、1回3万円超の時代では話が変わってきます。
費用負担ルールの整理パターン(例)
- 全額本人負担:本人の在留に係る費用として本人が負担(手取りへの影響大。採用競争力の低下リスク)
- 全額企業負担:福利厚生・定着施策として企業が負担(人材確保の訴求材料になる)
- 折衷案:従来相当額(6,000円)は本人、値上げ超過分は企業が負担する等の分担ルール
外国人材の獲得競争が激化する中、「更新手数料は会社負担」が採用時のアピールポイントになる可能性もあります。逆に、全額本人負担のままだと、更新時期の負担感から不満・離職につながるおそれもあります。10月の施行前に、自社の負担ルールを明確にしておくことをお勧めします。
10月までの駆け込み申請はできる?|「受付日」基準に注意
新手数料は「2026年10月1日以降に受け付けられた申請」から適用されます。逆に言えば、9月30日までに受け付けられた申請は、許可が10月以降になっても現行の手数料(6,000円)です。
そのため「値上げ前に更新してしまいたい」と考える方も多いはずですが、注意点があります。
駆け込み申請の注意点
- 在留期間更新許可申請は、原則として在留期間満了日のおおむね3か月前からしか受け付けられない
- つまり、在留期限が2027年1月以降の方は、9月中に更新申請を出すことができない
- 一方、在留資格変更許可申請には「3か月前ルール」がなく、変更事由が生じていればいつでも申請可能
- 永住許可申請にも申請時期の制約はないため、要件を満たしている方は9月中の申請で20万円を回避できる可能性がある
在留期限が2026年10月〜12月の特定技能外国人を雇用している受入機関様は、9月中の更新申請が可能なケースです。書類準備には時間がかかるため、該当者のリストアップと申請準備を今すぐ始めましょう。
負担を抑える2つの方法
①オンライン申請の活用
改定後は、オンライン申請の割引額が現行の500円から最大1万円に拡大されます。たとえば5年以上の区分では窓口7万5,000円に対しオンライン6万5,000円です。
特定技能の在留諸申請はオンライン申請(在留申請オンラインシステム)に対応しており、収入印紙の購入も不要になるため、今後はオンライン申請が事実上の標準になると考えられます。まだ窓口申請が中心の受入機関様は、これを機にオンライン申請への移行を進めましょう。
②減額措置(対象は限定的)
生活保護法に規定する「要保護者」に準ずる程度に困窮しており、かつ人道上配慮する必要がある場合の双方に該当するときは、在留関係の手数料は1万円、永住許可は2万円に減額される措置が設けられています。また、パブリックコメントを踏まえ、日本人または特別永住者の子どもを単独で監護・養育し「特定活動」への変更を行う生活困窮者も新たに減額対象に追加されました。
ただし、要件は厳格であり、通常の就労系在留資格(特定技能等)で働く方が対象になるケースはほぼないと考えておくべきでしょう。
よくある質問(FAQ)
Q1. 9月30日までに申請すれば、許可が10月以降でも旧手数料ですか?
はい。手数料の適用は「申請の受付日」が基準です。9月30日までに受け付けられた申請は、許可(手数料納付)が10月1日以降になっても現行の6,000円が適用されます。2025年4月改定時も同様の取扱いでした。
Q2. 海外から特定技能人材を呼び寄せる場合も手数料がかかりますか?
在留資格認定証明書交付申請(COE申請)自体に手数料はかかりません。今回の改定対象は、国内で行う在留資格変更・在留期間更新・永住許可等の手続きです。
Q3. 手数料は誰が払うものですか?会社負担にすべきですか?
法令上の定めはなく、雇用契約や社内規程での取り決め次第です。金額が大きくなるため、施行前に負担ルールを明文化しておくことを強くお勧めします。人材定着の観点からは、企業負担または一部企業負担とする企業が増えると見込まれます。
Q4. 特定技能2号や永住を目指している人材への影響は?
特定技能2号への移行は在留資格変更許可申請にあたるため、許可される在留期間に応じた新手数料が適用されます。また、永住許可申請は20万円となるため、すでに永住要件を満たしている方は9月中の申請を検討する価値があります。
Q5. 収入印紙での支払いは変わりますか?
窓口申請では従来どおり収入印紙による納付です。高額化に伴い印紙の準備も大変になるため、手数料が自動的に電子納付となるオンライン申請の利用がおすすめです。
登録支援機関としてのKMTの対応
株式会社KMTでは、今回の手数料改定を受けて、受入機関様への支援を行ってまいります。
KMTがサポートできること
- 在留期限が近い特定技能外国人の9月中の更新申請(駆け込み申請)の可否判断とサポート
- オンライン申請の活用による手数料・事務負担の軽減のご提案
- 手数料の費用負担ルール整備(雇用条件書・社内規程への反映)に関するご相談
- 更新スケジュールの管理と申請コストを踏まえた採用計画のご支援
当社は181社の取引実績と750人の支援実績をもとに、制度変更にも迅速に対応した支援を行っています。「うちの外国人スタッフは9月中に申請できるのか」「費用負担をどう決めればいいか」など、お気軽にご相談ください。
まとめ|10月1日までに「申請時期」と「負担ルール」の整理を
今回の改定のポイントを改めて整理します。
- 2026年8月25日の閣議決定により、10月1日以降の申請受付分から新手数料が適用される
- 変更・更新は一律6,000円から在留期間に応じた1万〜7万5,000円の段階制へ(1年なら3万3,000円)
- 永住許可は1万円→20万円(窓口のみ)
- 更新頻度の高い特定技能1号は負担増の影響が特に大きい(COE申請は従来どおり無料)
- 9月30日までの受付分は現行手数料。ただし更新申請は満了日の約3か月前からしか出せない点に注意
- オンライン申請なら最大1万円の割引。費用負担ルールの明文化も施行前に
在留手数料の値上げは、外国人本人の生活にも、受入企業の人件費計画にも直結する変更です。施行までの約1か月で、①駆け込み申請が可能な該当者の確認、②費用負担ルールの整備、③オンライン申請体制への移行、の3点を進めておきましょう。
※本記事は2026年8月25日時点の閣議決定および報道・公表情報に基づいて作成しています。手続きの詳細は出入国在留管理庁|在留手続等に関する手数料の改定など公式情報をご確認ください。


